「インドで考えたこと」で考えたことの中でも触れたことなのだけど、
先日の事業仕分けの際に、
スーパーコンピューターを始めとして科学研究の予算が削減と判断されたことに対して
科学者の方々から大きな批判が起こった。
スーパーコンピューターを始めとして科学研究の予算が削減と判断されたことに対して
科学者の方々から大きな批判が起こった。
あの時の、例えばノーベル賞受賞の著名科学者の方々の記者会見などで
私が一番印象的だったのは、その批判の激しさよりも、むしろ
その背景にある切迫した危機感が、生々しく丸裸のまま語られたことだった。
私が一番印象的だったのは、その批判の激しさよりも、むしろ
その背景にある切迫した危機感が、生々しく丸裸のまま語られたことだった。
「熾烈な国際競争」「資源のないわが国がどうやって生き残るか」というフレーズくらいは
これまでも何度も耳にはしてきたけれど、
これまでも何度も耳にはしてきたけれど、
スパコン競争に負けるとは、最初に作った国に「隷属することを意味する」、
科学研究予算を削って「将来の歴史の審判を受ける覚悟があるのか」などの切迫感は、
これまで一般の国民に向けては、あまり語られなかった。
科学研究予算を削って「将来の歴史の審判を受ける覚悟があるのか」などの切迫感は、
これまで一般の国民に向けては、あまり語られなかった。
私は、それらの表現を誇張だとは全然思わなかったし、むしろ、
ああ、やっと本当のことが語られている……というふうに聞いた。
ああ、やっと本当のことが語られている……というふうに聞いた。
この「やっと本当のこと」には、私なりの伏線があって、
例えばこちらのエントリーなどで書いているように、
実現可能性からいうと、科学的事実というよりも、まだSFの領域に近いとしても、
科学とテクノのブレークスルーには、まるで来年にも「アルツもパーキンソンも治せる!」かのような
「人工臓器の実現は近い!」かのような、科学研究への期待を煽る文句が必ずくっついてくることを
莫大な研究費用がつぎ込まれることに対する免罪符であり、つまりは世間への煙幕なのでは……と、
私はこのブログをやりながら、ずっと考えてきた。
例えばこちらのエントリーなどで書いているように、
実現可能性からいうと、科学的事実というよりも、まだSFの領域に近いとしても、
科学とテクノのブレークスルーには、まるで来年にも「アルツもパーキンソンも治せる!」かのような
「人工臓器の実現は近い!」かのような、科学研究への期待を煽る文句が必ずくっついてくることを
莫大な研究費用がつぎ込まれることに対する免罪符であり、つまりは世間への煙幕なのでは……と、
私はこのブログをやりながら、ずっと考えてきた。
もちろん、医学研究でいえば、最終目的は病気の治療や予防を可能にすることなのだろうし、
それぞれの研究は「難病を治す、予防する」に向かっての小さなステップに違いないだろうけど、
それ自体は、今のように資金をどんどん投入して性急に成果を出さなければならないような
それほど切迫した話じゃない、本来もっと息の長い基礎研究の積み重ねの話のはずだと思う。
それぞれの研究は「難病を治す、予防する」に向かっての小さなステップに違いないだろうけど、
それ自体は、今のように資金をどんどん投入して性急に成果を出さなければならないような
それほど切迫した話じゃない、本来もっと息の長い基礎研究の積み重ねの話のはずだと思う。
科学とテクノロジーの研究に、
これほどの切迫感と性急さで資金と成果が求められるのは
やはり科学とテクノの熾烈極まりない国際競争があるからで、
これほどの切迫感と性急さで資金と成果が求められるのは
やはり科学とテクノの熾烈極まりない国際競争があるからで、
その熾烈な弱肉強食競争は、
遺伝子操作で作った微生物に特許が認められたチャクラバティ裁判とか
Craig Venterが、ならず者的ルール違反でちゃっかりとDNA情報に特許をとった時に、
世界中の多くの研究者の意図に反して否応なく火蓋が切られてしまったものだろうな……と
私は無知な素人の稚拙な理解で考えている。
遺伝子操作で作った微生物に特許が認められたチャクラバティ裁判とか
