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OR州の医師が、モンタナ州の住民に向けて
自殺幇助は合法化しない方がよい、と訴える書簡。

その医師の体験の概要とは、

10年以上前からプライマリー・ケア医として診てきた患者(当時76歳)を
数年前にメラノーマと判断して専門医に紹介した。

夫婦ともにハイカーとして活動的な人たちだったが、
男性は症状が進み、ハイクに出かけることもできなくなると、抑うつ状態になったと
カルテに書かれていた。

私のその患者は、その頃、専門医に対して
自殺幇助の希望を述べたのだが、

するとその医師は、まず時間をかけて、うつ病に対応しようとするわけでもなく、
プライマリー・ケア医の私に患者と話をするよう求めるわけでもなく、
いきなり電話で自殺幇助に必要な「セカンド・オピニオン」を出せ、と求めてきた。
(尊厳死法では2人の医師の承認を要件としている。その2人目に、ということ)

その専門医は私に
こういう患者にはバービツレートの過剰摂取は「とてもうまく効く」と言い、
もう何度もやったことがある、と言った。

私は2人目の医師として彼のPASを承認することを断り、
ただPASで致死薬を与えるのではなく、気がかりなのはうつ病なのだから、
その治療をすべきだと主張したが、

私の発言は無視されて、2週間後に
私の患者は、その医師の処方した致死薬によって亡くなった。

オレゴンの法の下では、
私はうつ病になった私の患者を守ることができなかった。


Oregon doctor could not save patient from assisted suicide
Montana Standard, January 26, 2013


これだけ世の中に
「一定の状況になったら、その生はもはや生きるに値しない」と考える医師がゴロゴロしているなら、

「2人の医師による承認」は
「一人目の医師が自分と同じ考え方の医師をもう一人探せばいい」ということにしかならず、
何のセーフガードにもならないのでは――? と、ずっと私は疑問に思っているのですが、 

去年出てきた、日本の尊厳死法案にあった「2人の医師が判断する」との要件についても
こちらの医師のブログに書かれていることが、

医師の上下関係の中で判断の独立性は守れるのか、
また病気によって、あるいは複数の病気を併発していた場合に、
その判断の専門性は担保できるのか、など

たいへん興味深いです ↓

「ヘブンズドアホスピタル」ブログ
眠られぬ当直(よる)のために―尊厳死・平穏死編その5(2013/1/10)
2013.02.12 / Top↑
カナダで脳卒中で意識不明となった男性Dennis Dayeさん(65)を巡って
無益な治療訴訟。

Dayeさんは先月10日、
大きな脳卒中を起こしてSunnybrook Health Science Centerに運ばれ、
脳の浮腫のために頭蓋骨の多くの部分を取り覗く手術を受けた。

主治医のFowler医師をはじめSunnybrookの医師らは、
Dayesさんの脳損傷は「広範囲」で「不可逆」であるとして、
生命維持(人工呼吸器と経管栄養)を中止して患者を死なせるべきだと主張。

Daye氏の妻であり代理決定者であるPilarさんは
治療続行を望んで対立。

Sunnybrookってどこかで聞いたことがあるなと思ったら
何度もエントリーで追いかけてきたRasouli事件のHassan Rasouliさんがここの患者だった。
(この記事によると、Rasouli訴訟では先月、最高裁が判決を延期したとか)

なお、そのRasouli訴訟では
下級裁判所でも上訴裁判所でも医師側に独自の決定権を認めず、
Consent and Capacity Board (同意と能力委員会)の判断を仰がなければならない、と求めた ↓
「生命維持停止に同意なんて医師の権威を損なう」Rasouli裁判続報(2011/5/19)


そこで、今回は医師らはまずCCBの判断を仰いだ模様。

同病院の医師らのCCBでの証言は、
Daye氏についての神経科医のアセスメントは予後は「極めて悪い」というもの。

「自立生活はできず他者による介護または施設介護が常時必要となる
…he will always be dependent on others and in an institution for care」
というのが一致した医師らの見解である、と。

