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大物児童精神科医Biederman医師との癒着が取りざたされているJ&J社の抗精神病薬Risperdalによって
男児の胸が大きくなる副作用が先週のFDAの会議において話題に。

Risperdalの副作用被害についてJ&J社を相手取って訴訟を起こしている被害者らの弁護士によると
こうした被害を訴えている少年は6人で
そのうち2人は乳房切除の手術を受けなければならないほどの大きさに。

Risperdalのラベルには
prolactinレベルが上がって男性の胸が膨らむ可能性についても書かれているとのことで、
臨床実験では2.3%の青少年に見られたとのこと。

先週の会議ではFDAは
特に警告を追加する必要は認めない、と。

しかし抗精神病薬とプロラクチンの関係の研究があるDuke大学の研究者は
ホルモンの変化を無害なものと考えてはいけない、
またRisperdalを飲んでいる思春期以前の女児にも同様の副作用が見られた、と。

Risperdal Can Have Troubling Side Effects in Boys
The Wall Street Journal, November 25, 2008



私としては、この記事を読むと
どうしても思い出してしまうのが“Ashley療法”で、

Ashleyの父親は“Ashley療法”批判への反論として書いたブログで
低身長の子どもへの成長ホルモン療法で
男児の胸が膨らんで乳房状になるという副作用が問題視されているが、
そういうケースへの解決策としてAshleyのように
治療の前に乳房芽を切除しておくという方法を使えばいいじゃないか、と
提案しています。

ちょっと読むと、
「特に男の子では背が低いのは社会的に不利だから成長ホルモンで背を高くしよう」という時に
その治療の副作用防止策として「外科手術を受けさせる」というのは
目的に対して手段の侵襲度が不釣合いに高く、本末転倒では? という印象を受けますが、
(そして実際にAshleyに行われた医療処置に、そういう批判があるわけですが)

なんとAshley療法の担当医らは
論文で、もっとすごいことを言っているのです。

estrogenの大量投与でAshleyの身長を抑制するに当たって、
副作用として子宮からの出血が予測されたので
その予防としてホルモン治療の前に子宮を摘出した、と。

さらに論文の中のestrogen療法のリスクについて述べた一説でも
男児において乳房が女性化する問題と
女児において子宮からの出血の両方を上げたうえで、
特に発達障害のある患者の生理のコントロールでは
「こうした子どもたちには、我々の患者に行われたような
治療前の子宮摘出が選択肢である」と書いているのです。

つまり、ホルモン療法の副作用には
乳房芽や子宮を摘出して外科的に対応すればよい、
障害女性の生理のコントロールも、いっそ子宮摘出で、というわけです。

”Ashley療法”の論理で行けば
ここで指摘されているRisperdalの副作用など
飲ませる前にその男児の乳房芽を切除しておけば、
簡単にテクニカルな解決のつく問題に過ぎないことになるでしょう。

        ――――――


子どもたちの健康を守るはずの児童精神科医が
大企業の利潤の追求と自らの肥大した自我によって
最低限の職業倫理すら擲ってしまったかに見える
Biederman医師らと製薬会社との癒着スキャンダル──。

当ブログの仮説に立てば、
子どもたちの尊厳を守る砦であるはずの米国有数の子ども病院・倫理委員会が
大企業の資金と権力と、そこに繋がる人物の肥大した自我に屈して
その責任と機能を放逐してしまったかに見えるAshley事件──。

それら2つの事件を取り巻いて米国社会に広がり続けている
「科学とテクノロジーで人間の身体も命も思いのままに操作できる」という文化──。

「利益と効率が全て」の弱肉強食の市場主義の競争文化──。
その市場原理で世界の保健医療を再構成していこうとする動き――。
それを牽引する慈善資本主義――。

きっと、これらは全て繋がっているし、
全てが繋がっている大きな図の中に個々の事件や現象を据えたうえで、
それら1つ1つを眺めなければ
大事なことを見落としてしまうのではないでしょうか。
2008.11.28 / Top↑
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