先月、世界の400都市、50カ国で
モンサントへの抗議行動が行われ、
米国シアトルでも2000人が集まった。
それらの人々は
モンサントを支持するゲイツ財団にも批判を向けたことになる。
ゲイツ財団はモンサントの遺伝子組み換え(GM)作物によって
途上国の飢餓問題を解決しようと提唱しているが、
歴史的にも
GM種子は農業の持続性を損ない、
食の安全保障を脅かすことがすでに明らか。
GM種子は
貧困国の農夫に巨額の投資を強いるだけでなく
作物が次々に農薬への耐性を身につけて、
さらに強い種子と農薬を必要とするようになり、
結果的に飢餓を撲滅するどころか、
むしろ食料の不安定を永続化している。
さらに北米の農夫は
モンサントの特許侵害で次々に訴えられているほか、
5月にはオレゴン州で許可されていないGM種子の作物が発見され、
遺伝子汚染がすでに起こっていることも判明した。
オレゴンの農場に「あってはならないはずの遺伝子組み換え小麦」(2013/6/1)
真に貧困国の貧しい小規模農家を助けようとするなら、
作物の多様性を重視した従来型のアグロエコロジーが解決策。
記事の結論部分は以下。
Industrial agriculture continues to fall short of feeding the world but provides tremendous financial gains to Monsanto’s shareholders. It’s a shame the Gates Foundation, which many consider a local leading light, can’t see this. Until Monsanto and the Gates Foundation realize that sustainable agriculture, not GE seeds, is the solution to feed the world, many people around the globe will remain hungry.
工業型農業では世界人口を養うことができていないまま、一方でモンサントの株主には莫大な利益をもたらしている。ゲイツ財団のように地元の多くの人が尊敬するリーダーが、それを理解していないのは残念なことだ。GM種子ではなく持続可能な農業こそが世界人口を養うための解決策だとモンサントとゲイツ財団とが理解するまで、世界中の多くの人が飢え続けることだろう。
Gates Foundation’s support of Monsanto reveals it has put ending hunger on the back burner
Real Change, July 3, 2013
ふむ……。
モンサントは、
GM種子とラウンドアップでは持続可能な農業にならないということを理解できていないから、
それでやり続けていることなのかなぁ。
ゲイツ財団も、それが理解できていないから
モンサントのGM種子で途上国の飢餓救済を、と言っているのかなぁ。
以下のエントリーなどで見るように、モンサントの株主さんなんだけど、
そこのところ、この記事では「モンサントに資金を提供している」ゲイツ財団……て。
まぁ、記事の著者が
Seattle’s Community Alliance for Global Justiceに所属ということだから、
地元では露骨に批判するのがはばかられるのかもしれないけれど。
モンサントのあくどいショーバイで何が起こっているかについても、
以下のエントリーなどに ↓
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)
TPP進める経済界のトップ、やっぱりぐるっと廻って“ゲイツつながり”(2011/10/27)
2012年9月17日の補遺(the African Green Revolution Forumでアナン、ゲイツ夫妻が基調講演)
2013年2月18日の補遺(ゲイツとスリム、GM種子開発に2500万ドル)
ところで、
アグロエコロジーを検索してみると、
いつもお世話になっているtu_ta9さんが
2年も前にブログに詳細な情報を書いておられました ↓
アグロエコロジーが面白そうだ
ブログ「今日考えたこと」(2010/7/29)
で、tu_ta9さんのエントリーから定義を拝借してくると、
アグロエコロジーについて、「フードシステムの生態学」と定義される新しい学際的な学問領域であり、農場から農村景観、地域コミュニティまで視野に入れ、持続可能な食料生産・流通・消費を目指し、社会学、文化人類学、環境学、倫理学、経済学も含むものであると説明
農場から食卓まで(Farm to Table)農産物が流れていくことによって、里山の生態系も、かかわる人びとの暮らしも豊かになることを目指す学問領域
なお、以下のコメント欄でtu_ta9さんに教えてもらった
6月25日の日本の官邸前での抗議行動の模様はこちら ↓
http://tpp.jimdo.com/%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/2013-5-25-march-against-monsanto/
モンサントへの抗議行動が行われ、
米国シアトルでも2000人が集まった。
それらの人々は
モンサントを支持するゲイツ財団にも批判を向けたことになる。
ゲイツ財団はモンサントの遺伝子組み換え(GM)作物によって
途上国の飢餓問題を解決しようと提唱しているが、
歴史的にも
GM種子は農業の持続性を損ない、
食の安全保障を脅かすことがすでに明らか。
GM種子は
貧困国の農夫に巨額の投資を強いるだけでなく
作物が次々に農薬への耐性を身につけて、
さらに強い種子と農薬を必要とするようになり、
結果的に飢餓を撲滅するどころか、
むしろ食料の不安定を永続化している。
さらに北米の農夫は
モンサントの特許侵害で次々に訴えられているほか、
5月にはオレゴン州で許可されていないGM種子の作物が発見され、
遺伝子汚染がすでに起こっていることも判明した。
オレゴンの農場に「あってはならないはずの遺伝子組み換え小麦」(2013/6/1)
真に貧困国の貧しい小規模農家を助けようとするなら、
作物の多様性を重視した従来型のアグロエコロジーが解決策。
記事の結論部分は以下。
Industrial agriculture continues to fall short of feeding the world but provides tremendous financial gains to Monsanto’s shareholders. It’s a shame the Gates Foundation, which many consider a local leading light, can’t see this. Until Monsanto and the Gates Foundation realize that sustainable agriculture, not GE seeds, is the solution to feed the world, many people around the globe will remain hungry.
