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日本ではドル箱降圧剤、バルサルタンの論文不正を巡って
昨日、京都府立医科大がデータ操作を認める調査報告を出し、
今朝の新聞一面を飾っていましたが、

製薬会社の社員(中には株式を保有している社員も)が
自社の薬の効果や安全性を調べる臨床実験の報告論文の共著者になっているとか、
製薬会社がゴーストライターを雇って論文を書かせ、
有名研究者らの名前だけを並べた論文で認可を受けるとか、
はたまた治験データの隠ぺいや操作など、
英語圏でのビッグ・ファーマのスキャンダルは
なぜか日本ではまともに報道されないだけで、
ここ数年だけでも、わんさと出てきています。

そこで、それらの情報を取りまとめて
エントリーを立てようと考えていたら、

今日のNYTに標題の
いろんな意味でショッキングなニュースが……。


中国政府による外国企業の汚職調査で、
上海を含む3都市でグラクソ・スミス・クライン社の幹部社員らから
汚職容疑で逮捕が出ている。

逮捕された幹部らは
医師、病院、政府官僚などへの贈賄を認めているとのこと。

今年初めに
グラクソの中国でのオペレーションで不正が行われているとの内部告発が
ウォール・ストリート・ジャーナル紙にあり、それを受けて
同社は独自に調査をしたところ不正は行われていなかった、と先週発表したばかりだった。

中国は製薬会社にとっては
最も急速に成長するマーケット。

グラクソの中国での販売実績は12年には12億ドルへと17%も急増。

一方、イーライ・リリーは去年、
ブラジル、中国、ポーランド、ロシアで
官僚と医師らへの違法な金銭支払いに2900万ドルの和解金で合意している。

GSK社の中国での不正は
支出報告を偽造して公務員の医師らに贈り物や現金を送ったというもの。

米国司法省はここ数年、
ビッグ・ファーマによる販促目的での医師や病院への違法な金銭支払いについて
捜査を勧めてきたが、

今回の件では中国政府は電光石火のスピードで
社員を拘束し、事務所に強制捜査を入れ、結果を素早く発表した。

当局者は
中国での「販売チャンネルを切り開き、値段を目的で」
グラクソは同社の販促に協力できそうな人々に広範に賄賂を贈った、と。

驚いたのは記事最後の一文。

GlaxoSmithKline’s problems in China deepened this month when the company fired the head of its research and development center in Shanghai for misrepresenting date in a paper he co-wrote.

グラクソの中国における問題が深刻化したきっかけは、
共著者として執筆した論文でデータの報告に偽りがあったとして
今月、同社が上海のリサーチ開発センターのトップを解雇したことだった。

(ゴチックはspitzibara)

(バルサルタン事件もそうだけど、
「解雇」というのは、ファーマ側にとっては
証拠を出さないための都合のよい方策でもある……とか?)

GlaxoSmithKline Accused of Corruption by China
NYT, July 11, 2013


ちなみに、この記事で言及されている、ここ数年の米国司法省の調査の関連で、
以下のエントリーに見られるように、グラクソは昨年、
史上最大規模の30億ドルの罰金と和解金を支払っています。
(ついでにイーライ・リリーはというと、14億2000万ドル)

ビッグ・ファーマのビッグな罰金(2012/7/4)

グラクソの罪状は
18歳未満には認可されていないにもかかわらず
Paxilを18歳未満のうつ病対象と偽ったことと、
糖尿病治療薬Avandiaの安全性データをFDAに報告しなかったこと。

それぞれ以下のリンクの関連エントリーに詳細がありますが、
どちらも死者が出る悪質さです。

【パキシル関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)

【アバンディア関連】
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)


ところで、グラクソと言えば、
日本では目下もっぱらHPVワクチンで注目されているビッグ・ファーマですが、
そこには、こんな話も ↓

HPVワクチン論文の利益相反(前)(2013/7/9)
HPVワクチン論文の利益相反(後)(2013/7/9)

また、6月には松あきら議員の夫とグラクソの「蜜月」も報じられましたっけね……?


