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公訴局長DPPのKeir Starmer氏が
今日の法解釈のガイドライン発表を前にTimes紙に寄稿し
ガイドライン策定についての考えを語っています。

最初に明言されているのは

読んだ人からは、私が法律を変えたという批判も起きるだろうが、
法律そのものは変わっていない、
自殺幇助は懲役最長14年の犯罪行為であることは変わらない、という点。

一方、1961年に自殺法が制定された時に、運用は慎重に、と議会が求めたことに触れ、
だからこそ自殺幇助で起訴する場合には公訴局長の同意が必要となっているのだ、とも。

また、ガイドラインを制定することそのものに反対する声に対しては、
Purdy判決の中で最高裁が命じたことである以上、
公訴局としては従う以外になく、制定しないという選択肢は存在しない。

去年9月の暫定案の発表に次ぐ
国民のコンサルテーションで寄せられた5000人の意見を検討したところ、

多くの人が、起訴するかどうかの判断では
自殺した人よりも容疑者に焦点を絞るべきだと考えており、
それは説得力がある意見だと判断した。

同様に、多くの人が
容疑者の行為が全面的に共感・思いやりからのものであるかどうかがカギだと主張していた。
もちろん共感・思いやりに関しては、すべての証拠が仔細に検討されることになろう。

1つひとつの事件すべてについて十分な捜査が行い、
正しい判断をするために十分な情報がそろわなければならないことの理由の1つがそこにある。

また、つい最近の“慈悲殺”を巡る議論に照らして明確にしておきたいこととして、

ガイドラインは“慈悲殺”に触れていないが、
それはガイドラインが殺人と過失致死は扱っていないからである。

犠牲者が自分で死ぬのに手を貸すのが自殺幇助。
誰かの命を奪う行為は、まったく別の行為であり、
それは殺人もしくは過失致死として扱われるべきである。

この違いを、我々は全員が理解しておかなければならない。

事件には、それぞれ固有の事実関係と固有の事情があり、
それらにのっとって検討される必要がある。

‘Mercy killing’ is not the same as assisted suicide
Keir Starmer
The Times, February 25, 2010


どうも、あまり大きな変更はないような気配……?

DPPのサイトに行けば、既に発表になっているのだろうと思いますが、
今ちょっと手元が落ち着かないので、週明けに改めて。






2010.02.25 / Top↑
明日に公訴局長の法解釈のガイドラインの最終決定を控え、
Brown首相がDaily Telegraph紙に寄稿し、

法解釈のガイドラインで留めて、法改正まではするまい、
法改正よりも、現行法を使いこなしながら、もっと緩和ケアを充実させて、
苦しい死に対する人々の不安を解消していこう、と訴えています。

Gordon Brown: We must resist the call to legalise assisted suicide
Gordon Brown,
Daily Telegraph, February 24, 2010


個人的に響くものがあったので、
以下に全訳してみました。

過去80年間の間に、英国議会は何度も自殺幇助の合法化を検討し、却下してきた。この問題の議論がまた繰り返され、新たな提案が出されることとなった。その結論はこれまでのものと変わらないと私は確信している。

世論においては様々な事件があれこれと取りざたされて、事件が起こるたびに、まず目立つのは、何か手を打つ必要がある、という主張だ。しかし、これらの事件の1つひとつの複雑な詳細を個別に検討してみれば、自分の選んだ時に選んだ方法で死ぬ権利こそが配慮ある解決策だと思えたものも、それほど単純明快ではなく、むしろ問題だと思えてくるのに時間はかからない。

みんなが自殺幇助の権利を支持したい気持ちになるのは、自分が死にそうになった時に、どういうケアを受けられるのかが不安だからに違いないと私は思う。気になっているのは、次のような懸念だ。その時に、自分は一人ぼっちにされるのではないか? 痛い思いをするのだろうか? 尊厳も私らしさも失ってしまうのだろうか? 私のことを大切に思ってくれる人が誰もいないのではないだろうか? ただ生かされて、ほとんど治療効果などないのに死のプロセスを長引かせるだけの検査や治療をされるのでは?