工業型農業では世界人口を養うことができていないまま、一方でモンサントの株主には莫大な利益をもたらしている。ゲイツ財団のように地元の多くの人が尊敬するリーダーが、それを理解していないのは残念なことだ。GM種子ではなく持続可能な農業こそが世界人口を養うための解決策だとモンサントとゲイツ財団とが理解するまで、世界中の多くの人が飢え続けることだろう。
Gates Foundation’s support of Monsanto reveals it has put ending hunger on the back burner
Real Change, July 3, 2013
ふむ……。
モンサントは、
GM種子とラウンドアップでは持続可能な農業にならないということを理解できていないから、
それでやり続けていることなのかなぁ。
ゲイツ財団も、それが理解できていないから
モンサントのGM種子で途上国の飢餓救済を、と言っているのかなぁ。
以下のエントリーなどで見るように、モンサントの株主さんなんだけど、
そこのところ、この記事では「モンサントに資金を提供している」ゲイツ財団……て。
まぁ、記事の著者が
Seattle’s Community Alliance for Global Justiceに所属ということだから、
地元では露骨に批判するのがはばかられるのかもしれないけれど。
モンサントのあくどいショーバイで何が起こっているかについても、
以下のエントリーなどに ↓
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業”を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)
TPP進める経済界のトップ、やっぱりぐるっと廻って“ゲイツつながり”(2011/10/27)
2012年9月17日の補遺(the African Green Revolution Forumでアナン、ゲイツ夫妻が基調講演)
2013年2月18日の補遺(ゲイツとスリム、GM種子開発に2500万ドル)
ところで、
アグロエコロジーを検索してみると、
いつもお世話になっているtu_ta9さんが
2年も前にブログに詳細な情報を書いておられました ↓
アグロエコロジーが面白そうだ
ブログ「今日考えたこと」(2010/7/29)
で、tu_ta9さんのエントリーから定義を拝借してくると、
アグロエコロジーについて、「フードシステムの生態学」と定義される新しい学際的な学問領域であり、農場から農村景観、地域コミュニティまで視野に入れ、持続可能な食料生産・流通・消費を目指し、社会学、文化人類学、環境学、倫理学、経済学も含むものであると説明
農場から食卓まで(Farm to Table)農産物が流れていくことによって、里山の生態系も、かかわる人びとの暮らしも豊かになることを目指す学問領域
なお、以下のコメント欄でtu_ta9さんに教えてもらった
6月25日の日本の官邸前での抗議行動の模様はこちら ↓
http://tpp.jimdo.com/%E3%81%93%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%81%AE%E3%82%A2%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/2013-5-25-march-against-monsanto/
2013.07.11 / Top↑
(前のエントリーからの続きです)
Dr. Jeffersonは問題のカイザー研究に関わった研究者の追跡を試みるが、
もともと当初の実験データは見ておらずロッシュの分析に基づいた研究だったとか、
研究ファイルをなくしたという話しか出てこなかった。
JeffersonとDoshiは、
医学研究は信頼に基づいて行われている、その信頼はヒエラルキーになっており、
自分で検証するすべを持たない患者は監視してくれる機関があるものだと信じているが、
林医師の指摘は、その信頼を揺らがせ、監視してくれる機関がないことを明らかにした、と。
そこでロッシュ社に直接、データを求めたJeffersonは
同社から守秘の同意文書に署名を求められた。
署名しない限り、協力はできない、と。
2009年12月にチームは
タミフルの合併症・入院予防効果は確認できないとBritish Medical Journalに発表。
その際、BMJも独自の調査結果を発表し、
ロッシュ社がタミフルに関する論文でゴースト・ライターを使っていたこと、
そのライター達が効果を強調するようプレッシャーを受けたと証言していることを
暴いた。
ロッシュ社はロッシュ社で2010年にハーバードの研究者らに
臨床実験データの再検証を依頼し、その検証からは
カイザー研究の結果を追認する結果が出されているのだけれど、
BMJの動きを受け、
ロッシュ社はデータの一部として、3000ページを超える資料を提供。
2011年にはEuropean Medicines Agencyも19の臨床実験報告、
22000ページ以上のコピーをチームに提供した。
BMJは昨年秋、
今後は製薬会社と研究者らが求めに応じてデータを提供することに合意した場合にのみ
臨床実験の結果報告を掲載する、との方針を発表。
ロッシュ社は今年2月に、
コントは求めに応じて外部研究者らにも治験データを公開する、と発表。
今年4月には
同社がスポンサーとなったタミフルの治験の全レポートを
コクラン・チームに公開すると約束。
Yale大の心臓科医 Krumholz医師は
「こんなに年数が経って、それでもまだタミフルが効くかどうかわかっていない。
何10億も売れているという薬の効果と安全性について
分かっていることを全部公開したくないというのは、理解に苦しむ」と。
こうした動きの中、
グラクソ・スミス・クライン(GSK)はロッシュ社に先駆けて、
今後、2007年以降のグローバルな臨床実験の詳細データをすべて公開する、
その後は2000年にまでさかのぼって公開する、と約束した。
背景には、同社が去年、
糖尿病薬Avandiaの治験で心臓病リスクがあるとのデータを隠ぺいした件と、
抗うつ薬パキシルの自殺企図の副作用データの隠ぺいの件とで
合衆国法務法に訴追されて、有罪を認め、
同種の罰金としては史上最大の罰金30億ドルの支払いで合意したばかりで、
イメージ回復の必要という事情もある。
Avandiaスキャンダルについては ↓
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
Paxilスキャンダルについては ↓
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
その他の製薬会社のスキャンダルと罰金額の一覧は ↓
ビッグ・ファーマのビッグな罰金(2012/7/4)
the European Medicine Agencyは先週月曜日に
薬の認可の際に治験データの公開を義務付ける来年からの新方針の草案を発表。
ロッシュとGSKはこれを支持しているものの、その他の製薬会社も
The Pharmaceutical Reseach and Manufactures of America も
そんなことをさせられたら競争相手に手の内を明かすようなもの、
それならヨーロッパ市場から引き上げざるを得ない、と反発。
米国FDAも
ヨーロッパの動きを注視しつつも、
個人情報や企業の機密情報との関連で連邦法は
公開すべき情報を制限している、と。
