米国保健省がタスキギ大学と共同で
死後の遺体からのデータ採取を目的に
黒人の梅毒患者を治療しているように見せかけて、
40年間も治療せずに病状の進行状態を経過観察していたタスキギ実験については
ナチスに次いで悪名高い人体実験となっています。
タスキギの梅毒実験(1932-1972)については、以下のエントリーに ↓
米国で行われた人体実験(2009/3/17)
またタスキギ事件については96年に詳細な調査報告書が出ています ↓
Final Report of the Tuskegee Syphilis Study Legacy Committee May 20, 1996
University of Virginia
しかし、もっと酷い人体実験を
米国は1940年代にグァテマラで行っていました。
グァテマラに派遣された米国兵士の多くが性病にかかって帰ることを心配した米国政府が
最初は性病に感染した売春婦から現地徴兵に感染させての実験を考えたものの、
直接に感染させた方が手っ取り早いことに気付き、
孤児、精神障害者、囚人、売春婦など約1500人のグァテマラ人に
梅毒や淋病などにバクテリアを注射して感染させ、
ペニシリンの効果を観察した。
米国の科学者らは、梅毒に感染させた患者の87%だけに治療を行い、
残り13%については、その後どうなったか不明。
治療を受けた被験者の1割は再発したという。
1947年には調査チームの責任者 John Cutlerが
「法がたまに片眼をつぶってくれてこそ医学の発展はある」との表現で
倫理違反を認めたにもかかわらず、米国保健省は被験者のフォローを続けた。
被験者の多くは明らかになっていないが、
Guardianは3人の被験者とその家族に取材して証言をとっている。
証言の詳細は省略しますが
孤児院でいきなり呼びつけられて暴力的に従わせられた女性の一人は
「何をしているのか説明は一切なかったし、
私にはNOという機会も与えられませんでした」
その後、彼女はメイドとして、また工場労働者として働いたが、
その間、体調不良について医師らからは「血が悪い」との説明しかなかったという。
現在、梅毒は陽性。
「私はこれまで真実を知ることなく生きてきました。 May God forgive them.」
米国の研究者がタスキギ実験について調べる過程でこの事実を知り、
去年10月に米国政府は事実を認めた。
クリントン国務長官とシベリウス保健相の連名で
「このような非難されるべき調査」が公衆保健の名のもとに行われことに
謝罪声明が出され、Obama大統領もグァテマラの大統領に電話で謝罪した。
1500人の犠牲者のうち、生き残っている人はわずかと思われるが、
感染した子どもや孫も数十人規模ではないか、と。
早急な補償が求められるが
集団訴訟が米国の裁判制度に乗ることになると何年もかかる見込み。
それでも先の女性には既に賠償金が支払われたと勘違いした
ギャングから分け前をよこせと脅しが届いているという。
なお、グァテマラ政府による調査報告書が今月中に出る予定。
Guatemala Victims of US syphilis study still haunted by the ‘devil’s experiment’
The Guardian, June 8, 2011
誰かが「無益な治療」論による弱者切り捨てが進む北米の医療を
「ポスト・ヒポクラテスの医療」と読んでいましたが、なんのことはない、
「医学の発展」を言う人にとっては、ずっと「ポスト・ヒポクラテス」だったと?
