12月4日に行われた上院議会での
国連障害者権利条約の批准を巡る投票で、
反対 61 vs 賛成 38 。
共和党の前大統領候補で第二次世界大戦で負傷し車いす使用者であるBob Doleや、
ヴェトナム戦争で負傷したJohn McCain(共和党)なども批准を強く呼びかけたが、
同じく共和党の前大統領候補Rick Santorumなど極右のティ・パーティは
この条約は米国の主権と親の権利を侵す、と批准に反対していた。
Republicans block U.N. treaty to protect people with disabilities
REUTERS, December 4, 2012
投票前日に、NYTが社説で批准を呼び掛けていた ↓
Treaty Rights for the Disabled
NYT, December 3, 2012
【関連エントリー】
Obama大統領、今日、国連障害者権利条約に署名(2009/7/24)
国連障害者権利条約の批准を巡る投票で、
反対 61 vs 賛成 38 。
共和党の前大統領候補で第二次世界大戦で負傷し車いす使用者であるBob Doleや、
ヴェトナム戦争で負傷したJohn McCain(共和党)なども批准を強く呼びかけたが、
同じく共和党の前大統領候補Rick Santorumなど極右のティ・パーティは
この条約は米国の主権と親の権利を侵す、と批准に反対していた。
Republicans block U.N. treaty to protect people with disabilities
REUTERS, December 4, 2012
投票前日に、NYTが社説で批准を呼び掛けていた ↓
Treaty Rights for the Disabled
NYT, December 3, 2012
【関連エントリー】
Obama大統領、今日、国連障害者権利条約に署名(2009/7/24)
2012.12.14 / Top↑
当ブログでも何度か取り上げてきた英国の神経科医Adrian Owen教授が
BBCの番組Panoramaに出演して、
植物状態とされたカナダの患者が、脳スキャンを使ったやりとりで、
意識があり、痛みを感じてはいないことを告げた、と報告。
重症の脳損傷を受けた患者が
臨床的に意味の通った情報を医師に提供できたのは初めて。
患者はカナダ、オンタリオ州ロンドンの Scott Routleyさん。
「スコットは意識があり、ちゃんと思考することができていると
我々に示すことができました。
何度かスキャンを行ってきましたが、
彼の脳活動のパターンから、我々の質問に意識的に答えていることは明らかです。
スコットは自分が誰でどこにいるか分かっていると思います」
スコットさんは警察車両との衝突事故を起こして、
Owen教授が介入するまで12年以上の間ずっと植物状態だと考えられてきた。
10年以上担当してきた主治医は、
スキャンの結果でそれまでのアセスメントが全部ふっとんだ、と言い、
「典型的な植物状態の患者の状態だったんですよ。
感情は見られないし、目で物をじっと見ることも物の動きを追うこともなかった。
意味のある自発的な動きも見せたことがなかったので、
fMRIを使えば、こうした認知反応を見せることができたなんて
本当に驚き、感動しました」
Owen教授が研究している脳スキャンによるコミュニケーションとは
患者にテニスをしているところと家の中を歩き回っているところを頭に描くよう指示して、
それぞれによって脳の血流パターンが異なるため、
片方をYes, もう一方をNoに振り分けて
Yes –Noの質問に答えてもらう、というもの。
Owen教授はこれまでにも
植物状態とされている患者のほぼ5人に1人には意識がある可能性を指摘してきた。
また、もう一人の交通事故の患者 Steven Grahamさんは
2歳の姪っ子Ceiliを知っているかと問われてYes と答えた。
Ceiliが生まれたのはGrahamさんが事故にあって後のことなので
これによって彼が新たな記憶を形成し残すことができることが明らかとなった。
Panoramaチームは1年以上かけて
カナダのthe Brain and Mind InstituteとケンブリッジのAddenbrooke病院で
Owen教授の研究に参加した植物状態と最少意識い状態の患者さんたちを
撮影してきたという。
Brain-damaged man ‘aware’ of scientists’ questions
The Guardian, November 13, 2012
【Owen教授の研究に関するエントリー】
