NC州で、かつての強制不妊事業の犠牲者への補償に向け知事命令(2011/3/21)
知事の命令を受けたタスク・フォースから中間報告が出たらしい。
What Sorts of PeopleのWilson氏がエントリーで紹介している
最終委員会でのLarry Womble議員のスピーチが胸を打つ。
和訳するだけの余裕はないので、とりあず英文のまま。
……と思ったのだけど、
コピペしているうちに、あまりにも熱くて、またも感動してしまったので
どうしても……というところだけ、日本語に。
Eugenics [is] a fancy name for sterilization. I am very compassionate about this issue and have worked on it for 10 years. If I’ve been involved for 10 years, what do you think about the victims themselves and it is a shame and disgrace what has happened to them. I thank the Task Force for all their work. But at the same time, I cannot be timid about this, I can’t be Mille mouthed. I cannot be cute about this because it’s not a cute and nice subject. We did to humans what we do to animals, we spade and neuter animals not people. And we did this to children 10 and 11 and 12 years old, they were not criminals, they did nothing wrong. We talk about we are the land the free and the home of the brave and when we do this to children and I’m wondering how sincere we really are.
And whatever term we want to call it to make it seem nice, it is compensation. That’s what I’ve been calling it in my bills and in my legislation. You compensate people for something you’ve done to them that they do not deserve. And I understand being on a committee and being on a Task Force, I’ve been on one myself. Some things you may not say and you don’t want to say, something you may feel are inappropriate. But when you have those live human beings come before you like they did at the last meeting how in the world can you stand to dismiss them?
How do you have victims come forward and speak before you and you don’t stand aggressively for them? I don’t care how much it hurts the State, the State did it. The State should have to pay for it! I’m here to represent the state of NC and not for anyone to like me. This is horrendous. It almost borders on genocide. We talk about the communist countries, Osama Bin Laden, third world counties. Well we have done things just as bad, if not worse. To children!
I come just a little frustrated when I see people try to skip around it. Dance around it, rather than face an issue for what it is. It’s an ungodly thing that we have done to these children. I’m here because right is right and right won’t wrong nobody. It is no amount of money that you can give to somebody. But it can’t be something that will be a double whammy to them. You’re victimizing them again! What is $10,000? What is $20,000? What is $50,000? It is really nothing, that you have destroyed your family. And this was done forcibly, by the welfare department, county departments, and you talking about private rights and citizens rights. They didn’t have any rights and if they did you violated them! I’m not talking about you personally on the panel or the staff. I’m talking about the state of North Carolina, the government. And yes I’m talking about the legislature, I serve in the legislature and it’s a wrong thing what the legislature did.
優生思想とは、うわべはきれいな名前が付いていますが、不妊術のことです。
私にはこれをきれいな言葉で語ることはできません。きれいではない醜い問題だからです。我々は動物にすることを人間に対して行ったのです。……それを10歳や11歳や12歳という子どもたちに行ったのです。犯罪者でもなければ、何の罪もない子どもたちに。アメリカは自由の国だとか勇者の祖国だとか言いながら、子どもたちにこんなことをする。なにが自由の国なのだ勇者の祖国なのだと私は思います。
どんなにきれいごとの名前で誤魔化そうとしても、これは償いです。だから私は提出した法案でも法文でも、そう称してきました。不当な理由で誰かにやってしまったことには、償いをするものです。
それが州にとってどれほど手痛い出費になろうと、州がやったことなのだから、州が償うのが筋というものでしょう!……行われたのはむごいことです。ほとんど大量殺戮に近いほどの。共産圏がどうの、オサマ・ビンラディンがどうの、第三世界がどうのと言いながら、でも我々がやったことだって彼らとちっとも変らない。しかも、子どもたちに対して!