Dr. Doshiらは、製薬会社が公開しないなら、自分たちで、と。
なお、タミフルとコクラン・グループに関しては
日本でも薬害オンブズパーソン会議が追いかけてくださっていました ↓
タミフルのインフルエンザ合併症予防効果は証明されていない - コクランレビューとその背景
(薬害オンブズパーソン会議 2009/12/16)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=272
コクラングループはあくまでタミフルに関する全臨床試験データの公表を求める -ロシュの「諮問委員会」設置の申し入れを拒否
(薬害オンブズパーソン会議 2013/4/2)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=376
【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)
最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側(2013/1/4)
この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
こんな話も ↓
Vytorinスキャンダルで被害被ったと株主に訴えられたメルク、6億8800万ドルで和解(2013/2/17)
Dr. Jeffersonは問題のカイザー研究に関わった研究者の追跡を試みるが、
もともと当初の実験データは見ておらずロッシュの分析に基づいた研究だったとか、
研究ファイルをなくしたという話しか出てこなかった。
JeffersonとDoshiは、
医学研究は信頼に基づいて行われている、その信頼はヒエラルキーになっており、
自分で検証するすべを持たない患者は監視してくれる機関があるものだと信じているが、
林医師の指摘は、その信頼を揺らがせ、監視してくれる機関がないことを明らかにした、と。
そこでロッシュ社に直接、データを求めたJeffersonは
同社から守秘の同意文書に署名を求められた。
署名しない限り、協力はできない、と。
2009年12月にチームは
タミフルの合併症・入院予防効果は確認できないとBritish Medical Journalに発表。
その際、BMJも独自の調査結果を発表し、
ロッシュ社がタミフルに関する論文でゴースト・ライターを使っていたこと、
そのライター達が効果を強調するようプレッシャーを受けたと証言していることを
暴いた。
ロッシュ社はロッシュ社で2010年にハーバードの研究者らに
臨床実験データの再検証を依頼し、その検証からは
カイザー研究の結果を追認する結果が出されているのだけれど、
BMJの動きを受け、
ロッシュ社はデータの一部として、3000ページを超える資料を提供。
2011年にはEuropean Medicines Agencyも19の臨床実験報告、
22000ページ以上のコピーをチームに提供した。
BMJは昨年秋、
今後は製薬会社と研究者らが求めに応じてデータを提供することに合意した場合にのみ
臨床実験の結果報告を掲載する、との方針を発表。
ロッシュ社は今年2月に、
コントは求めに応じて外部研究者らにも治験データを公開する、と発表。
今年4月には
同社がスポンサーとなったタミフルの治験の全レポートを
コクラン・チームに公開すると約束。
Yale大の心臓科医 Krumholz医師は
「こんなに年数が経って、それでもまだタミフルが効くかどうかわかっていない。
何10億も売れているという薬の効果と安全性について
分かっていることを全部公開したくないというのは、理解に苦しむ」と。
こうした動きの中、
グラクソ・スミス・クライン(GSK)はロッシュ社に先駆けて、
今後、2007年以降のグローバルな臨床実験の詳細データをすべて公開する、
その後は2000年にまでさかのぼって公開する、と約束した。
背景には、同社が去年、
糖尿病薬Avandiaの治験で心臓病リスクがあるとのデータを隠ぺいした件と、
抗うつ薬パキシルの自殺企図の副作用データの隠ぺいの件とで
合衆国法務法に訴追されて、有罪を認め、
同種の罰金としては史上最大の罰金30億ドルの支払いで合意したばかりで、
イメージ回復の必要という事情もある。
Avandiaスキャンダルについては ↓
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
Paxilスキャンダルについては ↓
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
その他の製薬会社のスキャンダルと罰金額の一覧は ↓
ビッグ・ファーマのビッグな罰金(2012/7/4)
the European Medicine Agencyは先週月曜日に
薬の認可の際に治験データの公開を義務付ける来年からの新方針の草案を発表。
ロッシュとGSKはこれを支持しているものの、その他の製薬会社も
The Pharmaceutical Reseach and Manufactures of America も
そんなことをさせられたら競争相手に手の内を明かすようなもの、
それならヨーロッパ市場から引き上げざるを得ない、と反発。
米国FDAも
ヨーロッパの動きを注視しつつも、
個人情報や企業の機密情報との関連で連邦法は
公開すべき情報を制限している、と。
Dr. Doshiらは、製薬会社が公開しないなら、自分たちで、と。
なお、タミフルとコクラン・グループに関しては
日本でも薬害オンブズパーソン会議が追いかけてくださっていました ↓
タミフルのインフルエンザ合併症予防効果は証明されていない - コクランレビューとその背景
(薬害オンブズパーソン会議 2009/12/16)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=272
コクラングループはあくまでタミフルに関する全臨床試験データの公表を求める -ロシュの「諮問委員会」設置の申し入れを拒否
(薬害オンブズパーソン会議 2013/4/2)
http://www.yakugai.gr.jp/attention/attention.php?id=376
【いわゆる“Biedermanスキャンダル”関連エントリー】
著名小児精神科医にスキャンダル(2008/6/8)
著名精神科医ら製薬会社からのコンサル料を過少報告(2008/10/6)
Biederman医師にさらなる製薬会社との癒着スキャンダル(2008/11/25)
Biederman医師、製薬業界資金の研究から身を引くことに(2009/1/1)
【その他、08年のGrassley議員の調査関連】
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書(米国)(2008/11/17)
抗ウツ剤めぐる研究者と製薬会社の癒着スキャンダル報告書 Part2(2008/11/23)
今度はラジオの人気ドクターにスキャンダル(2008/11/23)
【その他、09年の製薬会社のマーケティングやスキャンダル関連エントリー】
FDAの科学者ら「認可審査あまりにも杜撰」と内部告発(2009/1/15)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
インターネットの医薬品情報、その陰にいるのは?(2009/2/14)
FDAと製薬会社の訴訟つぶしに待った(2009/3/5)
ICなしの外傷患者臨床実験、死亡者増で中止に(2009/3/30)
FDA委員会を前に精神障害当事者らから声明(2009/6/9)