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
植物状態の人と脳スキャンでコミュニケーションが可能になった……けど?(2010/2/4))
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
以下は、これまで当ブログで拾ってきた回復事例。
【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)
【米国:ダンラップさん】
脳死判定後に臓器摘出準備段階で意識を回復した米人男性のニュース(再掲)(2009/7/30)
【ベルギー:ホウベン?Houbenさん】
23年間“植物状態”とされた男性が「叫んでいたのに」(ベルギー)(2009/11/24)
「なぜロックトイン症候群が植物状態と誤診されてしまうのか」を語るリハ医(2009/11/25)
【日本:加藤さん】
「植物状態にもなれない」から生還した医師の症例は報告されるか?(2011/1/19)
【米国:ゴッシオウ? Gossiauxさん】
事故で視力を失った聴覚障害者が「指示に反応しない」からリハビリの対象外……というアセスメントの不思議(2011/2/6)
【NZ: Kimberly McNailさん】
NZで「無益な治療」論による生命維持停止からの回復例(2011/7/17)
【米国: 可逆的脳死】
臓器摘出直前に“脳死”診断が覆ったケース(2011/7/25)
【米国: Sam Schmidさん】
アリゾナで、またも“脳死”からの回復例(2011/12/24)
【豪:Gloria Cruzさん】
またも“脳死”からの回復事例(豪)(2011/5/13)
【世界中で睡眠薬による回復事例】
睡眠薬で植物状態から回復する事例が相次いでいる:脳細胞は「死んで」いない?(2011/8/31)
睡眠薬による「植物状態」からの「覚醒」続報(2011/12/7)
【英国: Steven Thorpeさん】
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
【米: Richard Marshさん】
ロックト・イン症候群からの回復事例(米)(2012/8/9)
【その他、関連エントリー】
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
楳図かずおの脳死?漫画(2008/4/3)
重症障害児・者のコミュニケーションについて、整理すべきだと思うこと(2010/11/21)
BBCの番組Panoramaに出演して、
植物状態とされたカナダの患者が、脳スキャンを使ったやりとりで、
意識があり、痛みを感じてはいないことを告げた、と報告。
重症の脳損傷を受けた患者が
臨床的に意味の通った情報を医師に提供できたのは初めて。
患者はカナダ、オンタリオ州ロンドンの Scott Routleyさん。
「スコットは意識があり、ちゃんと思考することができていると
我々に示すことができました。
何度かスキャンを行ってきましたが、
彼の脳活動のパターンから、我々の質問に意識的に答えていることは明らかです。
スコットは自分が誰でどこにいるか分かっていると思います」
スコットさんは警察車両との衝突事故を起こして、
Owen教授が介入するまで12年以上の間ずっと植物状態だと考えられてきた。
10年以上担当してきた主治医は、
スキャンの結果でそれまでのアセスメントが全部ふっとんだ、と言い、
「典型的な植物状態の患者の状態だったんですよ。
感情は見られないし、目で物をじっと見ることも物の動きを追うこともなかった。
意味のある自発的な動きも見せたことがなかったので、
fMRIを使えば、こうした認知反応を見せることができたなんて
本当に驚き、感動しました」
Owen教授が研究している脳スキャンによるコミュニケーションとは
患者にテニスをしているところと家の中を歩き回っているところを頭に描くよう指示して、
それぞれによって脳の血流パターンが異なるため、
片方をYes, もう一方をNoに振り分けて
Yes –Noの質問に答えてもらう、というもの。
Owen教授はこれまでにも
植物状態とされている患者のほぼ5人に1人には意識がある可能性を指摘してきた。
また、もう一人の交通事故の患者 Steven Grahamさんは
2歳の姪っ子Ceiliを知っているかと問われてYes と答えた。
Ceiliが生まれたのはGrahamさんが事故にあって後のことなので
これによって彼が新たな記憶を形成し残すことができることが明らかとなった。
Panoramaチームは1年以上かけて
カナダのthe Brain and Mind InstituteとケンブリッジのAddenbrooke病院で