Craig Venterが、ならず者的ルール違反でちゃっかりとDNA情報に特許をとった時に、
世界中の多くの研究者の意図に反して否応なく火蓋が切られてしまったものだろうな……と
私は無知な素人の稚拙な理解で考えている。
遺伝子研究のごく初期の、
その研究成果は人類共有の財産なのだと誰もが疑うことなく信じていた時期に
卑劣な抜け駆けをした欲深い科学者(転じて企業家)によって、
最先端研究の成果は巨大な利権と結びつくことになってしまった。
その研究成果は人類共有の財産なのだと誰もが疑うことなく信じていた時期に
卑劣な抜け駆けをした欲深い科学者(転じて企業家)によって、
最先端研究の成果は巨大な利権と結びつくことになってしまった。
(どっちにせよ時間の問題だったかもしれないけれど、加担したのが米国の裁判所だというのが……)
そして、その競争が経済や金融のグローバリゼーションとも重なり合って、
相互に拍車を掛け合っているのが今の熾烈な競争による弱肉強食の世界……なんじゃないだろうか。
相互に拍車を掛け合っているのが今の熾烈な競争による弱肉強食の世界……なんじゃないだろうか。
よく耳にする「世界の産業構造が変わる」ということの正体とは、
要するに、そういうことなんだろうな……というのが私の個人的な理解で、
要するに、そういうことなんだろうな……というのが私の個人的な理解で、
米国のNIBCレポートを読むまでもなく、ナノ、インフォ、バイオ、コグノその他
最先端科学とテクノの領域は、それぞれに重なり合って、互いに不可欠な存在になり、
(詳細は「米政府NBICレポート」の書庫に)
最先端科学とテクノの領域は、それぞれに重なり合って、互いに不可欠な存在になり、
(詳細は「米政府NBICレポート」の書庫に)
それだけに、またそこにつながる利権も、これまでの産業構造では想像もできなかったほどの規模に
今後ますます膨れ上がっていく一方なのだろうし、それが、つまりは
「スパコン競争で負けたら、日本は勝った国に隷属することになる」ということなのだろう。
今後ますます膨れ上がっていく一方なのだろうし、それが、つまりは
「スパコン競争で負けたら、日本は勝った国に隷属することになる」ということなのだろう。
実際に、いま現在の世界にだって既に勝ち組の国々に隷属させられている国々というのは出てきていて、
例えば先進国のITごみなど有害ごみのゴミ捨て場にされていたり、
医薬品の実験場にされている気配すらあるアフリカ。
例えば先進国のITごみなど有害ごみのゴミ捨て場にされていたり、
医薬品の実験場にされている気配すらあるアフリカ。
奴隷労働のような条件の家事介護育児の労働力として国民を輸出するしかなかったり、
医療ツーリズムで富裕国の富裕層向けに自国の死刑囚の臓器を提供したり、
闇での売買も含めた臓器移植を行ったり、代理出産をほとんど一手に引き受けるアジアの国々がある。
医療ツーリズムで富裕国の富裕層向けに自国の死刑囚の臓器を提供したり、
闇での売買も含めた臓器移植を行ったり、代理出産をほとんど一手に引き受けるアジアの国々がある。
いずれも、欧米先進国の富裕層が科学とテクノの簡単解決文化を謳歌するために、
貧困国の貧困層の人たちの身体や労働や臓器が供され、人権が踏みにじられるという構図。
貧困国の貧困層の人たちの身体や労働や臓器が供され、人権が踏みにじられるという構図。
私は最近、今までの経済のグローバリゼーションというのは
科学とテクノのグローバリゼーション・ネオリベラリズムの到来に向けた
地ならし・露払いに過ぎなかった……みたいなことに結局はなるのかなぁ……なんて考えてしまう。
科学とテクノのグローバリゼーション・ネオリベラリズムの到来に向けた
地ならし・露払いに過ぎなかった……みたいなことに結局はなるのかなぁ……なんて考えてしまう。
そんなふうに、科学とテクノの競争は、そのまま世界の産業・利権の構造に直結して、
実際に、その競争に生き残れるかどうかが、今後の国益そのものに重なっている。
つまり、その国の国民が、国際社会の中で今後どういう立場に置かれるか、
ぶっちゃけていえば、科学とテクノの恩恵に預かる側に立つか、
そのための資材として使い捨てにされる側に立つかを左右するのだから、
