自分が乳ガンと診断された時の、友人とのやり取りの体験から、
Debora Orr さんが、Guardianに。
10 things not to say to someone when they’re ill
The Guardian, April 18, 2012
病気の人に向かって言ってはいけない言葉 トップ10
(spitzibaraが乗り移った Orrさんの言葉として)
1.「まぁ、かわいそうにぃー(お気の毒にぃー)」
他人から憐れまれて喜ぶ人はいません。
2.「だいじょうぶ。あなたなら病気にだって勝てるわ」
病気は人格テストではありません。
治るのは、闘って打ち勝った人だけがもらえるご褒美?
もし言うなら、ウソでもいいから
「母も20年前にやったけど、今はサーカス団でアクロバットやってるわ」
3.「あらぁ、元気そうじゃない」
ウソはつかなくてよろしい。
言った方も言われた方もバツが悪いだけ。
4.「やつれちゃったのねぇ」「ひどい顔になって」
本当に言う人がいるんです。
わざわざ教えてくれなくてもいいのに。
でも自分で「ひどい有様でしょ?」なんて言いたい時もある。
そういう時は一緒にギャグにして笑ってね。
(一緒に写真をとってはしゃいでくれた友人のエピソードがあるけど
これは病気の人との関係性とか両者の気分、その時の“場”の作用もあるので、
ちょっと難しいと思う。その人だって誰にでも言えるわけではないと思うし)
5.「検査結果が出たら、教えてね」
心配してくれてるのは分かるけど、
辛い検査を受けた挙句に、悪い結果が出て、
また苦しい治療を受けるのかって落ち込んでいる時に
みんなに知らせて回らなくちゃ、なんて気分にはなれないし。
よかったら本人じゃなくて、
身内の人とか親友とかに聞いてみて。
6.「私にできることがあったら何でも」
これ、みんな言うけど、つまんない。
自分で何ができるか考えて、具体的に提案してよ。
「子どもの迎え、引き受けようか?」
「美味しいお刺身と、それから
『寅さん』シリーズ持っていこっか?」みたいに。
逆に、これを言われた人は、
「これして」「じゃあ、あれして」厚かましくガンガン要求すべし。
7.「大丈夫よ、そんな心配しなくたって」
いえいえ。
そんな心配があるから心が騒いでいるのです。
そうじゃなかったら、そんな不安を口になどしません。
不安だから、その気持ちを分かってほしいだけ。
それなのに、口にした途端に否定しないで。
8.「ねぇ。抗がん剤って、どんな感じ?」
好奇心を抑えられないで、これを聞く人って結構いる。
でも、なんだって症状や治療に関する質疑応答をせにゃならん?
お見舞いに来てもらったら、楽しい時を共に過ごしたいものですわ。
9.「どうしても顔を見ないと気が済まないから」
こんなことを言う奴に限って、
自分がいかに忙しいかを言い訳しながら、
いついつしか行けないとか、この日はダメなんだけど、この日はどうかとか、
うだらうだらと、邪魔くさい。そういうの、やめて。
「今晩、仕事帰りに寄ってもいい?」とか
「20日のコンサート、チケット取ったわよ。当日の体調で決めてOK」
こんなふうにスマートに。
10.「あなたが病気になるなんて、あたし、辛くて辛くて」
乳がんになったと打ち明けたら、
「ええーっ。あなたがいないと私、やっていけな~い!」と、わめいたバカは、
そのままトイレに駆け込んだかと思うと、目を真っ赤に腫らして出てきやがった。
病人の方は、こうしてバーで、あんたと楽しく酒飲もうとしてんだよっ。
病気になったのも、死ぬんじゃないかと考えてるのも、あ・た・し。
あんたが主人公になって、
自分の気持ちを病人に世話させるんじゃねーよ。
------
……とはいえ、自分が重病の友人を目の前にすると、
誰だって、こういうことを言ったりしたりしてしまうもの。
私だって、
自分が言われる立場になるまでは分からなかったし。
でも私ががんになって分かった、いちばん大事なことは、
ついマズイことを言ってしまって「しまったな」と思う場面が少々あったって、
その人が苦しい時に、友として、そこにいてあげる……ということ。
その人なりの表現方法で、相手を思う気持ちを届けること。
Debora Orr さんが、Guardianに。
10 things not to say to someone when they’re ill
The Guardian, April 18, 2012
病気の人に向かって言ってはいけない言葉 トップ10
(spitzibaraが乗り移った Orrさんの言葉として)
1.「まぁ、かわいそうにぃー(お気の毒にぃー)」
他人から憐れまれて喜ぶ人はいません。
2.「だいじょうぶ。あなたなら病気にだって勝てるわ」
病気は人格テストではありません。
治るのは、闘って打ち勝った人だけがもらえるご褒美?
