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March of Dimes によって作られた、
妊娠中の夫婦に向けた新生児スクリーニングの解説ビデオ。

それによると、生後2日以内に踵からの採血で行い、
疑いがある場合には、再検査を行うこととされている。

遺伝子検査は州によって義務付けられている、とのこと。

冒頭の、妊娠中の夫婦に向けたメッセージで

(生まれてくる子どもには様々な夢や期待を描くにせよ)何よりも大切なのは子どもの健康です。

なぜ生後まもなく退院までに遺伝子検査をするかというと、
一見すると健康に見える赤ちゃんに、重大なconditionsが潜んでいることがあるからです。

たとえば、精神遅滞のような重大な問題や、死すら引き起こすものも。
serious problems such as mental retardation or even death

しかし、生後すぐに発見できれば、それらを防ぐことができるのです。


そして、ビデオの終わりに近く、

あなたの赤ちゃんを助けるだけでなく、それは
これから生まれてくる何世代もの赤ちゃんを助けることになるのです。

helping more generations to come


ちなみに、March of Dimes とは、このビデオの説明によると、
出生時の障害や早産や死を防ぐことによって子どもの健康を増進するNPO」。

当ブログでは、Gates財団とシアトル子ども病院の
早産撲滅キャンペーンGAPPSのパートナーとしてお馴染みです。


早産・死産撲滅に、シアトル子ども病院がゲイツ財団、ユニセフ、WHOと乗り出す(2009/5/14)
2009年10月14日の補遺(3番目にDimesが早産による世界の負担を数値化した論文情報)
2009.12.19 / Top↑

シアトル子ども病院のサイトで確認したところ、
2008年7月26日の放送のようです。

去年7月まで、ワシントン州の新生児には
鎌状赤血球症嚢胞性線維症など
10の遺伝性の疾患について遺伝子診断が行われていたが、

その対象として、7月21日から、
さらに14の疾患が追加されることになった、というニュース。

「なぜ新生児に遺伝子検査を?」というインタビュアーの質問に答えているのが
Ashley事件で一躍、生命倫理学者としての名前を馳せた Diekema医師。

早期発見が早期治療に結びつく可能性があるから、と答えています。

そして、続いて、
民間企業が営利目的で多くの病気の遺伝子診断を行っていることについて
その正確さに疑問を投げかけます。

「将来、その新生児が、たとえば乳がんになる可能性を調べることについては?」と問われて
基本的には18歳になるまで待ってからにするのがよいとの考え述べます。
その検査を受けるかどうかは、あくまで本人の自己決定だろう、と。

Diekema医師は本来は、Fostのようなラディカルな考え方をとらない、
かなり慎重派の倫理学者なのです。


ところで、このビデオは、
鎌状赤血球症だと承知した上で黒人の女の子を養子に迎えた白人夫婦をとりあげています。

遺伝子診断で病気がわかって、
養子縁組の申し込みをキャンセルしてもいいと言われたけれども、
もう顔を見たら情が移って、そんなことは考えられなかったそうです。

そして、この女の子はオーダーメイドの治療のために2度目の遺伝子診断を受けた、とのこと。

早くから、そういう治療ができたから、この子は生きてここまで成長した、
科学の力がなかったら、この子はとっくに死んでいた、とお母さんが語っています。

なるほど、アメリカで養子を育てる家庭はここまで懐が深いのかぁ……という方向に
とりあえずは感銘を受けながら見ていたら、

画面には、もう一人黒人の男の子を含む4人家族の姿が映った。

だから2人目の養子をとる時も遺伝子検査をやった、
「今度は健康な子がほしかった」とお母さんが語る。

こういう病気の子が1人いるだけでも親の負担は大きいのに
それでも2人目を養子に、と考えることに、まずは素直にびっくり、する。

そういう意味では、「次は健康な子を」と望むのも無理はないのかも……と考えつつ見ていたら、

「健康な子か、もし、そうじゃないなら鎌状赤血球症の子どもがほしかった」

……え?

