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Yahoo!のトップニュースに以下のようなニュースがあったのですが、


実はこれと同じ研究結果は去年の夏にも
元米軍兵士を対象にした調査で報じられているので、
2009年7月17日のエントリーを以下に再掲。

The European Heart Journal に掲載された調査結果で
4000人のアメリカ人の元兵士を調べたところ、
IQが平均よりも低い人では心臓病で死ぬ確立が高いとの結果に。

社会経済上のファクターが影響することは知られているが、
今回は、それらファクターを除外しても、IQだけで20%もの差があった。

知能が低い人は健康に関する情報を取り込みにくく健康に留意しにくいのでは、と分析し、
研究者らは病気予防情報を簡略にするなどの工夫が必要、と。

Lower IQ ‘a heart disease risk’
The BBC, July 14, 2009


病気予防の情報に工夫が必要だとの提言をしてはいるけれど、
IQだとか人種だとかが直接的に病気リスクなのだといわんばかりの研究が
どうも最近、目に見えて増加しているような気がしてならない。

今のように医療コストの削減の必要が声高に喧伝されている中で、
病気リスクであると名指しされることは「コストがかかる」レッテルを張られることに等しいわけで、

そもそも研究デザインの前段階で、
IQや人種と病気リスクとには直接的な相関があるはずだと誰かが仮説したからこそ
こういう研究が行われるのだということを考えると
いかに病気予防の情報に工夫を提言されたとしても、
論文の結論や提言とはまた無関係に
データだけが一人歩きするのではないか、と気にかかる。


それにしても、この研究で実は一番コワイのは
調査対象に選ばれたのが米軍の元兵士だったという事実のほうかも。

これは、つまり
平均よりもIQが低い人が一定数固まっている集団を探したら
それは米軍だった……ということであり、

その事実、
海兵隊リクルーターがノルマ達成のため、発達障害者を狙っているという話を裏付けているのでは……?


なお、このエントリーには児童精神科医のAFCPさんから
元米兵を対象にしたのは単に調べやすいからだとのご指摘があり、
そこから、ちょっと面白いコメントのやり取りがありました。

その時に考えたことは、まだエントリーとして実を結んでいませんが、
興味のある方は、こちらの元エントリーを覗いてみてください。


私自身は、やはり、こういうニュースは、それ単独として捉えて考えるのと、
世界で起こっていることの大きな絵の中に位置づけて眺めるのとでは
全く違う見え方をしてくるような気がします。

去年の夏以降、さまざまな世界各国からのニュースを経て、特に最近の
「無益な治療」論の広がりや障害児抹殺論の高まりという大きな絵の中に置いたうえで、
(それぞれ詳細は「無益な治療」、「新優生思想」の書庫に)

この研究結果そのものの意味よりも、今こうした研究が続いて出てくることの意味の方を
考えることの必要性も忘れないでいたほうがいいと思う。

あ、それから、もう1つ、
こういうニュースはYahoo!のトップニュースにでかでかと登場するけれど、
例えば去年の大みそかに米国モンタナ州が自殺幇助を合法化したというショッキングなニュースは
日本ではちっとも報道されないのは何故なんだろう……と考えてみることの必要性も、ね。


また、2007年にJames Watson博士の人種差別発言に端を発した
人種間のIQ差を巡る論争に関連して考えたことが、
ここでもまた頭に浮かんだので、ついでに。


これもまた、「ない」報道は、それが「ない」ことそのものが見えないし、したがって、
なぜ「その報道はないのか」ということに誰も気づくことができない日本の不思議にも重なる……。
2010.02.11 / Top↑
70歳以上の高齢者に自殺幇助を認めよというオランダのニュースで、
1月に目にしつつ、ひるんでしまって読まないままになっている英国作家のぶっ飛び提言を思い出したので。

