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昨日14日のエントリーで紹介したCBSの記事を意識してのことなのか、
それともこうした批判は前々から出るところでは出ていたのか、

Guardianのグローバル・ヘルス・ブログが
すばやい反応を見せています。

Guardianと言えば、去年9月に
ゲイツ財団とのパートナーシップ(すなわち資金提供)により
Global Developmentという新たなセクションが設けられており、
(詳細は文末リンクの「ゲイツ財団のメディア・コントロール」のエントリーに)

タイトルからして、このブログはそのセクションに属するものと思われますから
この記事も、そのままゲイツ財団からの反論に等しいものと見てもよいのでは?

それだけに、その口調がなんともタカビーなことに、ふむ……と。

なにしろリード部分から、いきなり
「ロンドンのGAVIへの資金集めカンファが大勝利だったからといって、
資金を提供した人たちが自分はもう貢献したぞとばかりに
自分の財布の上に胡坐をかいていることなど許されてはならない(must not be allowed)。

グローバル・ヘルスの他の領域では
今なお資金が大幅に不足しているのだから」

要するに、この記事の言いたいことはタイトルそのもので
「これでみんながワクチンを打てる。それなら今度は
エイズ治療薬をもっと……てのはどう?」

先週、国連で開かれたエイズ撲滅のための全体会議で
2015年までに1500万人のHIV感染者に治療を受けさせるとの
目標が掲げられたことなどに触れ、

「エイズのない世界はその気にさえなれば可能なのだ。
ゲイツ財団が多額の資金をつぎ込んでいるワクチンがなくとも、
治療法がなくたって、感染拡大は止められる。
予防と生活習慣の改善、教育と、そして薬がもっとあれば可能だ。
……(中略)……
そのために今、必要なのは何か? カネだ。
それが身も蓋もない真実なのである」

ふむ……。そうなのですよ。問題はカネなのですよ。
ワクチンそのものよりも、途上国の子どもたちよりも、実は。

だから、この記事の著者は
「仮に、いくらかの懸念があるとしても……(略)……
それによって13日のカンファでの430億ドル達成の勝利感を曇らせてはならない」と。

で、この「懸念」や「心配」について書かれた、
例のCBS記事を意識しているんだろうなと思われる、このあたりの文章から、
それらの懸念についてのゲイツ財団やGAVIの方々の考えや姿勢が伺えたりする。

そこの部分で挙げられていることを原文忠実に書いてみると、

・最も貧しい子どもたちや最も必要度の高い子どもたちがいて
医療制度が機能せずワクチン接種プログラムがない国々には
GAVIはワクチンを届けることができないと思われる……としても
(「可能性」possibilityではなく「蓋然性」likelihood)

・インドのジェネリック企業に比べると効率的ではあるけれど、
(それらの企業のワクチンの値段を考えると)あまりにも多くのカネが
多国籍製薬企業に落ちていく……との懸念はあるにせよ

・しかし一方で、グラクソ・スミス・クラインがロタ・ウイルス・ワクチンを大幅に値下げし、
メルクもHPVワクチンの値下げを発表したことで、うまくいけば値下げのトレンドが出てくるだろう。




これ、どう考えても、CBS記事に対するゲイツ財団からの反論……というか
内容としては反論できていないので、まぁ抗弁というくらいのものと、
私には読めるのだけど、

それにしても、これって厚顔……? と感じてしまうのは、

この最初のところって、
「医療制度が崩壊した国に届けても実際には子どもたちに接種されない」という批判を否定せず、
「まぁ、そうなるでしょうね」と、しゃらりと認めているわけですよね。

世界中から400億ドルも集めておいて――。

そして、「なんでビッグ・ファーマを儲けさせているんだ?」という批判に対しては
「だってインドのジェネリック企業では、さくさく仕事が進まないじゃん?」と言い訳し、
「それに、ビッグ・ファーマだって値下げの努力は見せているわけだから、さ」と
ここでは問題のすり替え。

カンファの直前にビッグ・ファーマから値下げの発表が相次いだのは、
なるほど、こういう批判を意識して、かわすためのシナリオだったというわけなのですね。

それともう1つ興味深いのは、
ふむ、途上国にはメルク社のHPVワクチンを持っていくわけかぁ……。

先進国ではあまりに強引な売り込みの手口が嫌われ、
副作用も問題視されてライバル社に負けたものだから、
先進国で失ったマーケットを途上国で……?
(ちなみに、ゲイツ財団はメルク社の株主さん)

そういうことを考えながら読み返してみると、
このGuardianのグローバル・ヘルス・ブログの記事は、もしかしたら
早くも「ワクチンの10年」の次は「エイズの10年」だよって、
さりげなく指差してメッセージを送る意図で書かれたものなのか……?

この記事のタイトルにあるように、
今回ロンドンで約束された400億ドルで
世界中の子どもたちにワクチンを届ける十分なカネができた以上、
「途上国の子どもにワクチンを」のメッセージの集金力は game over なわけですね。

かくして
ビッグ・ファーマがワクチンを売りさばくための資金だけはめでたく集まったのだから
それらのワクチンが医療制度の崩壊した途上国で盗まれようが倉庫で眠って終わろうが、
株主さんにとっては実はどうでもいいことなのだろうし。
(じゃぁ、どこが「子どもたちの命を救うために」なの?)

「途上国にワクチンを」で形成されるマーケットはこれで安泰。
後は、そのマーケット自体が消費し尽くされるのを待つばかり。

で、次は「世界中のエイズを撲滅しよう」が次なるマーケットの旗印だと
もしやゲイツ財団は示唆しているのか……?

こうして、ゲイツ財団の差配によって
「次のマーケット」が決まり、形成され、
そこに世界中のカネ持ちや各国政府からカネが集められ、
そんなふうに次々にマーケットそのものが消費されていく……ということ?

この記事の最後のセンテンスが、これまた実に象徴的で、えぐい。

「我々に今、必要なことは、ビル・ゲイツがその恐るべき才能と努力と熱意とによって、
資金提供者らの財布のひもをワクチン以外の領域に向けても緩めさせることだ。

資金を提供する各国政府が『もうお終いgame over』と言うことは
許されてはならない(must not be allowed)」

All shall have vaccines – and now how about some more Aaids drugs too?
Sarah Boseley’s Global Health Blog,
Guardian, June 15, 2011


たとえ、一国の政府であっても
ゲイツ慈善グローバル金融ネオリベ資本主義帝国では
帝王の望みに反する行動をとることは「許されてはならない」――。



【関連エントリー】
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)
やっと出た、ワクチンに世界中からかき集められる資金への疑問の声(2011/6/16)

その他「ゲイツ財団」の書庫に多数。
2011.06.17 / Top↑
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