製薬会社がゴーストライターに書かせた論文でエビデンス作り(2009/8/8)
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
英米の医療スタッフから豚インフル・ワクチン接種に抵抗が出ている(2009/10/13)
最近のものでは例えば、↓
「製薬会社に踊らされて子どもの問題行動に薬飲ませ過ぎ」と英国の教育心理学者(2011/1/18)
ジェネリックを売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)
“オピオイド鎮痛剤問題”の裏側(米)(2012/10/20)
ファーマゲドン: オピオイド鎮痛剤問題のさらなる裏側(2013/1/4)
この問題を一貫して調査し報道しているProPublicaのシリーズの一つがこちら。↓
ProPublicaが暴く「ビッグ・ファーマのプロモ医師軍団の実態」(2010/11/2)
こんな話も ↓
Vytorinスキャンダルで被害被ったと株主に訴えられたメルク、6億8800万ドルで和解(2013/2/17)
2013.07.01 / Top↑
一番最近では6月28日の
NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみたなど、
製薬会社の資金と影響力によって医療のエビデンスがゆがめられている問題については、
いくつもエントリーにしてきましたが、
29日のNYTに
標題のような内容の大変興味深い記事がありました。
薬の治験データは
都合のよいものだけが発表されるなど製薬会社に操作されているというのは
1990年代から2000年代にかけて、指摘されてきた、
薬の効果と安全性のエビデンスそのものを揺るがす大きな問題で、
当ブログでも、以下のエントリーなどで
この問題についての指摘や警告の話題を拾ってきました ↓
「製薬会社は倫理観をもって」と英当局(2008/3/31)
製薬会社の舞台裏についてArt Caplan(2008/4/18)
その後の数々のデータ隠ぺいや改ざんのスキャンダルについても、
あれこれと拾ってきていますが(次のエントリーの文末にリンク)、
09年にはハーバードの医学生たちが
講義で薬について云々する教授陣に対して
製薬会社との金銭関係のディスクロージャーを求めている、というニュースも ↓
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)
今回は
ジョンズ・ホプキンスのポス・ドクの Dr. Peter Doshiなど、研究者らの中から、
製薬会社に対して治験の全データの公開を求める運動が始まっている、というニュース。
Dr. Doshiがこうした運動に加わることになった、
インフルエンザ治療薬タミフルの効果と安全性検証を巡る経緯が大変興味深い。
なにしろタミフルと言えば、
私たち一般人でも「インフルエンザだったら48時間以内にタミフル」くらいは
普通に頭に入っていたりするほど有名な薬だし、
突発的な行動のリスクが一時ずいぶん騒がれたものの、
どうやら「しっかり観察しましょう」で収まったみたいだから
それなりに効果も安全性も確認されているのだとばかり……。
まさか、実はまだ十分に検証されていないなんて……。
そのタミフルの効果と安全性の検証をめぐるDr. Doshiたちの物語が始まるのは、
豚インフルエンザの大流行に世界が震撼した2009年の夏。
ローマ在住の英国人内分泌医、Dr. Tom Jeffersonは英・豪両政府から
Roche社のタミフルについて文献の検証を依頼され、
コクラン共同計画と協働でその作業を行った。
そこにDoshiも求められて参加した。
しかし、「そもそもタミフルは効くのか?」の検証は考えた以上に困難で、
4年後の現在も、NYTには「まだ決定的な答えは出ていない」と書かれているのだけれど、
2009年には世界中の企業や政府がタミフルを備蓄し、
それだけで2009年の売り上げ30億ドルのうちの約6割を占めたのだから、
タミフルの効果は保健問題としてのみならず経済問題としても重要な問題だった。
チームが検証を始めて間もなく、
コクランのウェブ・サイトに衝撃的な投稿がある。
日本の小児科医、林敬次氏がコメントで、
合併症予防効果を肯定した「カイザー研究」では行われた10の臨床実験のうち、
2つの実験データしか公表されていないことを指摘し、
8実験でのデータが公表されていないのに、どうして効果があると結論できるのか、と
疑問を投げかけ、残りのデータの公表を求めたのだった。
原文はこちら ↓
http://www.bmj.com/highwire/filestream/440784/field_highwire_adjunct_files/1
(次のエントリーに続きます)
NEJMの前・現編集長による医学研究腐敗の指摘から、日本の「iPS臨床承認」を考えてみたなど、
製薬会社の資金と影響力によって医療のエビデンスがゆがめられている問題については、
いくつもエントリーにしてきましたが、
29日のNYTに
標題のような内容の大変興味深い記事がありました。
薬の治験データは
都合のよいものだけが発表されるなど製薬会社に操作されているというのは
1990年代から2000年代にかけて、指摘されてきた、
薬の効果と安全性のエビデンスそのものを揺るがす大きな問題で、
当ブログでも、以下のエントリーなどで
この問題についての指摘や警告の話題を拾ってきました ↓
「製薬会社は倫理観をもって」と英当局(2008/3/31)
製薬会社の舞台裏についてArt Caplan(2008/4/18)
その後の数々のデータ隠ぺいや改ざんのスキャンダルについても、
あれこれと拾ってきていますが(次のエントリーの文末にリンク)、
09年にはハーバードの医学生たちが
講義で薬について云々する教授陣に対して
製薬会社との金銭関係のディスクロージャーを求めている、というニュースも ↓
Harvardの医学生が医療倫理改革を起こそうとしている(2009/3/4)
今回は
ジョンズ・ホプキンスのポス・ドクの Dr. Peter Doshiなど、研究者らの中から、
製薬会社に対して治験の全データの公開を求める運動が始まっている、というニュース。
Dr. Doshiがこうした運動に加わることになった、
インフルエンザ治療薬タミフルの効果と安全性検証を巡る経緯が大変興味深い。
なにしろタミフルと言えば、
私たち一般人でも「インフルエンザだったら48時間以内にタミフル」くらいは
普通に頭に入っていたりするほど有名な薬だし、
突発的な行動のリスクが一時ずいぶん騒がれたものの、
どうやら「しっかり観察しましょう」で収まったみたいだから
それなりに効果も安全性も確認されているのだとばかり……。
まさか、実はまだ十分に検証されていないなんて……。
そのタミフルの効果と安全性の検証をめぐるDr. Doshiたちの物語が始まるのは、
豚インフルエンザの大流行に世界が震撼した2009年の夏。
ローマ在住の英国人内分泌医、Dr. Tom Jeffersonは英・豪両政府から
Roche社のタミフルについて文献の検証を依頼され、
コクラン共同計画と協働でその作業を行った。
そこにDoshiも求められて参加した。
しかし、「そもそもタミフルは効くのか?」の検証は考えた以上に困難で、
4年後の現在も、NYTには「まだ決定的な答えは出ていない」と書かれているのだけれど、
2009年には世界中の企業や政府がタミフルを備蓄し、
それだけで2009年の売り上げ30億ドルのうちの約6割を占めたのだから、
