130人の自殺を幇助したと言われる米国のDr. Death こと
Jack Kevorkian 医師が6月3日、死去。
ミシガン州デトロイトの病院で。凶年83歳。
5月20日の補遺で当時のニュースを拾っていますが、
5月19日に腎臓病が悪化して救急車で運ばれ、そのまま入院。
肺炎も起こしていたようで、その後、毎日のように容態が取りざたされていました。
私は個人的に最も興味深いのは、5月31日の補遺で拾ったように、
英国でも、膵臓がん患者で自殺幇助合法化を訴えていたGPが病院で亡くなったばかりだということ。
つまり、「死の自己決定権」アドボケイトが2人立て続けに、
その権利の行使を求めなかったのか、あるいは求められなかったのか
ともかくも普通に病院で死んだ、ということ。
Kevorkian医師の死を巡る報道の大半は
彼の死の詳細よりも、彼の半生や主張の方に
スペースを割いたものの方が圧倒的に多いようですが、
昨日の補遺でちょっと書いた私の疑問を
共有していると思われる記事も多少はあるようで、
この点は、もはや死人に口なしなのだけれど、
K医師は最後の数日間に意識があったのかどうか、あったとしたら
彼は自分の「死の自己決定権」についてはどのように感じていたのか、について
同医師の弁護士の発言がかなりブレているのは興味深い。
例えば、
‘Dr. Death’ Jack Kevorkian, advocate of assisted suicide, dies in hospital
The Guardian, June 3, 2011/06/04
Geoffrey Fieger, his lawyer and friend, said: "He was a physician who had an acute sense of compassion and a respect for the dignity of his patients."
Asked if Kevorkian would have chosen to end his life by suicide, given the opportunity, Fieger responded that he had neither the physical or mental strength to make that decision in his final days. "Jack Kevorkian didn't have an obligation or a duty to society to end his life in the manner in which some of his patients did," Fieger said. "Everyone chooses the very end for themselves."
ここでは、
最後の数日間のK医師には、自殺を選ぶ体力も精神力もなかった、と答えた後で
「彼は自分の患者と同じような死に方をしなければならない義務を社会に対して負っていたわけではない。
誰だって最期のことは自分で決めるんだ」と、ひどく防衛的。
一方、以下の記事での発言では、
No, Dr. Jack Kevorkian Did Not Commit Physician-Assisted Suicide
Perezhilton.com, June 3, 2011/06/04
I think had he been able to go home, Jack would have not allowed himself to go back to the hospital. The circumstances were such that he was so weak he could not get out of the hospital, he was primarily sleeping most of the time.
「もし退院できたら、二度と入院なんてことは許さなかっただろうと思うけど、
病状が悪くて病院を出られなかったし、たいていの時間は眠っていたからね」
しかし、以下の記事で別の弁護士が語っているところによると、
Assisted Suicide advocate Kevorkian dies at age 83
Forbes (Associated Press), June 3, 2011
An official cause of death for Kevorkian was not immediately determined, but Morganroth said it likely will be pulmonary thrombosis, a blood clot.
"I had seen him earlier and he was conscious," said Morganroth, who added that the two spoke about Kevorkian's pending release from the hospital and planned start of rehabilitation. "Then I left and he took a turn for the worst and I went back."
「(急変する前に)会った時には意識はあった」
2人で、退院がどうなるかという話をし、リハビリを始める計画を立てた。
「私が帰った後で急変したから、私は病院へ戻った」
そうかぁ……リハビリを始める話をしていたのかぁ……。
Kevorkianという人は結局のところ実像以上の役割を背負わされた“象徴”であって、
人はKevorkianという一人の生身の人間の上にそれぞれ自分の見たいものを見て、だから
“象徴”としての彼はこれからも、いろんな人に都合のいいように使いまわされていく……
そういうことなのかなぁ……。
その他、興味深い記事としては、お馴染みWesley Smithが書いている ↓
Kevorkian: A Dark Mirror on Society
By Wesley J. Smith
National Review Online, June 3, 2011
Kevorkianが自殺幇助と臓器提供を結びつけようと説いていたこと、
自分が幇助した患者の一人から腎臓を摘出し、
その腎臓の移植希望者を記者会見を開いて募ったことは
問題にされることはないままメディアが彼をもてはやしたことについて。
K医師は「社会を移す暗い鏡」だった、と。
この話については4月に当ブログでもエントリーを立てている ↓
K医師、98年に自殺幇助した障害者の腎臓を摘出し「早い者勝ちだよ」と記者会見(2011/4/1)
(今回は文字数の関係でリンクできなかったのですが、
Kevorkian医師関連エントリーの一部は上記エントリーの最後にリンクしてあります)
その他、拾ったまま ↓
Dr. Jack Kevorkian dies at 83; ‘Dr. Death’ was advocate, practitioner of physician-assisted suicide
The LA Times, June 3, 2011
Jack Kevorkian dies, but physician-assisted suicide lives on
CBS News, June 3, 2011
Jack Kevorkian dies at 83 (with photos)
The News-Herald, June 3, 2011
With photos というのは、80年代から90年代にかけてのKevorkian医師と弁護士の
自殺幇助合法化に向けた法廷闘争(?)関連写真と解説のスライド・ショー。
‘Dr. Death’ Jack Kevorkian dies at age 83
The WP, June 3, 2011
スライド・ショーの最初は、こちらも自殺装置を披露するK医師。
今日のニュースのビデオと、98年の“60 Minuets”のインタビュー・ビデオ。