記事によると、
被験者にはタバコを上げようと言い、
施設や病院には資材・物品が見返りに提供されたというのですが、
「孤児たちを白衣の研究者に提供する見返りに
The Sisters of Charityが一体何を約束してもらったのかは
明らかになっていない」という一文が強く頭に残った。
Ashley事件を巡って抱え続けている憤りが
お腹の底で、ぐりぐり、ざわざわと蠢く。
子どもたちや弱い者たちを守るべき場所にいて、
彼らを守ることを仕事にしている人たちは、
両目も片眼をつむったりせず、
目を開け、声も手も上げて
ちゃんと守ってほしい――。
死後の遺体からのデータ採取を目的に
黒人の梅毒患者を治療しているように見せかけて、
40年間も治療せずに病状の進行状態を経過観察していたタスキギ実験については
ナチスに次いで悪名高い人体実験となっています。
タスキギの梅毒実験(1932-1972)については、以下のエントリーに ↓
米国で行われた人体実験(2009/3/17)
またタスキギ事件については96年に詳細な調査報告書が出ています ↓
Final Report of the Tuskegee Syphilis Study Legacy Committee May 20, 1996
University of Virginia
しかし、もっと酷い人体実験を
米国は1940年代にグァテマラで行っていました。
グァテマラに派遣された米国兵士の多くが性病にかかって帰ることを心配した米国政府が
最初は性病に感染した売春婦から現地徴兵に感染させての実験を考えたものの、
直接に感染させた方が手っ取り早いことに気付き、
孤児、精神障害者、囚人、売春婦など約1500人のグァテマラ人に
梅毒や淋病などにバクテリアを注射して感染させ、
ペニシリンの効果を観察した。
米国の科学者らは、梅毒に感染させた患者の87%だけに治療を行い、
残り13%については、その後どうなったか不明。
治療を受けた被験者の1割は再発したという。
1947年には調査チームの責任者 John Cutlerが
「法がたまに片眼をつぶってくれてこそ医学の発展はある」との表現で
倫理違反を認めたにもかかわらず、米国保健省は被験者のフォローを続けた。
被験者の多くは明らかになっていないが、
Guardianは3人の被験者とその家族に取材して証言をとっている。
証言の詳細は省略しますが
孤児院でいきなり呼びつけられて暴力的に従わせられた女性の一人は
「何をしているのか説明は一切なかったし、
私にはNOという機会も与えられませんでした」
その後、彼女はメイドとして、また工場労働者として働いたが、
その間、体調不良について医師らからは「血が悪い」との説明しかなかったという。
現在、梅毒は陽性。
「私はこれまで真実を知ることなく生きてきました。 May God forgive them.」
米国の研究者がタスキギ実験について調べる過程でこの事実を知り、
去年10月に米国政府は事実を認めた。
クリントン国務長官とシベリウス保健相の連名で
「このような非難されるべき調査」が公衆保健の名のもとに行われことに
謝罪声明が出され、Obama大統領もグァテマラの大統領に電話で謝罪した。
1500人の犠牲者のうち、生き残っている人はわずかと思われるが、
感染した子どもや孫も数十人規模ではないか、と。
早急な補償が求められるが
集団訴訟が米国の裁判制度に乗ることになると何年もかかる見込み。
それでも先の女性には既に賠償金が支払われたと勘違いした
ギャングから分け前をよこせと脅しが届いているという。
なお、グァテマラ政府による調査報告書が今月中に出る予定。
Guatemala Victims of US syphilis study still haunted by the ‘devil’s experiment’
The Guardian, June 8, 2011
誰かが「無益な治療」論による弱者切り捨てが進む北米の医療を
「ポスト・ヒポクラテスの医療」と読んでいましたが、なんのことはない、
「医学の発展」を言う人にとっては、ずっと「ポスト・ヒポクラテス」だったと?
記事によると、
被験者にはタバコを上げようと言い、
施設や病院には資材・物品が見返りに提供されたというのですが、
「孤児たちを白衣の研究者に提供する見返りに
The Sisters of Charityが一体何を約束してもらったのかは
明らかになっていない」という一文が強く頭に残った。
Ashley事件を巡って抱え続けている憤りが
お腹の底で、ぐりぐり、ざわざわと蠢く。
子どもたちや弱い者たちを守るべき場所にいて、
彼らを守ることを仕事にしている人たちは、
両目も片眼をつむったりせず、
目を開け、声も手も上げて
ちゃんと守ってほしい――。
2011.06.09 / Top↑
| Home |