エリカ(仮名)14歳。
トムと同じく、赤ん坊の時に養子になった。
身長145センチ、体重33キロ。
成長抑制療法により
9歳のときの身長と体重からわずかに増えただけで維持されている。
家族は両親と兄弟姉妹が5人。
アシュリー事件以降、やろうとしたり実際にやった家族は表に出てこようとしないが、
5年たち、そろそろ口を開いてもいいだろうとエリカの両親は考えたそうだ。
取材はスカイプを通じて行われた。
エリカの“治療”はすでに終わり、
同じ状況の家族の助けになりたいと望んでいる。
トムの場合と違って、養子になった時にエリカの障害は分かっていたという。
エリカの障害は、実の父親に虐待されたことからくる揺さぶり症候群だった。
「この子がうちに来ることになったのには理由があったんです。
小さな天使みたいな子でした!」
「たぶん、この子が完全に依存しているからこそ私は入れ込んだんだろうと思います。
だって、いつでもこの子には私が必要なんですから。
エリカを自分の手でハッピーにしてあげられる満足感ですね。
我が子のように愛するのは難しいことではなかったです。
沢山の子どもをそんなふうに愛してきましたから。
先のことは考えてなかったんです」
しかしエリカの体は大きくなり、両親は将来を案じるようになる。
「抱いていてやらないと、時々赤ちゃんみたいにぐずるんです。
私たちの膝の上で親指をしゃぶるんですけど、今より25キロも増えられたら
そんなことはしてやれなくなります。
30キロ程度でも、バスタブに入れるのは難しいですし。
ソファから抱き上げたり下ろしたりするのは
重いですが、なんとかやれます。でも、エリカの体重が
60キロ、70キロとかになると無理です」
「できるかぎり長く世話をしてやりたいと思っていましたが、
私たちは親としては年が行っている方です。
施設に入れることになるのかと思うと本当につらかった。
障害のある人にかかわる仕事をしてきましたから、
家で面倒を見てやれなくなった親の苦しみは直に知っているんです」
アシュリー療法の報道を見て知らせてくれたのは息子だった。
アシュリーの状態はエリカとそっくりで、その療法は「奇跡」と見えた。
アシュリーの父親からは「諦めずに粘り強く」求め続けろと励まされた。
07年秋にエリカの主治医の内分泌医に相談したが、やらないと言われた。
エリカの母親の方の息子が、ミネソタ大学の内分泌医がいいと言い、
その内分泌医は、エストロゲンの大量療法は乳がんリスクを上げるから
同大の婦人科医にまず子宮と乳房芽を摘出させようと言った。
「子宮摘出こそやりたかったんです。
生涯、生理に苦しむなんて、かわいそうだと私たちは信じていたので。
言葉でどこが痛いって言えない子なんですから」
婦人科医に裁判所の命令がいるだろうかと尋ねたが
医師はいらない、と答えたという。
「誰もそんなことは問題にしませんでした。
『私がやります。いつやりますか?』って。
そんなに簡単だなんて、びっくりしました。
息子が裁判所の命令がいるのでは、と聞いたんですけど、
『もちろん無用です。娘さんのためを思ってされることですから』と。」
08年4月に子宮摘出。
3カ月後に乳房芽の摘出。
いずれも保険会社が支払った。
ホルモン療法のまえに
大学の倫理委への出席を求められたので
エリカを連れて行った。
委員会は4人で、プロトコルを作りたい、と言った。
両親はエリカに回復の見込みがないこと、
在宅でできるかぎりのことをしてやりたいこと、
特に父親は将来、男性介護者から性的虐待を受ける懸念を訴え、
最悪でも妊娠だけはしない方が本人の尊厳が守られる、と説いた。
4人はくつろいだ雰囲気でニコニコしながら
「娘さんのためにはいいことです」と言ってくれた。
08年10月から10年12月の間、1日20ミリグラムのエストロゲンを投与。
乳癌のリスクに加えて、血栓症のリスクもあるため、
現在アスピリンを毎日飲んでいる。
母親は「介護の利点の方がリスクを上回っている
(benefits to her care outweighed the risks)」と。
批判している障害者は正しく理解していない、と彼女は考える。
「私たちがこの療法の対象にしているのは、
障害者の中でもわずか1%のエリカのような子どもたちだけで
誰にでもやろうという話ではありません。
もちろんグレー・ゾーンの人もいますが、
エリカにとっては白黒はっきりしています。
手術させて健康な臓器を摘出したと非難する人もいますが、
じゃぁ、30年間生理の痛みに耐えさせるのはどうなんです?