タミフルの効果は保健問題としてのみならず経済問題としても重要な問題だった。
チームが検証を始めて間もなく、
コクランのウェブ・サイトに衝撃的な投稿がある。
日本の小児科医、林敬次氏がコメントで、
合併症予防効果を肯定した「カイザー研究」では行われた10の臨床実験のうち、
2つの実験データしか公表されていないことを指摘し、
8実験でのデータが公表されていないのに、どうして効果があると結論できるのか、と
疑問を投げかけ、残りのデータの公表を求めたのだった。
原文はこちら ↓
http://www.bmj.com/highwire/filestream/440784/field_highwire_adjunct_files/1
(次のエントリーに続きます)
2013.07.01 / Top↑
最近、気になっている本の一つがこれ。
『ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実』
マーシャ・エンジェル著 栗原千絵子、斉尾武郎訳 篠原出版新社 2005
著者は、New England Journal of Medicineの前編集長。
アマゾンのこの本のページに
京都大学医学部付属病院探索医療センター検証部教授の
福島雅典氏の「翻訳刊行によせて」という文章が掲載されており、
その一部に以下の下りがある。
科学はもはやかつてのそれではない。科学はビジネスと結びつき、その水面下では熾烈な特許戦争が繰り広げられている。今や販売戦争を勝ち抜くため研究結果を権威づける手段として世界中から競って論文が投稿されるトップ・ジャーナルは、ビジネスの僕と化しつつあるのではないか? モンスターのごとく肥大化した科学を奉じる共同体は、すでに善意によって制御しうる域を超えている。哲学のない科学は狂気(凶器)である。科学を妄信しトップ・ジャーナルを崇める状況は、何か、歪んだ宗教とでもいうべき様相を呈している。
これは正に当ブログが
日々のニュースの断片を拾い集ながら、
その断片の集合体として描かれていく「大きな絵」として指摘してきた
「グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義」の
「科学とテクノで簡単解決」利権構図そのもの。
例えば、
医学雑誌にも製薬会社がらみのバイアス、「ディスクロージャーを」と監視団体(2009/2/17)
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
事業仕分の科学研究予算問題から考えること(2010/12/12)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)
そして、去年、
同じくNEJMの現編集長もまた、Avandiaスキャンダルに際して、
そうしたバイアスの排除に向けて努力してきたが、
最近ではNEJMに発表された論文であっても、
製薬会社資金の治験であれば医師らが信頼しなくなりつつあり、
医学研究そのものが崩壊の危機の様相を呈してきた、と発言している。
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
先週この本のことを知り、読もうかなぁ、と思っていたところ、
26日の毎日新聞の本田宏氏の連載「暮らしの明日 私の社会保障論」に、
『ビッグ・ファーマ』から以下の引用があった。
エビデンス(科学的証拠)に基づく医療が普及して久しいが、そのエビデンス自体が、世界をリードする米国製薬業界のマーケティング戦略によってゆがめられている。自社の薬に会う病気を宣伝し、病気と思いこませ、医師への薬の教育に大きな影響を与え、臨床試験も実質的に支配している。そして、資金提供した臨床試験の多くは結果的にゆがめられている根拠がある。
本田氏の連載記事の趣旨は、
バルサルタンのスキャンダルを巡って、
日本の医療費亡国論が医学研究分野の資金不足を招いていること、
その状況のままアベノミクスで医療研究での産学連携が進めば、
「新薬や新技術の開発時に同様の問題が繰り返される危険性」を指摘して、
低医療費政策の転換を訴えるもの。
で、私がすごく興味深いな、と思ったのは、
この本田氏の論考が掲載された翌27日のトップニュースが「iPS臨床承認」だったこと。
関連記事が他にも盛り沢山で、
それらから目についた情報を拾うと、
安倍政権は
iPS細胞をはじめとする再生医療研究に今後10年間で計1100憶円を拠出するという。
今年4月に京大のiPS細胞研究所に新らしくできた部署に
山中教授が「医療応用推進室」とネーミングしたのも、
そうした資金を獲得しやすくするための作戦だったのだろうし、
記事では山中教授と世耕弘成・内閣官房副長官の繋がりも指摘されているけれど、
そこにはもちろん
12年の260億円から30年に約1.6兆円、50年には約3.8兆円という国内市場規模予測と、
その予測に基づいて「再生医療を経済再生の目玉に」という政府の思惑がある。
つまり、このブログで何度も何度も書いてきたように、
先端医療の問題は薬やワクチンと同じく、
すでに保健医療の問題というよりも
政治経済の問題なんだということであり、
そこに本田氏の連載の内容を重ねて考えてみたら、
見えてくるのは、とても皮肉なことに、
グローバル強欲ひとでなしネオリベ経済の中で日本が生き残るためには、資金は、
国際競争に勝ち目があって国内的にもマーケット創出可能性が大きいところに重点配分……
という「政治経済」施策の方向性であって、
それ以外のところでは、
本田氏の主張の逆方向に向かうだろう、ということでは??
一方には、iPS細胞の臨床研究は「緒に就いたばかり」で
癌化や本来の細胞に戻ったりウイルス混入のリスクなど未解明な部分が多く、
研究者の間からですら、過剰な期待を抑えようとする声が上がっていて、
(でももちろん政府もメディアもマーケット創出のためには、
その「過剰な期待」をこそ煽るに決まっているのだけれど)
そんな中で「なぜこうも急ぐのか」という問いの答えとして、毎日の記事は、
「海外と日本が「一番乗り」を争ってしのぎを削る現状がある」ことを指摘し、
ある審査委員会委員の「海外でのiPS細胞を使った臨床試験の動きがあり、
事務局が結論を急いだのかもしれない」との発言を紹介する。
臨床応用で最も有望とされている
(毎日の記事には、あとは「ホープレス」だと言った研究者の発言も)
加齢黄斑変性の研究プロジェクト・リーダーですら微妙な発言をしている。
「世界初」でないと、今受けている支援が全部なくなるのではないかという危機感はある。米国でも二つの臨床試験計画が動いており、常に意識している。米国は企業主導なのに対し日本はアカデミア主導。ビジネスで突っ走るのではなく(新しい)治療を作ろうと頑張る日本の姿勢は(spitzibara注:「姿勢を」ではなく「姿勢は」)大事にしたい。
その一方で、
応用を目指す以上は戦略が必要。研究の最初の段階から企業も参画すべきだ。
で、冒頭に述べたように
本田氏は前日の連載で次のように書いている。
安倍晋三の経済政策「アベノミクス」は、医療による経済活性化を目指すが、産学連携が進めば、新薬や新技術の開発時に(spitzibara注:バルサルタンと)同様の問題が繰り返される危険性が高い。
結局、これらから透けて見えてくるのは、
グローバルな医学研究競争にかろうじて勝ち残ろうとするならば、
「ビジネスで突っ走る」グローバル強欲ひとでなしネオリベ世界に
なりふり構わず(国民の生命を守る責任すら放棄して)乗っかっていく以外にない事情……?