私たちは、このような不安にもっとしっかりと目を向け、それらの不安に対して、これまで何をしてきたか、しっかり考えなければならない。

近年の医学の素晴らしい発展の1つは、緩和ケアという専門領域が出てきたことだ。緩和ケアについては、20世紀にホスピス・ケアの先駆者となった Cicely Saundersさんのエッセイについて調べて、私はずいぶん詳しくなった。

Saundersさんは、「不治の患者」たちがたどる運命と、彼らを見捨てい医療に憤り、画期的な研究と不屈の活動によって、人の最期の数カ月は、やり方によっては痛みのない、尊厳に満ちて、生きるに値したものになると訴え続けた。緩和ケアが現在、医療のメインストリームとして受け入れられているのは、彼女の努力に負うところが大きい。

私が魅力を感じた話がある。1969年に貴族院で安楽死法案を推し進めようとして果たせなかったRaglan議員は、その後、Saundersさんと公の場で議論した。その際、彼女の話を聞いたRaglan議員は立派な態度で認めたのだ。もしも自分が必ずやあなたとあなたのチームのケアを受けることができるのであれば、安楽死の合法化に向けた活動を喜んで放棄するだろう、と。

そのようなケアを多くの人が自宅で受けることができるようになるには、まだまだするべきことは沢山ある。しかし、政府の義務とは、苦しい死への不安を最小限にすることのはずだ。

医療介入がもはや効果がなく、不快なだけで、QOLを維持することもかなわず、ただ命を引き伸ばす役にしか立たないような過剰医療への不安も、最近ではずいぶん軽減されてきた。事前指示書を書くことによって、まだ健康で頭もはっきりしている内に、誰かにお任せになることを避けて自分で決めておくことができる(コントロールと決定権を行使できる)。ある先輩医師が後輩医師に賢明なアドバイスをしたという。「病者を癒し、死にゆく者は安楽に。そして、その両者を混同してはならない」。医師も、そんなアドバイスを実行することに以前よりも注意を払うようになってきた。

しかし、これらはすべて難しい問題であり、もちろん、1つ1つの事件の中心にいるのは過酷な状況の中で、最も悲痛な選択をしなければならなかった家族であることを忘れてはならない。

そうした複雑な背景はこれまでにも指摘されてきた。明日には公訴局長のKeir Starmer氏が最終的な方針を発表して、自殺をそそのかしたり、または幇助したといった事件で、訴追するかどうかの判断で考慮されるファクターを明確にすることになっている。公訴局長として明確化するのはStarmer氏の職責であり、政府が口をはさんだことはない。

公訴局長によって法解釈の明確化が行われるからには、また、ここ数十年にケアにおいて重要な前進があったことからも、法改正を必要とする議論には以前ほどの説得力はない。

法は、ケアに当たる専門職の価値観とスタンダードとともに、最も病状の困難な患者への緩和ケアを含めた良質なケアを支持するものである。そして、我々の社会の最も弱い人々を保護するものである。なぜならば、ここで、はっきりさせておこう。選択肢としての、または権利としての死が認められたならば、たとえ法改正によって如何なる事務手続きのプロセスが編み出されたとしても、人は死ぬ、ということ(限りある生 mortality)に対する我々の考え方が根本から変わってしまうからである。

自分が他者の負担になっていると感じがちな病弱な人たちや自分で身を守るすべを持ちにくい弱者に圧力がかかるリスクを、隠微なものも含めて、完全に排除することなどできない。さらに、もしも生を終わらせる立場に立つなら、医療の専門職に対する信頼が損なわれることも避けがたい。そうなれば、とても貴重なものが失われてしまうことになるだろう。というのも、私は妻とともに地元のホスピスでボランティアをした際に目にしたケアによって、良い死というものは実際にあるのだと痛感したのだ。

だからこそ私は強く思う。社会として我々がすべきことは、良い死を可能にする、専門的で愛のあるケアを提供することだ。そして、現在の法を急いで変えるのではなく、上手に使いこなすことだ、と。


この寄稿に関する報道は以下。



また、Debbie Purdyさんの反論がこちら。


英国人の95%が支持しているというのに、
首相はその世論を尊重する気がない。

オランダと米国オレゴン州で法が問題なく運用されているというのに、
首相は英国人を信頼できないらしい。

合法化すれば英国人が病人や障害者を殺すと思っているようだが、
自分はもっと英国人を信頼している。

合法化することによって、オープンな議論が行われて
人の命は却って救われるはずだ……など。
2010.02.24 / Top↑
昨日、火曜日、
マサチューセッツ州議会で自殺幇助合法化法案が審議入り。