もし言うなら、ウソでもいいから
「母も20年前にやったけど、今はサーカス団でアクロバットやってるわ」
3.「あらぁ、元気そうじゃない」
ウソはつかなくてよろしい。
言った方も言われた方もバツが悪いだけ。
4.「やつれちゃったのねぇ」「ひどい顔になって」
本当に言う人がいるんです。
わざわざ教えてくれなくてもいいのに。
でも自分で「ひどい有様でしょ?」なんて言いたい時もある。
そういう時は一緒にギャグにして笑ってね。
(一緒に写真をとってはしゃいでくれた友人のエピソードがあるけど
これは病気の人との関係性とか両者の気分、その時の“場”の作用もあるので、
ちょっと難しいと思う。その人だって誰にでも言えるわけではないと思うし)
5.「検査結果が出たら、教えてね」
心配してくれてるのは分かるけど、
辛い検査を受けた挙句に、悪い結果が出て、
また苦しい治療を受けるのかって落ち込んでいる時に
みんなに知らせて回らなくちゃ、なんて気分にはなれないし。
よかったら本人じゃなくて、
身内の人とか親友とかに聞いてみて。
6.「私にできることがあったら何でも」
これ、みんな言うけど、つまんない。
自分で何ができるか考えて、具体的に提案してよ。
「子どもの迎え、引き受けようか?」
「美味しいお刺身と、それから
『寅さん』シリーズ持っていこっか?」みたいに。
逆に、これを言われた人は、
「これして」「じゃあ、あれして」厚かましくガンガン要求すべし。
7.「大丈夫よ、そんな心配しなくたって」
いえいえ。
そんな心配があるから心が騒いでいるのです。
そうじゃなかったら、そんな不安を口になどしません。
不安だから、その気持ちを分かってほしいだけ。
それなのに、口にした途端に否定しないで。
8.「ねぇ。抗がん剤って、どんな感じ?」
好奇心を抑えられないで、これを聞く人って結構いる。
でも、なんだって症状や治療に関する質疑応答をせにゃならん?
お見舞いに来てもらったら、楽しい時を共に過ごしたいものですわ。
9.「どうしても顔を見ないと気が済まないから」
こんなことを言う奴に限って、
自分がいかに忙しいかを言い訳しながら、
いついつしか行けないとか、この日はダメなんだけど、この日はどうかとか、
うだらうだらと、邪魔くさい。そういうの、やめて。
「今晩、仕事帰りに寄ってもいい?」とか
「20日のコンサート、チケット取ったわよ。当日の体調で決めてOK」
こんなふうにスマートに。
10.「あなたが病気になるなんて、あたし、辛くて辛くて」
乳がんになったと打ち明けたら、
「ええーっ。あなたがいないと私、やっていけな~い!」と、わめいたバカは、
そのままトイレに駆け込んだかと思うと、目を真っ赤に腫らして出てきやがった。
病人の方は、こうしてバーで、あんたと楽しく酒飲もうとしてんだよっ。
病気になったのも、死ぬんじゃないかと考えてるのも、あ・た・し。
あんたが主人公になって、
自分の気持ちを病人に世話させるんじゃねーよ。
------
……とはいえ、自分が重病の友人を目の前にすると、
誰だって、こういうことを言ったりしたりしてしまうもの。
私だって、
自分が言われる立場になるまでは分からなかったし。
でも私ががんになって分かった、いちばん大事なことは、
ついマズイことを言ってしまって「しまったな」と思う場面が少々あったって、
その人が苦しい時に、友として、そこにいてあげる……ということ。
その人なりの表現方法で、相手を思う気持ちを届けること。
2012.04.26 / Top↑
The National Audit of Dementia (全国認知症調査)は、医療の質向上を目指して集まった英国精神医学会などの職能団体が共同で2008年にスタートした事業である。2009年には一般病院(general hospital)における認知症の人々へのケアの質を調査するための評価基準をNICE(医療技術評価機構)のガイドラインなどを参照しつつ作成し、2010年3月から翌年4月まで調査を実施。英国で初めての調査だという。2011年12月に報告書”Report of the National Audit of Dementia Care in General Hospitals 2011”が発表されたので、要約から概要を紹介する。
調査の主眼は、以下の2点。
① ケアする能力の測定:認知症の人のケア・ニーズを把握し、それに応えるための病院の体制と資源の実態。