毎日新聞の記事によると、
日本政府は、再生医療の早期承認を可能にする薬事法改正案まで用意している。
合わせて不適切な再生医療を規制する再生医療安全確保法案も用意されているとはいえ、
これで海外企業が参入しやすくなるんだそうな。
再生医療に詳しい研究者の中からは
「海外企業が日本を治験の場に選び、
日本人がモルモットになる可能性がある」との指摘も。
これは今、途上国で起こっていることが日本で起こる、ということだろうけれど、
実は日本でも精神科薬の領域では既に起こっているようにも思われ、↓
GSKが日本で7~17歳を対象にパキシルの臨床実験、現在“参加者をリクルート”中(2010/6/12)
それだけに、
この「日本人がモルモット」という指摘はリアルに怖いなぁ、と思うけれど、
改めて考えてみれば、
緒に就いたばかりで、まだ分からないことだらけの再生医療を
「なぜこうも急ぐのか」というほどの見切り発車で国民に大盤振る舞いして
マーケット創出を狙おうという「成長戦略」って、
「世界初」を達成するために、日本政府が、
国民をモルモットとして研究に供するに等しい……ことない????
『ビッグ・ファーマ―製薬会社の真実』
マーシャ・エンジェル著 栗原千絵子、斉尾武郎訳 篠原出版新社 2005
著者は、New England Journal of Medicineの前編集長。
アマゾンのこの本のページに
京都大学医学部付属病院探索医療センター検証部教授の
福島雅典氏の「翻訳刊行によせて」という文章が掲載されており、
その一部に以下の下りがある。
科学はもはやかつてのそれではない。科学はビジネスと結びつき、その水面下では熾烈な特許戦争が繰り広げられている。今や販売戦争を勝ち抜くため研究結果を権威づける手段として世界中から競って論文が投稿されるトップ・ジャーナルは、ビジネスの僕と化しつつあるのではないか? モンスターのごとく肥大化した科学を奉じる共同体は、すでに善意によって制御しうる域を超えている。哲学のない科学は狂気(凶器)である。科学を妄信しトップ・ジャーナルを崇める状況は、何か、歪んだ宗教とでもいうべき様相を呈している。
これは正に当ブログが
日々のニュースの断片を拾い集ながら、
その断片の集合体として描かれていく「大きな絵」として指摘してきた
「グローバル強欲ひとでなしネオリベ金融(慈善)資本主義」の
「科学とテクノで簡単解決」利権構図そのもの。
例えば、
医学雑誌にも製薬会社がらみのバイアス、「ディスクロージャーを」と監視団体(2009/2/17)
「必要を創り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
事業仕分の科学研究予算問題から考えること(2010/12/12)
“プロザック時代”の終焉からグローバル慈善ネオリベ資本主義を考える(2011/6/15)
そして、去年、
同じくNEJMの現編集長もまた、Avandiaスキャンダルに際して、
そうしたバイアスの排除に向けて努力してきたが、
最近ではNEJMに発表された論文であっても、
製薬会社資金の治験であれば医師らが信頼しなくなりつつあり、
医学研究そのものが崩壊の危機の様相を呈してきた、と発言している。
製薬会社資金に信頼性を失っていく治験データ……Avandiaスキャンダル(2012/11/30)
先週この本のことを知り、読もうかなぁ、と思っていたところ、
26日の毎日新聞の本田宏氏の連載「暮らしの明日 私の社会保障論」に、
『ビッグ・ファーマ』から以下の引用があった。
エビデンス(科学的証拠)に基づく医療が普及して久しいが、そのエビデンス自体が、世界をリードする米国製薬業界のマーケティング戦略によってゆがめられている。自社の薬に会う病気を宣伝し、病気と思いこませ、医師への薬の教育に大きな影響を与え、臨床試験も実質的に支配している。そして、資金提供した臨床試験の多くは結果的にゆがめられている根拠がある。
本田氏の連載記事の趣旨は、
バルサルタンのスキャンダルを巡って、
日本の医療費亡国論が医学研究分野の資金不足を招いていること、
その状況のままアベノミクスで医療研究での産学連携が進めば、
「新薬や新技術の開発時に同様の問題が繰り返される危険性」を指摘して、
低医療費政策の転換を訴えるもの。
で、私がすごく興味深いな、と思ったのは、
この本田氏の論考が掲載された翌27日のトップニュースが「iPS臨床承認」だったこと。
関連記事が他にも盛り沢山で、
それらから目についた情報を拾うと、
安倍政権は
iPS細胞をはじめとする再生医療研究に今後10年間で計1100憶円を拠出するという。
今年4月に京大のiPS細胞研究所に新らしくできた部署に
山中教授が「医療応用推進室」とネーミングしたのも、
そうした資金を獲得しやすくするための作戦だったのだろうし、
記事では山中教授と世耕弘成・内閣官房副長官の繋がりも指摘されているけれど、
そこにはもちろん
12年の260億円から30年に約1.6兆円、50年には約3.8兆円という国内市場規模予測と、
その予測に基づいて「再生医療を経済再生の目玉に」という政府の思惑がある。
つまり、このブログで何度も何度も書いてきたように、
先端医療の問題は薬やワクチンと同じく、
すでに保健医療の問題というよりも
政治経済の問題なんだということであり、
そこに本田氏の連載の内容を重ねて考えてみたら、
見えてくるのは、とても皮肉なことに、
グローバル強欲ひとでなしネオリベ経済の中で日本が生き残るためには、資金は、
国際競争に勝ち目があって国内的にもマーケット創出可能性が大きいところに重点配分……
という「政治経済」施策の方向性であって、
それ以外のところでは、
本田氏の主張の逆方向に向かうだろう、ということでは??
一方には、iPS細胞の臨床研究は「緒に就いたばかり」で
癌化や本来の細胞に戻ったりウイルス混入のリスクなど未解明な部分が多く、
研究者の間からですら、過剰な期待を抑えようとする声が上がっていて、
(でももちろん政府もメディアもマーケット創出のためには、
その「過剰な期待」をこそ煽るに決まっているのだけれど)
そんな中で「なぜこうも急ぐのか」という問いの答えとして、毎日の記事は、
「海外と日本が「一番乗り」を争ってしのぎを削る現状がある」ことを指摘し、
ある審査委員会委員の「海外でのiPS細胞を使った臨床試験の動きがあり、
事務局が結論を急いだのかもしれない」との発言を紹介する。
臨床応用で最も有望とされている
(毎日の記事には、あとは「ホープレス」だと言った研究者の発言も)
加齢黄斑変性の研究プロジェクト・リーダーですら微妙な発言をしている。
「世界初」でないと、今受けている支援が全部なくなるのではないかという危機感はある。米国でも二つの臨床試験計画が動いており、常に意識している。米国は企業主導なのに対し日本はアカデミア主導。ビジネスで突っ走るのではなく(新しい)治療を作ろうと頑張る日本の姿勢は(spitzibara注:「姿勢を」ではなく「姿勢は」)大事にしたい。
その一方で、
応用を目指す以上は戦略が必要。研究の最初の段階から企業も参画すべきだ。
で、冒頭に述べたように
本田氏は前日の連載で次のように書いている。
安倍晋三の経済政策「アベノミクス」は、医療による経済活性化を目指すが、産学連携が進めば、新薬や新技術の開発時に(spitzibara注:バルサルタンと)同様の問題が繰り返される危険性が高い。
結局、これらから透けて見えてくるのは、
グローバルな医学研究競争にかろうじて勝ち残ろうとするならば、
「ビジネスで突っ走る」グローバル強欲ひとでなしネオリベ世界に
なりふり構わず(国民の生命を守る責任すら放棄して)乗っかっていく以外にない事情……?