実際に、その競争に生き残れるかどうかが、今後の国益そのものに重なっている。
つまり、その国の国民が、国際社会の中で今後どういう立場に置かれるか、
ぶっちゃけていえば、科学とテクノの恩恵に預かる側に立つか、
そのための資材として使い捨てにされる側に立つかを左右するのだから、
この競争には「参加するかしないか」みたいな暢気な問いは、もはやありえなくて、
ただただ前に向かって突き進んで、勝ち残り、生き残りを目指す以外に道はない。
ただただ前に向かって突き進んで、勝ち残り、生き残りを目指す以外に道はない。
たぶん、現実は、もはや、そういうことなのだろうな……と、
このブログをやりながら、ずっと思っている。
このブログをやりながら、ずっと思っている。
そのためには、科学とテクノの研究に日本国としても最大限の資金をつぎ込むしかない。
だけど、それぞれ自分自身が”痛み”だらけであえいでいる国民の大半が
そんなことを、おいそれと理解・納得するものでもないから、
とりあえず「これで難病も治る! 人工臓器だってすぐできる!」と
「みんなの幸福のための科学とテクノ研究」の免罪符が撒かれ煙幕が張られる──。
だけど、それぞれ自分自身が”痛み”だらけであえいでいる国民の大半が
そんなことを、おいそれと理解・納得するものでもないから、
とりあえず「これで難病も治る! 人工臓器だってすぐできる!」と
「みんなの幸福のための科学とテクノ研究」の免罪符が撒かれ煙幕が張られる──。
しかし、その資金が事業仕分けで一気に危うくなった危機感で、
「こら、事態の深刻さをわかっとるのかッ」と国に向かって詰め寄った科学者の方々は
煙幕などかなぐり捨てて「勝てなかったら隷属国になるんだぞ」と
やっと本当のことを口にしてくれた……というふうに私は聞いた。
「こら、事態の深刻さをわかっとるのかッ」と国に向かって詰め寄った科学者の方々は
煙幕などかなぐり捨てて「勝てなかったら隷属国になるんだぞ」と
やっと本当のことを口にしてくれた……というふうに私は聞いた。
ただ、同時に、ずっと漠然と抱えてきた疑問も、いくつか、
あの記者会見のニュースから引っかかったまま、頭の中でぐるぐるしている。
あの記者会見のニュースから引っかかったまま、頭の中でぐるぐるしている。
私の疑問は大きく言えば4つで、
①で、日本はその競争に勝てるのか、そしてずっと勝ち続けることが出来るのか。
②勝ち続けることが出来るとして、そのために資金がどれほど必要なのか。
③その競争に負けてしまったら、日本国民は世界の中でどうなるのか。
④でも本当は科学とテクノによって構造転換した世界では、もう国家という装置は機能できず、
科学とテクノそのものが、これまで人類の歴史に存在したことがないような1つの強大な勢力となり、
世界のありようを既に組み替え始めている……というのが現実なのではないのか。
②勝ち続けることが出来るとして、そのために資金がどれほど必要なのか。
③その競争に負けてしまったら、日本国民は世界の中でどうなるのか。
④でも本当は科学とテクノによって構造転換した世界では、もう国家という装置は機能できず、
科学とテクノそのものが、これまで人類の歴史に存在したことがないような1つの強大な勢力となり、
世界のありようを既に組み替え始めている……というのが現実なのではないのか。
①のところでは、私は何も知識がないので、
誰か専門家が「スパコンでは勝てる」と言ってくれれば素直に信じるだろうけど、
でも「勝ち続ける」の方は、無知な素人なりに到底ありえないような気がしていて、
よほどの説得力のある説明をしてもらわないと、ちょっと信じられない。
誰か専門家が「スパコンでは勝てる」と言ってくれれば素直に信じるだろうけど、
でも「勝ち続ける」の方は、無知な素人なりに到底ありえないような気がしていて、
よほどの説得力のある説明をしてもらわないと、ちょっと信じられない。
②で知りたいのは、もちろん金額ではない。
そんなものは聞いたって、どんな形であれ私に“わかる”金額のはずはない。
そんなものは聞いたって、どんな形であれ私に“わかる”金額のはずはない。
それに、今後も長い年月に渡って加速度的に進むはずの
