中国でウイグル人など政治犯を殺したり生きたまま臓器を摘出する慣行が
90年代からあり、中国政府のイスラム教徒や政治犯の粛清策と噛み合って
システム化されている、との調査報道記事。
通常は自分と家族の身の安全を考えてしゃべる人が少ないが
ヨーロッパに亡命したり移住した医師や元警察官など
2年に渡って直接関与した人にインタビューを行い、
それら目撃証言を構成したもの。
背景には、ウイグル自治区への中国の弾圧と資源搾取の歴史があることも指摘されている。
当初はウイグルのナショナリストをCIAの手先呼ばわりしていたのが
9・11以降はアルカイダのテロリストという話に変わり、
中国の経済成長に伴って米国もそれに乗っかっていることなど。
北京オリンピックの前に日本でも報道されたことは印象にあったけれど、
今回この記事で日本での報道がずいぶん偏ったものだったらしいと気付いた。
私はほとんど何も知らないので、ちょっと検索してみたところ、
とりあえず、この記事とコメントやこちらの記事など。
で、本題の政治犯からの臓器摘出システムに関する証言内容を簡単にまとめると、
① あるウイグル人の匿名医師の証言。1991年。
広州の処刑場。建物前に何台もの簡易手術室バンが集結。
その日は36人の処刑で、都合72個の腎臓と角膜を採取の予定とのことだった。
それぞれのバンに待機した外科医が15分から30分で摘出し、
病院に持ち帰って6時間以内に移植する。
銃声が聞こえた直後、バンの後ろ扉が開き、白衣の職員2人によって
まだけいれんしている男性が運び込まれてくる。その人は漢族だった。
予想通り右胸を撃たれている。
3人目には、首にひもで絞めた跡があった。
裁判の時にはモノが言えないように首を絞めて出廷させるという。
政治犯だからしゃべらせたくなかったのでは、と医師は考えた。
② ウイグル人の元警察官で、新人時代に公安部局に勤務。1994年。
政治犯への拷問、処刑、レイプを多数目撃した。
処刑に派遣された同僚から聞いた話として、
役に立たない遺体は穴に棄てられるが、使える遺体は摘出用のバンに運び込む。
バンの中から生きたまま摘出されていると思われるすさまじい絶叫を聞いた、と。
数カ月後、彼自身が死刑囚の連行の役割に。
囚人に「なんで注射したんですか」と問われ、
とっさに「銃殺の苦痛を和らげるため」と答えたが
あとで医師に聞いたら抗凝固剤だとのこと。
医師は「できれば異動させてもらえ。ここの職員はみんな地獄に落ちるぞ」と。
③ 病院の外科医。1995年。
上司から、現場での手術を経験させてやると言われ、
詳しいことは聞くなと釘を刺された上で外科手術用のチームを段取り。
バンで指示された場所に出かける。
そこには20体ほどの遺体が並べられており、
「これです。手術するのはこの人」と指示された遺体を見て、
「まさか。この人はもう死んでいますよ」と確認しつつ抗議した瞬間、
首の動脈に拍動を感じた。「いや、この人は死んでない」と訂正すると
「それなら手術して。肝臓と腎臓をとって。早く。ほら早く!」と。
バンの中で通常の手順通りにやろうとすると主任外科医から
「麻酔はなし」「生命維持もなし」と怒鳴られた。
「どうせ意識はないんだから切っても痛みはないんだ」。
しかしメスを入れた瞬間、男性は大きくのけぞって暴れた。
血管をクランプする手間も惜しんで摘出すると、
引き取りに来ている家族のために一番外の腹壁だけを縫合。
自分は殺人者だと感じて、遺体の顔を見ることができなかったという。
翌日、主任外科医に呼ばれ「昨日は何もない平穏な一日だったな」と念押しされた。
処刑前になると、平服の職員が死刑囚を説得して
臓器を国に提供するとの書類にサインさせていたという。
豪華な最後の食事が提供され、抗凝固剤が打たれた。
④ ウイグル自治区のグルジャで起きた97年の中国による大規模弾圧の直後に
グルジャの病院で働いていた看護師。
抗議デモに参加したウイグル人の負傷者の治療をすることは禁じられ、
腕に包帯を巻いただけで15年の禁固刑を受けた医師もいた。
病院内スタッフにも中国人とウイグル人の分断が起きた。
ウイグル人夫婦に子どもが生まれると抗生剤と偽って薬殺していた。
抗議行動で逮捕され暴行を受けて腎臓に損傷を負った青年の家族は
息子の釈放に多額の金銭を払い、さらに移植用腎臓に約4700ドルかかると言われた。
