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去年11月にSouth Carolina大学の遺伝カウンセリング・プログラムの呼びかけで
米国の以下の5団体の代表者が一堂に会して2日間の会議を行い、
このたび、一定のコンセンサスと今後の努力目標を発表。

The National Down Syndrome Society (NDSS)
The National Down Syndrome Congress(NDSC)
The American College of Obstetricians and Gynecologists(ACOG)
The American College of Medical Genetics (ACNG)
The National Society of Genetic Counselors(NSGC)

発表されたコンセンサスはこちら。



これら医療専門職とダウン症候群アドボケイトの間で合意されたコンセンサスとは

・ダウン症の人の生活と価値についてのバランスが取れた、正確でパブリックな情報が必要。

・医療専門職がダウン症候群について最新の情報に基づいた教育を受けることが必要。

・妊娠中の親に対して行われる遺伝子診断に関する教育は一貫していること、

・そして、遺伝子診断を受ける親への情報は、完全で一貫しており、善悪の判断や強制を含まないこと。


その他、これら機関は今後、
一般の人やアドボケイト、医療職に共通して見られる「誤解」の解消に努めるとしている。
(原語は misconception なので「誤解」よりも「誤った認識・事実誤認」というニュアンス)
その誤解とは、

・産科医が出生前診断を進めるのは先天性の障害や遺伝病の人を社会から減らすためだというのは誤解である。

・全ての妊婦に出生前診断を提供することの目的が、ダウン症候群の子どもを減らすためだというのは誤解である。

・出生前診断でダウン症候群と診断された妊娠の90%は人工中絶されているというのは誤解である。

・NDSS と NDSCがプロ・ライフの組織だというのは誤解である。

・修士号を取得した遺伝カウンセラーは親に人工中絶を受けるように誘導するというのは誤解である。

・出生前スクリーニングと検査はひとえにダウン症候群の検出のために行われるものだというのは誤解である。


今後もこれら団体の代表者は対話を続けていく、と。
また今後の協働の可能性として、


・NDSS と NDSCが助成金を受け
ダウン症候群の診断を受ける親に渡す情報の“ゴールド・スタンダード”と
親同士のサポートの研修マニュアルを作る。
NSGC, ACMG, ACOGの代表者はこのプロジェクトに協力する。

・これら組織は、ダウン症に関する、最新の包括的な情報を家族に提供するべく、
ガイドラインや患者教育の資料作りに協力する。

・ あるべき医療のモデルを作るべく、研究協力をする。


          ――――――――

この合意、どう捉えていいのか、ちょっと、よく分からない。

よく読んでみると
9割が中絶されているという統計があったのは事実で
ただ、最近の統計がないまま古い統計が使われているから
早急に最新の統計を出さなければならないという話に過ぎないので、
それを「9割中絶というのは事実誤認である」と言い切ってしまうのは
言い過ぎではないのか、とも思うし。

「中絶に誘導する」とか「減らすための診断だ」というのは事実誤認だという部分も、
あくまでもインフォームドされた自己選択のための情報提供である、
というのが中身だったりもする。

医療職に正しい知識をしっかり持ってもらうべく教育を、というのは大賛成だし、
両者で情報提供や医療のスタンダードを作るという方向そのものには賛成なのだけど、

ダウン症についてのみ合意が行われることが
出生前診断で分かる病気や障害の中に一定の線引きをすることに繋がる可能性はないのか、という点とか、

ダウン症で「親の意思決定をサポート」というスタンスが確認されてしまうと、
これから出生前遺伝子診断で分かる病気や障害がどんどん増えていく可能性のなかで、
それらに対しても「親の決定権」が規定路線という前提を設定することにはならないのか、とか。

(それとも英米では既に規定路線なのか?)

医療と親だけでいいのか、
実際に社会で障害児・者を支援していく方策の議論がそこに加わらなければ
「産むか産まないかは親の決定権、だから社会に迷惑をかけず自己責任で育てなさいよ」ということに
落ちていきかねないのではないか、とか。
2009.07.01 / Top↑
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