英国の障害者らが介護サービス削減に抗議して訴訟、大規模デモを書いた際に
英国の老舗介護者支援チャリティから出ている「介護者の10の心得」を
エントリーとして紹介したいな、と考えたもので――。
英国でも米国でも介護者向けに様々なアドバイスや「心得」が出ており、
いくつかは「介護保険情報」の連載でこれまでにも紹介し
その中のいくつかはこのブログでもエントリーにしていますが、
今回のものは特にお金に関するアドバイスが中心。
それだけに英国の介護者支援の実情が少しばかり伺えるものとなっています。
私は中でも特に介護で離職する人のための年金受給資格保護は
非常に大事な施策で、これから日本でも考えられるべきではなかろうか、と思います。
介護者の10の心得 by the Princess Royal Trust for Carers
1. 自分を大切に! 介護は肉体的にも精神的にも介護者の健康に影響しがちです。でも、あなたのことだって大事。安全な介護の方法を学び、適切な食事をとり、よく眠り、自分なりのストレス解消法を見つけましょう。
2. レスパイトを。負担とストレスの大きな介護から、時には離れて息をつくことが大切です。自治体やチャリティに相談して、自分に替って介護してくれる人や場所を探しましょう。レスパイトのための資金援助を受けられる可能性もあります。
3. あなたは一人ではありません。あなたと同じような経験をしている介護者が英国には約600万人います。地元の介護者センターや自治体を通じて支援グループに参加すると、他の介護者と出会うことができます。
4. 家庭医に相談を。介護している人の健康に気を取られ、介護者は自分の健康を顧みる余裕をなくしがちです。介護をしていることをGP(家庭医)にちゃんと話しておきましょう。健康管理に気を配ってもらえるだけでなく、介護に役立つ機関にも紹介してもらえます。
5. 介護者アセスメントを。あなたには自治体の介護者アセスメントを受ける法的権利があります。政府のウェブ・サイトや最寄りの介護者センターに問い合わせ、手続きをしましょう。
6. もらえる経済支援をチェック。介護者が受けられる支援には以下のものがあります。該当していないか再確認しましょう。
・介護者手当 16歳以上で週35時間以上の介護をしている人が対象。他にも条件はありますが、働いていなかったり学生なら該当する可能性があります。現在、週53.90ポンド。
・所得支援 60歳未満で低所得、貯蓄総額が16000ポンド以下の人が対象となります。問い合わせを。
・介護者プレミアム 介護者手当の受給資格を満たし、さらに所得支援または年金の受給者であれば、週27.15ポンドを上限に追加支援が受けられます。
・減税措置 大半の世帯はなんらかの減税措置の対象となります。調べてみましょう。
・障害者手当 障害のある人を対象にした手当があります。チェックしましょう。
・住宅手当 福祉手当を受けている人や低所得で家賃や自治体税を払えない人は住宅手当の対象になる可能性があります。調べてみましょう。
・年金受給資格保護 週20時間以上の介護をしている人が介護者手当も所得支援も受けていない場合、年金の受給資格を保護する制度から漏れている可能性 があります。介護のために仕事を辞めたり減らした人には、新たな救済制度も出来ました。政府の「介護と年金」ウェブサイトを読むか、介護者手当の担当部署 に電話をしてみましょう。
7. 助成金をもらいましょう。短期のレスパイトや送迎、器具や機器の購入には自治体や介護者センターから助成金が出る場合があります。
8. 自分でサービスを選べます。自治体の介護者アセスメントを受け、介護者支援を受けられることになった場合、ダイレクト・ペイメントを選択することができます。現金支給によって、自分で好きなようにサービスをアレンジすることが可能になります。
9. ジョブセンター・プラス(公共職業安定所)の利用を。介護を担うからといって仕事をやめなければならないというものではありません。もう一度働き たい人が研修や面接を受ける場合には、その間の代替え介護の費用がジョブセンター・プラスから支給される可能性があります。政府の「介護と雇用」ウェブ・ サイトを参照してください。
10.助けを求めましょう。全国に144の介護者センターを持つThe Princess Royal Trust for Carersをはじめ、多くの組織が介護者に情報提供を行い、支援を提供しています。上記以外に自治体独自のサービスやボランティア組織もあります。若年 介護者も遠慮せず、相談してください。
注
・全文翻訳ではなく、各項目の主旨を取りまとめたものです。
・スコットランドに関する情報は省略しました。
・多くの項目に当該サイトへのリンクや担当部局の電話番号がありますが、省略しました。
「世界の介護と医療の情報を読む」53
月刊「介護保険情報」2010年11月号 p.74
特に4と5の項目については
英国の介護者支援には介護者法(Carer Act)や全国介護者戦略という法的、政治的な根拠があり
その中で介護者の発見や支援などGPにも一定の役割が課せられていたり、
要介護者とは切り離して介護者自身のニーズのアセスメントが保障されている
という日本とはかなり異なった事情があります。
英国の「介護者アセスメント」についてはこちらのエントリーに。
なお、このリンクを皮切りに「介護者支援シリーズ」として
「介護保険情報」誌に書いてきた介護者支援に関する文章を6本まとめています。
【その他、関連エントリー】
「介護者の権利章典」役を改訂しました(2008/12/12)
「大切な人が脳卒中を起こしたら介護者として心得ておきたい15の知恵」(2009/6/22)