自然に手を加えて神を演じる行いだという人がいますけど、
私たちの慈愛に満ちた神様ならエリカを苦しませておけとはおっしゃいません。
エリカが子どもを産むことも赤ちゃんを抱くこともないんです。
でも、エリカは家族と一緒にいて、親の膝の上にいることが大好きなんです。
赤ちゃんのままにしておきたいんじゃなくて、ハッピーでいてほしい。
エリカには幸せに暮らす権利があります」
The ‘Ashley treatment’ : Erica’s story
The Guardian, March 16, 2012
まず、気になったのは、
この人が重い障害のあるエリカを養子にした時の気持ちを語っている言葉。
Maybe it was the whole dependence thing I thrive on, because she was always going to need me. The satisfaction of being able to make her happy.
気になるというよりも、
正直、うすら寒くなるのだけど。
次に、
息子が大きな役割を演じていて、
どうやらミネソタ大の内分泌医に繋いだのも彼のようだけれど、
その息子については何も語られていない。
こんなにスムーズなものかと両親がびっくりしたということと合わせて、
そのあたりに、なにか伏せられていることがあるような……?
一つ確認しておきたいこととしては、
エリカの両親はアシュリーの父親とコンタクトをとっていること。
つまり彼のアドバイスに従って、この療法を実現にこぎつけているはずだということ。
トムと同じく、赤ん坊の時に養子になった。
身長145センチ、体重33キロ。
成長抑制療法により
9歳のときの身長と体重からわずかに増えただけで維持されている。
家族は両親と兄弟姉妹が5人。
アシュリー事件以降、やろうとしたり実際にやった家族は表に出てこようとしないが、
5年たち、そろそろ口を開いてもいいだろうとエリカの両親は考えたそうだ。
取材はスカイプを通じて行われた。
エリカの“治療”はすでに終わり、
同じ状況の家族の助けになりたいと望んでいる。
トムの場合と違って、養子になった時にエリカの障害は分かっていたという。
エリカの障害は、実の父親に虐待されたことからくる揺さぶり症候群だった。
「この子がうちに来ることになったのには理由があったんです。
小さな天使みたいな子でした!」
「たぶん、この子が完全に依存しているからこそ私は入れ込んだんだろうと思います。
だって、いつでもこの子には私が必要なんですから。
エリカを自分の手でハッピーにしてあげられる満足感ですね。
我が子のように愛するのは難しいことではなかったです。
沢山の子どもをそんなふうに愛してきましたから。
先のことは考えてなかったんです」
しかしエリカの体は大きくなり、両親は将来を案じるようになる。
「抱いていてやらないと、時々赤ちゃんみたいにぐずるんです。
私たちの膝の上で親指をしゃぶるんですけど、今より25キロも増えられたら
そんなことはしてやれなくなります。
30キロ程度でも、バスタブに入れるのは難しいですし。
ソファから抱き上げたり下ろしたりするのは
重いですが、なんとかやれます。でも、エリカの体重が
60キロ、70キロとかになると無理です」
「できるかぎり長く世話をしてやりたいと思っていましたが、
私たちは親としては年が行っている方です。
施設に入れることになるのかと思うと本当につらかった。
障害のある人にかかわる仕事をしてきましたから、
家で面倒を見てやれなくなった親の苦しみは直に知っているんです」
アシュリー療法の報道を見て知らせてくれたのは息子だった。
アシュリーの状態はエリカとそっくりで、その療法は「奇跡」と見えた。
アシュリーの父親からは「諦めずに粘り強く」求め続けろと励まされた。
07年秋にエリカの主治医の内分泌医に相談したが、やらないと言われた。