【16日追記】
続報あり、4人の名前を中国政府が公表。
http://www.guardian.co.uk/business/2013/jul/16/china-names-gsk-bribery-suspects?CMP=EMCNEWEML6619I2

【23日補遺から続報】

中国でのグラクソの贈賄スキャンダルで、グラクソ側が幹部による贈賄と性的便宜供与を認めた。GSK has admitted that some of its senior Chinese executives broke the law in a £320m cash and sexual favours bribery scandal.
http://www.guardian.co.uk/business/2013/jul/22/glaxosmithkline-admits-bribery-china?CMP=EMCNEWEML6619I2

NYT. 中国でのグラクソ・スキャンダルは違法な販促にとどまらず、研究にも疑義?
Glaxo’s problems in China may not just be about its sales practices. They may also concern its research.
2013.07.28 / Top↑
直前エントリーで紹介した記事を読んだ時に、
一緒に目についた5月の記事。


スタンフォード大学とバイオテク企業 Auxogynが
IVFに使用されているヒト胚の細胞周期の最初の3段階にかかる時間のデータに
特許を申請し、米国特許局がこれを認めたことから、
新たな国際的な論争が起きている。

ヒト胚の細胞分裂の最初の3段階にかかる時間を調べて、
そのデータによって子宮に入れる最適な胚を選別すれば、
体外受精の成功率が3倍にも上げられる可能性があることが、
最近の英国の研究で明らかになった。

しかし、米国の特許が認められてしまえば、
この新技術が広く使われにくくなる。

批判の中心人物である世界的胚培養士のJacques Cohen 医師は
Reproductive BioMedicine Onlineで、

「胚で起こる自然のプロセスの一部を所有するのは
すでに高価な医療技術のステップをいちいち過剰に商業化しようとする
許しがたい行いである」と書いている。

Auxogyn社では、
特許の対象は自然のプロセスそれ自体ではなく、
胚の発達を測る方法を対象にしたもの、と主張。

しかしCohenは、

There will be no end to what corporations may claim to own. A few years ago it was the gene sequence, now it is embryonic growth. Next year it may be one’s heartbeat or the synapse.

企業が所有権を主張する対象は際限なく拡がっていくでしょう。
数年前までは遺伝子配列だったが、今では胚の発達に所有権が主張される。
来年あたりは、人の心拍数やシナプスが対象になるかも。

Leading scientists attacks university over ‘outrageous’ IVF treatment patent
The Guardian, May 26, 2013


それにしても、こういう「やったもん勝ち」をやるのって、
やっぱり米国なんですね……。


記事が5月25日のものなので、
乳がん遺伝子変異 BRCA1とBRCA2の特許を巡って
Myriad Genetics社の特許を最高裁が認めるかどうか、
注目されていた訴訟について言及されています。

これについては、その後の6月14日に
ヒト遺伝子の特許は認められないとの判決が出ています。

関連エントリーはこちら ↓
「遺伝子に特許やるな」という米国の訴訟(2010/2/8)
欧州司法裁判所、「ヒト胚を使った研究成果に特許認めず」を堅持(2011/10/25)


で、結局のところ、
やっぱりこういうことなんではないか……と頭はここへ戻る ↓
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること(2009/12/12)

で、希望がないなぁ……と、やっぱり考えてしまうのも、
09年12月12日に書いた、これ ↓

今後も長い年月に渡って加速度的に進むはずの
科学とテクノ研究競争に「勝ち続ける」ために必要な予算規模なんて、
きっと誰にも試算できないんじゃないかとも思うし。

私が知りたい「どれほどの資金が必要か」というのは金額ではなく、
今でも、地方の産業は成り立たなくなり、まともに働いても食えない人が沢山出てきて、
医療も福祉も教育も、どんどん崩壊している状況で、
今後、勝ち続けるために必要な予算を確保するとしたら、
日本国民の生活が例えば具体的にどういうものになれば賄えるのか、ということ。

まずは足手まといの障害者と高齢者には死んでもらって、
さらに働いているのに食い詰めてしまう人にも死んでもらって、
それで医療費と社会保障費がいくらかは浮くにしても、それで勝ち続けられるのか、
その程度で高度化する一方の国際研究競争に追いつけるとも思えず、
本当はもっと必要になってくるんじゃないのか、ということ。

