Harrison Ellmer君。
健康で生まれたが、その後、病院へ運ばれ、
蘇生の後に髄膜炎と診断された。
CTを2回撮ったのち、
医師らはこれ以上できることは何もないと告げ、
両親はHarrison君の人工呼吸器を取り外す目的で
子どもホスピスに移った。
母親が腕に抱き、その周りを家族が取り囲んだ。
看護師が人工呼吸器のスイッチを切って部屋を出て行き、
みんなでHarrison君が自力で息をするのを無言でじっと見つめていると、
彼は少しずつしっかりとした息をするようになっていった。
その間20分間。
家族にとって人生で最もハッピーな時だったという。
Harrison君には右耳の聴力が失われ、軽度の脳性まひが残ったが、
生後6ヶ月の現在、それ以外は正常に発達している。
Baby taken to die in hospice survives after life support shut off
The Telegraph, August 2, 2013
2013.08.05 / Top↑
出版されるや世界中で1000万部を売り上げた
“A Brief History of Time”を執筆中の1985年、
Stephen Hawking(現在71歳)はスイスで肺炎を起こした。
「私は重体で、薬でこん睡状態にされ、
そして生命維持装置につながれました。
医師らは私はもう助からないと考えて、
私の最初の妻ジェーンに生命維持装置を切ることを提案しました」
しかし、ジェーンさんは拒否し、
スイスからケンブリッジの病院へ移すことを主張したという。
Stephen Hawking’s doctors offered to cut life support
The Sunday Times, July 28, 2013
Stephen Hawking – Life Support Decision
Medical Futility Blog, July 28, 2013
映画 Hawking の予告編(2分12秒)はこちらから見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=nCTWnCvDleU
1980年代のスイスの病院には
既に「無益な治療」論がそこまで浸透していたということなのでしょうか。
それにしても薬でこん睡状態にしてしまったら、
回復の兆候があったとしても、それすらわかりようがない……という点で、
頭に浮かぶのは、去年のSteven Thorp事件と、
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
それから、
高齢患者は「さっさと鎮静・脱水」死のベルトコンベアーに
乗せられていることが懸念される英国の機械的LCP適用問題――。
“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)
“A Brief History of Time”を執筆中の1985年、
Stephen Hawking(現在71歳)はスイスで肺炎を起こした。
「私は重体で、薬でこん睡状態にされ、
そして生命維持装置につながれました。
医師らは私はもう助からないと考えて、
私の最初の妻ジェーンに生命維持装置を切ることを提案しました」
しかし、ジェーンさんは拒否し、
スイスからケンブリッジの病院へ移すことを主張したという。
Stephen Hawking’s doctors offered to cut life support
The Sunday Times, July 28, 2013
Stephen Hawking – Life Support Decision
Medical Futility Blog, July 28, 2013
映画 Hawking の予告編(2分12秒)はこちらから見ることができます。
http://www.youtube.com/watch?v=nCTWnCvDleU
1980年代のスイスの病院には
既に「無益な治療」論がそこまで浸透していたということなのでしょうか。
それにしても薬でこん睡状態にしてしまったら、
回復の兆候があったとしても、それすらわかりようがない……という点で、
頭に浮かぶのは、去年のSteven Thorp事件と、
英国で、またも“脳死”からの回復事例(2012/4/30)
それから、
高齢患者は「さっさと鎮静・脱水」死のベルトコンベアーに
乗せられていることが懸念される英国の機械的LCP適用問題――。
“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)
2013.08.05 / Top↑
以下のように
患者にも家族にも知らせない一方的なDNR(蘇生無用)指定が問題になっている英国で、
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)
12時間ぶっ通しの勤務で疲れ果てた小児科研修医が
別の子どもと勘違いして肺炎のダウン症の男児(6歳)の蘇生を中止させ、
男児が死亡する事件が起きている。
男児はJack Adcockくん。ダウン症候群だった。
肺炎から呼吸困難、高熱を起こし、
2011年2月18日にLeicester Royal Infirmaryに入院。
症状が悪化し、同日の午後7時45分に心停止を起こした。
付き添っていた母親が助けを呼び、
医師らが駆けつけて蘇生に取り掛かったところ、
Bawa-Garba医師が止めた。
Bawa-Garba医師(36)は1年1カ月の産休明けで、
産休の間に「ショック状態の管理と治療のスキルが鈍った」といい、
ジャックがショック状態にあることに気づかず、また
血液検査の異常値にも気付かなかった、と言っている。
さらに12時間ぶっ通しの勤務で疲れていたのだ、とも。
他の医師が「どうしてジャックがDNRなんだ?」と問うて初めて
Bawa-Garba医師は自分の間違いに気付き、ジャックのもとに戻って
その後1時間近く、蘇生に努めるチームととともに働いたという。
しかしジャックの蘇生はかなわなかった。
検死官の調査で蘇生を止める前にジャックの顔を見たのかと問われ
「部屋にはたくさん人がいたから、顔を見たかどうか思い出せない。
でも、私にとって大事だったのは、
蘇生しないことになっている子どもは蘇生しないことだった」。
Down’s syndrome boy, 6, died when doctor exhausted by 12 hour shift mistook him for child who had ‘do not resuscitate’ order
Daily Mail, July 24, 2013
記事を読む限り、この研修医、
罪悪感を引き受けることができずに
いろいろ言い訳するタイプの人のようだけれど、
蘇生しなければならない子どもを蘇生することよりも、
蘇生しないことになっている子どもは蘇生しないことの方が
私にとっては大事だった……ということが
言い訳しているうちに語るに落ちてしまった、ということなんでしょうか。
研修医に「どうせダウン症の子どもだから蘇生は無用」という
意識があったから起こった事件……なんでは?
