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首都キャンベラ在住の、
知的障害のある75歳の男性 Allan McFarlaneさんは
去年5月に癌の疑いが濃厚で、2週間以内に手術することになると告げられた。
しかし1年たっても腎臓にステントを挿入する手術も生体検査も待機状態のまま。

ついに先月、McFarlaneさんとガーディアンのFay Arroldさんは
その状況をメディアに訴えた。

Canberra Timesの報道は政治論争を巻き起こし、
即座に手術の予定が組まれた。

月曜日の手術では麻酔があまり効かず、
回復もしんどいものだったが、

21年間、Dicksonのお店でボランティアとして働き、
客から「Dicksonの市長」と呼ばれ親しまれてきた笑顔が、やっとMcFarlaneさんに戻ってきた。

退院後はArroldさんの自宅で療養している。
Arroldさんは1978年にMcFarlaneさんの父親が亡くなって以来
ずっとMcFarlaneさんのケアをしてきた人。

生検の結果は数週間後になるのだとか。

他にも、30日以内に手術が必要なカテゴリー1の緊急度と診断された
前立腺がんの患者さんが、なかなか受けられないので問い合わせたら
カテゴリー2a に格下げされていた、という話もあり、

選択的手術を始めとする治療の待機患者リストを
監査当局が調査することに。

英国のNHSに当たる、首都圏のACT Healthの方で
医師の決めたカテゴリーを勝手に捜査しているのでは、との疑いが浮上しているが、

一方には、自分の患者を待たせないために、
それほど深刻でない病状でもカテゴリー1として届ける医師も後を絶たないという指摘も。

Mayor gets his day in surgery, at last
The Canberra Times, July 1, 2010


記事全体としては、
医療が崩壊しつつあり、長い待機期間が当たり前になってしまった
オーストラリアの医療の一般的な問題として書かれてはいるのですが、

McFarlaneさんのケースで、
知的障害があるから1年も待たされて、なお放置されていたのか、
それとも障害とは無関係だったのかがはっきりしません。

しかし、手術時に麻酔が効かなかったという点も、
回復過程がラフだった(困難だった、辛かった)という記述も、
私は個人的に、ものすごく気がかりでした。

私自身、日本の総合病院の外科の直接体験として、
娘が重症児で「痛い」と言えないというだけで
本人は目でも音声でも必死に訴えていたし、
親も施設の医師や看護師も一緒に訴えていたにもかかわらず、
腸ねん転の手術の後、痛み止めの座薬を入れてもらえなかったことが
いまだに大きなトラウマとなっています。

また、英国では知的障害者のアドボケイトMencapの訴えで医療オンブズマンが調査に入り、
医療現場の無知、無理解によって、死ななくてもよかった知的障害者が
死に至ったケースが認められ、改善が勧告されました。

ウチの娘の体験と、非常に似通った事情のケースでした。
(詳細は以下のエントリーに。)

まさか、障害児・者だから「治療しなくてもいい」とか
「痛みがあろうと放っておいて苦しませておけばいい」という意識があるのだとしたら、

それは障害者差別というよりは、非人道的な残虐行為――。


【関連エントリー】
「医療における障害への偏見が死につながった」オンブズマンが改善を勧告(2009/3/31)
オンブズマン報告書を読んでみた:知的障害者に対する医療ネグレクト
Markのケース:知的障害者への偏見による医療過失
Martinのケース:知的障害者への偏見による医療過失

(ウチの娘の体験については「Markのケース」のエントリー後半に)
2010.07.01 / Top↑
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