エリカの母親の方の息子が、ミネソタ大学の内分泌医がいいと言い、
その内分泌医は、エストロゲンの大量療法は乳がんリスクを上げるから
同大の婦人科医にまず子宮と乳房芽を摘出させようと言った。
「子宮摘出こそやりたかったんです。
生涯、生理に苦しむなんて、かわいそうだと私たちは信じていたので。
言葉でどこが痛いって言えない子なんですから」
婦人科医に裁判所の命令がいるだろうかと尋ねたが
医師はいらない、と答えたという。
「誰もそんなことは問題にしませんでした。
『私がやります。いつやりますか?』って。
そんなに簡単だなんて、びっくりしました。
息子が裁判所の命令がいるのでは、と聞いたんですけど、
『もちろん無用です。娘さんのためを思ってされることですから』と。」
08年4月に子宮摘出。
3カ月後に乳房芽の摘出。
いずれも保険会社が支払った。
ホルモン療法のまえに
大学の倫理委への出席を求められたので
エリカを連れて行った。
委員会は4人で、プロトコルを作りたい、と言った。
両親はエリカに回復の見込みがないこと、
在宅でできるかぎりのことをしてやりたいこと、
特に父親は将来、男性介護者から性的虐待を受ける懸念を訴え、
最悪でも妊娠だけはしない方が本人の尊厳が守られる、と説いた。
4人はくつろいだ雰囲気でニコニコしながら
「娘さんのためにはいいことです」と言ってくれた。
08年10月から10年12月の間、1日20ミリグラムのエストロゲンを投与。
乳癌のリスクに加えて、血栓症のリスクもあるため、
現在アスピリンを毎日飲んでいる。
母親は「介護の利点の方がリスクを上回っている
(benefits to her care outweighed the risks)」と。
批判している障害者は正しく理解していない、と彼女は考える。
「私たちがこの療法の対象にしているのは、
障害者の中でもわずか1%のエリカのような子どもたちだけで
誰にでもやろうという話ではありません。
もちろんグレー・ゾーンの人もいますが、
エリカにとっては白黒はっきりしています。
手術させて健康な臓器を摘出したと非難する人もいますが、
じゃぁ、30年間生理の痛みに耐えさせるのはどうなんです?
自然に手を加えて神を演じる行いだという人がいますけど、
私たちの慈愛に満ちた神様ならエリカを苦しませておけとはおっしゃいません。
エリカが子どもを産むことも赤ちゃんを抱くこともないんです。
でも、エリカは家族と一緒にいて、親の膝の上にいることが大好きなんです。
赤ちゃんのままにしておきたいんじゃなくて、ハッピーでいてほしい。
エリカには幸せに暮らす権利があります」
The ‘Ashley treatment’ : Erica’s story
The Guardian, March 16, 2012
まず、気になったのは、
この人が重い障害のあるエリカを養子にした時の気持ちを語っている言葉。
Maybe it was the whole dependence thing I thrive on, because she was always going to need me. The satisfaction of being able to make her happy.
気になるというよりも、
正直、うすら寒くなるのだけど。
次に、
息子が大きな役割を演じていて、
どうやらミネソタ大の内分泌医に繋いだのも彼のようだけれど、
その息子については何も語られていない。
こんなにスムーズなものかと両親がびっくりしたということと合わせて、
そのあたりに、なにか伏せられていることがあるような……?
一つ確認しておきたいこととしては、
エリカの両親はアシュリーの父親とコンタクトをとっていること。
つまり彼のアドバイスに従って、この療法を実現にこぎつけているはずだということ。
2012.03.30 / Top↑
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