8年前に妻と3人の子どもを殺して死刑を宣告された37歳の男性が
毎日せまっ苦しい独房に閉じ込められて過ごしたって何の償いにもならないけど、
死刑になった後で使える臓器をみんな提供すれば多くの人を救って
少しでも罪を償うことができる、と許可を求めたところ、
「公益のためにも死刑囚のためにも申請は却下する」と
刑務所から拒絶されてしまった。
米国には死刑囚の臓器提供を禁じる法律はないが、
現在、それを認めている刑務所はない。
主な理由は4つで、それぞれにLongo氏の反論をくっつけてみると、
① Oregonその他で死刑に使われる複数の薬物のカクテルが臓器を痛める可能性。
しかしOhioとWashingtonでは一種類なので臓器は痛まない。
② 死刑囚の臓器には、HIVや肝炎に感染しているリスクがある。
しかし、事故でいきなり運び込まれてきた脳死者の臓器よりも
健康チェックを受けている死刑囚の臓器の状況の方が確実にチェックできる。
③ 臓器提供のために身柄を移すなどすれば逃亡に使われる恐れがある。
しかし死刑そのものが刑務所内で行われるなら、その場で摘出もできる。
④ 米国では1963年から1973年にかけて、オレゴン州の囚人を
睾丸へのレントゲン照射実験への有償“ボランティア”にした恥ずべき歴史がある。
しかし、まったくの自発意思による臓器提供なら認められて然りだろう。
つい先頃のミズリー州の
双子の一人がもう一人に腎臓提供する条件で終身刑を免除され釈放された事件を思い出し、
臓器提供で何らかの特典を狙っているのだろうと思われるかもしれないが、
そんなことは全く考えていない。
Oregonには現在35人の死刑囚がおり、
自分はそのほとんど全員と話をしたが、約半数が
上訴がかなわなかったら臓器提供したいとの希望を持っている。
もし自分が今日、体中の臓器を提供することができれば、
OR州の臓器移植待ちリストの1%を解消することができる。
このまま、ただ死刑になれば、それらの臓器はただ無駄になってしまう。
自分の死後に自分の体をどうしたいかを自分で決める権利を
奪わないでほしい。
Giving Life After Death Row
Christian Longo,
NYT, March 5, 2011
私はこの記事を読み始めた時、
英語圏のジャーナリストが記事を書く際によくやるように
誰かの視点から物語ることで皮肉や風刺を際立たせる修辞法なのだろうと考え、
どこかで話に、くいっと、ひねりが起こって、
行き過ぎた臓器不足解消の動きがここまで行ったらどうするよ~?
とのメッセージが送られるのだろうと予測しながら読んだのですが、
話はそのまま、「まんま」のメッセージでした。
しかし、いくら読んでも、
死刑囚の「罪を償いたい」という切実な思いはちっとも伝わってこず、
「死刑囚が臓器を提供すれば臓器不足が解消される」と
まるで功利主義の学者が、この主張を正当化するために論文でも書いているかのような
奇妙なほど理路整然と、極めて合理的な文章なのだけれども。
ちなみに、これを書いたLongo氏は
g.a.v.e. offering life from an unexpected placeという
どうやら「死刑囚をはじめ、人間みんな臓器を提供しましょう」活動団体を
立ち上げたという人物。
(私はサイトをちゃんと覗いてみるところまでできていません)
で、この記事を読んだ私の最大の疑問は
死刑囚のLongo氏が、どうやったら
オレゴン州のその他34名の死刑囚のほとんど全員と話ができるのか。
次に、
このLongo氏という人物のバックグラウンドは――?
(こういう理路整然と学者のような論文を書ける人物なのか?)
(囚人の中には、誘導されやすかったり迎合的な傾向の人が多いのでは?)
それから、
最近、米国では死刑に使われる毒物の不足がニュースになっており、
そのため、自殺幇助で使われる薬物に切り替えていく州が出始めているのだけれども、
もしかして、死刑囚からの臓器提供への条件づくりという側面は――?
ついでに、
自殺幇助合法化で先頭を切り、今ではすっかりC&Cが浸透しきっているOR州で
こういう声が上がったということの意味は――?
