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英国連立政権が打ち出した社会保障費大幅カットで
自治体が介護サービスを縮小し、障害者、高齢者に大きな影響が出ている。

Frank Baileyさん(80)は長年72歳の妻Faithさんの介護をしてきた。
Faithさんには心臓病、当女房、喘息、肺疾患、骨粗鬆症などがあり、
自力歩行ができないほか、夜間に呼吸が止まってしまうことがあるために
介護者はロクに眠ることができない。

それで、これまでは夜間の介護者が週に3回派遣されていた。

週末には孫が交代で手伝いに来てくれるので
高齢で自身も関節炎など身体の不調を抱えるFrankさんは
一日おきにぐっすり眠れることだけを救いにして
なんとか厳しい介護を続けてきたのだけれど、

この度の予算削減によって
これからは週2晩しか派遣できないと言い渡されてしまった。

Briminghamでは、要介護者のアセスメントの見直しが行われており、
介護ニーズが「最重要(critical)」でなくて「重要 (substantial)」とされた人は
これまでの介護プラン(ケア・パッケージ)を全面停止される恐れがある。
その数、ざっと4100人。

ただ、微妙なのは、先月Birmingham裁判所が出した暫定的な判断。

4人の障害者の家族が起こした訴訟で、高等裁判所のWalker判事は、
障害者差別(禁止)法のもとで当局には、
たとえそれが他の人よりも優遇することになろうとも、
障害者に社会参加を促し、そのニーズに応える義務がある、との見解を示した。

来週予定されているWalker判事の最終判断までは
アセスメント作業も中断されたままだ。


CarersUK、アルツハイマー病協会、Macmillan Cancer SupportとScopeが共同で行った調査によると、
ニーズに変化がないにも拘らず5人に一人がサービスをカットされており、
半数以上が健康状態の悪化や自立生活の危機を訴えた。
また半数が自己負担分の増加で食費や光熱費も足りない、と答えた。

財政悪化に苦しむ自治体側は
介護サービスをカットされた人をボランティア部門のサービスに繋げていく方針だというが、

実際には自治体はボランティア部門への助成金も相次いでカットしており、
活動が続けられないサポートグループが続出している。

Social care cuts: ‘The people concerned are invixible’
The Guardian, May 10, 2011


この記事で触れられているBirmingamの裁判に関する記事がこちら ↓
Disabled people take anti-cuts protest to the courts
The Guardian, May 10, 2011

今日水曜日、ウエストミンスターで5000人から1万人規模のデモ行進が予定されている。
The Hardest Hitマーチ。予算削減の影響で最もひどい目に会う人たちの行進 ↓
Disabled people to march in London against cuts to benefits and services


それにしても、前から「ひどい、ひどい」と聞く割には
それでもベースラインは日本よりもずっと高いのでは……と思ってはいたけど、
冒頭のBaileyさんたち高齢夫婦のケースを読むと、やっぱりそうだったか……。

Brown政権末期に将来の介護保険制度創設に向けた青写真が描かれていたけど、
あれは結局は選挙に向けた起死回生のパフォーマンスだったみたいだし、
英国には介護保険は今だに存在しない。

日本にはれっきとした介護保険制度が存在する。
「世界に冠たる我が国の介護保険」と胸を張る人が
日本の介護業界には何人もいる。(もちろん現場の人じゃない)

それでも家で家族の介護をしている80歳の高齢介護者の中で
週に3晩とか2晩はおろか1晩だって「介護サービスが入ってくれるから、
その晩だけは熟睡させてもらえます。だからこそ、なんとか介護を続けていられます」
と言える人が、日本の国のどこに……?

英国の障害者や高齢者には申し訳ないけど、
私には、この記事、この発見が何よりもショックだった……。


なお、去年「介護保険情報」11月号に
「貧困とウツ状態にあえぐ英国の介護者たち」という一文を書きました。
この段階で、既に「障害者手当20%カット」が打ち出されており、
この連載で取り上げたチャリティの調査も、それに対して
現状を訴えて異を唱える試みのようでした。


【英国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
レスパイト増を断れた重症児の母の嘆きの書き込みがネット世論動かす(英)(2011/1/21)

【米国のベースラインについて具体的な情報を含んでいるエントリー】
Ashleyケース、やはり支援不足とは無関係かも(2008/12/8)
米国IDEAが保障する重症重複障害児の教育、ベースラインはこんなに高い(2010/6/22)
2011.05.12 / Top↑
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