Owen教授の研究に参加した植物状態と最少意識い状態の患者さんたちを
撮影してきたという。
Brain-damaged man ‘aware’ of scientists’ questions
The Guardian, November 13, 2012
【Owen教授の研究に関するエントリー】
「植物状態」5例に2例は誤診?(2008/9/15)
植物状態の人と脳スキャンでコミュニケーションが可能になった……けど?(2010/2/4))
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
以下は、これまで当ブログで拾ってきた回復事例。
【米国:リリーさん】
植物状態から回復した女性(2007年の事件)
【米国:ダンラップさん】
脳死判定後に臓器摘出準備段階で意識を回復した米人男性のニュース(再掲)(2009/7/30)
【ベルギー:ホウベン?Houbenさん】
23年間“植物状態”とされた男性が「叫んでいたのに」(ベルギー)(2009/11/24)
「なぜロックトイン症候群が植物状態と誤診されてしまうのか」を語るリハ医(2009/11/25)
【日本:加藤さん】
「植物状態にもなれない」から生還した医師の症例は報告されるか?(2011/1/19)
【米国:ゴッシオウ? Gossiauxさん】
事故で視力を失った聴覚障害者が「指示に反応しない」からリハビリの対象外……というアセスメントの不思議(2011/2/6)
【NZ: Kimberly McNailさん】
NZで「無益な治療」論による生命維持停止からの回復例(2011/7/17)
【米国: 可逆的脳死】
臓器摘出直前に“脳死”診断が覆ったケース(2011/7/25)
【米国: Sam Schmidさん】
アリゾナで、またも“脳死”からの回復例(2011/12/24)
【豪:Gloria Cruzさん】
またも“脳死”からの回復事例(豪)(2011/5/13)
【世界中で睡眠薬による回復事例】
睡眠薬で植物状態から回復する事例が相次いでいる:脳細胞は「死んで」いない?(2011/8/31)
睡眠薬による「植物状態」からの「覚醒」続報(2011/12/7)
【英国: Steven Thorpeさん】
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
【米: Richard Marshさん】
ロックト・イン症候群からの回復事例(米)(2012/8/9)
【その他、関連エントリー】
「脳死」概念は医学的には誤りだとNorman Fost(2009/6/8)
楳図かずおの脳死?漫画(2008/4/3)
重症障害児・者のコミュニケーションについて、整理すべきだと思うこと(2010/11/21)
2012.11.13 / Top↑
イングランドとウェールズにおける障害者へのヘイト・クライムは
2011年に1942件で、
2010年の総数から25%も増加。
情報公開法に基づいて入手された記録によれば
2009年から2011年の間では60%も増加している。
また去年、警察には2000件近くの届けがあったにもかかわらず、
検察局(CPS)が起訴したのはわずかに523件。
その他、詳細なデータは以下の記事に。
Disability hate crime is at its highest level since records began
The Guardian, August 14, 2012
2011年に1942件で、
2010年の総数から25%も増加。
情報公開法に基づいて入手された記録によれば
2009年から2011年の間では60%も増加している。
また去年、警察には2000件近くの届けがあったにもかかわらず、
検察局(CPS)が起訴したのはわずかに523件。
その他、詳細なデータは以下の記事に。
Disability hate crime is at its highest level since records began
The Guardian, August 14, 2012
2012.08.17 / Top↑
最終第8章の内容の大まかのところは、
以下のエントリーにある通り。
Ouellette「生命倫理と障害」概要(2011/8/17)
「うわわわっ! 」というほど驚いたのは、
あんなに「女性器切除と同じくらいの慎重なセーフガードを」と
09年の論文では徹底的に批判していたウ―レットが、なんとなんと、
アシュリー事件でのシアトルこども病院が組織したWGの検討と提言を
障害に配慮した生命倫理の手続きのモデルにしろ、なんて
言いだしちゃっていること。
どどどーしたの?