② ケアの質の測定:認知症の人が病院で一定レベルのケアを受けているエビデンスを収集・把握する。
調査は、病院レベルでの「中心調査」と病棟レベルでの「補足調査」の2層で構成。
具体的な方法は、病院レベルでは①認知症ケア方針など病院の体制に関する総合的なチェック・リストと②認知症患者40人の症例に関する資料。病棟レベルでは①ケア体制に関するチェック・リスト、②認知症の人に影響する物理的環境のチェック・リスト、③病棟スタッフへのアンケートによる意識調査、④それぞれの支援とケアに関する介護者と認知症の人へのアンケート調査、⑤病棟での観察。
中心調査の評価基準は①基本レベル、②期待されるレベル、③意欲的レベルの3タイプ。①基本レベルの最高点は、ケア体制で20/21点、症例情報の調査では14/28点だった。
全体の傾向としては、病院によりバラつきが大きく、また病院の総合的な体制と病棟でのケアの質とには相関はほとんど見られなかった。病院に認知症ケアの方針やケア・パスがあることは必ずしも現場のケアの質を反映しないということだ。
例えば栄養状態のアセスメントは全国的には7割の患者で実施されているが、病院ごとに見ると3%から100%とバラつき幅が大きい。患者の機能や精神状態、環境その他のアセスメントも、病院としては実施の方針が定められている割合が高い一方で、症例情報を見ると実際はさほど行われていないなど、病院方針と現場の実態のズレが目立った。
多くの病院が連携チーム(リエゾン・チーム)による専門的な精神医療が受けられる体制を謳い、実際にその体制を整備している。しかし、個別症例では夜間や週末の対応不足や退院以降に向けた支援サービスの不備が見受けられ、一般病院における精神医療と退院後に向けた支援体制の軽視が透けて見える。
慣れない病院環境で暮らすことになる患者を本人中心にケアするためには、必要な情報を家族や友人知人から聴取しスタッフ間で共有する仕組みが必要だが、どの病院でも病棟でも不十分で、本来なら避けられるはずの不穏や向精神薬処方に繋がっている可能性がある。スタッフ全員に認知症に関する意識向上研修を義務付けている病院は5%。認知症患者をケアするためのスキルアップ研修を用意している病院は23%。認知症ケアの研修・知識を十分に積んでいると感じるスタッフは32%。
99%の病院が最低限の人員配置確保に努力しているが、現場では認知症患者のニーズを満たすには人が足りないと感じているスタッフが3分の2を超える。また認知症ケアに当たるスタッフへの支援と指導の仕組みがある病院も少ない。
ベッドから時計が見える、色のコントラストにより掲示が見えやすく工夫されているなど病棟環境への配慮も、できている病院は項目ごとに概ね半数程度しかなく、改善が望まれる。
現場の観察から明らかになった実態も深刻だ。病棟は認知症にやさしい居住空間ではなく、騒音や慌ただしい人の気配から逃れることのできる空間が全くない。スタッフから関心を向けられることも少なく、活動も刺激もない病棟で患者は退屈している。病院の方針には本人中心ケアのアプローチが謳われていても、病棟にはそうした文化自体が存在せず、患者と接する姿勢は事務的である、など、多くの問題点が浮き彫りになっている。
日本の総合病院も認知症ケアに無関心ではいられない事情は同じだろう。学ぶところの多い報告書ではないだろうか。
「世界の介護と医療の情報を読む」69
「介護保険情報」2012年3月号
調査の主眼は、以下の2点。
① ケアする能力の測定:認知症の人のケア・ニーズを把握し、それに応えるための病院の体制と資源の実態。
② ケアの質の測定:認知症の人が病院で一定レベルのケアを受けているエビデンスを収集・把握する。
調査は、病院レベルでの「中心調査」と病棟レベルでの「補足調査」の2層で構成。
具体的な方法は、病院レベルでは①認知症ケア方針など病院の体制に関する総合的なチェック・リストと②認知症患者40人の症例に関する資料。病棟レベルでは①ケア体制に関するチェック・リスト、②認知症の人に影響する物理的環境のチェック・リスト、③病棟スタッフへのアンケートによる意識調査、④それぞれの支援とケアに関する介護者と認知症の人へのアンケート調査、⑤病棟での観察。
中心調査の評価基準は①基本レベル、②期待されるレベル、③意欲的レベルの3タイプ。①基本レベルの最高点は、ケア体制で20/21点、症例情報の調査では14/28点だった。
