2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
米国の医療改革から、
科学とテクノによる予防医学は医療費を本当に削減するのかという疑問を考えていたところ、

数日前のローカル・ニュースにひょっこり「予防歯科」の話が登場した。

それが、まるで自分からダマシの手口を曝け出してしまう詐欺師みたいな
なんとも真っ正直な話の組み立て方だった。

大体、こんな流れ。

いつのまにか世の中に歯科医が増えて、
今では町の歯科医院の数はコンビニと同じ。

その過当競争に生き残るために、
治療と無関係な付加価値サービスで差別化を図る医院が出てきている。

しかし、ここにきて注目されているのが予防歯科。
予防歯科には医療費削減のメリットもあるといわれている。

みんなが予防歯科を受けるようになったら、
今は余っている歯科医も全員必要となるそうだ。

みんな、これを機に近所の歯医者さんへ。

あははっ。

これでは、
実際は歯科医の生き残り策としての予防歯科プロモーションだと、バレてしまう。

普通は、こういう話がホンネを覆い隠して
「予防医療には、ほら、エビデンスがこんなに」という流れに化けているものだけど、

珍しく真っ正直な話の組み立て方だったので、
ついでに、次のような素朴な疑問が頭に浮かんだ。

それ、今は必要以上にたくさんの歯医者さんがいる、ということだよね。

そして、みんなが予防で歯科にかかれば、
余っている歯医者さんが生き残れる……ということは、

裏返せば、それ、
予防歯科の医療費の増加分が余剰歯科医の生き残り費用に回るんだよね。

で、どうして予防歯科が医療費の削減になるんだろう──?


それで、さらに、そこから考えたこと。

予防歯科の予防効果エビデンスを出してくる研究というのは、
直線的な時系列でのフォローをして、
予防しない場合よりも予防した方が虫歯や入れ歯になる“確率”が低かった、とか
予防しない場合よりも予防した方がそうなるのが"遅かった"、
というデータの取り方で「予防効果がある」という話なので、

実は、そこでは「人は虫歯や入れ歯になる」ことは前提として予め織り込まれている。

だって、どんなに歯磨きを上手にして定期的に歯石をとっていても、
歳をとれば歯茎は痩せるし、歯の質だって悪くなるのだから、
予防を完璧にしたから一度も虫歯にならずに終わる人なんか、いない。たぶん。

だから、「人はもちろん虫歯や入れ歯になる」と織り込んだ上で
予防しないことに比べて確率が下がれば、または発症を遅らせることができれば
予防効果があるとされるのが、予防効果のエビデンス。

だけど、
個々の患者レベルでの時系列での確率の低下や遅れのエビデンスが
果たして、そのままマスとしての医療費削減効果のエビデンスだと言えるんだろうか。

私のイメージだと、マスとしての医療費は
時系列の直線ではなくて、むしろ円の全体という感じなのですが、

円に帯を重ねたときに上下に出っ張りがはみ出すように、

直線・時系列の予防効果エビデンスを根拠に
予防医療には円全体のマスとしての医療費削減効果があると主張するのは
先に織り込まれつつ確率の外側にあった「人は虫歯・入れ歯になるものだ」という事実が
取り残されているような気がする。

病気になることを織り込んだ上でのエビデンスを用いながら、
病気になることを織り込まない話に摩り替わっているような……。

簡単に言えば、

いくら予防して確率を下げたり遅らせたりしても、
歳をとっていけば、いつか病気にはなる。

予防のエビデンスは、その前の部分だけで話が成り立つけど、
マスとしての医療費は、後ろの部分も拾うのだから、
それを拾った上で、さらに予防にかかる医療費分もちゃんと加えて
それで差し引き計算しないと話の筋が通らないことない?

……という、とっても素朴な疑問。
これ、素人の勘違いなのかな。

まぁ、でもね、

本当の医療費削減効果は、予防歯科とか予防医療になくても、
もっと違うところにあるのかもしれない。

こんなふうにニュースキャスターが
「医療費削減効果もあるそうです」と一言さりげなく付け加えるようなことが
日常的にあちこちで繰り返されていけば

私たちの頭の中には
「医療費は削減しないといけない」というメッセージがその都度インプットされて
私たちは無意識のうちに身の周りの目に見えやすいところで
医療費の無駄や医療費を高騰させている犯人を探し始める。

私たちがいるところから見える、わかりやすい範囲で、ね。


 
2009.09.16 / Top↑
Secret

TrackBackURL
→http://spitzibara.blog.2nt.com/tb.php/415-022fcb15