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米国で最初に医師による自殺幇助を合法化したOregon州での事件。

John Lyle Roberts(53)は2008年2月に就寝中の妻(51)の頭を銃で撃って殺した。
妻はALSで、こんな状態で生きたくないと自殺を望んでいた、と主張していたが、
2週間の裁判で陪審員は、ターミナルな病気の妻への慈悲殺ではなく、
いなくなって欲しかっただけだと結論、殺人罪で有罪とした。

ギャンブルで多額の借金を作っていたこと、
殺す何ヶ月も前から遺書を準備していたことなども指摘され、
計画的な殺人とされた。


解せないのは、陪審員の判断の箇所で
「ターミナルな病気に苦しむ妻を哀れんで殺したのではなく」とあること。

記事では carpal tunnel 症候群で片手が萎えていたと書かれているだけなのですが
ALSであれば、自動的にターミナルなの?

また、仮にターミナルだったとして
病気に苦しむ妻を哀れんで殺したのであれば、
慈悲殺として話が別になるの?

オレゴン州には確かに医師による自殺幇助を合法とする尊厳死法がありますが、
それは一定の条件を満たした患者が一定の手続きを経て
医師に処方された毒物を自分で飲んで自殺することを法律で認めたものであり、

死にたい人がいれば勝手に殺してもいいと認めているわけでない以上
この法律はこの事件とは無関係。

まして本人が寝ている間に銃で頭を撃っておいて自殺幇助だったなどと、
弁護士までが、なんで、そんなことをヌケヌケと主張できるのか。

他に慈悲殺を容認する法律があるわけでもないのに、
陪審員まで「慈悲殺だったのか殺人だったのか」を検討する。

じゃぁ、これから介護殺人は、みんな慈悲殺や自殺幇助に摩り替わってしまうのでしょうか。

自殺幇助合法化を求める議論が出てくるだけで、
既に、これほどのすべり坂が起こっている――。


そして、もう1つ、この事件で妙なのは
息子が父親を訴えていること。

その訴訟、wrongful death訴訟。

別の州に住む息子は27歳なのだけど、結婚していて学校にも行っており、
母親から月々400~700ドルを学費と生活費の足しに送ってもらっていたというのです。

父親が母親を殺してしまったことで、そのお金が得られなくなった。
そこで、死ぬはずの無かった人が死んでしまったために損害をこうむったとして
ロングフル・デス訴訟……。


病んでるよ、アメリカ──。
2009.07.20 / Top↑
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