主治医は、人工呼吸を中止して蘇生無用指定とし、
より緩和的アプローチに切り替えるべきだと求めている。

また前妻との間にできた娘は
父親は活動的な人物だったので、
こういう形で生かされることは望まなかったはずだと証言し、

「もし父が自分で決められるとしたら、
生活の質なんて何もなくなってやりたいことができなくなり、それよりなにより、
ベッドから出ることもできなくて誰かに世話してもらわなければならないなんて、
そんなことは父は絶対に望まなかったと私には確信があります」

一方で、反対尋問では
Pilarと折り合いが悪い彼女は、
父親の再婚以後の5年間は父親と会ったことは1度もない、とも。

妻のPilarさんはパン屋の経営者で、
夫は、何年も自分と一緒に実践してきた民間療法を続けたいと望んでいるはずだ、と主張。

主治医は「妻は自分の望みと夫の望みとを混同しているのでは」と。

Stroke victim’s wife fights physicians to keep him on artificial life support
The Toronto Star, January 24, 2013


以下のリンクに見られるように、Rasouli訴訟では、
途中で、診断が「植物状態」から「最小意識状態」に変わって、
最高裁の判断が注目されている。

「無益な治療」の判断基準が、
「救命がもはや可能ではないのに患者に苦痛を与えるだけの治療は無益」から
「救命は出来ても、その結果が要介護状態となるなら無益」へとシフトしてきたのでは……と、
私はずっと懸念を感じていたのだけれど、

Dayesさんの生命維持と経管栄養を「無益」とする医師らの判断基準は
「自立生活はできず常時介護が必要となる」であり、

娘が「父親は生きることを望まないと確信している」と主張するのも、
「ベッドから出られないままで誰かに世話をしてもらう」状態について言われている。

つまり、ここにあるのは、歴然と
「命が助かっても重症障害を負うなら、その患者の救命は無益」という「無益な治療」論。

しかも脳卒中を起こして、
まだ1カ月あまりしか経っていない段階で――。


そういえば、最近カナダの「無益な治療」訴訟では、こういうのもあった ↓
カナダの“無益な治療”訴訟で「Owen教授のアセスメントを」(2012/12/8)

すぐに頭に浮かぶのは、↓
脳損傷の昏睡は終末期の意識喪失とは別:臓器提供の勧誘は自制を(2012/7/20)
Owen教授の研究で、12年以上「植物状態」だった患者に意識があることが判明(2012/11/13)
『シリーズ生命倫理学 第4巻 終末期医療』メモ 3: 第6章は「植物状態患者の意識状態」、当ブログのテーマそのものだった!!(2013/1/18)

「最少意識状態は植物状態よりもマシか? 否。カネかかるだけ」とSavulecuとWilkinson(2012/9/8)


【Rasouli事件の関連エントリー】
「“治療停止”も“治療”だから同意は必要」とOntario上位裁判所(2011/5/17)
「患者に選択や同意させてて医療がやってられるか」Razouli裁判続報(2011/5/19)
カナダのRasouli事件、最高裁へ(2011/12/23)
Hassan Rasouliさん、「植物状態」から「最少意識状態」へ診断変わる(2012/4/26)
2013.02.12 / Top↑
ルイジアナ州は2月1日から14年6月30日まで、メディケイドでのホスピスを認めないことに。Popeは「でもメディケイドの患者だって死ぬんだから、病院で死ねばホスピスより高くつくのに」と言うけど、この人の頭では、そこにPAS合法化はちらつかないのかな……?
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/01/louisiana-cutting-hospice-coverage.html

英国で自殺率が上がっているのには、メディアによる自殺幇助賛美が影響しているのではないか、相関を調査すべき、とWesley Smith。OR州でも自殺率が上昇しており、自殺ほう助外でも全国平均よりも40%近く高い、とのこと。
http://www.nationalreview.com/corner/338541/suicide-advocacy-and-uk-suicide-rate-wesley-j-smith

