医薬品や医療装置を巡る研究とエビデンスへの信頼に関る3題。
1.まず、FDAの医療装置審査プロセスの杜撰
乳がんの画像診断装置の認可を巡って
FDA(米国食品医薬品局)の現場科学者らからは、
もっと広範な実験データを求める声が上がっていたのに、
政治家からFDA官僚への電話一本で簡単に認可されてしまった、との苦情が
FDAコミッショナーに提出され、内部調査が行われた、とのこと。
FDA(米国食品医薬品局)の現場科学者らからは、
もっと広範な実験データを求める声が上がっていたのに、
政治家からFDA官僚への電話一本で簡単に認可されてしまった、との苦情が
FDAコミッショナーに提出され、内部調査が行われた、とのこと。
その調査文書によると、この装置、
本来対象とする患者に、本来対象とする状況での使用実験は
一切行われていなかった、というのが科学者らの告発内容。
本来対象とする患者に、本来対象とする状況での使用実験は
一切行われていなかった、というのが科学者らの告発内容。
以下のNY Timesの記事によると、
FDAの医療機器認可には、
その装置の新しさや複雑さに応じて3種類の審査プロセスがあるが
2007年の1年間で最も厳しい審査プロセスに宛てられたのは41件のみで
3052件が短縮検討プロセスを経たとのこと。
FDAの医療機器認可には、
その装置の新しさや複雑さに応じて3種類の審査プロセスがあるが
2007年の1年間で最も厳しい審査プロセスに宛てられたのは41件のみで
3052件が短縮検討プロセスを経たとのこと。
The National Research Center for Women and Familiesでは
Bush政権が医療機器の認可プロセスを無意味なものにしてしまって、
「今や何でもかんでも通っているようなものだ」と。
Bush政権が医療機器の認可プロセスを無意味なものにしてしまって、
「今や何でもかんでも通っているようなものだ」と。
2.次にFDAの医薬品審査プロセスの杜撰
医療機器部門の内部告発に留まらず、保健福祉サービス監査官局まで
「医薬品研究における利害の衝突についてはFDAの審査はアテにならない」と。
「医薬品研究における利害の衝突についてはFDAの審査はアテにならない」と。
監査局が2007年にFDAが認可した118の新薬の審査プロセスを調べたところ、
本来申告することになっている利益の衝突に関する情報がないのに
認可されているものが42%にも上った。
本来申告することになっている利益の衝突に関する情報がないのに
認可されているものが42%にも上った。
The Journal of the American Medical Associationに発表された論文によると、
大学研究者の23-38%は業界からの金銭の授受があるとされており、
大学研究者の23-38%は業界からの金銭の授受があるとされており、
また、この半年間に世間をにぎわせているBiederman, Nemeroff, Sinclair医師らの
巨大製薬会社との癒着疑惑などを考えても、
巨大製薬会社との癒着疑惑などを考えても、
これでは治験データにバイアスがかかっていたとしても
FDAには判らないだろう、と。
FDAには判らないだろう、と。
3.FDAに留まらず、権威ある医学雑誌まで利益の衝突を隠蔽
2006年10月に
CTスキャンが肺がん患者の死を防ぐのに効果があるとの研究論文を掲載した
the New English Journal of Medicine(NEJM)に、
CTスキャンが肺がん患者の死を防ぐのに効果があるとの研究論文を掲載した
the New English Journal of Medicine(NEJM)に、
著者らの研究資金がタバコ会社から出ていて、
その画像診断の特許を著者と大学が持っていることを知りつつ
申告された利益の衝突を隠したまま論文を掲載したことが批判され、
その画像診断の特許を著者と大学が持っていることを知りつつ
申告された利益の衝突を隠したまま論文を掲載したことが批判され、
NEJMは今後このような利益の衝突については明らかにする、と
方針転換を表明している、と。
方針転換を表明している、と。
何かにつけ、
黄門様の印籠のように高々と振りかざされて
多くの人々をひれ伏せさせる「科学的エビデンス」ですが、
そんなものは所詮は企業と研究者の利益によって
いかようにもでっち上げられる……ということでしょうか?
黄門様の印籠のように高々と振りかざされて
多くの人々をひれ伏せさせる「科学的エビデンス」ですが、
そんなものは所詮は企業と研究者の利益によって
いかようにもでっち上げられる……ということでしょうか?
【追記】
15日付の以下の記事では
Biederman医師らが所属するHarvard大学でも
医薬品研究におけるの利益の衝突のチェック体制について、
これまでの不十分だった方針を見直す、と。
Biederman医師らが所属するHarvard大学でも
医薬品研究におけるの利益の衝突のチェック体制について、
これまでの不十分だった方針を見直す、と。
また、この記事の中では
Science や Nature などの権威ある科学誌も、NIHですらも
研究における利益の衝突についてのチェックの不十分が指摘されているとのこと。
Science や Nature などの権威ある科学誌も、NIHですらも
研究における利益の衝突についてのチェックの不十分が指摘されているとのこと。
いずれも地味なニュースですが、
その意味するところをしかと考えてみれば、由々しき問題。
その意味するところをしかと考えてみれば、由々しき問題。
2009.01.15 / Top↑
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