仮に国際競争に勝ち伸びて隷属国になることを避け続けることが可能なのだとしても、
いま世界規模でアフリカと一部アジアの国で起こっているようなことの縮図として、
日本国内での都会と地方の格差や、また国民間の財力・能力による格差、さまざまな差別が
もっと酷薄な形をとって現実になっていくのではないのか、ということ。


でもって、それって結局のところ、
「誰も幸福になれない世界」ではないのか、ということ――。
2013.07.11 / Top↑
これまで重症意識障害からの“回復事例”についてはいろいろ拾ってきたし、
その中には“回復”というよりも“誤診”じゃないかと思われるような事例もあり、
また恐ろしいことに臓器提供が決まった後で“回復”したケースまであって
考えさせられてきたのですが、

いよいよ決定的な“誤診”事例が出てきました。

米国NY州、シラキュースのSr. Joseph病院で
2009年に「死んだ」と診断して家族の同意の元に臓器摘出の準備に取り掛かったところ、
手術室に運ばれた患者が目を開けて「死んでいない」ことが判明した事例について
この度、そのケアの不適切に対して罰金6000ドル、

病院が事後にまともに調査しなかったことに対して罰金16000ドル、
合計22000ドルが課せられた、というニュース。

問題となった患者はColleen S. Burnsさん。
41歳(いつの時点での年齢かは不明)。

Xanax、Benadrylその他のオーバードースで救急搬送され、
カルテには「心臓死」と記載されているとのこと。
家族から臓器提供の同意が取り付けられた。

奇妙なのは、臓器摘出予定の前日、
看護師が反射テストをやって、足の裏を指でなぞったところ、
足をギュッと縮めた、という記録があること。

人工呼吸器を装着しつつ、鼻が膨らんで自発呼吸の兆候が見られたり
唇や舌も動いていたというのだけれど、

たいそう不思議なことに、これらの観察が行われた20分後に
看護師はBurnsさんに鎮静剤のアチバンを投与したという記録が残っている。
(が、医師の記録には鎮静剤も症状の改善も出てこない)

しかし、これらの兆候は臓器摘出の準備が進められる間も消失することはなく、
2009年10月20日、手術室に運び込まれたBurnsさんが目を開けたので、
摘出は中止された。

何が起こったのか、
本人にも家族にも説明はなかった。

これほどの事態が起こっていながら
病院側は検証も原因究明も行わなかった。

州保健局は
Post –Standard紙からの質問を受けて、2010年3月に調査を開始。

保健局の抜き打ち監査を受けて、病院はようやく調査に着手したが、
それでも、その調査はおざなりのものでしかなかった、と州の報告書は指摘する。

Burnsさんは心肺停止になってもいなければ不可逆的な脳損傷を負ってもおらず、
生命維持の中止を決定する基準を満たしていなかったにもかかわらず、
病院はBurnsさんの身体から薬の影響が抜けるまで待って十分な検査をすることなく
生命維持の中止を決定した、とも。

こうした事実関係を報告書で読んだ専門家は
患者が生きている兆候を確認していながら、
どうしてナースは鎮静剤を打ったのか、といぶかる。

「それでは患者は沈静によって無反応になってしまう。
鎮静したり鎮痛剤を与えなければならないなら、
その患者は脳死ではなく、臓器を摘出すべきではない」

すごいのはこの記事の最後の1文で、

The hospital also was ordered to hire a consulting neurologist to teach staff how to accurately diagnose brain death.

同病院にはさらに、スタッフに脳死の正しい診断方法を指導するための相談役として脳神経科医を雇うことが命じられた。


ちなみにBurnsさんは無事に退院したが、
その後2011年1月に自殺。

St. Joe’s “dead” patient awoke as docs prepared to remove organs
The Post-Standard, July 7, 2013


思い出すのは、以下の英国のスティーブン・ソープ事件。

英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)

重鎮静の状態で脳死と判定して家族に生命維持停止と臓器提供への同意が要請された。
家族が拒否し、外部の脳外科医に診断を依頼したところ、
脳死ではないと判断。重鎮静を解いてみたら意識が回復した、という事件。