全体の傾向としては、病院によりバラつきが大きく、また病院の総合的な体制と病棟でのケアの質とには相関はほとんど見られなかった。病院に認知症ケアの方針やケア・パスがあることは必ずしも現場のケアの質を反映しないということだ。
例えば栄養状態のアセスメントは全国的には7割の患者で実施されているが、病院ごとに見ると3%から100%とバラつき幅が大きい。患者の機能や精神状態、環境その他のアセスメントも、病院としては実施の方針が定められている割合が高い一方で、症例情報を見ると実際はさほど行われていないなど、病院方針と現場の実態のズレが目立った。
多くの病院が連携チーム(リエゾン・チーム)による専門的な精神医療が受けられる体制を謳い、実際にその体制を整備している。しかし、個別症例では夜間や週末の対応不足や退院以降に向けた支援サービスの不備が見受けられ、一般病院における精神医療と退院後に向けた支援体制の軽視が透けて見える。
慣れない病院環境で暮らすことになる患者を本人中心にケアするためには、必要な情報を家族や友人知人から聴取しスタッフ間で共有する仕組みが必要だが、どの病院でも病棟でも不十分で、本来なら避けられるはずの不穏や向精神薬処方に繋がっている可能性がある。スタッフ全員に認知症に関する意識向上研修を義務付けている病院は5%。認知症患者をケアするためのスキルアップ研修を用意している病院は23%。認知症ケアの研修・知識を十分に積んでいると感じるスタッフは32%。
99%の病院が最低限の人員配置確保に努力しているが、現場では認知症患者のニーズを満たすには人が足りないと感じているスタッフが3分の2を超える。また認知症ケアに当たるスタッフへの支援と指導の仕組みがある病院も少ない。
ベッドから時計が見える、色のコントラストにより掲示が見えやすく工夫されているなど病棟環境への配慮も、できている病院は項目ごとに概ね半数程度しかなく、改善が望まれる。
現場の観察から明らかになった実態も深刻だ。病棟は認知症にやさしい居住空間ではなく、騒音や慌ただしい人の気配から逃れることのできる空間が全くない。スタッフから関心を向けられることも少なく、活動も刺激もない病棟で患者は退屈している。病院の方針には本人中心ケアのアプローチが謳われていても、病棟にはそうした文化自体が存在せず、患者と接する姿勢は事務的である、など、多くの問題点が浮き彫りになっている。
日本の総合病院も認知症ケアに無関心ではいられない事情は同じだろう。学ぶところの多い報告書ではないだろうか。
「世界の介護と医療の情報を読む」69
「介護保険情報」2012年3月号
2012.04.09 / Top↑
BMC Medical Informatics and Decision Making 2012, 12:26 に掲載の論文で
初期から中等度の認知症の人を介護しているケアラーへの
レスパイト・サービス選択をめぐる情報の流れと意思決定支援について
専門家とクライエントとそれぞれの視点からの質的研究。
12人のケアラーのインタビューと
3人の専門家アドバイザーのインタビュー、
さらに医療職の職種ごとに分けた3つのグループへのインタビューを
分析した結果、
ケアラーの意思決定支援のニーズについては
医療職の姿勢も考えも多様にバラついており、
それらは医療職ごとのアイデンティティを反映している。
すなわち、それぞれの医療職のアイデンティティごとの姿勢と考えによって
認知症のケアラーにどのような情報を提供すべきか、
それをいつの段階で提供すべきか、など
意思決定支援への姿勢が決まっていく。
中にはケアラーにはリアルな情報を与えない方がよい、と考える職種もあり
そういう職種グループではケアラーへの情報にフィルターをかけている。
この論文の結論は、
医療職の考え方によって情報の流れが疎外されて
クライアントの意思決定能力が制約されている。
そのために、医療サービスから
ケアラーとパートナーとなり共に意思決定を行う能力が失われている。
(共に意思決定を行う shared decision making)
アクセスできる資源さえあれば情報が自由に手に入る時代に
医療職が情報にフィルターをかけることはいかがなものか。
qualitative study of professional and client perspectives on information flows and decision aid use
7th Space Interactive, March 30, 2012
