英国で2人の共に50代の女性の栄養と水分の中止が問題になっている。
片方の女性は54歳で2009年に倒れて以来、永続的植物状態にある。
NHSトラストが中止を要求、家族も支持している。
植物状態の患者の水分と栄養の停止を本人の最善の利益と認めた
1993年のTony Bland判決基準に基づき、既にロンドンの保護裁判所が中止を認めた。
これにより、この女性は
英国で裁判所の決定を受けて栄養と水分の停止により死ぬ44番目の人となる。
もう一人の女性Mさんは最少意識状態(MCS)で、
裁判所は決定を9月まで先伸ばし。
この決定が万が一にも、Mさんの栄養と水分の停止を認めるものであった場合には
Bland判決をさらに推し進めるものとなると、この記事は警告している。
また、
栄養と水分の供給を医療であるとする点、
殺すことが本人の最善の利益とする点、
永続的植物状態の人への栄養と水分は「無益」とする点の
3点について、この記事はBland判決そのものが誤りであると主張する。
Bland判決は2005年にMCAができてからはMCAの基準とされているが、
04年から05年にかけてのMCA起草時には
安楽死ロビー(現在のDignity in Dying)が関与し、
その文言にも大きな影響を及ぼしており、
栄養と水分は医療だとか、死ぬことが「無益ないのち」を避け
「最善の利益」になるといった考え方は彼らがMCAに盛り込んだものだ、とも。
もう1つこの記事で興味深いこととして、
これまた、よく耳にするHelga Kuhseの1984年9月の
フランスでの死ぬ権利世界連盟の第5回会議での発言が引用されており、
要するに、
栄養と水分の停止による餓死だと患者は苦しむから
その苦しみを患者に与えないためには、
栄養と水分の停止という消極的な安楽死ではなく
むしろ積極的な安楽死の方が患者の最善の利益にかなう、という話になる、と。
この記事が最も懸念しているのも、
1980年代当時ほどにはあからさまに語られることはないが
栄養と水分の無益な治療としての停止が慣行化していくことは
将来の強制的安楽死への布石だ、と。
で、Bland判決基準を覆すこと、MCAの改定を求めている。
TWO WOMEN IN THEIR 50S WITH SERIOUS BAIN DAMAGE WHOSE RELATIVES WANT THEM DEAD. ONE JUDGE HAS SAID ‘YES’ BUT THE OTHER IS STILL THINKING
National Right to Life News Today, August 2, 2011
まず書いておきたいこととして、
このサイトが懸念している「消極的安楽死は苦しいから
積極的安楽死の方が本人利益」という理屈は
既に、あのサヴレスキュの「臓器提供安楽死」で
その正当化の論拠の1つに用いられている。
(それは消極的安楽死での緩和ケアの問題なので全然正当化になっていないし、
こんな理屈をこねまわすサヴレスキュはアタマが悪いか
読者をナメているかのどっちかだと私は思うけど)
なお、Tony Blandは、
1989年に起きた英国のサッカー史上最大の事故と言われる
ヒルズボロの悲劇の犠牲者の一人。当時18歳。
植物状態となり、医師らと親の訴えを受けて、
裁判所が栄養と水分の中止を本人の最善の利益と認めた。
1993年3月3日に22歳で死去。
Tony BlandのWikipediaはこちら。
Wikipediaはかなり詳細なので、後半は読んでいません。
改めて気合を入れて読みたいと思いますが、今の段階では
Bland判決というのは、だいたい米国のクルーザン判決に当たるものか、と
そんな程度のなんとも雑駁な理解で。
ただ、Bland判決の3基準というのは
この記事で漠然とは分かる気がするものの
それでもやはり裁判所の判断を仰ぐ必要はあると書かれている点が、
昨日のエントリーで触れた
「英国では医療職が無益と考える治療を提供する義務はない」という話と
どう結びついているのか、というのが大きな疑問。
けど、疑問が大きすぎて、すぐにどうにかしようという気になれないし
私は別に学者でも研究者でもないし、面倒なので、
Wikipediaをちゃんと読みこめば、その辺りのことも書かれているような気はするのだけど、
どうしても知りたくなる時まで、疑問のまま放っておくことにする。
片方の女性は54歳で2009年に倒れて以来、永続的植物状態にある。
NHSトラストが中止を要求、家族も支持している。
植物状態の患者の水分と栄養の停止を本人の最善の利益と認めた
1993年のTony Bland判決基準に基づき、既にロンドンの保護裁判所が中止を認めた。
これにより、この女性は