カネをいくら払おうと、そんなものは何にもならない。家族を崩壊させたのですよ! 強制的に、福祉局が、郡の機関が。それで、よくも個人の権利だの市民権だのと言えるものだ。この人たちには何の権利もなかったではないか。あっても踏みにじったではないか。……(略)
North Carolina Eugenics Task Force, Preliminary Report
What Sorts of People, August 2, 2011
州の担当部局
NC Justice for Sterilization Victims Foundationのサイトはこちら。
かつて同州の優生委員会の強制不妊事業の被害にあった者に対し、
終結(closure)と補償(compensation)とカウンセリング(counseling)の3つのCを目指す、と。
5人のメンバーからなる対策委員会を作り、
1929年から1974年の間実施された同事業の実態を解明し
2011年8月1日までに中間報告、12年2月1日までに最終報告を行う。
当初の優生委員会には5人のDorothea Dix 精神病院の職員が入っており、
同州の強制不妊事業の最初の20年間は施設を対象とし、
精神障害、知的障害のある人たちが強制不妊の対象者となった。
1945年からは貧困層の福祉受給者、教育水準の低い者、病気のある者が
新たに対象とされた。
1950年代からは、対象者判断の権限がソーシャルワーカーに与えられた。
45年間で7600人の州民が優生委員会のプログラムで不妊手術を施された。
すべて医師らが「悪い」遺伝傾向の連鎖と考えたものを断ち切るために行われたもの。
多くは高齢化しており、
2005年に3000人以上生存しているだろうとされた被害者は
2010年には2944人ほどになったと推計されている。
NC州は2002年12月に優生委員会が引き起こした不便に対して謝罪。
2003年には前知事 Mike Easleyが優生法の廃止にサインした。
Governor’s Executive Order targets eugenics and sterilization program
Raleigh Headline Examiner, March 14, 2011
当ブログが拾ったNC州の同じ話題としては、↓
NC州に優生手術の歴史を認める記念碑(2009/6/23)
それから、インディアナ州も2007年に
米国で優生法を制定する最初の州となったことを謝罪しています ↓
今なお聞こえる優生思想のこだま(2007/12/2)
上のの09年6月の記念碑の記事の後半で書いたことを、
もう一度繰り返したく、以下にコピペ。
この記事を読んで目を引かれたのは
優生プログラムの開始が1929年だったという点。
1926年の世界恐慌の直後ということになる。
やっぱり、すごく符合するんだなぁ……と思う。
世界的な不況──。
ヘイトクライムの急増──。
その突出した形としての民族差別、障害者差別、女性差別──。
あちこちで起きている戦争。さらに起こるかもしれない戦争──。
そして、エセ科学の横行──。
(人間の脳やDNAについて、
ほんのわずかなことが解明できたからといって、
それで、すぐにも人間の全てが説明できたり、
体も心も頭も思い通りにコントロールできるかのように
世論を煽り立てるのも立派なエセ科学だと私は思うし)
そして、かつて専門家の権威でそのエセ科学の正当性をでっち上げた
優生委員会に当たる存在として、
今では例の生命倫理とか医療倫理だとかいうご都合主義の御用学問があり、
誰かの必要によって操作可能と思われる(Ashley事件がその証左かも)倫理委員会なる仕組みも
アリバイ作りの装置として、でっち上げられている。
そっくりだ……。
使える科学技術のレベルが断然違うだけで──。
【その他、関連エントリー】
受胎前遺伝子診断:巧妙な言葉の操作が優生思想を隠蔽する(2009/1/16)
米国優生運動の真実を描く映画“War Against the Weak”(2009/1/26)
あれこれ検索していた中で拾ったオーストラリアの情報。
2006年の秋にオーストラリア検察局から
知的障害のある子どもの不妊手術について全国一律に規制する法案草稿が発表され、
それについて広く意見募集が行われたようです。
基本的には、知的障害のある子どもへの不妊手術については
命にかかわるほどの治療上の必要がない場合には禁じるという方向のように思えますが、
09年10月にオーストラリアの法律事務所から成長抑制に関する法的分析が出てきた時に、
障害児に対する不妊手術に関しても概略がまとめられている中に
この法律が言及されていないこと、
また去年2月のQueenland州の重症児Angelaの子宮摘出の判決でも
このような法律には言及がなく04年の家族法を引いて書かれていることから推測すると、
この法案は法律として成立しなかったのかもしれません。
(Angela事件の詳細については文末にリンク)
ともあれ、非常に興味深い議論があったことは事実のようなので、
Ashley事件に関連した資料としても重要とも思われ、
今すぐに読む余裕もないのですが、一応、資料として以下に。
①これが最終稿なのかどうかはわかりませんが、
とりあえず拾った草稿は、こちら ↓
Children with Intellectual Disabilities(Regulation of Sterilisation) Bill 2006
Western Australia, DRAFT 17
②それに対して障害者団体 People With Disability Australia (PWDA)が提出した意見書がこちら ↓
Submission on the Draft Model Bill to regulate the sterilization of children with an intellectual disability
10 November 2006