単に前後の家族のスケジュールの都合で、ガイドライン推奨の妊娠39週を待たずに、陣痛促進剤を使ったり帝王切開で出産する人が増えていることで、生まれてくる子どもに健康問題が出ているケースも。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/health-insurers-crack-down-on-preterm-deliveries-that-are-not-medically-necessary/2013/01/21/eb30026a-56ab-11e2-a613-ec8d394535c6_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

ロボットによるオートメーションは人々から仕事を奪うという懸念に、ロボット開発の専門家ら「確かにロボットの出現で消滅する仕事もあるが、より高給の職も創出される」:そこでもまた「恵まれたごく少数と、犠牲になる多数」という構図となるのでは??
http://www.nytimes.com/2013/01/24/technology/robot-makers-spread-global-gospel-of-automation.html?_r=0

直接医師に会って診察を受けるよりも、インターネット上で診察を受ける「E受診」の方が安上がりで、病気によっては効果はそう変わらない、という調査結果。:貧乏な人にはそのうち、こちらだけが選択肢に?
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/virtual-visits-to-doctor-may-be-cheaper-than-and-as-effective-as-in-person-visits/2013/01/18/8237c028-601e-11e2-a389-ee565c81c565_story.html

Bill GatesとDesmond Tutuが途上国の飢餓問題に新たなキャンペーン。英国政府も積極的に支援。
http://www.scotsman.com/the-scotsman/scotland/bill-gates-and-desmond-tutu-unite-to-launch-campaign-to-combat-hunger-1-2752618

抗生物質体制の病原菌が「黙示録」的な脅威になる、と専門家。
http://www.guardian.co.uk/society/2013/jan/23/antibiotic-resistant-diseases-apocalyptic-threat

ガーディアン紙のサイトに ソーシャル・エンタープライズ・ネットワークというページがあった。
http://socialenterprise.guardian.co.uk/

障害保健福祉研究情報システム 国際セミナー報告書 インクルーシブな障害者雇用の現在―ソーシャル・ファームの新しい流れ 【講演3】「英国のソーシャル・ファームの動向」
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/conf/seminar20120617/koen3.html

今年、世界中の失業者が2億人に。
http://www.guardian.co.uk/business/2013/jan/22/eurozone-crisis-live-global-jobless-hits-record

日本。ユニオンぼちぼちのブログ:生活保護に関する緊急声明
http://unionbotiboti.blog26.fc2.com/blog-entry-321.html
2013.02.12 / Top↑
英国の障害者チャリティ、United Response から、
知的障害のある人にも政治や社会に関するニュースを届けようと、
易しい言葉を使い、写真や絵を多用した新聞 Easy News が創刊されている。

United Responseサイトの Easy News ページはこちら。

創刊2013年1月号はこちら。

創刊号では
最初にこの新聞の創刊のニュースが取り上げられた後、
2012年の大きなニュースから以下のものが
短い段落ごとに写真やイラストを伴って報じられている。

・エリザベス女王の即位60周年
・NHS改革
・パラリンピック
・政府の歳出削減策
・ケアホームにおける虐待発覚

(読みやすい英語で簡潔にまとめられているので、
我々非ネイティブにとっても複雑な問題の要点が掴みやすく、たいそう有難い)

今後、2か月ごとに紙とオンラインの両方で刊行される。
CDによるオーディオ・ヴァージョンも近くオンラインで提供。

United Responseでは今後1年間Easy Newsを発行する予算があるが
その後も継続できるよう、寄付を募っている。

このプロジェクトを実現させた Kaliya FranklinさんのGuardian記事はこちら ↓
http://www.guardian.co.uk/society/2013/jan/23/easy-news-people-learning-difficulties?CMP=EMCNEWEML6619I2


【27日追記】
日本でも、全日本手をつなぐ育成会から
同種の新聞「ステージ」が季刊で発行されていました。
2013年新春号で既に64号。全8ページ。年間購読料900円 ↓

http://www.ikuseikai-japan.jp/books/books02.html
2013.02.12 / Top↑