その代わり同い年のウイグル人男性の腎臓をやると言われたが、
それは抗議行動をしていたウイグル人男性のものだった。
⑤ ウイグル人の当時新米医師。ウイグルの病院にて。1997年。
上司から政府の高級官僚が5人、内臓疾患で入院すると聞かされ、
同地区の刑務所の政治犯棟へ行き、採血して血液型一覧を作成するよう命じられる。
その時にはワケが分からなかったが、同じウイグル人なので
採決の意図を疑われないためだったのでは、と今は振り返って推測する。
彼が作った血液型一覧から血液型が一致する囚人を選んで
さらに臓器の適合をチェック。合致した囚人は右胸を撃って殺し、5人の官僚に移植。
数カ月後に同じ指示が出た時に、
政治犯から臓器摘出をするのはいつものことで、
儲けが大きな輸出として伸びていると聞かされる。
主導しているのは軍の病院だとも。
この記事の著者は北京オリンピック前の法論功弾圧で
300万人の法論功学習者が矯正施設へ送られ、
ざっと65000人のウイグル人の臓器が
心臓がまだ打っている状態で摘出されたと推測している。
著者からインタビューを受けた一人は、
英国下院が主催した中国の人権問題セミナーで手を上げ、
自身が殺人に関与したことを告白したが、
英国政治家の誰もそれをとりあげなかったという。
……in a world eager not to offend China, no state wants his confession.
世界中が中国に迎合する時代、彼の告白など、どの国にとっても迷惑でしかない。
The Xinjiang Procedure
Beijing’s ‘New Frontier’ is ground zero for the organ harvesting of political prisoners.
Ethan Gutmann,
The weekly Standard, December 5, 2011
【関連エントリー】
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
90年代からあり、中国政府のイスラム教徒や政治犯の粛清策と噛み合って
システム化されている、との調査報道記事。
通常は自分と家族の身の安全を考えてしゃべる人が少ないが
ヨーロッパに亡命したり移住した医師や元警察官など
2年に渡って直接関与した人にインタビューを行い、
それら目撃証言を構成したもの。
背景には、ウイグル自治区への中国の弾圧と資源搾取の歴史があることも指摘されている。
当初はウイグルのナショナリストをCIAの手先呼ばわりしていたのが
9・11以降はアルカイダのテロリストという話に変わり、
中国の経済成長に伴って米国もそれに乗っかっていることなど。
北京オリンピックの前に日本でも報道されたことは印象にあったけれど、
今回この記事で日本での報道がずいぶん偏ったものだったらしいと気付いた。
私はほとんど何も知らないので、ちょっと検索してみたところ、
とりあえず、この記事とコメントやこちらの記事など。
で、本題の政治犯からの臓器摘出システムに関する証言内容を簡単にまとめると、
① あるウイグル人の匿名医師の証言。1991年。
広州の処刑場。建物前に何台もの簡易手術室バンが集結。
その日は36人の処刑で、都合72個の腎臓と角膜を採取の予定とのことだった。
それぞれのバンに待機した外科医が15分から30分で摘出し、
病院に持ち帰って6時間以内に移植する。
銃声が聞こえた直後、バンの後ろ扉が開き、白衣の職員2人によって
まだけいれんしている男性が運び込まれてくる。その人は漢族だった。
予想通り右胸を撃たれている。
3人目には、首にひもで絞めた跡があった。
裁判の時にはモノが言えないように首を絞めて出廷させるという。
政治犯だからしゃべらせたくなかったのでは、と医師は考えた。
② ウイグル人の元警察官で、新人時代に公安部局に勤務。1994年。
政治犯への拷問、処刑、レイプを多数目撃した。
処刑に派遣された同僚から聞いた話として、
役に立たない遺体は穴に棄てられるが、使える遺体は摘出用のバンに運び込む。
バンの中から生きたまま摘出されていると思われるすさまじい絶叫を聞いた、と。
数カ月後、彼自身が死刑囚の連行の役割に。