毎日新聞の記事によると、
日本政府は、再生医療の早期承認を可能にする薬事法改正案まで用意している。
合わせて不適切な再生医療を規制する再生医療安全確保法案も用意されているとはいえ、
これで海外企業が参入しやすくなるんだそうな。
再生医療に詳しい研究者の中からは
「海外企業が日本を治験の場に選び、
日本人がモルモットになる可能性がある」との指摘も。
これは今、途上国で起こっていることが日本で起こる、ということだろうけれど、
実は日本でも精神科薬の領域では既に起こっているようにも思われ、↓
GSKが日本で7~17歳を対象にパキシルの臨床実験、現在“参加者をリクルート”中(2010/6/12)
それだけに、
この「日本人がモルモット」という指摘はリアルに怖いなぁ、と思うけれど、
改めて考えてみれば、
緒に就いたばかりで、まだ分からないことだらけの再生医療を
「なぜこうも急ぐのか」というほどの見切り発車で国民に大盤振る舞いして
マーケット創出を狙おうという「成長戦略」って、
「世界初」を達成するために、日本政府が、
国民をモルモットとして研究に供するに等しい……ことない????
2013.07.01 / Top↑
今年1月の以下のエントリーを書いた時点では
作成中だったNICEのガイドラインが発表となり、
1月に報道された通り、乳がんのリスクが高い女性に
2種類の予防薬を5年間、NHSはオファーするように、と。
乳がん発症リスクの高い女性50万人に予防薬を(英国)(2013/1/16)
記事では、
アンジェリーナ・ジョリーのように予防的乳房切除に踏み切れない女性や
ジョリーほどにリスクが大きくない女性にも、
これで薬物予防治療という新たな選択肢ができる、と書かれている。
タモキシフェン と ラロキシフェンは共に抗エストロゲン剤
前者は既に乳がんになった患者の再発を抑える薬として、
後者は更年期後の女性の骨粗鬆症予防薬として使われているもの。
これらは乳がんリスクを30%から40%下げることが研究により分かっているが
乳がんの予防薬として米国では認可されているが英国では未認可。
NICEのガイドラインは
乳がんの発症率が 3/10 の全女性にオファーすべきであり、
発症率が 1/6 の女性にも検討すべきだ、と。
英国では毎年5万人の女性と400人の男性が乳がんを診断されており、
そのうち5人に1人が家族に乳がん、子宮癌、前立腺がんの病歴がある。
また、これら2剤を予防薬として使うと、
Tamoxifenで年間25ポンド、raloxifeneではもう少し高くつくものの、
乳がん患者の治療にかかる費用を考えれば、コスト・パフォーマンスが良い。
副作用として記事に書かれているのは、
エストロゲンをブロックすることからくる更年期症状で、
のぼせ、寝汗、気分の不安定、吐き気と体重増加。
そう書かれている一方で、
更年期とそれ以降の女性では、特に太ると、
脂肪からエストロゲンが生成されるために乳がんリスクが上昇する、と。
(でも、これらの薬の副作用の中に「太る」がある、という皮肉。
アシュリー療法でもエストロゲンの大量投与で身長を抑制するという発想そのものに
カナダのSobsey氏が「体重増加」の副作用があることの矛盾を指摘していたけど)
それから記事の最後に、ほんの2行、こう書かれている。
「しかしながら、乳がんリスクを下げる他の選択肢もある。」
それは薬に頼らない方法。体重を落とし、運動すること」
あ、それから
ガイドラインは50歳以下の女性に毎年MRIを受けるように推奨も。
Breast cancer: women at risk should be given daily pill, say NHS guidelines
Guardian, June 25, 2013
コスト・パフォーマンスがよいと言われても、
そこでは副作用が出た人への治療コストって、計算外にされていると思うし、
冒頭の1月のエントリーに縁さんから頂いたコメントによると、
実際にタモキシフェンを飲まれた体験から「副作用はきつい」とのこと。
上記にリンクしたウィキぺデイアによると
タモキシフェンの副作用は
無月経、月経異常、悪心・嘔吐、食欲不振等、ほてりや発汗、肺塞栓。
ラロキシフェンの副作用は、
乳房の張り、ほてり、吐き気(2~3ヶ月で身体が慣れると軽快)。
滅多にないが重いものとして、血栓症塞栓症のほか、
膣の分泌物、多汗、足のけいれん、体重増加、吐き気、食欲不振、皮膚のかゆみ。
そんな薬を5年間も飲むことの、女性の体への負担について
十分に慎重に検討されたんだろうか。
女性の身体に多少の負担があったとしても
ガンになってからの治療コストに比べれば
予防効果のコスト削減効率の方が良いから、というのでは、
それはちょっと違う話なんでは……と考えてしまう。
この記事が書いているように
まずアンジェリーナ・ジョリーのような予防的乳房切除という選択肢がありますよ、
でも、そこまでできないという人にだって、こちらの薬物予防法がありますよ、
というふうに話を持っていかれると、
予防できる方法があるなら予防するのが当たり前という前提がそこにはあって、
その上で、Aの予防法をとるかBの予防法をとるか、
あなたに最適な予防法はどちらから遺伝診断とカウンセリングで、
という話にいずれなっていきそうな気がする。
(そしてそこにはもちろん
マーケット創出のポテンシャルが沢山ある)
でも、そうすると
それは他の選択肢が予め排除された2者択一の話となり、
その排除が女性の側からはとても見えにくくなってしまって、
どちらかを選ばなければと感じさせられるだろうし、
「どちらも選ばない」とか、
「AでもBでもない予防法を検討する」とか
「予防そのものを考えない」という選択肢だってあることに
気付けなくなってしまう……なんてことはないのかなぁ。
そして、そういう「できる予防はするのが当たり前」文化が拡がってしまった時には
予防できる方法があるのに、どちらもせずに乳がんになってしまった人は
「自己責任を果たさず、社会に対して不当な医療コストを背負わせる厚かましい人」と
