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前のエントリーの続きです。

Are We Ready for a ‘Morality Pill’
Peter Singer and Agata Sagan
NYT, January 28, 2012


ざっと、この記事の概要を以下に。

去年10月、中国で車に轢かれた2歳の子をみんなが見て見ぬふりで放置していった事件があったが、こういう話が他にもある一方で、自分の命を顧みず他者を助ける人の話もいくつもある。前者と後者を分かつものは何なのか、科学者は60年代から研究している。

最近のシカゴ大の研究では、ラットの中にも自分の食いぶちが減ることを承知で仲間を助ける行動をとる者がいることが分かった。それはつまり、行動を分ける要因がラット個々のうちにある、ということだ。人間にも同じことが言えるのではないか。

もちろん、既にずいぶん行われてきた「精神異常者などアブノーマルな人間」の研究だけでなく、さらに多くのマジョリティを研究する必要はあるし、状況要因や道徳的信念が作用していることは間違いのないところだが、もしも道徳的行動が個人要因において決定づけられているとしたら、それを研究し解明しなければならない。

既に脳の化学的コンディションが人の気分と関わっていることが明らかになっていることを思えば、脳科学が進めば、より道徳的な行動を取らせる“道徳ピル”も可能となるだろう。そうなれば、犯罪者に刑務所に入る代わりに“道徳ピル”を飲むことを選択させることだってアリでは? 政府が脳のスクリーニングによって犯罪予備軍を発見し、最も犯罪を侵す可能性高いグループには“道徳ピル”を飲ませてやることだってできる。ピルを飲みたくなければ、常に居場所が分かるようにGPSをつけさせておけば、犯罪を犯した時にもすぐに分かる。

50年前に「時計仕掛けのオレンジ」が物議をかもした際に、どんな酷い犯罪の予防であっても人の自由意志を奪うことは正当化できないとの批判があった。“道徳ピル”にも同じ批判は出るだろうが、もしも脳によって生化学的に道徳的な人間とそうでない人間の差が生じているとしたら、そもそも誰かが倫理的な行動をとるかどうかはその人の自由意志とは無関係で、誰も自由意志など持っていないということだ。

いずれにせよ、我々は間もなく、どのような方法で人の行動を改善すべく介入する科の新たな選択に直面するかもしれない。



例によって
「状況や信念が作用する」と言いつつ、
また、もっと研究が必要だとも断りつつ、
「もしも脳内の生化学コンディションが決定要因なのだとしたら」と
あくまでも仮定として提示しつつ、

しかし何度もそれを繰り返すことによって、
読者にまるでそれが既に確定した事実であるかのように印象付けつつ、
決定要因であることを前提にした犯罪防止の話へとどんどん進めていく。

Singerが実際に説いているのは
脳決定論であり、Savulescuと同じ moral enhancementと、それによる犯罪防止。

いつも思うのだけど、この人たちの話の進め方には、
学者としての学問的誠実とでもいうべきものが感じられない。

この人たち、「学者」というよりも「アジテーター」?


他にも突っ込みたいところはいろいろあるけど、
週末のこととて余裕がないので、

とりあえず2人の言うことを読んで、
私の頭に浮かぶつぶやきは、

そもそもアンタたちが、道徳的でない、んでは――?
2012.02.07 / Top↑
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