囚人に「なんで注射したんですか」と問われ、
とっさに「銃殺の苦痛を和らげるため」と答えたが
あとで医師に聞いたら抗凝固剤だとのこと。
医師は「できれば異動させてもらえ。ここの職員はみんな地獄に落ちるぞ」と。
③ 病院の外科医。1995年。
上司から、現場での手術を経験させてやると言われ、
詳しいことは聞くなと釘を刺された上で外科手術用のチームを段取り。
バンで指示された場所に出かける。
そこには20体ほどの遺体が並べられており、
「これです。手術するのはこの人」と指示された遺体を見て、
「まさか。この人はもう死んでいますよ」と確認しつつ抗議した瞬間、
首の動脈に拍動を感じた。「いや、この人は死んでない」と訂正すると
「それなら手術して。肝臓と腎臓をとって。早く。ほら早く!」と。
バンの中で通常の手順通りにやろうとすると主任外科医から
「麻酔はなし」「生命維持もなし」と怒鳴られた。
「どうせ意識はないんだから切っても痛みはないんだ」。
しかしメスを入れた瞬間、男性は大きくのけぞって暴れた。
血管をクランプする手間も惜しんで摘出すると、
引き取りに来ている家族のために一番外の腹壁だけを縫合。
自分は殺人者だと感じて、遺体の顔を見ることができなかったという。
翌日、主任外科医に呼ばれ「昨日は何もない平穏な一日だったな」と念押しされた。
処刑前になると、平服の職員が死刑囚を説得して
臓器を国に提供するとの書類にサインさせていたという。
豪華な最後の食事が提供され、抗凝固剤が打たれた。
④ ウイグル自治区のグルジャで起きた97年の中国による大規模弾圧の直後に
グルジャの病院で働いていた看護師。
抗議デモに参加したウイグル人の負傷者の治療をすることは禁じられ、
腕に包帯を巻いただけで15年の禁固刑を受けた医師もいた。
病院内スタッフにも中国人とウイグル人の分断が起きた。
ウイグル人夫婦に子どもが生まれると抗生剤と偽って薬殺していた。
抗議行動で逮捕され暴行を受けて腎臓に損傷を負った青年の家族は
息子の釈放に多額の金銭を払い、さらに移植用腎臓に約4700ドルかかると言われた。
その代わり同い年のウイグル人男性の腎臓をやると言われたが、
それは抗議行動をしていたウイグル人男性のものだった。
⑤ ウイグル人の当時新米医師。ウイグルの病院にて。1997年。
上司から政府の高級官僚が5人、内臓疾患で入院すると聞かされ、
同地区の刑務所の政治犯棟へ行き、採血して血液型一覧を作成するよう命じられる。
その時にはワケが分からなかったが、同じウイグル人なので
採決の意図を疑われないためだったのでは、と今は振り返って推測する。
彼が作った血液型一覧から血液型が一致する囚人を選んで
さらに臓器の適合をチェック。合致した囚人は右胸を撃って殺し、5人の官僚に移植。
数カ月後に同じ指示が出た時に、
政治犯から臓器摘出をするのはいつものことで、
儲けが大きな輸出として伸びていると聞かされる。
主導しているのは軍の病院だとも。
この記事の著者は北京オリンピック前の法論功弾圧で
300万人の法論功学習者が矯正施設へ送られ、
ざっと65000人のウイグル人の臓器が
心臓がまだ打っている状態で摘出されたと推測している。
著者からインタビューを受けた一人は、
英国下院が主催した中国の人権問題セミナーで手を上げ、
自身が殺人に関与したことを告白したが、
英国政治家の誰もそれをとりあげなかったという。
……in a world eager not to offend China, no state wants his confession.
世界中が中国に迎合する時代、彼の告白など、どの国にとっても迷惑でしかない。
The Xinjiang Procedure
Beijing’s ‘New Frontier’ is ground zero for the organ harvesting of political prisoners.
Ethan Gutmann,
The weekly Standard, December 5, 2011
【関連エントリー】
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
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