このエントリーには脳死臓器移植の問題に詳しいMoritaさんから
貴重なコメントも寄せられています。

また、その他この段階までに拾った
“回復事例”エントリーへのリンクも。
2013.07.11 / Top↑
前のエントリーの続きです。


④ 今年2013年には既に41論文が出ており、
そのうち17論文がHPVワクチンの効果と安全性を謳うもので、
効果を疑問視しているものは2論文(打出先生がアブストラクトから推測)。

HPVワクチンへの不安は根拠のない作り話(myth)だと結論付けた以下の論文でも、
http://www.unboundmedicine.com/medline/citation/23732252/Beliefs_Behaviors_and_HPV_Vaccine:_Correcting_the_Myths_and_the_Misinformation_

「利益相反」には以下のように書かれており、

Two of the authors (GDZ and NWS) are investigators on investigator-initiated grants funded by Merck and Co. GDZ is a recipient of an unrestricted program development grant from GlaxoSmithKline. WAF has received speaker fees, educational, and unrestricted research grants from Merck Canada. ZR has received a fee for consulting with Merck on behavioural science issues. Author SP has no conflicts of interest to report.

5人の著者のうち、メルクともGSKとも金銭関係がないのは1人。


⑤また、アフリカのサブサハラ地域の若い女性への
HPVワクチンの有効性を結論付けた以下の論文でも
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23242542

金銭的支援と利益相反の可能性についての事情は
上記2007年の事情と同じ。

(というか、資料のそこの部分を読んでみると、
ここにもGSKの社員とGSK社の株を保有している研究者が含まれている他に
英国の途上国支援機関からカネが出ていて、
英国はゲイツ財団の途上国でのワクチン推進では一番のパートナーだということを考えてしまう。
政府資金だからヒモも色もついていないという時代ではないかも??)


⑥ 逆に、HPVワクチンで自己免疫疾患SLEが引き起こされているとする以下の論文では、
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23624585

利益相反のディスクロージャーのところに書かれているのは

Disclosure: none.
ディスクロージャー: なし。


⑦ とても興味深いのは
主著者が今野良医師である、2009年のこちらの論文。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20375802

これまで言及した上記論文が全て「HPV ワクチン」と表記しているのに対して
「子宮頸癌ワクチン」と表記していることが際立っているこの論文は、

「子宮頸癌ワクチン」には45年間に渡って
コスト効率よく子宮頸がんの負担を減じる効果が見込まれると結論している。

で、そのディスクロージャーはというと、

This study was supported by a grant from GraxoSmithKline K. K. Japan. R. Konnno received research and travel grants and honoraria for courses and conferences from GlaxoSmithKline Japan, Merck Japan, and Quiagen Japan. He is a member of the Advisory/Expert Board at GraxoSmithKline Biologicals. This study was also supported by GraxoSmithKline Biologicals, where authers Van Kriekinge and Demarteau are currently employed.


今野医師にGSK、メルクその他との濃厚な金銭関係があり、
この研究そのものがGSKによって行われたものと思しいだけでなく、
論文の著者5人のうち、日本人ではない2人はGSKの社員。


ちなみに当ブログが今野良医師の名前に目を止めたのは2009年。
こんな妙な発言があったから ↓

子宮頸がんワクチンでの失神は「ドキドキするから」?(2011/8/5)


製薬会社と研究者の癒着で
医学研究のデータそのものが信頼性を失っている問題については
以下のエントリーなどに(これらに他の関連エントリーへのリンクあります) ↓

製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側(2013/1/4)
NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみた(2013/6/28)


こうした「ファーマゲドン」の実態に、最近では
研究者らの間から全治験データの公開を求める声が上がっています ↓
臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから(前)(2013/7/1)
臨床実験データ全公開を求める動き、研究者らから(後)(2013/7/1)

4日にはNYTの社説も「治験データのフル・ディスクロージャーを」と。
http://www.nytimes.com/2013/07/05/opinion/full-disclosure-needed-for-clinical-drug-data.html?nl=todaysheadlines&emc=edit_th_20130705&_r=1&
2013.07.11 / Top↑
週末、こちらのシンポジウムへ行ってきました ↓
http://homepage1.nifty.com/hkr/simin/index.htm