その提言とは、
来るべき”高齢者の津波”に備えるためには
「街角に高齢者がいつでも死ねるよう“安楽死ブース”の設置を」というもの。

現在の人口動態では
将来的に急激な人口の高齢化が避けられず、
このままでは”高齢者の津波”が押し寄せてきて
彼らを支えきれない若年層との間で内戦が起こるので、

それを避けるためには、
特に急増の激しい超高齢層に死んでもらうしかない……というわけです。

それで、街角ごとに“安楽死ブース”を設置して、そこへやってきた高齢者には、
まずマティニを飲んでもらってメダルも上げよう、それから死んでもらおう、と。

何らかの手段を講じれば、
意思決定ができる人が自分で決めたことだという確認だって可能なはず、とも。

もともと物議を醸す言動で知られた作家らくし、
どこまで具体案として本気なのかは不明ですが、

安楽死アドボケイトのDignity in DyingのDevina Hehir氏は
Amis氏の提案が身近な人々の不幸な死に方に由来していることを重視し、

「この問題への回答は2層になっています。
まず良質の終末期ケアが受けられて、そこに十分な予算が投資されること。

次にターミナルな病状で精神的にも意思決定可能な大人が望む場合には
自殺幇助が認められること」と。


そう。
Hehir氏が言うように、
終末期ケアの経費をかけないでいいように元気なうちからどんどん死んでもらおうというのでは、
どこが「自己決定」なんだ、話をグズグズにするのも、いいかげんにしてください、と言いたい。

なにやら、いよいよ「死の自己決定権」も化けの皮が剥げて正体が見えてきた感じですが、

こんなふうに「死の自己決定権」を盾にとった「死なせろ、殺せ」の声こそ
去年からうねりまくって、いよいよ今年に入ったかのように水門を脅かしている、
そして、もうじきその水門を決壊させて、世界中に荒れ狂おうとしている「殺せ!津波」じゃないか。
2010.02.10 / Top↑
オランダと言えば1994年に世界で初めて自殺幇助を合法化した国。
さすがは“尊厳死先進国”と言うべきか――。

オランダの学者・政治家らのグループから
「不治の病で耐え難い苦痛がある人が十分な説明を受けた上での自己決定で」という
現行法の要件を緩和し、

「生きるのが嫌になったから死にたい」と自己決定することなら
70歳以上の高齢者にも自殺幇助を権利として認めよう、と主張する声が上がっている。

4万人以上の賛同署名を集めて議会での議論を求めようと活動を開始したとのこと。

「自殺幇助は専門の研修を受けた医療の専門家が慎重なプロセスを経て行うのだから
それが高齢者虐待につながることはない」

「今の法律を作る際にも濫用が起きると言われたが、
実際には起きていないじゃないか」と。



グループの中にフェミニストの方が含まれていて
自己決定権の重要さを説いていることに、個人的には目を引かれました。

ものすごく広い意味では自分もフェミニストの一人だと考えているので、
本来あってしかるべき権利を与えられていないという不当な状況に抗い、
自己決定権をもぎ取るために壮絶な戦いを強いられてきたフェミニストにとって
自己決定権に他の立場からは想像できないほどの重みがあることは理解できるのですが、

女性に未だ十分に認められていない権利は自己決定権以外にも沢山あって、
医療や介護において男性と同等のサービスを受けることができていないという
調査結果もある。

男性を「ケアされる者」とし女性を「ケアする者」と無意識に位置付ける
社会の姿勢だって、別に日本だけの話じゃない。

そういうことをそのままにしておいて「死の自己決定権」だけを求めるのでは、
逆にすべての不十分や不平等が是認されてしまうことになるのではないのか、と思う。



【15日追記】
この人たち、議会に審議を求めるため必要な4万人以上の署名を集めたとのことです。


【3月9日追記】
なんと、人口1600万人の国で、現在112500人が署名とのこと。
ただ、医師でない人に研修をさせて幇助させようという提案で、
医師の関与がなくなることから医師会は反対。

2010.02.10 / Top↑
早産の原因となると思われる遺伝子の変異まで見つけたんだそうな。:それでどうしようというのだろう? 何でも遺伝子で決まるみたいに言うのも、そろそろ限界だという声、もっと出てきてもいいと思う。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8498712.stm

アフリカのマラリア患者はグレードの低い薬しか与えられていない、とのWHOの調査結果。:あらま。いったい、どうしたんですか、ゲイツ財団さん。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/africa/8504137.stm

英国の大学が資金カットのため教師陣の首切り、キャンパスの閉鎖など、大量の失業者を出すことに。:大学院生が教授の代わりを務めると、サブタイトルにはあるんだけど……。
http://www.guardian.co.uk/education/2010/feb/07/job-losses-universities-cuts