みなされ始める……いうことにならないのかな。
……そこで、なんとなく、いっそ懐かしいほどの気分で思い出すのは、
この論文の著者の一人、名郷直樹医師の9日の以下の2つのツイート。
一番健康なのは、健康に気を付ける暇がないことかな。あるいは暇でも健康に関心がないとか。
体にいいことだけで生きられる人はいないと思う。そんなことができるのは死んでる人だけ。
そういえば09年に、こんなオモロイ記事もあった ↓
「やれ何が癌の原因だ、やれ予防にはどうしろ、こうしろって、ウザい」と英国人(2009/5/26)
作成中だったNICEのガイドラインが発表となり、
1月に報道された通り、乳がんのリスクが高い女性に
2種類の予防薬を5年間、NHSはオファーするように、と。
乳がん発症リスクの高い女性50万人に予防薬を(英国)(2013/1/16)
記事では、
アンジェリーナ・ジョリーのように予防的乳房切除に踏み切れない女性や
ジョリーほどにリスクが大きくない女性にも、
これで薬物予防治療という新たな選択肢ができる、と書かれている。
タモキシフェン と ラロキシフェンは共に抗エストロゲン剤
前者は既に乳がんになった患者の再発を抑える薬として、
後者は更年期後の女性の骨粗鬆症予防薬として使われているもの。
これらは乳がんリスクを30%から40%下げることが研究により分かっているが
乳がんの予防薬として米国では認可されているが英国では未認可。
NICEのガイドラインは
乳がんの発症率が 3/10 の全女性にオファーすべきであり、
発症率が 1/6 の女性にも検討すべきだ、と。
英国では毎年5万人の女性と400人の男性が乳がんを診断されており、
そのうち5人に1人が家族に乳がん、子宮癌、前立腺がんの病歴がある。
また、これら2剤を予防薬として使うと、
Tamoxifenで年間25ポンド、raloxifeneではもう少し高くつくものの、
乳がん患者の治療にかかる費用を考えれば、コスト・パフォーマンスが良い。
副作用として記事に書かれているのは、
エストロゲンをブロックすることからくる更年期症状で、
のぼせ、寝汗、気分の不安定、吐き気と体重増加。
そう書かれている一方で、
更年期とそれ以降の女性では、特に太ると、
脂肪からエストロゲンが生成されるために乳がんリスクが上昇する、と。
(でも、これらの薬の副作用の中に「太る」がある、という皮肉。
アシュリー療法でもエストロゲンの大量投与で身長を抑制するという発想そのものに
カナダのSobsey氏が「体重増加」の副作用があることの矛盾を指摘していたけど)
それから記事の最後に、ほんの2行、こう書かれている。
「しかしながら、乳がんリスクを下げる他の選択肢もある。」
それは薬に頼らない方法。体重を落とし、運動すること」
あ、それから
ガイドラインは50歳以下の女性に毎年MRIを受けるように推奨も。
Breast cancer: women at risk should be given daily pill, say NHS guidelines
Guardian, June 25, 2013
コスト・パフォーマンスがよいと言われても、
そこでは副作用が出た人への治療コストって、計算外にされていると思うし、
冒頭の1月のエントリーに縁さんから頂いたコメントによると、
実際にタモキシフェンを飲まれた体験から「副作用はきつい」とのこと。
上記にリンクしたウィキぺデイアによると
タモキシフェンの副作用は
無月経、月経異常、悪心・嘔吐、食欲不振等、ほてりや発汗、肺塞栓。
ラロキシフェンの副作用は、
乳房の張り、ほてり、吐き気(2~3ヶ月で身体が慣れると軽快)。
滅多にないが重いものとして、血栓症塞栓症のほか、
膣の分泌物、多汗、足のけいれん、体重増加、吐き気、食欲不振、皮膚のかゆみ。
そんな薬を5年間も飲むことの、女性の体への負担について
十分に慎重に検討されたんだろうか。
女性の身体に多少の負担があったとしても
ガンになってからの治療コストに比べれば
予防効果のコスト削減効率の方が良いから、というのでは、
それはちょっと違う話なんでは……と考えてしまう。
この記事が書いているように
まずアンジェリーナ・ジョリーのような予防的乳房切除という選択肢がありますよ、
でも、そこまでできないという人にだって、こちらの薬物予防法がありますよ、
というふうに話を持っていかれると、
予防できる方法があるなら予防するのが当たり前という前提がそこにはあって、
その上で、Aの予防法をとるかBの予防法をとるか、
あなたに最適な予防法はどちらから遺伝診断とカウンセリングで、
という話にいずれなっていきそうな気がする。
(そしてそこにはもちろん
マーケット創出のポテンシャルが沢山ある)
でも、そうすると
それは他の選択肢が予め排除された2者択一の話となり、
その排除が女性の側からはとても見えにくくなってしまって、
どちらかを選ばなければと感じさせられるだろうし、
「どちらも選ばない」とか、
「AでもBでもない予防法を検討する」とか
「予防そのものを考えない」という選択肢だってあることに
気付けなくなってしまう……なんてことはないのかなぁ。
そして、そういう「できる予防はするのが当たり前」文化が拡がってしまった時には
予防できる方法があるのに、どちらもせずに乳がんになってしまった人は
「自己責任を果たさず、社会に対して不当な医療コストを背負わせる厚かましい人」と
みなされ始める……いうことにならないのかな。
……そこで、なんとなく、いっそ懐かしいほどの気分で思い出すのは、
この論文の著者の一人、名郷直樹医師の9日の以下の2つのツイート。
一番健康なのは、健康に気を付ける暇がないことかな。あるいは暇でも健康に関心がないとか。
体にいいことだけで生きられる人はいないと思う。そんなことができるのは死んでる人だけ。
そういえば09年に、こんなオモロイ記事もあった ↓
「やれ何が癌の原因だ、やれ予防にはどうしろ、こうしろって、ウザい」と英国人(2009/5/26)
2013.07.01 / Top↑