③Victoria州弁護士会が提出した意見書がこちら ↓
STERILISATION OF CHILDREN WITH AN INTELLECTUAL DIABILITY
The Victorian Bar, 16 February 2007
④Women with Disability Australia(WWDA)の見解はこちら ↓
Sterilisation of Children with Intellectual Disabitilies
Australian Federation of Disability Organisations, March 2007
同WWDAのキャンペーン・サイトがこちら ↓
Systemic Advocacy on the Unlawful Sterilisation of Minors with Disabilities(2003-2008)
【Angela事件関連エントリー】
豪で11歳重症児の子宮摘出、裁判所が認める(3/10)
Angela事件(豪):事実関係の整理(2010/3/10)
Angela事件の判決文を読む 1(2010/3/11)
Angela事件の判決文を読む 2(2010/3/11)
重症児の子宮摘出承認でダウン症協会前会長・上院議員が検察に行動を求める(豪)(2010/3/13)
Angela事件の判決文はAshley論文と同じ戦略で書かれている 1(2010/3/17)
Angela事件の判決文はAshley論文と同じ戦略で書かれている 22010/3/17)
Ashley事件とAngela事件の接点はここに……?(2010/4/27)
IQが48とされ、中等度の知的障害がある。
同じホームに暮らす男性Kieronさんと性的な関係にあり、
公共の場で子どもたちに性的なジェスチャーを見せることもある。
09年6月に地方自治体が
Alanさんの知的能力の欠如を理由にKieronさんとのセックスをやめさせるべく
法的手続きを開始し、暫定的に禁止命令が出された。
以来、Alanさんは自室に一人でいるとき以外に性的な行動をとることを禁じられている。
このほど非公開の保護裁判所の審理による判決が出され、、
Alanさんには誰ともセックスしてはいけないとの命令が下され、
地方自治体にはこの命令の励行を厳格に監督する責任が負わされた。
Mostyn判事は、
セックスが人間の最も基本的な行為である以上、
法的にも知的にも道徳的にも複雑なケースであることを認めつつ、
セックスのメカニズムと、それに伴う健康リスク、
さらに男女のセックスが妊娠に至る可能性を理解できなければ、
セックスに同意する能力を欠いている、と判断。
Alanさんは子どもはコウノトリが運んでくるもの、
セックスがはしかなどの原因だと信じているという。
「したがって、現時点でAlanには
性的な関係に同意する能力もそうした関係を持つ能力もないと裁定する」
「このような状況では
現在決められているような監督と将来の性行動の予防が
Alan本人の最善の利益であると意見が一致した」
一方、判事は地方自治体に対して
Alanさんがこうした同意能力を獲得するように性教育を行うよう求めてもいる。
Court bans man with low IQ from having sex
The Telegraph, February 4, 2011
こんな理屈がまかり通るようになった日には
知的障害者には、どういう世の中が待っているのか……。
しかも、ここでもまた「本人の最善の利益」が正当化に使われている……。
この前のエントリーの保護裁判所による強制不妊を巡る判断のニュースに
「ナチ時代の再来だ」「次は精神障害者か同性愛者か犯罪者か貧困層か、すべり坂だ」
などのコメントがついていましたが……。
この包囲網の急加速には、ちょっと言葉を失う感じ……。
IQが48とされ、中等度の知的障害がある。
同じホームに暮らす男性Kieronさんと性的な関係にあり、
公共の場で子どもたちに性的なジェスチャーを見せることもある。
09年6月に地方自治体が
Alanさんの知的能力の欠如を理由にKieronさんとのセックスをやめさせるべく
法的手続きを開始し、暫定的に禁止命令が出された。
以来、Alanさんは自室に一人でいるとき以外に性的な行動をとることを禁じられている。
このほど非公開の保護裁判所の審理による判決が出され、、
Alanさんには誰ともセックスしてはいけないとの命令が下され、
地方自治体にはこの命令の励行を厳格に監督する責任が負わされた。
Mostyn判事は、
セックスが人間の最も基本的な行為である以上、
法的にも知的にも道徳的にも複雑なケースであることを認めつつ、
セックスのメカニズムと、それに伴う健康リスク、
さらに男女のセックスが妊娠に至る可能性を理解できなければ、
セックスに同意する能力を欠いている、と判断。
Alanさんは子どもはコウノトリが運んでくるもの、
セックスがはしかなどの原因だと信じているという。
「したがって、現時点でAlanには
性的な関係に同意する能力もそうした関係を持つ能力もないと裁定する」
「このような状況では
現在決められているような監督と将来の性行動の予防が
Alan本人の最善の利益であると意見が一致した」
一方、判事は地方自治体に対して
Alanさんがこうした同意能力を獲得するように性教育を行うよう求めてもいる。
Court bans man with low IQ from having sex
The Telegraph, February 4, 2011
こんな理屈がまかり通るようになった日には
知的障害者には、どういう世の中が待っているのか……。
しかも、ここでもまた「本人の最善の利益」が正当化に使われている……。
この前のエントリーの保護裁判所による強制不妊を巡る判断のニュースに
「ナチ時代の再来だ」「次は精神障害者か同性愛者か犯罪者か貧困層か、すべり坂だ」
などのコメントがついていましたが……。
この包囲網の急加速には、ちょっと言葉を失う感じ……。