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米国で豚インフルエンザ・ワクチンの接種が始まり、
医療の第一線にいる職種の人たちに対しては優先的・強制的に行われることになっているものの、
その医療現場の医師や看護師の間からワクチン拒否が起こっているらしい気配を
先日来のニュースでいくつか拾っていたのですが、

例えば、9月26日のWPで医療職がワクチンを拒否する理由として挙げられているのは以下。

・製造を急いだワクチンの安全性には疑問がある
・ワクチンの実験に使われたくない
・接種は個人の選択によるべきもの

Mandatory Flu Shots Hit Resistance
The WP, September 26, 2009


米国社会では、ワクチンに対する拒絶反応というのは
自閉症のワクチン犯人説(これは科学的には否定されたということなのですが)を中心に、
なにやら非常に過激な政治運動にまで発展しているところがあって
そのあたりのことになると私にも理解を超えているのだけど、

その背景にあるのは、
利益至上の価値観で平気でデータを捏造したり
潤沢にマーケティング・ロビー活動資金を使う巨大製薬会社と
その働きかけに易々と癒着してしまう研究者、政治家、FDAの実態とに
薬に対する信頼感が根底から揺らいでいるのだろうということは理解できる。

日本ではほとんど報道されないし、
それ自体が実はアメリカの現実以上に怖い面もあると思うのだけど、
実際に、薬を巡るスキャンダルには目を覆わんばかりのものがあります。

それが今回の豚インフル・ワクチンへの不信に繋がっていても、ちっとも不思議ではないけれど、
今回の抵抗が医療職から出てきているだけに、なんだか、余計に考えさせられる。

ちょっと脈絡は遠いように見えるかもしれませんが、個人的には
スポーツでのステロイド解禁説の最先鋒である Norman Fost 医師が
自分自身は頭痛薬すら極力飲まないようにしているという話を思い出した。


そうした世の中に漂う不安感に対して、
保健部局は強制接種の開始を前にした9月末に

「豚インフルエンザのワクチン接種が始まると、
接種後に心臓発作を起こして死ぬ人も出ます、
脳卒中を起こす人流産する妊婦も出るでしょう。
痙攣を起こす子どもだっています。

でも、ワクチンを打たなくてもそういうことは起こる一定の確率はあるのだから、
なんでもかんでもワクチンのせいにして大騒ぎしないように」と。



そしたら、今度は英国でも、
NHSのスタッフから豚インフルのワクチン拒否が相次いで問題になって
保健相が各NHSの責任者に現場スタッフに確実に接種させるよう指示を出している。

どうやら季節性インフルエンザのワクチンでも
もともと医療現場のスタッフの接種率は伝統的に低いらしいのですが、
今回は1割ないし2割程度しか接種するつもりがないとの調査結果もあって、

NHSスタッフの間では、ワクチンは有効ではないし副作用もある、
毒性が低いことを考えると、打たないほうがいい、という話が流布しているとの話も。

当局は、
これでは、医療スタッフから患者に感染させることになりかねない、
第一線の医療職に免疫がなければ患者が危険に晒されるんだぞ、
ワクチンはパンデミックの押さえ込みには欠かせない措置だし
一部だけが受けたのでは意味がないではないか、
第一、現場の医療職がやられて休むしかなくなれば、
押し寄せる患者にどうやって医療が対応できるというのだ……と。


Swine flue fears grow as NHS staff shun vaccine
The Guardian, October 11, 2009/10/12


同日の米国からはNY Timesのニュースで、
米国人成人の41%はワクチン接種するつもりがない、との調査結果が報告されており、

この記事では、ワクチンについての
安全でない、治験が不十分、危険な添加物、危険な保存料、の噂の1つ1つを否定して見せている。

Nothing to Fear but the Flu Itself
The NY Times, October 11, 2009


それにしても、ずっと疑問なのだけど、
英語では当初から「豚インフルエンザ」という名称が変わらず使われているのに、
日本では、いつからか「新型インフルエンザ」に統一されたけど、なんでなんだろう?
2009.10.13 / Top↑
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