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ずい分と遅ればせな感じもしますが、

英国でのLuise Brownさんの誕生から30年以上、
生殖補助技術は安全だとされてきたけれど、
実は遺伝子の発現や発達パターンになんらかの異常を起こすリスクがあるのでは、と
そうした調査研究の必要を感じる研究者が増えてきている。

これは多胎児の確率が高くなるのとは、また別の話。

Picture Emerging on Genetic Risks of IVF
The NY Times, February 17, 2009

去年の11月にCDCが発表した論文では
IVFまたは精子を直接卵子に注入する技術によって生まれた子どもでは
わずかながら先天性異常リスクが高くなることが判明。

心臓の壁に穴があいているとか、口蓋裂、食道または直腸の発達不全なども。

科学者の間ではリスクがあることは共通認識になっている一方で、
そうしたリスクについて考える臨床現場の医師が少ない、
患者の側からリスクについての質問が出ることも少ないなど、
リスク議論が科学者の世界から広がっていかないことを指摘する声も。

Johns Hopkins の Andrew Feinberg 医師らが8年前、
IVFについての情報不足を懸念し癌を引き起こす遺伝子発現の変異を調べたところ、
ベックウィズ・ビーデマン症候群、アンジェルマン症候群などの遺伝疾患が生じる確率が
IVFで生まれた子どもではそれ以外の子どもよりも高かった。

遺伝子発現レベルでの変異は
このような珍しい遺伝病の他にも低体重や各種ガンの発生率とも
関連している可能性があると思われ、

胚の培養液の組成が影響しているとの見方もあるが、
クリニックでは様々な培養液が使用されており、
また使用する液を頻繁に替えているところが多いことから調査は困難。

こうしたリスクについて
「私の懸念は、情報も遺伝子発現の安定性を測るツールも不足していることだ」と
語る研究者も。

実験室で作られるマウスの胚では
遺伝子の発現に変異が起こること、
それによって行動にも変化が起こることが確認されており、
研究者は胚の操作と培養によるものだと考えている。

同じことが胚性幹細胞でも起こっている可能性が指摘されてもいるらしい。

しかし、仮に人間に同じことが言えるとしても
IVFでの遺伝子発現レベルでの変異の影響は
成人した後、時には中高年期まで形として現われてこないので把握しにくい。

その一方、
IVFで子どもを産んだ親にアンケートをとった場合には
異常を感じている親の方が回答を寄せやすい傾向もある。

英国の研究者は記事の最後で

「この分野はリスクに関する情報を必死に求めています。
私はこれまでの研究に基づいて世界中でこの問題について講演してきましたが、
IVFや関連技術で生まれた子どもたちの健康について
だんだんと悲観的な見方をするようになってきています」

       ――――――――

私は関連ニュースを見るたびに、
なぜ、こういう研究がないのか、ずっと疑問だったし、

これもまた、
「ない」研究は「ないこと」が見えないだけであり、
それがなぜ「ない」かというと
たぶん「ない」方が都合がいい研究は
誰もやりたがらないだけ……という科学の陥穽では?

ついでに考えたこととして、
ここで言われていることはクローン肉の安全性の問題にも
実は当てはまるのではないか……と。



科学情報を前にした時には
どんなに科学とテクノロジーが進んでも
「ある」研究よりも「ない」研究の方が圧倒的に多いし、
「わかる」ことよりも「わからない」ことの方が圧倒的に多いのだということを忘れずに、

そうした大きな理解の上に立って、冷静に
特定の断片情報と向かい合うことが必要なんじゃないだろうか、といつも思う。

「あると証明されていないリスク」は
決して「リスクがないことの証明」ではないのだから。
2009.02.18 / Top↑
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