<テーマⅠ 「子宮頸癌ワクチン」導入の裏側>の前半は
金沢大学付属病院講師で産婦人科医の打出喜義先生の講演。

打出先生について書いた当ブログエントリーはこちら。

打出先生の講演は
まさに当ブログで継続的に拾ってきた「医学研究データへの製薬会社の影響力」という
テーマそのものだったので(関連エントリーは文末にリンク)、まずは、その関連の部分を以下に。
(その他の部分については、今後の手元に応じて適宜エントリーに、と考えています。
最近、エントリーにしたいことの半分も書けない状態が続いているのですが……)

「海外の論文等でどのように評価されているのか」をテーマに、
HPVワクチンの効果と安全性の根拠とされる海外論文の詳細を検証するという趣旨で、

PubMedで HPV vaccineをキーワードに検索すると、
論文のヒット数は5844件。

年ごとの論文数でみると、
1996年には44本だったものが、
2005年に181、06年に375 、12年には708と
2006年の接種開始を境に急増している。

次にHPV vaccine safetyをキーワードに検索してみると、
こちらも2007年前後に急増しており、
07年の35論文はほとんどが安全と結論。

しかし、これらの論文の詳細にはたいへん興味深い点がある。

例えば、

①http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19242247

4価ワクチン、ガーダシルの効果を結論付けた
オーストラリアのJenny Mayによる、この論文では、
「利益相反」の個所に以下の記述がある。

Jenny May is a member of CSL Ltd’s GARDASILⓇAdvisory Board.

CSL Ltd とは、
以下のMSDの文書(日本語)によると、
http://www.msd.co.jp/newsroom/pdf/us_release/merck_1202_2.pdf

オーストラリアにおいてGARDASIL®をMerck & Co., Inc., Whitehouse Station, N.J., U.S.A.から導入し販売しているCSL Limited……


つまり、この論文を書いたのは
米国のメルク社からガーダシルを「導入し販売」している会社の社員さんで
ガーダシル顧問委員会のメンバーだというわけ。


② 同じく2007年の論文。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17531764

こちらはグラクソ・スミス・クライン(GSK)社のサーバリクスのについて
…generally safe, well tolerated, and highly immunogenic などと書き、
安全性と効果のエビデンスとされる論文。

著者は HPV Vaccine Adolescent Study Investigators Networkと称する総勢11人。
そして、そのうち4人がグラクソの社員。

で、この論文のAcknowledgmentのところで謝意が述べられているのは
ひたすらGSKの関係機関やその関係者。

そこには、以下の記述も含まれている。

This study 580299/012 was funded and coordinated by GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart Belgium.


つまり、研究そのものがGSKの資金とコーディネートによるもの。


③ 同じく2007年にLancetに発表された以下の論文。
 http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2807%2960946-5/fulltext

著者は the HPV PATRICIA study group と称する24人で
子宮頸がん予防効果があり、予防に有効と結論。

利益相反の個所に書いてあることは
フルテキストでないと読めないので6日の打出先生の資料に戻ると、
26行の記述に、なんと17回も GlaxoSumithKline が登場している。

ざっと読んでみたら、けっこうなことが書かれている。

・一人はメルクとGSKの両方からHPVワクチンの臨床実験を行うためのグラントをもらっていて、
さらに両者から顧問料と講演報酬を受け取っている。

・著者のうち5人はGSKの社員で、そのうちの一人は同社の株式を保有している。

・一人はメクルとサノフィパスツールMSD(サノフィのワクチン部門)の推進委員会の委員であり、
かつGSK社の外部顧問で、彼の研究チームはこれら3社が実施しているワクチンの臨床実験に関与している。

・著者の一人でブラジルの研究者は、HPV開発臨床実験に関する「GSKの調査官」。


……と、ここまでで、やっと半分くらいで、

「利益相反ステートメント」はまだまだ続き、
「申告すべき利益相反はない」著者は24人のうち8人のみ。

他は、GSKや、メルクやサノフィなどと
HPVワクチン研究での金銭関係がある、というディスクロージャーが続く。


今年の論文についてなど、次のエントリーに。
2013.07.11 / Top↑