印象的なのは、
ケアラーと医療職の関係において
ケアラーを「クライエント」と称していること。
実は、これ、
昨日からツイッターでいろんな人とやりとりしていたテーマに重なるので
特に興味をひかれたもの。
関連ツイートを次のエントリーに。
初期から中等度の認知症の人を介護しているケアラーへの
レスパイト・サービス選択をめぐる情報の流れと意思決定支援について
専門家とクライエントとそれぞれの視点からの質的研究。
12人のケアラーのインタビューと
3人の専門家アドバイザーのインタビュー、
さらに医療職の職種ごとに分けた3つのグループへのインタビューを
分析した結果、
ケアラーの意思決定支援のニーズについては
医療職の姿勢も考えも多様にバラついており、
それらは医療職ごとのアイデンティティを反映している。
すなわち、それぞれの医療職のアイデンティティごとの姿勢と考えによって
認知症のケアラーにどのような情報を提供すべきか、
それをいつの段階で提供すべきか、など
意思決定支援への姿勢が決まっていく。
中にはケアラーにはリアルな情報を与えない方がよい、と考える職種もあり
そういう職種グループではケアラーへの情報にフィルターをかけている。
この論文の結論は、
医療職の考え方によって情報の流れが疎外されて
クライアントの意思決定能力が制約されている。
そのために、医療サービスから
ケアラーとパートナーとなり共に意思決定を行う能力が失われている。
(共に意思決定を行う shared decision making)
アクセスできる資源さえあれば情報が自由に手に入る時代に
医療職が情報にフィルターをかけることはいかがなものか。
qualitative study of professional and client perspectives on information flows and decision aid use
7th Space Interactive, March 30, 2012
印象的なのは、
ケアラーと医療職の関係において
ケアラーを「クライエント」と称していること。
実は、これ、
昨日からツイッターでいろんな人とやりとりしていたテーマに重なるので
特に興味をひかれたもの。
関連ツイートを次のエントリーに。
2012.03.30 / Top↑
いただきもの情報の、2月12日の中国新聞
「よろず相談室」コーナーがあまりに面白いので。
相談の内容は、55歳の男性から以下のもの。
近くで一人暮らしをしている78歳の母が病気で倒れ、食事や入浴などに介助が必要となりました。長男の私が最期まで面倒をみるべきだと思いますが仕事があります。母と不仲な専業主婦の妻は「自分でみるか、施設に入れて」と譲りません。
これに、74件の回答が寄せられたとのこと。
紙面で紹介されているのは6回答で、1つだけが男性からのもの。
簡単にそれぞれの要旨と年齢を並べると、
・その古くさい考えと思いやりの無さが、妻と母との不仲の原因では。(無職 73歳)
・家族だけで抱え込むより介護サービスを利用して。それは介護放棄ではないから。(介護士 38歳)
・仕事に逃げて妻に押しつけようとしている。私の夫も嫁しゅうと問題でそうだった。妻の気持ちを理解する姿勢で解決を。(会社員 41歳)
・嫌がる妻に無理に介護させても母が不快なだけ。母を思うなら施設利用を。(自営業男性 34歳)
・自分の世代では嫁の介護が当たり前で、ひどい仕打ちを受けつつ尽くしたが最後に感謝してもらって苦労が消えた。介護は妻と母親が仲直りするチャンス。(主婦 80歳)
・妻は介護士ではない。どうしても妻にやらせて自分は仕事に行くなら、母親の老後資金から妻に対価を支払うべき。(主婦 29歳)
ここまで読んで、パパッと頭に浮かんだ感想は、
・ただ一人「施設へ」と回答しているのは男性だということ。
・その男性の回答意図は
「嫌がる妻に無理にやらせるよりは、母のために施設へ」であり、
「専業主婦なのだから本来なら妻がやって当たり前」と
「妻が快くやってくれるなら、それでよいが」が前提され、
「嫌がる妻に無理にやらせることも選択肢ではあるが」も前提されている。
・質問者の妻が提示した選択肢は
「息子である夫自身が介護する」と「施設に入れる」のはずなのだけれど、
回答した男性の念頭にある選択肢は
「快くであれ渋々であれ妻にやらせる」と「施設を利用する」2つであって、
「息子である男性自身が介護する」という選択肢はなぜか消えてしまう。
