固形臓器の移植を受けた人の発がんリスクについて
標題のような衝撃的な調査結果がJAMAの11月号で報告されている。
その論文によると、
肝臓、心臓、肺、腎臓などの固形臓器の移植を受けた人は
ガン全般にかかるリスクが通常の2倍。
また、移植を受けた人では
複数の異なったタイプのガンにかかるリスクも高まる、とも。
論文によると、
2010年に米国で行われた臓器移植の総数は28664件で、
腎臓移植が16899件、
肝臓移植が6291件、
心臓移植が2333件、
胚移植が1770件。
レシピエントで発がんリスクが上がる原因は
免疫抑制と発がんウイルス感染で、
レシピエントの発がんリスクを解明し、
免疫系や感染などなどについて明らかにすることによって
移植医療の安全性を高める方法の解明に繋げることができる、と。
具体的なデータについては、面倒なので以下に抜きます。
By evaluating data of 175,732 transplants (39.7% of the U.S. total during 1987-2008), the researchers established that 60.9%, i.e. the majority of recipients were male and the average transplant age was 47 years, with the most commonly organs transplanted being liver (21.6%), kidney (58.4%), lung (4.0%) and heart (10.0%). During follow up, 10,656 transplant recipients were diagnosed with a malignancy, with evaluations revealing an overall doubling of cancer risk compared with that of the general public.
They discovered that recipients of transplants had an increased risk for 32 different types of malignant cancer, some related to known infections (e.g. Kaposi sarcoma and anal cancer), and others not related to infection (e.g. thyroid cancer, lip cancer and melanoma).
In addition they found that the most prevalent cancers with increased risk were non-Hodgkin lymphoma (1,504), liver cancer (930), Kidney cancer (752) and lung cancer (1,344), which collectively made up 43% of all cancer cases in individuals who had received a transplant in comparison with 21% in the U.S. general population.
臓器の種類を問わず、レシピエントでは非ホジキンリンパ腫のリスクが上がる。
肺がんのリスクが最も高いのは肺の移植を受けた人だが、
肺がんリスクは肝臓、心臓、腎臓のレシピエントにもある。
肝臓がんのリスクが上がるのは肝臓移植を受けた人のみ。
腎臓がんリスクが最も大きいのは腎臓移植を受けた人だけれど、
心臓と肝臓の移植を受けた人でも腎臓がんリスクは上がる。
これらは、発がんウイルス感染だけでは説明ができないので
免疫不全や炎症、元々の病気や薬物の毒性(medication toxicity)など
臓器移植を受けた患者での発がんのメカニズムについて研究を進めて、
移植患者のがんの予防と早期発見、長期の延命に結び付ける必要がある、と結論。
(「長期の延命」と訳した個所、原文は improvement in long-term survival )
著者らは、
移植患者のがんについては、これまで腎臓レシピエントに関心が集中していたが、
様々な臓器の移植患者についても広く研究を呼び掛けている。
Organ Transplant Recipients Have Higher Risk Of Some Cancers
MNT, November 2, 2011
なお、JAMAの当該論文のアブストラクトはこちら ↓
http://jama.ama-assn.org/content/306/17/1891.short