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NewsweekのMy Turn「私にも言わせて」コラムで
自閉症の男の子と優秀児(gifted child)の女の子がいる母親が
先にたいした見込みのない障害児にかけているお金を
娘のような能力の優れた子どもに能力に応じた教育を施すための資金に回してもらった方が
有効なお金の使い方だ、といった主張を展開しています。

IDEAによって保障された個別教育計画によって
弟の方には学校で手厚く人員配置をしてもらっているが
そんなにお金をかけてもらったところで
この子が身につけられるのはせいぜい最低レベルの学力であり、
将来的にも自分で入浴できるようになって何らかの仕事につけるとかの話、
どうせ完全な自立すらおぼつかない。

自閉症児の弟の方は能力を伸ばすためのありとあらゆる機会を与えてもらっている一方で、
娘の方は全国統一学力テストで上位5%に入る優秀児(gifted child)で、
12歳であれもできる、これもできると、高い能力に恵まれているというのに
週に3時間のgifted children向けの教室ですら個別指導を受けることができていない。

娘にこそ一対一の個別指導をしてもらえたら、
社会に大いに貢献できる能力と可能性があるのだから
障害児教育の予算は優秀児の個別指導に回してもらいたい、と。

Autism and Education
Who should we focus on – my disabled son or my gifted girl?
The Newsweek, February 28, 2009


冒頭から、
この人が息子のことを語るトーンの冷たさと
娘の能力を手放しで自慢する親バカ意識ゆるゆるとの落差に
まず衝撃を受けるのですが、

(弟ときたら、言葉は3歳児レベルだし、
いま読んだことを言ってごらんと聞いたって答えられない、
大好きなのは幼児番組で、トイレだってまだ完全に自立してない……
それに比べてお姉ちゃんの方はまだ12歳だというのに複雑な情報も論理も
またたくまに分解・再構築、独自の考えを生み出す素晴らしさで、
日曜には小説を1冊読みあげるし、新聞のスドクだってお手の物、
学校の劇の台本なんて他の子のセリフまで覚えていたんですから)

こういうものが書かれて、
それがNewsweekのようなメインストリームのメディアに掲載されるという事実にも衝撃を受ける。

能力の差し引き計算でしか人を捉えられない意識というのは
米国社会で、もうここまできてしまったのかぁ……。

改めて考えてみれば、
科学とテクノを信仰するトランスニューマニストらの能力至上主義
医療の現場でジワジワ広がっている「無益な治療」論の功利主義や
はたまたIHMEやGates財団が主張している医療資源のコスト効率基準による分配原理などを
教育現場にそっくりそのまま持ってくれば、
確かにこういう理屈になるわけで、

そういう意味では、これはここでは1人の母親の声だとしても、
これから米国社会の声がこの人の声に重なってくるということかも……。

それにしても、この文章を読んでいると、
なんか、この母親がどういう態度と物言いで子どもたちと接しているが見えるようで、
この人に育てられる子どもたちが、自閉症児のほうも優秀児のほうも、かわいそうだ。

この子たちがどちらもあまり幸せとは思えないように、
こんな能力至上主義価値観を親から植え付けられて育った頭がいいだけのエリートたちが
世の中をより良くしようと頑張ってくれるのでは、
その世の中では誰も幸せになれない……という気がするのだけどな。
2009.03.10 / Top↑
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