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おととい、こちらのエントリーで触れた
AJOBのDiekema&Fost論文については、
コメンタリーの募集で公開された掲載前のバージョン全文を読み、
当ブログでも6つのエントリーでいくつかの指摘をしています。
(文末にリンク。ただし指摘できるマヤカシは、この他にも山のようにあります)

このDiekema&Fost論文で、著者らが最も論駁できずにいたのが
今回もコメンタリーを書いているAlicia R. Quellette の以下の批判論文(2008)。

Growth Attenuation, Parental Choice, and the Rights of Disabled Children: Lessons from the Ashley X Case
Alicia R. Quellette, J. D.
8 Houston Journal of Health Law & Policy 207-24

著者はAlbany Law Schoolの準教授で
Union Graduate College/Mt. Sinal School of Medicine Program in Bioethicsの生命倫理の教授。

この論文、実はもうかなり長いこと手元にあって、
読まなければと思いながら、ずっと先延ばしになっていたので、
コメンタリーで名前を見たのを機に、引っ張り出して読んでみました。

全体の論旨をごく簡単にまとめると、

現在、Ashleyに行われた医療介入に対する明確な法的な規制はなく、
このままでは将来的にも子どもの医療に関する親の決定権の範疇に入ってしまいかねないが、

介入の侵襲度の高さやリスク、障害児の権利の侵害や虐待の可能性に鑑みれば、
Ashley事件での倫理委の意思決定プロセスの欠陥こそが教訓とされて
一定の規制とガイドラインがあるべきだ。

ガイドラインとしては、
Seattle 子ども病院とWPASとの合意内容を基本モデルとしてはどうか。

この論文の一番大きな意義は、Ashleyケースでの倫理委の検討プロセスについて
法学・生命倫理学者が明確に deficient (欠陥がある)と結論したこと。
そして、それを論拠に明確な規制の必要を説いたことではないでしょうか。

子どもの医療をめぐる親の決定権とその制約についての
米国の法律的な考え方が非常によくまとめられているので
内容をいくつかのエントリーに分けて、ちょっと詳しくまとめてみます。

まずQuelletteも、Ashley論文の常として最初に事件の概要をまとめていますが、
これが非常に詳細です。

特に、医師らの論文とメディアでの発言などから倫理委の検討についての説明を拾い、
利益と害を比較検討したら利益が上回ると結論付けたという
Diekema医師らが主張するところの「倫理委での検討過程」をなぞり
逐一確認している部分は、これまでの批判論文で誰もやっていない作業です。

(倫理委のコンセンサスに関するDiekema発言については私も可能な限り拾って、
その一貫性の無さをこちらで指摘しています)

その後、障害当事者らから出てきた批判の論点を取りまとめた後で、
著者は子どもの医療に関する親の決定権をめぐる現在の法律的な考え方を整理します。

次のエントリーに続く)

2010.01.15 / Top↑
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