DISABILITY MATTERS という障害者アドボカシーのブログが
NY Timesが4月にObama大統領に行ったインタビューの中から
医療改革に関する気になる発言を指摘して
標題通りのタイトルの記事を書いています。
NY Timesが4月にObama大統領に行ったインタビューの中から
医療改革に関する気になる発言を指摘して
標題通りのタイトルの記事を書いています。
まず指摘されることとして、
“Ultimately, he’s the guy with the medical degree.”という表現を使い、
その前後の発言で大統領が語っているのは
患者の無知に対する医師の専門性の優位。
その前後の発言で大統領が語っているのは
患者の無知に対する医師の専門性の優位。
(この人、何の躊躇もなく代名詞 he を当てるのね……)
しかし現在のように「無益な治療」や安楽死が説かれて
医療が功利的な価値観を先鋭化させている中で
そう無条件に医師の専門性に優位性すなわち権威性を認められては困る、というのが
このブログの指摘。
医療が功利的な価値観を先鋭化させている中で
そう無条件に医師の専門性に優位性すなわち権威性を認められては困る、というのが
このブログの指摘。
特にまた別の箇所でObama氏は
「医療における政府の役割の1つは
国民の税金を財源とするメディケア、メディケイドにおいて
治療の有効性に関するアセスメントを行うこと。
「医療における政府の役割の1つは
国民の税金を財源とするメディケア、メディケイドにおいて
治療の有効性に関するアセスメントを行うこと。
現在は、国民をより健康にするわけではないことに
資金が使われすぎている」と述べており、
資金が使われすぎている」と述べており、
つまり、ここで言われているのは「無益な治療」概念そのものであり、
その治療によって、より健康になるのであればゼニは出してやるが
それで健康になるわけでないのだったら治療は受けられないよ、という話ではないのか、
その治療によって、より健康になるのであればゼニは出してやるが
それで健康になるわけでないのだったら治療は受けられないよ、という話ではないのか、
医療の中で最もゼニがかかるといわれている終末期など、ずばり当てはまるぞ、と。
(ついでに日本のリハビリ制限も同じ路線ですね。
先の医療費削減に結びつかないリハビリは認めない、と。)
先の医療費削減に結びつかないリハビリは認めない、と。)
大統領は選挙キャンペーン中に亡くなった祖母の話を持ち出してもいる。
既に末期がんだと診断されていたのにも関わらず
放っておくとQOLが低くなるからと腰の骨折手術を受けるよう、医師に勧められた。
ところが祖母は手術を受けた2週間後に容態が急変して亡くなった、と。
放っておくとQOLが低くなるからと腰の骨折手術を受けるよう、医師に勧められた。
ところが祖母は手術を受けた2週間後に容態が急変して亡くなった、と。
余命が3ヶ月か6ヶ月か9ヶ月か判然としない高齢のがん患者が骨折した場合に
その手術をするべきかどうかは難しい判断だが、と前置きして
Obama大統領が提案するのは
その手術をするべきかどうかは難しい判断だが、と前置きして
Obama大統領が提案するのは
Well, I think that there is going to have to be a conversation that is guided by doctors, scientists, ethicists. And then there is going to have to be a very difficult democratic conversation that takes place. It is very difficult to imagine the country making those decisions just through the normal political channels. And that’s part of why you have to have some independent group that can give you guidance. It’s not determinative, but I think has to be able to give you some guidance. And that’s part of what I suspect you’ll see emerging out of the various health care conversations that are taking place on the Hill right now.
私が思うのは、医師、科学者、倫理学者の主導する話し合いがあるべきだろう、ということです。とても難しい民主的な話し合いがあるべきだろう、と。通常の政治手段だけで国家がそういう決定を行うのは考えられません。だから、アドバイスができる独立したグループが必要になるでしょう。決定するというのではなく、ガイダンスができるグループ。今、議会で行われている医療改革議論の中から、そういう仕組みも出てくると思います。
私が思うのは、医師、科学者、倫理学者の主導する話し合いがあるべきだろう、ということです。とても難しい民主的な話し合いがあるべきだろう、と。通常の政治手段だけで国家がそういう決定を行うのは考えられません。だから、アドバイスができる独立したグループが必要になるでしょう。決定するというのではなく、ガイダンスができるグループ。今、議会で行われている医療改革議論の中から、そういう仕組みも出てくると思います。
この発言と、
「専門職の優越性」
「治療の有効性を評価する政府の責任」
「コスト効率の比較研究の必要性」とを合体させると、
「専門職の優越性」
「治療の有効性を評価する政府の責任」
「コスト効率の比較研究の必要性」とを合体させると、
確かに、そこから導き出されてくるのは
テキサスなどの無益な治療法──。
テキサスなどの無益な治療法──。
この語り口調からすれば、
病院倫理委員会が「そういう仕組み」として使われるということなのでしょうが、
病院倫理委は(Ashley事件に見られるように)いかに恣意的・政治的操作に対して脆弱であることか……。
病院倫理委員会が「そういう仕組み」として使われるということなのでしょうが、
病院倫理委は(Ashley事件に見られるように)いかに恣意的・政治的操作に対して脆弱であることか……。
政治経済のニーズ、科学とテクノロジーのニーズに取り囲まれて
医療倫理という学問は一体なにものになろうとしているのだろう……と考えてしまった。
医療倫理という学問は一体なにものになろうとしているのだろう……と考えてしまった。
ちょっと変な表現だけど、「医療倫理」のアイデンティティって? みたいなことを。
こちらの1月のエントリーで
政府が公費負担の治療内容を決める英国型システム導入をObama政権が狙っていることに触れましたが、
それに反対する対抗勢力がテレビコマーシャルでキャンペーンに乗り出したとのこと。
政府が公費負担の治療内容を決める英国型システム導入をObama政権が狙っていることに触れましたが、
それに反対する対抗勢力がテレビコマーシャルでキャンペーンに乗り出したとのこと。
英国国民が登場してはNHSの医療がいかにひどいかコキ下ろし、
かつてWHOの癌プログラムのディレクターだったという英国人医師が
市場主義の競争がなければ質は維持できず官製独占医療は機能しない、と説くもの。
かつてWHOの癌プログラムのディレクターだったという英国人医師が
市場主義の競争がなければ質は維持できず官製独占医療は機能しない、と説くもの。
(Sikora医師の発言部分は以下の記事にビデオあり)
受診時原則無料のNHSとでは制度の枠組みそのものが違って、
単純には比較できないだろうと思うし、
単純には比較できないだろうと思うし、
Sikora医師が「競争がなければ患者を治そうというインセンティブも働かない」といわんばかりなのには
それって、医師の発言として、そもそも一体どうよ……と思ってしまうけど。
それって、医師の発言として、そもそも一体どうよ……と思ってしまうけど。
2009.05.19 / Top↑
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