パキスタンのポリオ撲滅で
ゲイツ財団と提携した円借款が検討されているとのニュースは
7月12日の補遺で拾っており、
これは、その続報――。
JICAの緒方貞子理事長とゲイツ財団の共同代表のビル・ゲイツ氏が
ポリオ撲滅で「戦略的パートナーシップ」を発表。
その手始めとして、
JICAはパキスタン政府に対して49億の円借款を行う。
ポリオ撲滅活動資金として、2013年まで。
ポリオは世界的には過去20年間で99%も減少しているが、
未だ感染が止められていない国が4カ国あり、パキスタンはその1つ。
今年1月、the National Emergency Action Plan 2011 for Polio Eradicationが開始され、
パキスタン政府あげてポリオ撲滅に取り組むことが約束されている。
(記事に、ゲイツ財団によって約束させられたという匂いが漂っていないでもない)
日本からのODAを資金に、世界銀行やユニセフ、WHOも一緒になって、取り組む。
成功裏にプロジェクトが実施された暁には
ゲイツ財団が償還を肩代わりするという革新的なシステムが採用された。
The Japan International Cooperation Agency(JICA) and the Bill & Melinda Gates Foundation Announce Partnership on Polio Eradication
PR Newswire, August 17
この記事を読んで思ったこととして、
① 特に注目したいのは、
この円借款が、“革新的な”「肩代わり」制度によるものだということ。
今回の「借金肩代わり制度」とは、
JICAの円借款をパキスタン政府に替わって返す、
つまりゲイツ財団が借金返済を肩代わりするもの。
もちろん、そこには条件がくっついていて、
if the project is successfully implemented
この successfully implemented って、
具体的には何を求められているんだろう?
目標通りのポリオ撲滅の実効が数値で示されること?
ポリオ撲滅には成功しなくとも、プロジェクトが予定通りに実施されること?
どこまでの実施で「予定通りに」とか「成功裏に」とみなされるのか?
その successfully が実際には「ビルを満足させるように」を意味することはないのか?
そうして
子どもに銃を突きつけワクチン接種に見られるような
Bill Chill 現象は広がっていく……なんてことは?
②4月にこちらのエントリーで紹介した記事で
誰かが、ゲイツ財団による途上国でのワクチン推進はビッグ・ファーマを儲けさせ、
「慈善の名目で途上国政府が自己負担分を体よく吐き出させられているだけ」と
批判していたけれど、
これ、その自己負担分すら吐き出せない国に
その自己負担分や活動費用の部分を他国のODAで補わせるための”革新的なシステム”では?
実際、以下の2つのエントリーで眺めたように
6月13日のワクチンカンファで世界中から400億ドルが集まり、
「ワクチンの10年」の資金は既にめでたく揃っている。
日本も13日のカンファでGAVIに8億3000万円を約束(2011/6/17)
各国政府がワクチンだけで財布を閉じるなど「許されてはならない」……とGuardianがゲイツ財団の代弁(2011/6/17)
後者のGuardianの記事を書いた人などは、
「ワクチンの10年」資金はめでたく確保されたにしても、という前提で
「次にエイズがあるのだから財布を閉じるのはまだ早いぞ」と各国に警告を発しているくらいだ。
そうすると、パキスタンのポリオ撲滅のためのワクチン資金そのものは
既に確保されているわけだから、
それなら、ゲイツ財団による肩代わりを前提にしてまで円借款の必要が出てくるというのも、
なにやら不思議な話で、
今回の記事を雑駁に読むと、
つい「ワクチンへの国際援助」というだけでひとくくりして理解してしまうけど、
本当は私たちがつい思いこんでしまうワクチン費用ではなく、
パキスタンの自己負担分や推進活動資金を日本が肩代わりし、
それをさらにゲイツ財団が肩代わりして日本に償還する、ということなのでは?
せっかくゲイツ財団がワクチン代は世界中からかき集めてやったのに
自己負担分も担えず、推進活動費も出せない国は
いくらお尻を叩いてもワクチンに積極的にならないから
そこを他の国に補わせて、なにがなんでもワクチン推進に向かわせるためのシステム……?
③ 武田製薬にゲイツ財団から医療支援分野トップが送り込まれてきたのは5月。
それ以降、みるみる日本とゲイツ財団の関係が親密になっていくような気がするんだけど?
