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去年の夏に以下のエントリーで紹介した訴訟の続報。

脳幹出血で全身マヒになった男性が「死ぬ権利」求め提訴(英)(2011/8/19)


英国の高等裁判所はMartin(仮名)さんの弁護士に対して
以下のように述べた、とのこと。

the solicitors may obtain information from third parties and from appropriate experts for the purpose of placing material before the court and that third parties may co-operate in so doing without the people involved acting in any way unlawfully.

裁判所に資料を提出するべく、
Martinさんの弁護士が第三者や適切な専門家から情報を得てもよい。
それに協力したことで、協力者が違法行為に問われることはない。


この部分だけを読むと、私には
裁判所への資料提出のための情報収集が認められただけのように思えるし、

当の弁護士さんたちだって
この決定以前にはDignitasやその他の自殺幇助に協力的な専門職から情報を得ることで
自分たちも起訴される恐れがあった、と述べているのだから、

それは反対運動Care Not Killingの医師が
「まだ始まったばかりの裁判で、法律が変わるという話ではなく、
裁判所に提出する証拠を集める許可が出たというだけのこと」と言っているように、
単にその程度のことなのではないかと思うのだけれど、

Mail紙の解釈によると、これは
弁護士がDignitasからそのサービスに関する情報をとっても良い、
さらにMartinさんの「幇助をしても良いとする人または団体を特定する」手段をとっても良い、
という意味なのだそうな。

さらに、同紙の解釈によると、この裁判所の決定は、
医療職による自殺幇助合法化への第一歩が踏み出されたことを意味するのだそうな。

Assisted suicide one step closer after High Court paves the way for doctors to help terminally-ill patients kill themselves
Daily Mail, January 27, 2012


記事の書き方そのものが、ぜんぜん釈然としない。

まずタイトルが
「医師によるターミナルな患者の自殺幇助に高裁が道を開き、自殺幇助へまた一歩」。

しかし、Martinさんは脳卒中の後遺症で寝たきりなのであって、
決して「ターミナルな患者」ではないし、

この記事を読む限り、裁判所が決定したのは
情報収集をして裁判所に資料を出せ、というに過ぎない。
それを「医師による患者の自殺幇助に道を開いた」とは言い過ぎも甚だしいのでは?

また、記事には高齢者の腕に医療用手袋をした人が注射をしている写真があり、
そのキャプションは「間もなく医師が患者に自殺行為を行うことが許される可能性も」。

その写真のすぐ下の段落では
幇助死の支持者らが合法化を望んでいるのは
「医師、看護師またはプロの自殺幇助者が犯罪行為に問われることなく
自殺に手を貸すことができるように」なることだ、と書かれている。

いつのまに看護師や「プロの自殺幇助者」まで対象に入ってきたのだろう?

BBCが合法化ロビーであることは既に誰も疑わないだろうけれど、
Mailもあまりも恥知らずな情報操作だと思う。
2012.02.03 / Top↑
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