どうやら、
WGに障害学の学者が入っていて、
セーフガードにもインフォームドコンセントやら手続きがちゃんと盛り込まれていて、
その歩み寄りと丁寧な検討と障害学からの提言を盛り込んだ姿勢がよい、ということみたい。
そう言えばBill Peaceも、
WGの論文が出た時にブログでそんなことを書いていた。
私は、Peaceはへースティング・センターに弱いからなぁ、と思っていたんだけど、
Ouelletteよ、おまえもか……と、がっくり。
私の独断的な推理では、
やっぱり生命倫理学そのものが、基本的にプロセス重視だから、というのが1点。
もう1点は、アシュリー事件はやっぱり複雑すぎる。コワすぎる。
それから、やっぱりOuelletteさんは、ナイーブ過ぎる。
その証拠に、
3月に出てきた“アシュリー療法”の新規12ケースのうち、
WG論文でウ―レットが誉めているセーフガードが採用されたケースがどれだけあったと?
多くは担当医の独断で決まっていたようだったけど?????
【「生命倫理と障害」】
Alicia Ouelletteの新刊「生命倫理と障害:障害者に配慮ある生命倫理を目指して」(2011/6/22)
Ouellette「生命倫理と障害」概要(2011/8/17)
エリザベス・ブーヴィア事件: Quellette「生命倫理と障害」から(2011/8/9)
幼児期
Sidney Miller事件: 障害新生児の救命と親の選択権(2011/8/16)
Ouelletteの「生命倫理と障害」:G事件と“無益な治療”論について(2011/12/17)ここから3本。
児童期
Ouellette「生命倫理と障害」:人工内耳と“Ashley療法”について(2011/12/19)ここから2本。
生殖期
Ouellette「生命倫理と障害」第5章:「アリソン・ラッパーの像」(2012/1/17)ここから3本。
成年期
Ouellette「生命倫理と障害」第6章 成年期: Maryのケース(2012/3/31)
Ouellette「生命倫理と障害」第6章 成年期:Larry McAfeeのケース(2012/3/31)
Ouellette「生命倫理と障害」第6章: Scot Matthewsのケース(2012/3/31)
終末期
Ouellette「生命倫理と障害」第7章: 人生の終わり(2012/5/18)
【今年3月に公になった“アシュリー療法”実施事例について】
論争から5年、アシュリー父ついに動く(2012/3/16)
「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子(2012/3/16)
広がる“Ashley療法”、続報をとりあえずピックアップ(2010/3/17)
“Ashley療法” Tomのケース(2012/3/28)
“Ashley療法”Ericaのケース(2012/3/28)
成長抑制をやったEricaの母親の意識について(2012/3/30)
以下のエントリーにある通り。
Ouellette「生命倫理と障害」概要(2011/8/17)
「うわわわっ! 」というほど驚いたのは、
あんなに「女性器切除と同じくらいの慎重なセーフガードを」と
09年の論文では徹底的に批判していたウ―レットが、なんとなんと、
アシュリー事件でのシアトルこども病院が組織したWGの検討と提言を
障害に配慮した生命倫理の手続きのモデルにしろ、なんて
言いだしちゃっていること。
どどどーしたの?
どうやら、
WGに障害学の学者が入っていて、
セーフガードにもインフォームドコンセントやら手続きがちゃんと盛り込まれていて、
その歩み寄りと丁寧な検討と障害学からの提言を盛り込んだ姿勢がよい、ということみたい。
そう言えばBill Peaceも、
WGの論文が出た時にブログでそんなことを書いていた。
私は、Peaceはへースティング・センターに弱いからなぁ、と思っていたんだけど、
Ouelletteよ、おまえもか……と、がっくり。
私の独断的な推理では、
やっぱり生命倫理学そのものが、基本的にプロセス重視だから、というのが1点。
もう1点は、アシュリー事件はやっぱり複雑すぎる。コワすぎる。
それから、やっぱりOuelletteさんは、ナイーブ過ぎる。
その証拠に、
3月に出てきた“アシュリー療法”の新規12ケースのうち、
WG論文でウ―レットが誉めているセーフガードが採用されたケースがどれだけあったと?