④ 6月18日の補遺から以下にコピペ。
ビル・ゲイツ氏がパキスタンの首相に電話をして、ワクチンによるポリオ絶滅について相談した。:ビン・ラディンの殺害を巡って米国とパキスタンの関係がこじれている時でも、“慈善家”ビル・ゲイツはこういうことが易々とできる。ということは、ビル・ゲイツは外交の上でも各国間に多大な影響力を持つというこ と。
http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=6824&Cat=13&dt=6/18/2011
http://app.com.pk/en_/index.php?option=com_content&task=view&id=142576&Itemid=2
【追記】
以下に続報があり、ゲイツ財団が肩代わり償還する条件は
「13年までにパキスタンのポリオが撲滅されること」。
http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=63652&Cat=4
【最近、続々と出ているゲイツ財団の慈善資本主義への批判を巡るエントリー】
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)
ゲイツ財団肝いり“HIV感染予防ゼリー”は「新たなタスキギ実験」?(2011/6/24)
「ゲイツ財団(の連携機関)が途上国の子どもに銃を突きつけワクチン接種」(2011/7/29)
公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
ゲイツ財団と提携した円借款が検討されているとのニュースは
7月12日の補遺で拾っており、
これは、その続報――。
JICAの緒方貞子理事長とゲイツ財団の共同代表のビル・ゲイツ氏が
ポリオ撲滅で「戦略的パートナーシップ」を発表。
その手始めとして、
JICAはパキスタン政府に対して49億の円借款を行う。
ポリオ撲滅活動資金として、2013年まで。
ポリオは世界的には過去20年間で99%も減少しているが、
未だ感染が止められていない国が4カ国あり、パキスタンはその1つ。
今年1月、the National Emergency Action Plan 2011 for Polio Eradicationが開始され、
パキスタン政府あげてポリオ撲滅に取り組むことが約束されている。
(記事に、ゲイツ財団によって約束させられたという匂いが漂っていないでもない)
日本からのODAを資金に、世界銀行やユニセフ、WHOも一緒になって、取り組む。
成功裏にプロジェクトが実施された暁には
ゲイツ財団が償還を肩代わりするという革新的なシステムが採用された。
The Japan International Cooperation Agency(JICA) and the Bill & Melinda Gates Foundation Announce Partnership on Polio Eradication
PR Newswire, August 17
この記事を読んで思ったこととして、
① 特に注目したいのは、
この円借款が、“革新的な”「肩代わり」制度によるものだということ。
今回の「借金肩代わり制度」とは、
JICAの円借款をパキスタン政府に替わって返す、
つまりゲイツ財団が借金返済を肩代わりするもの。
もちろん、そこには条件がくっついていて、
if the project is successfully implemented
この successfully implemented って、
具体的には何を求められているんだろう?
目標通りのポリオ撲滅の実効が数値で示されること?
ポリオ撲滅には成功しなくとも、プロジェクトが予定通りに実施されること?
どこまでの実施で「予定通りに」とか「成功裏に」とみなされるのか?
その successfully が実際には「ビルを満足させるように」を意味することはないのか?
そうして
子どもに銃を突きつけワクチン接種に見られるような
Bill Chill 現象は広がっていく……なんてことは?
②4月にこちらのエントリーで紹介した記事で
誰かが、ゲイツ財団による途上国でのワクチン推進はビッグ・ファーマを儲けさせ、
「慈善の名目で途上国政府が自己負担分を体よく吐き出させられているだけ」と
批判していたけれど、
これ、その自己負担分すら吐き出せない国に
その自己負担分や活動費用の部分を他国のODAで補わせるための”革新的なシステム”では?
実際、以下の2つのエントリーで眺めたように
6月13日のワクチンカンファで世界中から400億ドルが集まり、
「ワクチンの10年」の資金は既にめでたく揃っている。
日本も13日のカンファでGAVIに8億3000万円を約束(2011/6/17)
各国政府がワクチンだけで財布を閉じるなど「許されてはならない」……とGuardianがゲイツ財団の代弁(2011/6/17)
後者のGuardianの記事を書いた人などは、
「ワクチンの10年」資金はめでたく確保されたにしても、という前提で
「次にエイズがあるのだから財布を閉じるのはまだ早いぞ」と各国に警告を発しているくらいだ。
そうすると、パキスタンのポリオ撲滅のためのワクチン資金そのものは
既に確保されているわけだから、
それなら、ゲイツ財団による肩代わりを前提にしてまで円借款の必要が出てくるというのも、
なにやら不思議な話で、
今回の記事を雑駁に読むと、
つい「ワクチンへの国際援助」というだけでひとくくりして理解してしまうけど、
本当は私たちがつい思いこんでしまうワクチン費用ではなく、
パキスタンの自己負担分や推進活動資金を日本が肩代わりし、
それをさらにゲイツ財団が肩代わりして日本に償還する、ということなのでは?
せっかくゲイツ財団がワクチン代は世界中からかき集めてやったのに
自己負担分も担えず、推進活動費も出せない国は
いくらお尻を叩いてもワクチンに積極的にならないから
そこを他の国に補わせて、なにがなんでもワクチン推進に向かわせるためのシステム……?
③ 武田製薬にゲイツ財団から医療支援分野トップが送り込まれてきたのは5月。
それ以降、みるみる日本とゲイツ財団の関係が親密になっていくような気がするんだけど?
④ 6月18日の補遺から以下にコピペ。
ビル・ゲイツ氏がパキスタンの首相に電話をして、ワクチンによるポリオ絶滅について相談した。:ビン・ラディンの殺害を巡って米国とパキスタンの関係がこじれている時でも、“慈善家”ビル・ゲイツはこういうことが易々とできる。ということは、ビル・ゲイツは外交の上でも各国間に多大な影響力を持つというこ と。
http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=6824&Cat=13&dt=6/18/2011
http://app.com.pk/en_/index.php?option=com_content&task=view&id=142576&Itemid=2
【追記】
以下に続報があり、ゲイツ財団が肩代わり償還する条件は
「13年までにパキスタンのポリオが撲滅されること」。
http://www.thenews.com.pk/TodaysPrintDetail.aspx?ID=63652&Cat=4
【最近、続々と出ているゲイツ財団の慈善資本主義への批判を巡るエントリー】
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
やっと出た、ワクチンのため世界中からかき集められる資金に疑問の声(2011/6/16)
ゲイツ財団肝いり“HIV感染予防ゼリー”は「新たなタスキギ実験」?(2011/6/24)
「ゲイツ財団(の連携機関)が途上国の子どもに銃を突きつけワクチン接種」(2011/7/29)
公衆衛生でマラリア死8割減のエリトリアから「製薬会社株主ビル・ゲイツのワクチン開発」批判(2011/8/2)
2011.08.20 / Top↑
| Home |