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前のエントリーに報告書の概要があります。
このエントリーは報告書本文 p.131-132 の全訳です。


2011年秋の本報告書の刊行は、政府の意見聴取キャンペーンthe Future of Care and Supportと期を一にするものである。2012年には保健相から介護と支援白書の刊行が予定されており、その後に実施となる新制度に向けて、本報告書によりDS事業から学ぶ重要な機会を提供する。

以下の政策提言は「介護者戦略2010」(セクション7.2)において定められた7つの原則に即したものである。

1. すべての地域で、地方自治体、NHS組織とボランティア団体とが連携して効果的な介護者支援を開発・提供する努力が強化されなければならない。連携の実際はさまざまで、心身の健康委員会(health and well-being boards)の位置づけも異なれば、地域の既存の連携のあり方に依拠する場合もあれば、それをさらに発展させる場合もあろうが、連携機関の間には適切なサービスの企画、開発、実施を可能とする未来志向の戦略と予算に関する合意がなければならない。このアプローチは「介護者戦略2010」によってプライマリー・ケア・トラストに通達されたガイダンスに沿うものである。

2.サービスの開発においては、適切な研修を提供しつつ、地域の関係者の連携の中に多様な介護者を含めなければならない。介護者ニーズの検討、介護者支援を開発するにあたっての地域の優先順位の把握、様々な形態の介護者サービスを届けるために必要な主導機関とサポート機関との選定には、連携に含めた介護者と協働して当たるべきである。

3. 広い範囲の介護者に支援を届け、まだサービスに繋がっていない介護者にも手を差し伸べるためには、地域の関係者の柔軟な連携が必要である。特定のターゲット・グループの介護者と関わりを作ろうとする場合には、時にはグループの特性に応じた特別体制を組むことも必要である。グループの特性によっては、介護者の信頼を得ている機関や実際に介護している人たちと関わっている機関が医療と社会ケア制度の枠組みの外にあるならば、支援を確立・維持するためにそれらの機関との柔軟なネットワークが求められる場合もある。

4. 「この支援だけが最善」という支援策も「これだけであらゆる介護状況、あらゆる介護者への解決策を提供できる」支援策もあり得ない。どの地域レベルにおいても、効果的な介護者支援のためには介護者支援に多様なメニューがあり、それらが個々のニーズに合わせて応用可能であることが必要。柔軟かつ個別的なサービスだからといって必ずしも高価なものにする必要はなく、予測も予想もできない形で生じる介護者のニーズにもタイムリーに素早く利用可能なものでなければならない。

5. 介護者支援のメニューについては地方自治体とNHS組織とボランティア・セクターや、また地域の状況に応じてその他の団体との間での合意形成が必要である。介護者に支援が必要なのは、健康問題とストレス;適切な支援、サービスと要介護者用の用具と住宅改造へのアクセス情報;所得維持と介護期間およびその後の年金保護;セルフケア、健康的な生活スタイルと介護以外の生活の維持;教育、研修、仕事と余暇へのアクセス;緊急時に備えた計画と介護者役割から時々または定期的に休息する手段

6.新規診断や退院や外来受診時など患者に介護者が付き添うことの多い病棟を中心に、病院は新たな介護者を見つけ出しサポートするメカニズムを定常的に提供しなければならない。介護者となったばかりの人や介護責任に変化が生じた人へ支援が、フォロー・アップ・サービスに繋ぐことも含めてタイムリーにうまくコーディネートされるには、それら支援が全ての急性期病院で利用可能となっており、全ての外来クリニックで告知されていることが必要である。

7. 個々の現場で必ずしも認識されているとは限らないが、全てのGPは診療を通じて介護者と接触している。全てのGPの診療所に対して、介護者支援のキー・パーソンとなる担当スタッフを置くよう求めるべきである。キー・パーソンの役割はGPをサポートして介護者を見つけ出し、地域の適切なサービスに繋げ、介護していることによって介護者自身が病院予約を取りにくかったり治療を受けにくくなることがないよう保証すること。こうしたスタッフに介護者理解と介護者支援の研修が必要な場合もある。具体的な進め方については、2010年10月にプリンセス・ロイヤル・トラスト・フォー・ケアラーズと英国家庭医学会が刊行したガイドブック”Supporting Carers”がGPとそのチームに向けて詳細な提言を行っている。

8. 病院、GP診療所、地方自治体、ボランティア・セクターにおいて介護者と接する全てのスタッフは、介護責任が介護者の心身の健康におよぼす影響に配慮できるよう研修を積み、介護者が心身の健康チェックを受けられるようアドバイスできなければならない。今回のDSプログラムで専門家や支援スタッフ向けに開発・検証されたチェックリスト、手法、ガイドラインが医療と社会ケア制度の関係者に広く提供され、研修に生かされて、関係スタッフ全員が介護者のストレスや健康悪化のサインに気付き、適切な支援へのアドバイスができなければならない。

9. 特にNHS(だけとは限らないが)を中心に医療と社会ケア制度の多くの職員が、介護者理解の研修を受けることができないために、介護者支援を効果的に提供できないでいる。すべての関係機関がスタッフに対して定期的に介護者理解の啓発研修を行わなければならない。必ずしもコスト高な研修を行う必要はなく、対象スタッフによってはオンライン研修や、インターネットを利用した研修方法も安価で適切な選択肢であろう。


キャンペーン
http://caringforourfuture.dh.gov.uk/

介護者戦略2010
http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsPolicyAndGuidance/DH_122077

(これ以外にはヒットしないのですが、この文書は6章までで7.2というセクションがないので、
同種の別モノのような気もします)


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これまで当ブログが介護者支援について書いてきたエントリーは相当数に上ったため、
以下のエントリーに一度リンクを取りまとめています ↓

「クローズアップ現代」が英国の介護者支援を紹介(2010/10/14)

オマケとして
母に殺させるな……「介護者支援」への思い(2012/1/12)


介護者支援について「介護保険情報」の連載で書いたものはこちらに ↓
介護者支援シリーズ 1: 英国の介護者支援
介護者支援シリーズ 2: 英国の介護者週間
介護者支援シリーズ 3: 英国のNHS憲章草案と新・全国介護者戦略
介護者支援シリーズ 4: 米国 家族介護者月間
介護者支援シリーズ 5: 障害のある子どもを殺す母親たち
介護者支援シリーズ 6: NHSの介護者支援サイト Carers Direct

【Marriotさんの著書に関するエントリー】
「“身勝手な豚”の介護ガイド」1: セックスもウンコも“殺してやりたい”も(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」2: あなた自身をもう一人の“子豚”に(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3: “専門家の世界”に心が折れないために(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」3のオマケ: だって、Spitibaraも黙っていられない(2011/7/22)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」4: 「階段から突き落としてしまいたい」で止まるために(2011/7/23)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」5: ウンコよりキタナイものがある(2011/7/23)
「“身勝手な豚”の介護ガイド」6: セックスを語ると“子豚”への愛が見えてくる“ケアラー哲学”(2011/7/24)
2012.03.14 / Top↑
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