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以下の文章を書いたのは3年近く前のことです。

限られたスペースでは書ききれませんでしたが、
インターネットには被害を受けた女性たちの詳細な体験談がたくさんあり,
着任した日に雇い主にレイプされた人や、何年も休みなしで働かされている人など
読んでいると心の底から憤りを感じました。

その後、取材に行った先で聞いた
アジアの介護職への虐待をテーマにしておられる研究者の講演で
フィリピン以外の国から海外に出て行く介護者についても、
同様のケースがたくさん報告されていました。

現在、事態は改善されているとも思えず、さらに悪化しているのではないでしょうか。



★ フィリピン・カナダ          
 輸出入される介護労働            
 “現代の奴隷制”とも           

日本政府は9月にフィリピンとの間で経済連携協定(JPEPA)を結んだ。当初の2年間でフィリピン人の看護師・介護福祉士1000人を受け入れるとのこと。そこで“労働力輸出大国”フィリピンの介護職輸出事情について、インターネットで調べてみた。

まず、Technical Education and Skills Development Authority の介護職に関する労働市場情報レポート№15(2月3日)。それによると、労働力輸出の主要市場であるアメリカとカナダに、ヨーロッパ、韓国、そして日本が加わり、今後4年間は需要が伸び続けると予測する一方で、急増する養成機関の監査にTESDAも苦慮している様子だ。

少し古いが、林立する養成機関の中にはIT専門校が俄かに介護に鞍替えしたり、詐欺同然のケースもあるとの報道は気にかかる(inq7.net02年9月16日)。

就労先で一番目立っているのはカナダ。住み込み介護者プログラムLCP(Live-in Caregivers Program)があり、永住権や市民権に結びつくことが魅力のようだ。LCP(前身プログラムを含む)を通じてカナダに渡ったフィリピン人は既に9万人以上。LCPで就労している人の95%がフィリピン女性である。

しかしその一方で、病気になったら即座に解雇や、雇用主にレイプされた例もあり、身分保障もなく様々な搾取・差別にさらされる人も少なくない。4月にはフィリピンの下院議員6人が、時給2セントで1日17時間労働という例を挙げて、カナダにおけるフィリピン人介護者に対する虐待について調査を求めた(Asian Pacific Post 4月7日)。

また、入国後3年以内に一定の被雇用実績を作らなければ強制送還となる規定からも不幸なケースが多数生じており、各種人権擁護団体からLCPは人種差別・女性差別、“現代の奴隷制”だと抗議の声が上がっている(Bulatla 05年1月2~8日号、The Manila Times9月14日他)。

ネット上には海外での介護・看護・子守・家事労働を巡る求人・求職サイトが数多く見られるが、総じて若年層が多く失業率の高い途上国が、裕福な先進国に労働力を提供する構図が顕著だ。

そんな中、フィリピンのメディアも「JPEPAへの不信」を報道している。日本から有害廃棄物が持ち込まれるのではとの疑念が根強く、透明性を保証するためにも、政府は協定内容を隠さずに早く議会に提出すべきだと上院議員らが提言(Sun Star Manila 11月3日)。

一方、ニュース誌Bulatlat(10月8~14日)は、専門職を単なる“輸出品”扱いにしているJPEPAは自国の経済発展を放棄する所業だと強く非難。専門技能を持った国民を安く輸出するよりも、国内に働く機会を作るべきだと主張している。


「世界の介護と医療の情報を読む」児玉真美
「介護保険情報」2006年12月号 P.88
2009.11.12 / Top↑
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