元は胃がん患者の Al Lipkind氏が数年前から求め続けていたもの。

同氏が去年10月に亡くなった後、
Louis Kafka 州上院議員が遺志を継ぐ形で運動してきた。

法案は、ターミナルで、自己決定能力のある患者に対して
医師が致死薬を処方することを認めるもので
Oregon 州、Washington 州とほぼ同じ。

‘Death with Dignity Act’ gets public hearing
Patriot Ledger、February 22,2010


Massachusetts州といえば、ブッシュ政権時代に
無保険者問題に優遇税制で民間保険に誘導して済ませようとする中央政府に腹を立て、
州独自に皆保険に向けた努力を行って、ある程度の成果を上げてみせたところ。
マサチューセッツ方式と呼ばれて、カリフォルニアなど他の州の手本となった。

(こちらのエントリーで書いている「頑張って」いた州の1つがMA)

その後のことまでは追いかけていないけど、
当時、特に子どもの皆保険に同様に努力を惜しまなかったカリフォルニアが
現在、財政破綻の危機にひんしていることを思えば、
なんとなく想像がつくような気がする。

医療や福祉が充実している国でこそ
かつての優生思想も広く、長く続けられたことや、
今、そういう国こそが自殺幇助合法化の動きをリードしていることなど、
既に指摘されている事実とも符合する動きなのかもしれない。

また、一方、
Rebeccaちゃん事件でも言われていたけれど、
Harvard大学, Massachusetts General Hospital といえば、
かのBiedermanスキャンダルの現場。


それだけ医療の文化としても
「科学とテクノで簡単解決文化」が最も色濃い州だともいえるのかもしれず……。

そういえば、当ブログでずっと要注意人物と目している Norman Fost 医師も
たしかHarvard出身だった……。
2010.02.24 / Top↑
Brighton とHove という町単位で自殺幇助に関する住民の意識調査が行われている。76%が、耐え難い苦痛のあるターミナルな状態の人と高齢者の自殺幇助合法化に賛成。:町単位で意識調査が行われることそのものが、ちょっと、すごい。
http://www.theargus.co.uk/news/5019987.Assisted_suicide_should_be_allowed_says_Brighton/

地震での怪我で手足の切断を余儀なくされるハイチの人々。もともとリハ病院などなく、セラピストもほとんどいない国で、住む家すらない状態で、病院から道端での暮らしに。
http://www.nytimes.com/2010/02/23/world/americas/23amputee.html?th&emc=th

肝臓は特に子どもでは再生能力があるので、レシピエントの肝臓を一部のみ取り出して、ドナーの肝臓を移植することによって、拒絶反応を抑制する薬を飲みながら時間稼ぎをしているうちに、本人の肝臓が再生して、移植部分を攻撃し、退化させてしまう。そうすれば薬もやめることができる。
http://www.nytimes.com/2010/02/23/health/23liver.html?th&emc=th

英首相官邸のスタッフがイジメ相談に電話してきたことをリークした、イジメ相談チャリティの創設者が辞職。
http://www.guardian.co.uk/politics/2010/feb/22/national-bullying-helpline-patrons-resign

Obama大統領が新たな医療制度改革案を提案。
http://www.guardian.co.uk/world/2010/feb/22/barack-obama-healthcare-reform

Obama大統領の医療制度改革案についての日本語報道。:日本のメディアも、見ていないわけじゃない……わけだよね。こういうニュースは、ほとんど時間をおかずに日本語で出てくるわけだから。じゃぁ、なんで、他のニュースは無視されるんだろう……? 
http://dailynews.yahoo.co.jp/fc/world/american_health_plan/?1266919689

使用済みのデジタル機器を安易に捨てると、健康・環境被害が生じる、という調査結果。
http://www.guardian.co.uk/environment/2010/feb/22/electronic-waste
2010.02.23 / Top↑
BBCの自殺幇助合法化問題に関する偏向報道については
ここしばらく、議員らから批判が起こっていましたが、

ついに自由民主党の大物議員が、その「信じがたいほどの熱心さ」について、
BBCトラストのチェアマンMichael Lyons卿に会談を要求。

要求の手紙を送ったのはCarlile上院議員。
弁護士で、政府の反テロリスト法の中立の立場で検討した人物。





2010.02.23 / Top↑