2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
今回の成長抑制ワーキング・グループの結論らしきものを読んで、
私が真っ先に思ったことの1つは、

あ、この筋書きを書いたのはNorman Fostだ……ということ。

当ブログではAshley事件を詳細に追いかけてくる中で、ある段階から
Diekema、Wilfond両医師の恩師に当たるNorman Fost医師が
実はこの事件のキーパーソンではないか、と考えるようになりました。

それはもちろん証明できることではなく、
何故そう考えるかという当ブログの根拠については
これまで書いてきた多くのFost医師関連エントリーを読んでもらうしかないのですが、

彼は論争当初、子ども病院との密接な関りを隠して
あたかも利害関係のない専門家のフリを装ってメディアで強く擁護した人物。
また、メディアに登場して擁護した人たちは2つの特徴的なグループに分かれるのですが、
Fost医師はちょうどその2つの接点に、2つを繋ぐような形で位置する存在でもあります。

今回のWGの結論らしきものが、いかにFost医師のこれまでの発言とぴったり重なるか、
ここには、2007年7月のシアトル子ども病院生命倫理カンファでの
Fost医師の発言要旨をいくつか挙げてみます。

・ 裁判所の命令に強制力などないし、無視したところで
これまで医師がそれで責任を問われた事例はないのだから、
裁判所の医療への介入を許すな。
医療の決定権は医師にある。

・医療において社会的コストが問題になるのは当たり前である。
IQの低さが問題になるのも当たり前である。
IQが低ければ医療によってもたらされる利益を理解することすら出来ないのだから
そんな治療は無益である。

・治療の無益は社会がその人への医療コストを容認するかどうかによって決めるべきもの。

・ 医療介入が治療目的だけに限定されているのはおかしい。
病気で背の低い子どもにホルモン療法で背を伸ばすのは”治療”だからやってもいいが
健康なのに背が低い子どもには”強化”になるからやってはいけないというのはおかしい。
治療と強化の境目なんて決められないのだから、両方認めるべきである。

・富裕層の子どもが受ける医療と貧困層の子どもが受けられる医療とに差があるのは
当たり前のことで、そのどこが悪い?
社会が提供するサービスは最低限を保証するものでしかない。

・重い障害を持つ子どもは昔から殺されてきたのだ。
それが救われるようになったのは
80年代から始まった生命倫理の議論と
その後できてきた倫理委員会のお陰。
しかし生命倫理も今後は子どもの利益だけではなく
家族の利益や社会コストのことも併せ考えなければならない。

・これに対して会場から出た「倫理委のメンバーによってはバイアスがかかるが」との質問を
Fostは「地域の代表を1人か2人入れればそれでいいだろ」と、高圧的な口調で切って捨てました。


今回のシアトル子ども病院の成長抑制ワーキング・グループは
「外部の人を含め多様な立場を入れて検討したぞ」というアリバイ作りに過ぎず
2004年5月にAshleyケースを検討したといわれる特別倫理委と同じく
最初から「結論ありき」だったとしか思えません。

その「結論」にはFost医師の医療倫理の粗暴さが際立って感じられます。
筋書きを作ったのは恐らくはNorman Fost医師ではないでしょうか。
彼は表には出てきていませんが、もちろんWGのメンバーに入っています。

そして、それぞれの主張部分を外部に通しやすくするための合理化は
例によって詭弁とペテンの天才Diekema医師が担ったのでしょう。

Wilfond医師がシンポでWGの「結論」らしきものを示しつつ
それを「妥協点」としか言っていないのは興味深いところです。

そもそも今回の成長抑制WGは
一定の期限内に「妥協」してまで何らかの結論を出さなければならないような
性格のものではないはずなのに、

「みんな成長抑制には不安を感じていた」のに「みんなが妥協して」
「みんな重症児のQOLのことを考えて」「妥協点を見出した」と
それぞれがどう繋がっているのやらさっぱり分からない議論になったのは

WGに、どうしても合意点に達する必要があったからだし、
それは、その「結論」が最初から用意されていたからでしょう。

しかし、第1例の当事者である病院が勝手に組織したWGの検討が
いかに外部の専門家を含めていたとはいえ、どれだけ中立的な議論だと言えるのか、
その結論がどの程度の公共性を持てるものか……。

病院側も実はその辺りに無理があることは分かっているのではないでしょうか。
それなら、何が何でも正当化してしまわなければならない病院にとって、
このWGの検討は1つのステップに過ぎないのかもしれない。

もしもそうだとすれば、次のステップは、もしかしたら
米国小児科学会での重症児に対する成長抑制療法の承認……。

Fost医師はクリントン元大統領の医療倫理タスクフォースのメンバーだったり、
現在もFDAの小児科研究の倫理委員会の委員を務めるなど、
数々の肩書きを持つ米国の生命倫理界の大ボスです。

(ちなみに世界で最初にヒト胚からES細胞を取り出したThompson教授に
ヒト胚利用への逡巡を断ち切らせた人物がこのNorman Fost医師)

Diekema医師も米国小児科学会生命倫理委員会の委員や委員長を務めており
特にAshley事件以降はすっかり名を挙げて
小児科の生命倫理業界では“ブイブイいわしている”観がある。

Wilfond医師も小児科学会の生命倫理委員会に属していたことがあります。

また、子ども病院生命倫理カンファの常連講師で
Ashleyケースの擁護でも大活躍したLainie F. Ross医師も
同じく小児科学会生命倫理委員会の委員を長年(現在も)務めています。

やはり、次には小児科学会が
重症児への成長抑制を検討するという話になるのでは……?



Norman Fost 医師については
Norman Fostという人物に前半のエントリーがまとめてあります。
それ以後のエントリーも「擁護に登場した奇怪な人々」の書庫に多数。
2009.02.01 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://spitzibara.blog.2nt.com/tb.php/945-60908b3d