というか、息子が自分で介護するという選択肢をなきものとするために
施設利用という解が持ち出されているのだけど、
「母親自身のための施設利用」と言い換え、
施設利用という決断の原因・理由を妻に、決断の利益を母親に転嫁することで、
夫であり息子である自分は2重に免罪されている。
・女性の回答は、それぞれに
自分の個人的な体験が生々しく反映しているなぁ、ということ。
・質問者の男性にとっては介護の方策の問題でしかないことが、
回答者の女性には、夫婦間の関係性や嫁・姑の関係性の中で受け止められていること。
・姑と不仲で介護は嫌だと言っている女性に、
「介護は姑と仲直りする絶好のチャンス」と押し付けるのも女性……。
こういう人が「私は姑のウンコを素手で受けてきた」と胸を張ったりするのかもなぁ。
・かといって、妻にカネを払えばいいという問題でもないと思うけど、
若い人たちはもうこのくらい割り切れているのだろうか。
母親の老後資金から払え、というのも、ちょっとついていけない。
・それにしても、質問者はもちろん、回答者の誰も
この母親本人は何を望んでいるのか、をまったく問題にしないのね……。
――と思ったら、さすがに心理カウンセラーのアドバイスには含まれていました。
介護の問題は、一人ひとりの生き方や人間関係を反映します。
相談者はまず、母と不仲な妻をこれまでどう支えてきたのか、夫としての自分を振り返るとよいでしょう。妻の「NO」は、単に義母や介護に対してではなく、かねてのつらさを受け止めてくれない夫に愛想を尽かして言っているのかもしれません。
今は介護保険は介護休業などの制度も利用できます。どうしても自宅で妻に介護を頼む必要があるなら、「やって当たり前」ではなく、妻を説得して味方につける努力や工夫が必要です。
社会的な支援をどこまで使い、どこまで家族で対応したいか。仕事を持つ自分には何ができるのか。自分の希望や覚悟を明確にし、誠意を持って妻に伝えましょう。母親の気持ちも忘れてはなりません。誰に介護してほしいか、本人に効くべきです。
妻や親とのこれまでの関係がよくなければ、簡単に結果は出ないでしょう。ですが、ここで真剣に向き合えば、夫婦関係や家族関係を変える好機にもなりますよ。
つまり、介護は家族の問題の一つであり、
家族の問題そのものから「男であることを盾にとって逃げるな」と言っておられるのですね。御意。
具体的な問題については
現実対応と、本人尊重というのは、どちらも的確なアドバイスと思う。
ただ、現実問題、こういう状況で本人の気持ちのありかって、往々にして
「介護も介助もいらない。私はまだ大丈夫」だったりするから
家族にとっては悩ましい、というものじゃないのかなぁ。
そうすると、こういう質問をする男性は
妻にも対応しなければならん、並行して母親にも対応しなければならん、わけで、
そういう手間なことを辛抱強くできるような男なら、
最初からこんな質問をしなければならん状況にはおかれない……とすれば、
結局は心理カウンセラーが指摘する原点に戻るのかも?
それにしても、
次回に向けて回答募集されている相談は40歳男性の
「妻が中年太りをしてきた。妻には綺麗でいてほしい。
本人を傷つけずに痩せてほしいと伝えるには?」
「よろず相談室」の担当者さんに少々問題があるのか、
それとも本当に世の中の男性ってな、この程度なんでしょーか?
私の周りの男性は、もうちょっと平均値が高いように思うんですけど。
「よろず相談室」コーナーがあまりに面白いので。
相談の内容は、55歳の男性から以下のもの。
近くで一人暮らしをしている78歳の母が病気で倒れ、食事や入浴などに介助が必要となりました。長男の私が最期まで面倒をみるべきだと思いますが仕事があります。母と不仲な専業主婦の妻は「自分でみるか、施設に入れて」と譲りません。
これに、74件の回答が寄せられたとのこと。
紙面で紹介されているのは6回答で、1つだけが男性からのもの。
簡単にそれぞれの要旨と年齢を並べると、
・その古くさい考えと思いやりの無さが、妻と母との不仲の原因では。(無職 73歳)
・家族だけで抱え込むより介護サービスを利用して。それは介護放棄ではないから。(介護士 38歳)
・仕事に逃げて妻に押しつけようとしている。私の夫も嫁しゅうと問題でそうだった。妻の気持ちを理解する姿勢で解決を。(会社員 41歳)
・嫌がる妻に無理に介護させても母が不快なだけ。母を思うなら施設利用を。(自営業男性 34歳)