そういうのに関連して、この前びっくりした、森岡正博先生のブログのこの記事。大阪市立大学で文系学部の閉鎖が決まった、とのこと。:国際競争力のためには理系学問を重視したいのかもしれないけど、文系学問を大事にしないと人類のためにならないと思う。
http://d.hatena.ne.jp/kanjinai/20091211/1260489823

2008年1月の名高きステロイド・ディベイトはNorman FostとJulian Savulescuが出ているとあって、当ブログでも取り上げていますが、今頃になって面白いものを見つけました。そのディベイトの進行と同時に行われたと思われるネット投票。ステロイド解禁派の明々白々な敗北をみて、ほっとした。(最近、ある人に教えてもらったところでは、SavulescuってPeter Singerの1番弟子だそうな。ほぇ~。じゃぁ、案外にSinger とFost は、実はお友達だったりしてね。いや、冗談ではなく、これまでの言動からすれば十分ありうる……これ、Ashley事件においては非常に重大な可能性……。)
http://intelligencesquaredus.org/index.php/past-debates/we-should-accept-performance-enhancing-drugs-in-competitive-sports/

ギャンブルでお金をすりたくないという不安を起こしている脳の部位が判明したそうな。:こういう研究もあるんですねぇ……。
http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8504605.stm

自殺念慮があって、うつ病がひどいティーンには地域での従来型の治療よりも家族カウンセリングが即効性があって有効。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/178418.php
2010.02.09 / Top↑
ロシアのジャーナリスト Aleksandr Nikonov氏が
殺そう。苦しまないように」というタイトルの記事を書き、
“出生後中絶”は慈悲の行為だと主張。

障害児の誕生は多くの家族にとって耐えがたい悲劇であり「地獄」である、
「新生児を殺すのは実際のところ中絶と同じ」、
自立することのない障害児を殺すのは「真のヒューマニズムである」と述べて、
高齢者が安楽死で殺されているのと同じように、
新生児を安楽死させる権利を親に与えよう、と主張した。

また、ロシアでは非常に非礼であるとされる debil という言葉を
発達障害のある子どもたちに使用しており、

障害のある子どもの母親2人がNikonov氏を相手取った訴訟を起こした。

同氏を罰するというよりも、社会が障害児に対して冷たくなりつつあることへの懸念から。
障害児をケアすることについて問題提起をしたいから、とも。

その一人 Svetlana Shtarkovaさんは
「このような意見は決してNikonov氏に限ったものではなく、
統計でもロシア人の4人に1人が同様の意見を持っているとされています。

通りすがりの人から障害児がいるのは自業自得だといわれたこともあるし、
障害が重いと医師もソーシャルワーカーもちゃんと対応してくれない」と。

彼女らの弁護士がヒットラーに例えたことを受け、
Nikonov氏はRadio Free Europeのインタビューで

自己紹介しましょう。私はアドルフ・ヒットラーです。
どうも、そうふうに言われているらしいんでね。

しかし、本当にひどいのはそう言っている連中の方です。
私に向かって『人が苦しむのはいいことで、フェアなことだ、
人間らしさという机上の概念さえ影響されない限り
苦しむ人はそのまま放置しておけばいい』といっているわけだから。

そんな連中はくそくらえだ。

人を苦しませるべきじゃない。私はそう思う。
黙らせようったって私は黙らないよ。


当然ながら記事は最後にPeter Singerを引き合いに出しています。

そして、Singer や Nikonovの言っていることが、ただの思想でとどまらず
実際に社会もそのように考え始めていることを懸念しています。

Peter Singerの価値観の勝利という
2008年7月のWesley Smithの記事を引用して、
オランダで新生児の死亡例の8%は医師が殺したケースで
そういうケースが年間90例もある、

さらにオランダの医師会までが、それを支持している、と。



どうして障害児・者切り捨て論を説く人というのは
こんなふうに揃いも揃って、上から目線で
押しつけがましく攻撃的な物言いになるんだろう?

なぜ、冷静に誠実に議論をしようという姿勢でないのだろう。

Peter Singer も Norman Fost も この人もそうなんだけれども、
揃いも揃って2チャンネル的なものの言い方をする。

そういう姿勢に、
私はそれこそ知性の欠落を感じてしまうのだけど……?


2010.02.09 / Top↑