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Obama大統領が就任演説の中で
現在の米国が直面している多くの問題をあげつらっていった箇所に、
「医療が高すぎる」というのがありました。

そして、ずっと後の方で
「テクノロジーによって医療の質を引き上げ、コストを下げる」という発言も。

高すぎる医療をテクノロジーで改革って、実際にはどういうことよ……と、
その部分におおいに引っ掛かりを覚えていたのですが、

昨日20日、Wesley Smithがブログで
Obama政権はすでに功利主義の医療毒を推し進めている」というエントリーを書いていました。

その中で紹介しているのが、こちらのWall Street Journal の記事。



Obama新大統領と下院民主党プランが狙っている医療改革案の1つは
英国のNICE(The National Institute for Health and Clinical Excellence)をモデルにして
病気の治療法や医薬品をコスト効率で比較検討し、
より安価で効果的な医療のガイドラインを作ろうというものだ、と。

英国のNICEは
新しい治療方法や医薬品が出てきた時に
他の治療方法や医薬品とそのコスト効率を比較検討する。
患者のアクセスはその後でなければ許されない。
しかも、この記事によると1人の患者を1年間延命するのに使う金額は
最大45000ドルまでとNICEでは決めているとのこと。
(健康に過ごす1年と癌と闘病しつつの1年とでは
その1年の質は前者の方が高いとして換算される、とも)

こういう考え方を米国でも導入しようというわけです。
それに対して指摘されている問題点として、

・比較研究そのものに巨額の資金が必要となる、
 安く上げようとすれば信憑性の薄い研究結果でメディケアが制限されかねない。
・本来なら民間企業や医学研究部門で行われるべきところだが、
 製薬会社からの影響を排除し透明性を維持するのは難しい。
・治療が限定されると患者や病気の個別性が無視されることになる。
・英国で特にがん患者を中心に高価な医薬品を使えない不満が大きな問題となっており、
 同じ問題が発生するおそれがある。

      ―――――――――

もともと英国のNHSは一応受診時無料が原則の国民皆保険制度であって、
米国のように非常に限られた公的医療保険しかない国とは土台が全く違うのだから、
コスト効率によって使える治療方法と医薬品を制限する制度だけを
英国から取ってきても……とは思うものの、

治療方法や医薬品をコストパフォーマンスで評価して……云々って、
例のゲイツ財団の研究機関であり世界の保健医療の警察官IHME
世界の保健医療に導入しようとしている評価基準そのもの――。

結局はこういう方向に向かうしかないのでしょうか。


それにしても、Obama演説にあった
「テクノロジーで医療のコストを削減する」の部分は気になります。

Bush 政権の中絶に関する姿勢を Obama大統領は転換する……という側近からの情報も
昨日のCNNでは流れていました。

選別的中絶や着床前遺伝子診断というテクノロジーで障害のある子どもが生まれないようにすることも、
「テクノロジーで医療費を削減」の範疇かも……?


【1月22日追記】

上記のブログと記事をLifeNews.comが取り上げて、
「Obama政権は英国型の尊厳死肯定医療を検討中」と懸念しています。



昨日、上の記事を読んだ時に私も同じことが頭によぎりました。

しかし、なにも「英国型」などと言わずとも、
既に米国でも自殺幇助を合法化したOregon州のメディケイドでは
高額ながん治療は認められないが自殺幇助なら支給しますよ」という話が出てきているし
Washington州でも事務的に自殺幇助を受け付ける準備が進められているし。


これらはいずれも、公的医療保険制度がほとんどない国で
無保険になったために、ごく基本的な医療すら受けられない国民が
山ほどいる状態が放置された一方で起こりつつあること。

それを都合よく忘れて「英国型の安楽死肯定医療」などと決め付けるのは
ここ数年は予算も投入してNHS改革に取り組んできた英国に対して失礼かもしれない。

確かに英国が急速に全体主義的、功利主義的になりつつあることには
別途、大きな懸念は感じるとしても。
2009.01.21 / Top↑
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