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この1年間の医療・障害・生命倫理を巡る英米での動き概観


英米の医療や障害者関連のニュースを簡単に追いかけてきた中で
Ashley事件からの2年間、特に去年1年間の動きで印象的だったことを。


・ワシントン州の住民投票で自殺幇助が合法化されたこと。米国で自殺幇助が合法化されているのはオレゴンとワシントンの2州となりました。

・英国を中心に、スイスのDignitasクリニックに出かけて幇助自殺を遂げる人が急増。合法化を求める声の高まりと同時に、本来なら余命半年程度で耐えがたい苦痛がある人など厳密に設定されているはずの条件がどんどん曖昧になり、ターミナルでもなければ苦痛もないのに障害があるから、家族に介護負担を負わせたくないからといった理由で自殺を幇助される人が増えています。闇で安楽死を請け負うビジネスも横行しているようです。

・臓器不足のため、脳死を待たずに呼吸器を外して臓器を摘出する医師が増えているし、それを正当化する理論付けを行う生命倫理の専門家も出てきているようです。

・英国議会でのヒト受精・胚法改正議論で、障害児に対する優生的な視線、発言が相次ぎました。

・英米で障害のある子どもたちがクラスから、飛行機から、教会から排除されるという事件が相次ぎました。

・英米で製薬会社の利益優先・人命軽視の実態と、影響力の大きな医師との癒着が相次いで問題となりました。科学と技術による簡単解決文化の背景に潜んでいるものを考えされられます。

・重症障害者への治療が無益だと停止され、栄養と水分の供給すら停止されるケースが目に付いています。

・障害児が親に殺されるケース。障害児が生まれると親がどんなに大変かと、障害児を加害者的に見るメディアのトーンも目に付くような気がします。

・親による子どもの殺害、虐待。親にも学校にも制御不能の、荒れる子どもたち。

・ワシントン大学にゲイツ財団からの巨額の資金提供によって、世界の保健医療をコスト計算で再評価するIHMEが開設されました。英国の医学誌Lancetと提携し、死亡率だけでなく障害の発生率も抑える新基準DALYを医療のスタンダードとして導入ことを目指しています。

・明るいニュースとしては、イリノイ州で知的障害のある女性に子宮摘出の要望が出されていたケースに、裁判所はNOと判断。

一言で言えば、
Ashley事件からの2年間で
世界中で障害児・者への排除の空気が非常に濃厚になってきたという印象。

“Ashley療法”論争当時は、それでもまだ
あからさまに「社会的にコスト」をあげつらって声高に云々する人は
多くはなかったように思うのですが、
この2年間の間に障害児・者について医療費・教育費、その他支援の社会的コストが
ずいぶん露骨に言われるようになりました。

Ashley事件はそういう時代の急激な変化を前に、
まるでその後の排除の空気への急傾斜を予告・警告するかのように起きた事件だと
いま振り返ると、つくづく感じます。
2009.01.05 / Top↑
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