・自分の世代では嫁の介護が当たり前で、ひどい仕打ちを受けつつ尽くしたが最後に感謝してもらって苦労が消えた。介護は妻と母親が仲直りするチャンス。(主婦 80歳)
・妻は介護士ではない。どうしても妻にやらせて自分は仕事に行くなら、母親の老後資金から妻に対価を支払うべき。(主婦 29歳)
ここまで読んで、パパッと頭に浮かんだ感想は、
・ただ一人「施設へ」と回答しているのは男性だということ。
・その男性の回答意図は
「嫌がる妻に無理にやらせるよりは、母のために施設へ」であり、
「専業主婦なのだから本来なら妻がやって当たり前」と
「妻が快くやってくれるなら、それでよいが」が前提され、
「嫌がる妻に無理にやらせることも選択肢ではあるが」も前提されている。
・質問者の妻が提示した選択肢は
「息子である夫自身が介護する」と「施設に入れる」のはずなのだけれど、
回答した男性の念頭にある選択肢は
「快くであれ渋々であれ妻にやらせる」と「施設を利用する」2つであって、
「息子である男性自身が介護する」という選択肢はなぜか消えてしまう。
というか、息子が自分で介護するという選択肢をなきものとするために
施設利用という解が持ち出されているのだけど、
「母親自身のための施設利用」と言い換え、
施設利用という決断の原因・理由を妻に、決断の利益を母親に転嫁することで、
夫であり息子である自分は2重に免罪されている。
・女性の回答は、それぞれに
自分の個人的な体験が生々しく反映しているなぁ、ということ。
・質問者の男性にとっては介護の方策の問題でしかないことが、
回答者の女性には、夫婦間の関係性や嫁・姑の関係性の中で受け止められていること。
・姑と不仲で介護は嫌だと言っている女性に、
「介護は姑と仲直りする絶好のチャンス」と押し付けるのも女性……。
こういう人が「私は姑のウンコを素手で受けてきた」と胸を張ったりするのかもなぁ。
・かといって、妻にカネを払えばいいという問題でもないと思うけど、
若い人たちはもうこのくらい割り切れているのだろうか。
母親の老後資金から払え、というのも、ちょっとついていけない。
・それにしても、質問者はもちろん、回答者の誰も
この母親本人は何を望んでいるのか、をまったく問題にしないのね……。
――と思ったら、さすがに心理カウンセラーのアドバイスには含まれていました。
介護の問題は、一人ひとりの生き方や人間関係を反映します。
相談者はまず、母と不仲な妻をこれまでどう支えてきたのか、夫としての自分を振り返るとよいでしょう。妻の「NO」は、単に義母や介護に対してではなく、かねてのつらさを受け止めてくれない夫に愛想を尽かして言っているのかもしれません。
今は介護保険は介護休業などの制度も利用できます。どうしても自宅で妻に介護を頼む必要があるなら、「やって当たり前」ではなく、妻を説得して味方につける努力や工夫が必要です。
社会的な支援をどこまで使い、どこまで家族で対応したいか。仕事を持つ自分には何ができるのか。自分の希望や覚悟を明確にし、誠意を持って妻に伝えましょう。母親の気持ちも忘れてはなりません。誰に介護してほしいか、本人に効くべきです。
妻や親とのこれまでの関係がよくなければ、簡単に結果は出ないでしょう。ですが、ここで真剣に向き合えば、夫婦関係や家族関係を変える好機にもなりますよ。
つまり、介護は家族の問題の一つであり、
家族の問題そのものから「男であることを盾にとって逃げるな」と言っておられるのですね。御意。
具体的な問題については
現実対応と、本人尊重というのは、どちらも的確なアドバイスと思う。
ただ、現実問題、こういう状況で本人の気持ちのありかって、往々にして
「介護も介助もいらない。私はまだ大丈夫」だったりするから
家族にとっては悩ましい、というものじゃないのかなぁ。
そうすると、こういう質問をする男性は
妻にも対応しなければならん、並行して母親にも対応しなければならん、わけで、
そういう手間なことを辛抱強くできるような男なら、
最初からこんな質問をしなければならん状況にはおかれない……とすれば、
結局は心理カウンセラーが指摘する原点に戻るのかも?
それにしても、
次回に向けて回答募集されている相談は40歳男性の
「妻が中年太りをしてきた。妻には綺麗でいてほしい。
本人を傷つけずに痩せてほしいと伝えるには?」
「よろず相談室」の担当者さんに少々問題があるのか、
それとも本当に世の中の男性ってな、この程度なんでしょーか?