多くは担当医の独断で決まっていたようだったけど?????
【「生命倫理と障害」】
Alicia Ouelletteの新刊「生命倫理と障害:障害者に配慮ある生命倫理を目指して」(2011/6/22)
Ouellette「生命倫理と障害」概要(2011/8/17)
エリザベス・ブーヴィア事件: Quellette「生命倫理と障害」から(2011/8/9)
幼児期
Sidney Miller事件: 障害新生児の救命と親の選択権(2011/8/16)
Ouelletteの「生命倫理と障害」:G事件と“無益な治療”論について(2011/12/17)ここから3本。
児童期
Ouellette「生命倫理と障害」:人工内耳と“Ashley療法”について(2011/12/19)ここから2本。
生殖期
Ouellette「生命倫理と障害」第5章:「アリソン・ラッパーの像」(2012/1/17)ここから3本。
成年期
Ouellette「生命倫理と障害」第6章 成年期: Maryのケース(2012/3/31)
Ouellette「生命倫理と障害」第6章 成年期:Larry McAfeeのケース(2012/3/31)
Ouellette「生命倫理と障害」第6章: Scot Matthewsのケース(2012/3/31)
終末期
Ouellette「生命倫理と障害」第7章: 人生の終わり(2012/5/18)
【今年3月に公になった“アシュリー療法”実施事例について】
論争から5年、アシュリー父ついに動く(2012/3/16)
「アシュリー療法」やった6ケースのうち、2人は養子(2012/3/16)
広がる“Ashley療法”、続報をとりあえずピックアップ(2010/3/17)
“Ashley療法” Tomのケース(2012/3/28)
“Ashley療法”Ericaのケース(2012/3/28)
成長抑制をやったEricaの母親の意識について(2012/3/30)
2012.05.27 / Top↑
Alicia Ouellette“Bioethics and Disability”最終の2章を読んだ。
読み始めたのが去年の夏だから、ほぼ1年かけて読んだことになる。
ほとんど内容を覚えていないはずだわ。エントリーにしておいて、よかった。
(これまでのエントリーは、次のエントリーの末尾にリンクします)
以下、書いておかないと週明けには忘れていそうなので
ごくごく簡単にメモ。
第7章は「人生の終わり」
障害者の終末期医療を巡る判断の倫理問題がテーマ。
取り上げられているのは
当ブログでも何度か触れているTerri Shiavo事件と、Sheila Pouliot事件。
後者はあまり広く議論になったものではなく、
恐らく、Ouellette自身が検察サイドで関わり、
この本の冒頭、障害者と生命倫理の溝に気付いたきっかけとなった事件として
触れられているものではないかと思うけど、そう断ってあるわけではない。
前者は健常者の女性が心臓発作から植物状態と診断され、
生命維持中止を求める夫と、継続を求める両親が対立して、訴訟へ。
政治が介入する騒ぎにまで論争が発展した有名なケース。
事前指示書のようなものはなく、
元気な頃のエピソードからの本人意思の確認が大きな論点となった。
後者は、生まれて以来一度も自己決定能力を有したことのない重症障害のある女性が
州立のグループホームで暮らしていた42歳の時に重い肺炎となり、
NYの州法が硬直的だったために、悲惨な延命治療で本人が苦しみ続け非業の死となった。
この2つのケースを通じてウ―レットが解説するのは
大きく言えば、障害者運動は障害のある生を価値なきものとみなすなとの観点から
原理的にone-fit-for-all な法的措置を求めるが、それは後者のケースように
本人を苦しめるだけなのだ、という点。
それから
生命倫理の側では、既にクインラン事件、クルーザン事件から
いくつかのスタンダードができていて(両事件についてはエントリーあります)、
・自己決定能力のある患者には治療を拒否する権利がある。
・自己決定能力のない患者には治療を拒否してもらう権利がある。
・終末期の意志決定は裁判所ではなく医療現場で行う。
・決定能力のない患者の医療決定では近親者に代理決定者として行動する権利がある。
・終末期の意志決定において代理人は患者の望みの根拠に事前指示書をおいてよい。
・医療的に供給される栄養と水分は治療である。
(障害者運動は基本的なケアと捉えている)
その他、生命倫理学者らの議論を紹介した後に、
たぶん自身が関わったからだろうと思うのだけれど、
さすが法学者の本領発揮の詳細な法学的分析が行われています。
私には手に余るので、ここはパス。
この章を読んで、一番気になったのは
この人が生命倫理学の政治性みたいなものに気付いていないらしいこと。
米国に「御用学者」がいないはずもないんだけれど。
本当に生命倫理学者は全員が
患者の利益と自己決定権を守るべく公正な分配のために尽くしていると信じてるみたい。
「ピーター・シンガー問題」とウ―レットが称する辺りを別にすれば。
ちょっと、その世界観はナイーブ過ぎないかなぁ……?