科学とテクノ研究競争に「勝ち続ける」ために必要な予算規模なんて、
きっと誰にも試算できないんじゃないかとも思うし。
科学とテクノ研究競争に「勝ち続ける」ために必要な予算規模なんて、
きっと誰にも試算できないんじゃないかとも思うし。
私が知りたい「どれほどの資金が必要か」というのは金額ではなく、
今でも、地方の産業は成り立たなくなり、まともに働いても食えない人が沢山出てきて、
医療も福祉も教育も、どんどん崩壊している状況で、今後、勝ち続けるために必要な予算を確保するとしたら、
日本国民の生活が例えば具体的にどういうものになれば賄えるのか、ということ。
今でも、地方の産業は成り立たなくなり、まともに働いても食えない人が沢山出てきて、
医療も福祉も教育も、どんどん崩壊している状況で、今後、勝ち続けるために必要な予算を確保するとしたら、
日本国民の生活が例えば具体的にどういうものになれば賄えるのか、ということ。
まずは足手まといの障害者と高齢者には死んでもらって、
さらに働いているのに食い詰めてしまう人にも死んでもらって、
それで医療費と社会保障費がいくらかは浮くにしても、それで勝ち続けられるのか、
その程度で高度化する一方の国際研究競争に追いつけるとも思えず、
本当はもっと必要になってくるんじゃないのか、ということ。
さらに働いているのに食い詰めてしまう人にも死んでもらって、
それで医療費と社会保障費がいくらかは浮くにしても、それで勝ち続けられるのか、
その程度で高度化する一方の国際研究競争に追いつけるとも思えず、
本当はもっと必要になってくるんじゃないのか、ということ。
仮に国際競争に勝ち伸びて隷属国になることを避け続けることが可能なのだとしても、
いま世界規模でアフリカと一部アジアの国で起こっているようなことの縮図として、
日本国内での都会と地方の格差や、また国民間の財力・能力による格差、さまざまな差別が
もっと酷薄な形をとって現実になっていくのではないのか、ということ。
いま世界規模でアフリカと一部アジアの国で起こっているようなことの縮図として、
日本国内での都会と地方の格差や、また国民間の財力・能力による格差、さまざまな差別が
もっと酷薄な形をとって現実になっていくのではないのか、ということ。
③については、知識がないので本当に想像ができない。
④については、そのまんま。
④については、そのまんま。
もちろん何の専門家でもない私が無責任に夢想することに過ぎないけど、
このブログをやりながら、科学とテクノの周辺のニュースや情報を当たっていると、
こんなふうにしか思えなくなっている。
このブログをやりながら、科学とテクノの周辺のニュースや情報を当たっていると、
こんなふうにしか思えなくなっている。
そして、もう言っても詮ない繰言なのかもしれないけど、
でも、それは、誰も幸せになれない世界じゃないのか……とやっぱり考えてしまう。
でも、それは、誰も幸せになれない世界じゃないのか……とやっぱり考えてしまう。
このブログを始めた頃には、私はまだ米英の科学とテクノの専横に対して、
英国以外のヨーロッパ諸国がその思慮深さで抵抗しようとしているような
印象というか希望的観測を持っていたのだけれど、やはり、利権が現実に絡むと、
結局はヨーロッパ諸国も巻き込まれざるを得ないのだろうな……と、この頃、感じ始めている。
英国以外のヨーロッパ諸国がその思慮深さで抵抗しようとしているような
印象というか希望的観測を持っていたのだけれど、やはり、利権が現実に絡むと、
結局はヨーロッパ諸国も巻き込まれざるを得ないのだろうな……と、この頃、感じ始めている。
だから、日本も同じところに置かれているということなのだろうな、とも思う。
そして、そのことを思うと、
「インドで考えたこと」で堀田善衛氏の書いていた
「悪ずれした日本人」という言葉が、いつも頭によみがえる。
「インドで考えたこと」で堀田善衛氏の書いていた
「悪ずれした日本人」という言葉が、いつも頭によみがえる。
2009.12.12 / Top↑
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