「だって、この病気には詳しくなっているから、
どうせなら同じ病気だったら、こなせるじゃない?」

何が、どう、とは、今すぐには説明できないのだけど、
この発想は、かなりショックだった。
2009.12.19 / Top↑
17日のエントリーで、
「英国下院議員の53%が自殺幇助合法化を支持」との調査報告を取り上げましたが、
そこでも書いたように、これ、な~んか、怪しげな調査だと思っていました。

そしたら、いかに怪しいかという話が、
やっぱり反対ロビーの方から出てきました。

Times euthanasia poll of MPs is ‘out of date’
The Christian Institute, December 18, 2009


まず、私も前のエントリーで取り上げた通り、
ガイドラインのコンサルテーションが終わるのに合わせて公表というタイミングが怪しい。

しかも、この調査、実は6月8日から7月31日にかけて行われたものだというのです。

夏からの今までの数ヶ月間に、自殺幇助合法化関連では
スイス当局がDignitasをはじめとする“自殺ツーリズム”を懸念して
全面禁止を含めた規制の検討に入ったことや、

オランダの安楽死法を成立させた政治家が
法の成立以降、終末期医療がお粗末になったこと、
多くの患者は「不安から」安楽死を選択していることを認めたこと、

英国でも、Jack Straw, Vince Cableなど、有力な政治家が
もともと反対を表明しているBrown首相やCameron野党党首に並んで
反対の声を上げるなど、

さまざまな動きがあり、
議員の考えは変わっている可能性があるのに、
いまさら夏の調査結果を持ち出すことはないだろう、と。

そして、なんと言っても怪しげなのは、こちらのカラクリ。

私は前のエントリーで取り上げた時に、
なぜこの調査結果が「医師の権利」の問題として報道されているのかを不思議に思い、
推進派ロビーの問題だとしてもメディアも無責任すぎると指摘しましたが、

やはりカラクリはそこに潜んでいたのです。

なんと、この調査に用いられた質問とは

If a doctor in England or Wales helps a terminally ill, but mentally competent adult patient to die when directly requested to do so, by the patient, should that doctor be prosecuted or not?

もしもイングランドまたはウェールズの医師が、ターミナルな病状ではあるけれど、意思決定能力のある成人の患者から、直接そうしてほしいと求められて、その患者の死に手を貸したとしたら、その医師は訴追されるべきだと思いますか?

やはり思った通りの問題の摩り替えが、調査の質問の設定段階で行われていました。

17日のエントリーで指摘した通り、
この問いは、患者自身が幇助を求める権利がまず前提されなければ、派生しない段階のものです。

この問いを発することによって、質問者はあらかじめ
「そういう患者には医師に自殺幇助を求める権利がありますか」という問いに
回答者に代わってYesと答えてしまっている。

なんと巧妙なヤリクチでしょうか。

こういうカラクリがあったからこそ、記事のタイトルも
「医師が患者の死を手伝う権利を議員が支持」でなければならなかったのですね。

しかし、
この質問への答えがYesだったとしても、
それが「患者の死を手伝う医師の権利」を支持するものだと果たして言えるのか。

それは、せいぜい
「患者の自殺幇助を求める権利が認められた場合に
それに応じて行動しても訴追から守られる権利」が医師にはある、というに過ぎず、

「患者の死に手を貸すこと」を「医師の権利」として認めることとの間には、
非常に大きな距離があります。

後者の「医師の権利」が意味するものの危険を考えたら、
問題のすり替えにしても、こんな危険な言辞を安易に振り回さないでほしい。

しかも6月・7月といえば、
英議会ではDebby Purdyさんの訴えを受けて、議論の焦点は、
自殺希望の人をスイスへ連れて行く家族や友人の行為の免罪を法制かするかどうか、でした。

それも7月7日には上院で、法改正は否決されているのです。

DPPのガイドラインにも同じことが言えますが、
議論されている問題をきちんと厳密に区別することなしに、グズグズにすることで
“この機に乗じて”自殺幇助そのものの合法化へと舵を切らせたい人たちが
英国では、目下、うようよと蠢いている。

そして、こう見るに、おそらくは
Times も Daily Mail も、そちらの陣営のようでも……。







2009.12.19 / Top↑