読み始めたのが去年の夏だから、ほぼ1年かけて読んだことになる。
ほとんど内容を覚えていないはずだわ。エントリーにしておいて、よかった。
(これまでのエントリーは、次のエントリーの末尾にリンクします)
以下、書いておかないと週明けには忘れていそうなので
ごくごく簡単にメモ。
第7章は「人生の終わり」
障害者の終末期医療を巡る判断の倫理問題がテーマ。
取り上げられているのは
当ブログでも何度か触れているTerri Shiavo事件と、Sheila Pouliot事件。
後者はあまり広く議論になったものではなく、
恐らく、Ouellette自身が検察サイドで関わり、
この本の冒頭、障害者と生命倫理の溝に気付いたきっかけとなった事件として
触れられているものではないかと思うけど、そう断ってあるわけではない。
前者は健常者の女性が心臓発作から植物状態と診断され、
生命維持中止を求める夫と、継続を求める両親が対立して、訴訟へ。
政治が介入する騒ぎにまで論争が発展した有名なケース。
事前指示書のようなものはなく、
元気な頃のエピソードからの本人意思の確認が大きな論点となった。
後者は、生まれて以来一度も自己決定能力を有したことのない重症障害のある女性が
州立のグループホームで暮らしていた42歳の時に重い肺炎となり、
NYの州法が硬直的だったために、悲惨な延命治療で本人が苦しみ続け非業の死となった。
この2つのケースを通じてウ―レットが解説するのは
大きく言えば、障害者運動は障害のある生を価値なきものとみなすなとの観点から
原理的にone-fit-for-all な法的措置を求めるが、それは後者のケースように
本人を苦しめるだけなのだ、という点。
それから
生命倫理の側では、既にクインラン事件、クルーザン事件から
いくつかのスタンダードができていて(両事件についてはエントリーあります)、
・自己決定能力のある患者には治療を拒否する権利がある。
・自己決定能力のない患者には治療を拒否してもらう権利がある。
・終末期の意志決定は裁判所ではなく医療現場で行う。
・決定能力のない患者の医療決定では近親者に代理決定者として行動する権利がある。
・終末期の意志決定において代理人は患者の望みの根拠に事前指示書をおいてよい。
・医療的に供給される栄養と水分は治療である。
(障害者運動は基本的なケアと捉えている)
その他、生命倫理学者らの議論を紹介した後に、
たぶん自身が関わったからだろうと思うのだけれど、
さすが法学者の本領発揮の詳細な法学的分析が行われています。
私には手に余るので、ここはパス。
この章を読んで、一番気になったのは
この人が生命倫理学の政治性みたいなものに気付いていないらしいこと。
米国に「御用学者」がいないはずもないんだけれど。
本当に生命倫理学者は全員が
患者の利益と自己決定権を守るべく公正な分配のために尽くしていると信じてるみたい。
「ピーター・シンガー問題」とウ―レットが称する辺りを別にすれば。
ちょっと、その世界観はナイーブ過ぎないかなぁ……?
2012.05.27 / Top↑