私の周りの男性は、もうちょっと平均値が高いように思うんですけど。
2012.02.22 / Top↑
英国のケアラー支援チャリティ、CarersUKのサイトから。
CarersUKのサイトのフォーラムで会員の一人が
「落ち込んだ時の立ち直り方」掲示板スレッドを立てた際に、
続々と集まったアドバイスのトップ20を集めたもの。
(とり急ぎのアップです。訳語については今後、順次ブラッシュアップします)
気持ちが沈む日に、ケアラーのあなたへ
1. 何をやってもダメな日は誰にだってあるもの。あまり自分を責めないで。
2. できたら、しばらく家を出て、どこかへお出かけに。
3. 元気になれる人と話をする。家族でも友人でも、こうしたフォーラムでも。
4. ありがたいなぁと思うことをリストにしてみる。
5. 一度に何もかもやろうとしないで一つずつ。あせらずに。
6. 夜は十分な睡眠を。睡眠不足はウツの元。疲れがとれないと気持ちもアップしません。
7. お風呂でプチ贅沢を。バブル・バス、バス・オイル、音楽、好きな本などで。
8. 車の中でCDに合わせ、大声で歌う。
9. 自分はケアラーなだけじゃない、って思い出そう。介護以外にやっているいろんなことを。
10.一人で何もせずにいるより、そういう時は忙しくしているほうが前向きになれる。
11.なんとか取り戻そうとあがくより今日は×な日だったと思い決めて、明日のことを考える。
12.起こっている問題を冷静に整理する。明日の問題は明日に。
13.いつもと違うことをするとレスパイトに近い効果があることも。花を飾ってみる、よそ行きの上着とか帽子を身につけてみると気分が変わるかも。
14.自分が大好きなものをいろいろ入れた「ハッピー・ボックス」を作っておく。元気になりたい時には開けて、その中のものを。全部でも可よ。
15.できたら、なにか身体を動かすことを。ウォーキング、ヨガ、ガーデニング。なんでも自分に合ったものを。
16.チョコレートとかカレーなどの食べものは、気持ちが明るくなる原料入りです。
17.やるべきことがあまりに沢山あって嫌気がさしてしまう時は、15分とか30分と時間を決めて、まず本を読んだり何もしないでいたり、気が向くままに「自分の時間」を作ってしまう。
18.創造的なことに耽ってみる。絵を描くなり、物語を書くなり、楽器を弾くなり、ゴチャゴチャから頭を離せるなら何でも可。
19.その日の過ごし方をざっと決める。いつも通りに暮らせるだけの用事を入れて、ただし余裕でこなせることだけを。
20.自分に言い聞かせて。私は一人じゃないって。
20 tips for low mood
Cares UK
特段、ケアラーに限らない内容のようにも思えますが、
それはともあれ、
「今日はなんだかなぁ……」という日のケアラーの方々に、
やっぱり、まずは、届けたい。
あなたの気持、こんなふうにちゃんと分かっている人がいるよ、
ケアラーのあなたに、こうしてメッセージを送っている人もいるよ、
……というメッセージとして――。
CarersUKのサイトのフォーラムで会員の一人が
「落ち込んだ時の立ち直り方」掲示板スレッドを立てた際に、
続々と集まったアドバイスのトップ20を集めたもの。
(とり急ぎのアップです。訳語については今後、順次ブラッシュアップします)
気持ちが沈む日に、ケアラーのあなたへ
1. 何をやってもダメな日は誰にだってあるもの。あまり自分を責めないで。
2. できたら、しばらく家を出て、どこかへお出かけに。
3. 元気になれる人と話をする。家族でも友人でも、こうしたフォーラムでも。
4. ありがたいなぁと思うことをリストにしてみる。
5. 一度に何もかもやろうとしないで一つずつ。あせらずに。
6. 夜は十分な睡眠を。睡眠不足はウツの元。疲れがとれないと気持ちもアップしません。
7. お風呂でプチ贅沢を。バブル・バス、バス・オイル、音楽、好きな本などで。
8. 車の中でCDに合わせ、大声で歌う。
9. 自分はケアラーなだけじゃない、って思い出そう。介護以外にやっているいろんなことを。
10.一人で何もせずにいるより、そういう時は忙しくしているほうが前向きになれる。
11.なんとか取り戻そうとあがくより今日は×な日だったと思い決めて、明日のことを考える。
12.起こっている問題を冷静に整理する。明日の問題は明日に。
13.いつもと違うことをするとレスパイトに近い効果があることも。花を飾ってみる、よそ行きの上着とか帽子を身につけてみると気分が変わるかも。
14.自分が大好きなものをいろいろ入れた「ハッピー・ボックス」を作っておく。元気になりたい時には開けて、その中のものを。全部でも可よ。
15.できたら、なにか身体を動かすことを。ウォーキング、ヨガ、ガーデニング。なんでも自分に合ったものを。
16.チョコレートとかカレーなどの食べものは、気持ちが明るくなる原料入りです。
17.やるべきことがあまりに沢山あって嫌気がさしてしまう時は、15分とか30分と時間を決めて、まず本を読んだり何もしないでいたり、気が向くままに「自分の時間」を作ってしまう。
18.創造的なことに耽ってみる。絵を描くなり、物語を書くなり、楽器を弾くなり、ゴチャゴチャから頭を離せるなら何でも可。
19.その日の過ごし方をざっと決める。いつも通りに暮らせるだけの用事を入れて、ただし余裕でこなせることだけを。
20.自分に言い聞かせて。私は一人じゃないって。
20 tips for low mood
Cares UK
特段、ケアラーに限らない内容のようにも思えますが、
それはともあれ、
「今日はなんだかなぁ……」という日のケアラーの方々に、
やっぱり、まずは、届けたい。
あなたの気持、こんなふうにちゃんと分かっている人がいるよ、
ケアラーのあなたに、こうしてメッセージを送っている人もいるよ、
……というメッセージとして――。
2012.02.14 / Top↑