英国で裁判所の決定を受けて栄養と水分の停止により死ぬ44番目の人となる。
もう一人の女性Mさんは最少意識状態(MCS)で、
裁判所は決定を9月まで先伸ばし。
この決定が万が一にも、Mさんの栄養と水分の停止を認めるものであった場合には
Bland判決をさらに推し進めるものとなると、この記事は警告している。
また、
栄養と水分の供給を医療であるとする点、
殺すことが本人の最善の利益とする点、
永続的植物状態の人への栄養と水分は「無益」とする点の
3点について、この記事はBland判決そのものが誤りであると主張する。
Bland判決は2005年にMCAができてからはMCAの基準とされているが、
04年から05年にかけてのMCA起草時には
安楽死ロビー(現在のDignity in Dying)が関与し、
その文言にも大きな影響を及ぼしており、
栄養と水分は医療だとか、死ぬことが「無益ないのち」を避け
「最善の利益」になるといった考え方は彼らがMCAに盛り込んだものだ、とも。
もう1つこの記事で興味深いこととして、
これまた、よく耳にするHelga Kuhseの1984年9月の
フランスでの死ぬ権利世界連盟の第5回会議での発言が引用されており、
If we can get people to accept the removal of all treatment and care – especially the removal of food and fluids – they will see what a painful way this is to die, and then, in the patient’s best interests, they will accept the lethal injection.’
要するに、
栄養と水分の停止による餓死だと患者は苦しむから
その苦しみを患者に与えないためには、
栄養と水分の停止という消極的な安楽死ではなく
むしろ積極的な安楽死の方が患者の最善の利益にかなう、という話になる、と。
この記事が最も懸念しているのも、
1980年代当時ほどにはあからさまに語られることはないが
栄養と水分の無益な治療としての停止が慣行化していくことは
将来の強制的安楽死への布石だ、と。
で、Bland判決基準を覆すこと、MCAの改定を求めている。
TWO WOMEN IN THEIR 50S WITH SERIOUS BAIN DAMAGE WHOSE RELATIVES WANT THEM DEAD. ONE JUDGE HAS SAID ‘YES’ BUT THE OTHER IS STILL THINKING
National Right to Life News Today, August 2, 2011
まず書いておきたいこととして、
このサイトが懸念している「消極的安楽死は苦しいから
積極的安楽死の方が本人利益」という理屈は
既に、あのサヴレスキュの「臓器提供安楽死」で
その正当化の論拠の1つに用いられている。
(それは消極的安楽死での緩和ケアの問題なので全然正当化になっていないし、
こんな理屈をこねまわすサヴレスキュはアタマが悪いか
読者をナメているかのどっちかだと私は思うけど)
なお、Tony Blandは、
1989年に起きた英国のサッカー史上最大の事故と言われる
ヒルズボロの悲劇の犠牲者の一人。当時18歳。
植物状態となり、医師らと親の訴えを受けて、
裁判所が栄養と水分の中止を本人の最善の利益と認めた。
1993年3月3日に22歳で死去。
Tony BlandのWikipediaはこちら。
Wikipediaはかなり詳細なので、後半は読んでいません。
改めて気合を入れて読みたいと思いますが、今の段階では
Bland判決というのは、だいたい米国のクルーザン判決に当たるものか、と
そんな程度のなんとも雑駁な理解で。
ただ、Bland判決の3基準というのは
この記事で漠然とは分かる気がするものの
それでもやはり裁判所の判断を仰ぐ必要はあると書かれている点が、
昨日のエントリーで触れた
「英国では医療職が無益と考える治療を提供する義務はない」という話と
どう結びついているのか、というのが大きな疑問。
けど、疑問が大きすぎて、すぐにどうにかしようという気になれないし
私は別に学者でも研究者でもないし、面倒なので、
Wikipediaをちゃんと読みこめば、その辺りのことも書かれているような気はするのだけど、
どうしても知りたくなる時まで、疑問のまま放っておくことにする。
2011.08.04 / Top↑
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