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だいぶ前から読みたいと思っていたコミック「ヘルプマン」
レンタル店でやっと見つけて今Vol.9まで読んだところ。

クールで理論家の神埼仁と
おっちょこちょいで直情径行、どこの事業所もすぐにクビになるのだけど、
目の前のじじばばを放っておけない介護の心が熱い恩田百太郎という
対照的な2人の介護職の青年の奮闘を通して
在宅介護の現実と介護保険の問題点をリアルに描いた2004年のシリーズ。

2004年当時に話題になったらしいのだけど、
私は最近まで知らなかった。

とても良いです。
老人介護だけでなく、障害児・者の介護や負担の大きな育児について
モノを考えたり言ったりしている人には
ぜひ一度読んでもらいたいくらい、良いです。

今まで介護の現実を描いた小説はいくつか読んだし
それぞれに忘れられない言葉や場面があるけれど、

ウンコ、シッコ、ゲロ、よだれ、
捻じ曲がって固まった身体や、
痩せて肉が落ちて皮のよじれた脚や
汚いもの一切合財をビジュアルに描くことのできるコミックという媒体の方が
介護の現実はよりリアルに伝えられるという面もあるのかもしれない。

特にVol.2「在宅痴呆介護編」とVol.3「介護虐待編」は
読みながら何度もボロボロ泣きました。

重い障害があって病気ばかりしていた娘の幼児期、
私の毎日は、具体的な形は違っても、ここに描かれているのと全く同じ
忍耐と辛抱と苛立ちと発狂しそうなほど切迫したフラストレーションと、
それから娘への愛着と自責の繰り返しに塗りつぶされて
ここに描かれているのと同じように煮詰まっていったから。

そうそう、そういう間の悪いことって、ある。
介護していると、そういう気分になるよね、私もそうだったよ・・・・・・。
つい追体験させられて、いつのまにか身を硬くし息を詰めるようにして読んでいる……。

そしたら、突然、
おっちょこちょいヘルパーの恩田百太郎の思いがけない言葉に出くわした。

ご家族さんは・・・・・・
頑張りすぎちゃダメッす!

ご家族さんに
できるだけ楽に
なってもらうために
オレらプロがいるんすから!」

悔しいっすけどね。

オレらが
どんなに勉強して百万回
上手におむつ替えても

ご家族さんの
たった一回の笑顔に
かなわないんすよ。

だから
たとえ何もしてあげられなくても

ただ家族でいてくれさえすれば
鹿雄さんは幸せなんすよ!

頑張らないでください。

                恩田百太郎
                「ヘルプマン!」 Vol.2 在宅痴呆介護編

涙がどばっとあふれて、もうどうにも止まらない――。
まるで、あの辛かった日々に私がまだ取り残されていて、
その私に向かって百太郎が、こう言ってくれたようで。

そして読み終えて、いつも考えることを、また思う。

家族が介護に押しつぶされて
そのたった一回の笑顔すら失ってしまったら
介護されている人は、たとえ在宅で暮らしているとしても、
その人は家族を失ってしまったのと同じなのだから・・・・・・と。

       ――――――

実は、外添要一厚生労働大臣も「介護はプロに、家族は愛情を」と言っています。

昨年、厚労省は11月11日を「介護の日」に制定しました。
横浜市はそれを記念して11月11日に
介護の日制定記念フォーラム「明るい介護! 元気な介護! を目指して」を開催。

外添厚労相の発言は、そのフォーラムで流されたビデオ・メッセージの中で。

「『介護はプロに、家族は愛情を』が実現されるよう、」
国民の連帯、助け合いのあり方を皆で考え、
『長生きしてよかった』と思える社会にしていこう」。

(詳細は「介護保険情報」2008年12月号 P.44)

「介護はプロに、家族は愛情を」などという理想が
厚労相の口から語られるのは大変ありがたいことですが、
発言の後半は、どこかはぐらかされたような感じ。

その理想が実現されるように厚労省が考えるべきは
まずは介護保険制度なのでは──?

「ヘルプマン」Vol.4以降は介護保険現場の現状をリアルに描いて
痛切な介護保険制度批判となっています。
(Vol9までの段階では介護保険スタート時から第一回改正の介護予防へのシフトまで)

シリーズが進むにつれて作者の筆運びも軽妙になり、
だんだんと爆笑できるシーンが増えて、
それもまた、介護の現実の一面でもあることを思わせられます。

適切な援助があれば、家族を支えながら暮らしていくことは
苦しく辛いことばかりでもない。

そのこともまた、このシリーズは上手く描き出している。
2009.01.12 / Top↑
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