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Ⅳ 関連の法的要求事項

A.憲法上の権利:privacy and liberty interests

1.privacy and liberty interests generally

Skinner v. Okrahoma, Addidngton v.Texas, Harper v.Washington, Cruzan V. Director, Missouri Dept. of Health, Gristwold v. Connecticut, Roe V. Waide などの判例により、生殖に関わる選択を個人的に行う権利、侵襲的な医療処置を意に反して受けなくても良い権利、生命維持医療を拒む権利、本人の望まない不妊術を拒む権利などが認められている。

2.インフォームドコンセントで同意できない(not competent)大人と未成年の治療決定に関して必要な法的手続き

 末期治療の決定については、しかるべき手順を踏んで任命された裁判所認定の代理人が決定できる。それ以外の決定では、侵襲性が高く不可逆的な治療(電気痙攣治療、本人の望まない抗精神病薬の使用、本人の望まない不妊手術)については、法定代理人でも不可。緊急の場合を除き、裁判所の命令が必要。
 未成年の場合、親の決定権は成人の法定代理人よりも広いが、ワシントン州では本人の望まない精神科への入院、命に関わるような緊急時でない場合の電気痙攣治療、精神科手術、成熟した未成年の妊娠中絶、不妊手術、それ以外の侵襲性が高く不可逆的な治療、特に親と子の利害が異なっている場合には、裁判所の審理と許可が必要。
 1980年のre Hayes 判例(16歳女児、機能は4,5歳。性行為あり妊娠の可能性を恐れた母親と医師が不妊手術を求めた)では、ワシントン州最高裁は発達障害のある子どもの親に不妊治療への同意権を認めなかった。本人の望まない不妊治療は本人の憲法上のプライバシーと自由権を侵すとの判断が示されたもの。不妊手術については、公平な立場の法定代理人または弁護士が子の利益を代理してヒアリングが行われることが必要。また、この判決によって、裁判所が発達障害のある人への不妊手術を認める基準が示された。

1.子どもが自分で不妊手術への決定ができない。

2.予見可能な将来において、不妊手術について説明を受けた上で判断ができるだけの発達がその子には見込めない。

3.その子どもが身体的に生殖可能。

4.その子どもが現在または近い将来において、妊娠に繋がりそうな状況で性行為を行うと思われる。

5.その子どもは、子どもの世話をする能力を永久的に持たない。

6.監督、教育、トレーニングを含め、不妊手術ほど過激でない避妊手段が役に立たない、または使えないことが証明されている。

7.提案されている不妊法は、その子どもの身体への侵襲度が最も低いものである。

8.可逆的な不妊法または、その他のより過激でない避妊方法がすぐには使えず、なおかつ

9.科学の発展によって、その子どもの障害の治療がすぐに見込める状況にない。

 K.M.の判例では、法定代理人が立てられたが、親と医師の言い分を認めたために裁判所の許可が下りた。が手術実施前に上訴、上訴裁判所は法定代理人は本人の利益を熱心に(zealously)に主張する必要があり、ただ立てただけでは「無意味なジェスチャー」に過ぎない、改めて弁護士を代理人とするように指示し、差し戻した。本人の利益を充分代理する、公平でアドボケートとして効力がある代理人が必要との判断が示されたもの。

 アシュリーのケースでは、成長抑制と乳房芽の摘出については前例がないが、侵襲性が高く不可逆的な治療であることを考えると、裁判所の命令が必要。

B.“アシュリー療法”がアシュリーに対して実施される前に、裁判所の命令が必要であったか?

1.子宮摘出術

 アシュリーの両親の弁護士は、父親への手紙の中で子宮摘出術は不妊を目的としたものではないので、Hayesの判例が適用されないとの判断を示しているが、Hayesの判決の中に「不妊手術命令が出されるべきかどうかを決定する、いかなる手続きにおいても、知恵の遅れた人は公平な法定代理人によって代理されなければならない」と述べられている。
 また、アシュリーの両親の弁護士がK.M.の判例を引いて、アシュリーはこのケースの子どものように親を訴えたり、モノを言うこともないのだから当てはまらないと述べている点について、法律上の権利が障害の重さによってグラデーション状態に漸減するわけではないと反論。

2.乳房芽とホルモン療法

 侵襲性が高く不可逆的な治療により、憲法で保障されたプライバシーと自由権が侵されている。

3.障害に基づいた差別

 発達障害がなかったら認められない行為が障害を理由に認められることそのものが、差別問題となる。障害を理由にした差別は州法でも連邦法でも禁じられている。

Ⅴ.不妊治療と成長抑制が求められた場合に発達障害のある人の法的権利を守るための改善策とその他組織改革

 アシュリーのケースでは、裁判所の命令が求められなかったことからアシュリー本人の立場も代理されることがなかった。その反省に立ち、子ども病院は以下の手段をとることでWPASと合意した。

A.成長抑制医療介入に関する方針と手順の実施

 裁判所の命令なしに発達障害のある人に成長抑制を行わない。裁判所の命令があった場合、子ども病院はさらに倫理委員会で検討を行う。方針と手順についてはWPASと密に相談し、2007年9月1日までに策定する。
 さらに、それら手続きなしに治療が行われたり薬が処方されることがないよう、病院のコンピュータ・システムにセーフガードを儲ける。また成長抑制療法に裁判所の許可が下りた場合は、プライバシー法の範囲で、子ども病院はWPASに通知する。

B.改善策
 上記コンピュータ・システムの改善。職員への教育。

C.裁判所の命令なしには不妊手術を行わない。

D.倫理委のメンバー

 子ども病院はWPASから推薦を受け、倫理委のメンバーに発達障害のある人のアドボケートが出来る人を任命する。また、発達障害のある人に関するケースでは、倫理委は内部外部の専門家に相談する。WPASがその他の領域の専門家を倫理委に含めるべきだと勧める場合には、子ども病院は注意深く検討し、WPASと相談する。

Ⅵ 結論

 裁判所の許可なしにアシュリーに行われた不妊手術は、明らかに憲法とワシントン州法への違反。裁判所の命令が求められなかったために、結果として不妊治療や「アシュリー療法」全体の合法性が検証される機会もなかったことになる。

 これまでの判例に見られるように、親や代理人、医師の利益が不妊を求められる子ども自身の利益と同じであるとは限らない。だからこそ法律に定められたしかるべき手順を踏むことが重要。アシュリーのケースで裁判所が命令を出していたかどうかは不明。今後の同様なケースで裁判所の判断がどうなるかも分からない。引き続き社会として発達障害のある人をどのように尊重していくのかの対話が必要。アシュリーと家族の直面している問題は全国に見られる。介護や支援サービスの不十分の問題は確かにある。それでもなおかつ、障害のある人やアドボケートは自立生活運動を推進し、地域と施設での介護状況の改善に協力して努力をしてきたことも事実。
 アシュリーのケースで巻き起こったメディア報道と論争を好機として、論争のあらゆる立場の人が加わって、ソーシャルサービス提供システム改善策を模索すればよい。WPASはこの問題をアシュリーと子ども病院だけの問題とせず、広く啓発活動を行う。(Executive Summaryに「次のステップ」あり。)
2007.06.03 / Top↑
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