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家族に断りもなく病院が勝手にDNR(蘇生無用)指定にしていたといえば、
カナダのAnnie Farlow事件(2005年に死亡。訴訟は2009年)が思いだされますが、

以下の記事によると、英国では
病院側がDNR指定をするさいに家族への通知は無用とされているとのこと。


今年1月にSunderland Royal Hospitalで
肺炎で亡くなったのは28歳の脳性まひ男性、Carl Winspearさん。

両親が、病院側の対応を不服として地元の国会議員に訴え、
議員が病院幹部に手紙を書いた。

病院の広報官によると、
1月2日、3日にカールさんを担当した医師が
3日の3時に心肺蘇生無用(DNACPR)指定を行ったことを確認。

その判断理由は
心肺停止が起こったとしても、蘇生は成功しないと思われ、
CPRは患者に害をもたらす可能性のある措置で、
近親者が望まない形の死に終る可能性もあるため、
蘇生は患者の最善の利益にならないと判断した、というもの。

DNR指定の際に医療職には家族への通知は求められていないが
カールさんのDNR指定の際、カルテには
「明朝、家族と話し合うこと」と書かれている。

「この話し合いは実際に行われ、
それによってDNACPR指定は取り消されたので
カルテにそのように記録されました」と病院広報官。


ただし、家族が問題にしているのはDNR指定そのものではない。
その点は「蘇生しても無理な状態だったからだと理解している」。

問題にしているのは、
いかに夜中とはいえ重要なことなのに家族に知らせなかったことであり、

母親は「カールは自分で意思表示ができない子なので、
28年間ずっと私が本人に代わって意思決定してきました。
あの晩、その決定が私から奪われたのです」と

親の代理決定権が尊重されなかったことを問題にし、
DNR指定の際には家族に知らせるよう法律を変えるべきだ、と訴えている。

Family wants law changed after Sunderland man’s death
Sunderland Echo, August 3, 2011


いくつか釈然としないのは、

午前3時にDNR指定にしたため
家族を起こすのに忍びなくて翌朝知らせたというけど、

朝までの間に蘇生が必要となるような急変が予想される事態なら
当然、家族には連絡が行くんじゃないかと思うので、午前3時の段階で
カールさんがそれほど切迫した状態だったとは思えない。

① それなら、なにも午前3時に指定しなくても、
翌朝まで待って、家族と話し合ったうえで指定したってよかったのでは?

② それほど切迫した状態でなかったとしたら、
なぜ「心肺停止になっても蘇生は成功しない」と判断できるのだろう?

③ 肺炎で全く同じ身体状態にある、障害のない患者であれば
DNR指定にはならなかった……という可能性は?


英国の無益な治療事件といえば、2009年のBaby RB事件があります。↓
QOL低すぎると障害乳児の生命維持停止求め「無益な治療」訴訟(英)(2009/11/6)


なお、最近どこかで
「英国では医療職が無益と考える治療は行う義務はないとする法律がある」と
読んだ記憶があって、これは要確認情報だと思いつつ、まだ手がついていませんが、

この記事の、
DNR指定を家族に通知することは求められていない、との記述と合致します。

たぶん、いま少しずつ読んでいる Quelletteの著書ではなかったかと思うのですが、
またいずれ確認できたら、改めて。
2011.08.04 / Top↑
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