【7日追記】
Wesley Smithがすぐさま反応。
「死刑囚に提供させてはいけない」とエントリーを書いている。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2011/03/06/condemned-prisoners-should-not-be-able-to-donate-organs-after-execution/
毎日せまっ苦しい独房に閉じ込められて過ごしたって何の償いにもならないけど、
死刑になった後で使える臓器をみんな提供すれば多くの人を救って
少しでも罪を償うことができる、と許可を求めたところ、
「公益のためにも死刑囚のためにも申請は却下する」と
刑務所から拒絶されてしまった。
米国には死刑囚の臓器提供を禁じる法律はないが、
現在、それを認めている刑務所はない。
主な理由は4つで、それぞれにLongo氏の反論をくっつけてみると、
① Oregonその他で死刑に使われる複数の薬物のカクテルが臓器を痛める可能性。
しかしOhioとWashingtonでは一種類なので臓器は痛まない。
② 死刑囚の臓器には、HIVや肝炎に感染しているリスクがある。
しかし、事故でいきなり運び込まれてきた脳死者の臓器よりも
健康チェックを受けている死刑囚の臓器の状況の方が確実にチェックできる。
③ 臓器提供のために身柄を移すなどすれば逃亡に使われる恐れがある。
しかし死刑そのものが刑務所内で行われるなら、その場で摘出もできる。
④ 米国では1963年から1973年にかけて、オレゴン州の囚人を
睾丸へのレントゲン照射実験への有償“ボランティア”にした恥ずべき歴史がある。
しかし、まったくの自発意思による臓器提供なら認められて然りだろう。
つい先頃のミズリー州の
双子の一人がもう一人に腎臓提供する条件で終身刑を免除され釈放された事件を思い出し、
臓器提供で何らかの特典を狙っているのだろうと思われるかもしれないが、
そんなことは全く考えていない。
Oregonには現在35人の死刑囚がおり、
自分はそのほとんど全員と話をしたが、約半数が
上訴がかなわなかったら臓器提供したいとの希望を持っている。
もし自分が今日、体中の臓器を提供することができれば、
OR州の臓器移植待ちリストの1%を解消することができる。
このまま、ただ死刑になれば、それらの臓器はただ無駄になってしまう。
自分の死後に自分の体をどうしたいかを自分で決める権利を
奪わないでほしい。
Giving Life After Death Row
Christian Longo,
NYT, March 5, 2011
私はこの記事を読み始めた時、
英語圏のジャーナリストが記事を書く際によくやるように
誰かの視点から物語ることで皮肉や風刺を際立たせる修辞法なのだろうと考え、
どこかで話に、くいっと、ひねりが起こって、
行き過ぎた臓器不足解消の動きがここまで行ったらどうするよ~?
とのメッセージが送られるのだろうと予測しながら読んだのですが、
話はそのまま、「まんま」のメッセージでした。
しかし、いくら読んでも、
死刑囚の「罪を償いたい」という切実な思いはちっとも伝わってこず、
「死刑囚が臓器を提供すれば臓器不足が解消される」と
まるで功利主義の学者が、この主張を正当化するために論文でも書いているかのような
奇妙なほど理路整然と、極めて合理的な文章なのだけれども。
ちなみに、これを書いたLongo氏は
g.a.v.e. offering life from an unexpected placeという
どうやら「死刑囚をはじめ、人間みんな臓器を提供しましょう」活動団体を
立ち上げたという人物。
(私はサイトをちゃんと覗いてみるところまでできていません)
で、この記事を読んだ私の最大の疑問は
死刑囚のLongo氏が、どうやったら
オレゴン州のその他34名の死刑囚のほとんど全員と話ができるのか。
次に、
このLongo氏という人物のバックグラウンドは――?
(こういう理路整然と学者のような論文を書ける人物なのか?)
(囚人の中には、誘導されやすかったり迎合的な傾向の人が多いのでは?)
それから、
最近、米国では死刑に使われる毒物の不足がニュースになっており、
そのため、自殺幇助で使われる薬物に切り替えていく州が出始めているのだけれども、
もしかして、死刑囚からの臓器提供への条件づくりという側面は――?
ついでに、
自殺幇助合法化で先頭を切り、今ではすっかりC&Cが浸透しきっているOR州で
こういう声が上がったということの意味は――?
【7日追記】
Wesley Smithがすぐさま反応。
「死刑囚に提供させてはいけない」とエントリーを書いている。
http://www.firstthings.com/blogs/secondhandsmoke/2011/03/06/condemned-prisoners-should-not-be-able-to-donate-organs-after-execution/
2011.03.08 / Top↑
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