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3月にオランダで認知症の女性に積極的安楽死が行われていたことについては
日本語でも報道されており、ここ数日、話題になっている。

認知症進んだ患者で初の安楽死、オランダ
AFP, 2011年11月10日

英語記事では
http://www.dailymail.co.uk/news/article-2059444/Senile-64-year-old-Dutch-woman-euthanised-longer-able-express-wish-die.html
http://www.nationalrighttolifenews.org/news/2011/11/does-dutch-euthanasia-for-patients-with-dementia-expose-a-threat-to-u-s-patients/
http://medicalfutility.blogspot.com/2011/11/physician-may-honor-advance-decision.html

その他、BioEdgeもこの問題を取り上げている ↓

Informed consent in Netherlands:euthanasia
BioEdge, November 12, 2011


これらにざっと目を通してみたところでは、
女性は64歳で、ナーシング・ホームで暮らしていたらしい。
名前は明らかになっていない。

女性は意識がはっきりしている時に
自立した生活が出来なくなったり自分の子どもが認識できなくなったら
それは自分にとっては悪夢だから、安楽死させてほしいと
事前指示書を書いていた、という。

Mailによると、オランダでは今年だけでも、
認知症初期の患者21人が致死薬の注射を受けて安楽死したという報告書もあるが
認知症が進行した人の安楽死はこのケースが初めて。

上記の日本語のAFP記事では
この女性のケースについて所定の委員会の判断があったかどうかは不明とされているが、
これら英語記事によると、オランダでも例外的なケースであるため、
当該地域の5つの安楽死検討委員会が調査し、全5委員会とも
医師の行動を適切だと承認したという。

医師は患者と何度も会話をして、
どういう事態になったら耐え難い苦痛だと本人が考えていたかを
ちゃんと理解していたと判断されたもの。

しかし、安楽死当時には患者自身が意思表示することが出来なかったため、当初は
安楽死の要望が自発的なもので熟慮されたものか確信が持てないとして
安楽死に同意するのを拒んだ医師もいたとのこと。
(法律は2人の医師の同意を求めている)

Mailの記事によると、
オランダ国民の95%が安楽死法を支持している一方で、
認知症患者の安楽死を支持する医師は33%に過ぎないとの調査も。

BioEdgeによると、
オランダ医師会(KNMG)は今年、所信表明を出して
「安楽死法が認知症患者と精神障害者にも適用されることは明らか」と宣言したばかり。


しかし、
たぶん日本語ではまともに報道されることはなさそうだけれど
オランダからは、たいそう興味深いニュースがもう一つある。

Informed consent in Netherlands: circumcision
BioEdge, November 12, 2011

KNMGが男児の包皮切除に関し、
ユダヤ教やイスラム教など親の宗教を問わず、
オランダの医師は男児の包皮切除は行わないよう親を説得せよ、と
強い姿勢を打ち出したという。

その理由とは基本的には
「子どもはインフォームドコンセント出せないからダメ」というもので、

BioEdgeの引用によると、
「未成年の治療は病気や異常がある時、または
ワクチンなど、その医療介入が子どもの利益になることが説得力をもって示された場合のみ。
男児への非治療的包皮切除は子どもの自己決定権と身体の統合性の権利に反する」

KNMGの医療倫理学者は
「包皮切除は医学的に不必要な外科手術だとわれわれは感じています。
患者は同意しなければならないが、子どもは同意できません。
それは子どもの権利の侵害であり、間違っていると感じるのです。
医療倫理綱領に、医師は患者に害を為してはならないと書かれています。
包皮切除はまさに害を為す行為です」

イスラム教徒、ユダヤ教徒からは
宗教差別、移民締め出し策だと反発が出ているようだけれど、

それはそれとして
BioEdgeの編集長Michael CookがICの観点から
非常に興味深いエントリーを書いている。

The murky waters of informed conset
BioEdge, November 12, 2011


私も「害を為してはならない」のくだりで同じことを感じたのだけれど、

未成年はICを出せないから包皮切除は非倫理的だと言うなら
IC出せない新生児を殺すことを認めるグローニンゲン・プロトコルが
一体どうして倫理的だと言えるのか、

また3月にICを出せなかった認知症患者の安楽死が
なぜ事前指示書を根拠に問題なしと承認されるのか、

ではICの意味とは一体なんなのだ、と。


グローニンゲン・プロトコルについては以下に ↓
今なお聞こえる優生思想のこだま(2007/12/2)

包皮切除をめぐる論争では
それまでは慎重派だったAshley事件の担当医Diekema医師が
去年からしきりに「病気予防のエビデンスある」と旗を振っているので 、あれこれと拾っていて  ↓
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
2011年5月20日の補遺

オランダの安楽死法関連は「尊厳死」の書庫にエントリー多数ありますが、例えば ↓
オランダで「70歳以上の高齢者には自殺幇助を」と学者・政治家ら(2010/2/10)
オランダで安楽死が増加し保健相が調査。緩和ケアの崩壊も(2010/6/21)
幇助自殺者が毎年1割ずつ増えるオランダで「安楽死クリニック」求める声(2010/8/12)
2011.11.13 / Top↑
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