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米国のBiederman医師らのスキャンダルの衝撃がいまだ続いている中で目にすると、
実にタイムリーな記事タイトルで
「我々には臨床研究倫理を無視するような贅沢は許されない」

We cannot afford to ignore clinical research ethics
By David Serwadda
The Lancet, Vol. 383, Issue 9659

(登録手続きをすれば無料で全文が読めます。)

臨床研究倫理はまだ新しい学問分野であり、
現場での実体験からしか身につけてこなかったが、
NIHの研究に関与するようになって以来、
数年ごとに臨床研究倫理の講座を受けて知識を更新するようになったという著者が、
88人もが寄稿している the Oxford Textbook of Clinical Research Ethics(2008)を
勧めている。


ちょっと興味を引かれたのは、
著者がこの本の中で特に注目している問題の1つが、
最近よく議論となる開発途上国での臨床研究における倫理だということ。

中でも「途上国でも医師には先進国と同じ最善の治療を行う義務があるか」という議論。


ワクチン開発の実験など、
開発途上国での臨床実験での人権擁護には大いに懸念を抱いていたので、
この問題が近年の臨床研究倫理での大きな話題になっているというのは
ちょっと安心材料だったと同時に、

そこでもまた、倫理学が
弱者の権利擁護の視点に立つよりも、
その逆に切り捨てや資材視を正当化するための理論武装のツールに
使われる可能性もチラついているのかなぁ……とも。

途上国で先進国と同じ治療を保障することが
現実的に困難であろうことを想像できないわけでも
実際に現場で働く医師にはそうしたジレンマがあるのだろうと
想像できないわけでもありませんが、

やはり「無益な治療」論をはじめ障害児・者切り捨てに
ラディカルな生命倫理が果たしてきた大きな役割を連想してしまった。

         ―――――――

開発途上国でのワクチン開発研究といえば、
同じくLancet に以下の論文も掲載されています。

Vaccine coverage and the GAVI Alliance Immunization Services Support Initiative
By Julian Lob-Levyt
The Lancet, Vol.373, Issue 9659, January 19, 2009

GAVI というのは
当ブログが注目している、例のIHMEのプロジェクト。

途上国のワクチン接種の広がりに関するデータを
IHMEが音頭をとってWHO, UNICEFと共に洗いなおそうとしているようです。

さすがにGates財団の私設研究機関に等しいIHME。
(一応 Washington大学の研究機関ではありますが)
ワクチン研究は最重要課題の1つのようで。

臨床研究倫理の分野で途上国における治験の倫理が議論になっているというのは
やはり倫理問題があるからだよね……と、つい考えてしまった。

IHMEの詳細については「ゲイツ財団、WU、IHME」の書庫に。

開発途上国のワクチン開発に関連したエントリーはこちらにまとめてあります。
ゲイツ財団の資金で開発期待されるマラリア・ワクチン(2008/12/14)
2009.01.17 / Top↑
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