英国では去年も以下のような事件があった ↓
「ダウン症だから」と本人にも家族に無断でDNR指定(英)(2012/9/13)
今回の報道を受け、
無益な治療ブログのPopeが
POLSTに患者の顔写真を添付せよ、と提言している。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/07/match-right-patient-to-dnr-order.html
でも、この事件、
本当にそういう問題なのかなぁ??
POLSTについては、こちら ↓
医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLST(2012/11/26)
一方的な「無益な治療」拒否のアリバイ化するPOLST(2013/6/16)
患者にも家族にも知らせない一方的なDNR(蘇生無用)指定が問題になっている英国で、
“終末期”プロトコルの機械的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)
ケアホーム入所者に無断でDNR指定、NHSトラストが家族に謝罪(英)(2012/5/8)
12時間ぶっ通しの勤務で疲れ果てた小児科研修医が
別の子どもと勘違いして肺炎のダウン症の男児(6歳)の蘇生を中止させ、
男児が死亡する事件が起きている。
男児はJack Adcockくん。ダウン症候群だった。
肺炎から呼吸困難、高熱を起こし、
2011年2月18日にLeicester Royal Infirmaryに入院。
症状が悪化し、同日の午後7時45分に心停止を起こした。
付き添っていた母親が助けを呼び、
医師らが駆けつけて蘇生に取り掛かったところ、
Bawa-Garba医師が止めた。
Bawa-Garba医師(36)は1年1カ月の産休明けで、
産休の間に「ショック状態の管理と治療のスキルが鈍った」といい、
ジャックがショック状態にあることに気づかず、また
血液検査の異常値にも気付かなかった、と言っている。
さらに12時間ぶっ通しの勤務で疲れていたのだ、とも。
他の医師が「どうしてジャックがDNRなんだ?」と問うて初めて
Bawa-Garba医師は自分の間違いに気付き、ジャックのもとに戻って
その後1時間近く、蘇生に努めるチームととともに働いたという。
しかしジャックの蘇生はかなわなかった。
検死官の調査で蘇生を止める前にジャックの顔を見たのかと問われ
「部屋にはたくさん人がいたから、顔を見たかどうか思い出せない。
でも、私にとって大事だったのは、
蘇生しないことになっている子どもは蘇生しないことだった」。
Down’s syndrome boy, 6, died when doctor exhausted by 12 hour shift mistook him for child who had ‘do not resuscitate’ order
Daily Mail, July 24, 2013
記事を読む限り、この研修医、
罪悪感を引き受けることができずに
いろいろ言い訳するタイプの人のようだけれど、
蘇生しなければならない子どもを蘇生することよりも、
蘇生しないことになっている子どもは蘇生しないことの方が
私にとっては大事だった……ということが
言い訳しているうちに語るに落ちてしまった、ということなんでしょうか。
研修医に「どうせダウン症の子どもだから蘇生は無用」という
意識があったから起こった事件……なんでは?
英国では去年も以下のような事件があった ↓
「ダウン症だから」と本人にも家族に無断でDNR指定(英)(2012/9/13)
今回の報道を受け、
無益な治療ブログのPopeが
POLSTに患者の顔写真を添付せよ、と提言している。
http://medicalfutility.blogspot.jp/2013/07/match-right-patient-to-dnr-order.html
でも、この事件、
本当にそういう問題なのかなぁ??
POLSTについては、こちら ↓
医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLST(2012/11/26)
一方的な「無益な治療」拒否のアリバイ化するPOLST(2013/6/16)
2013.07.28 / Top↑
優れた終末期ケアの手順書として日本でも採用されているリヴァプール・ケア・パスウェイ(LCP)が
高齢者を機会的に消極的安楽死へと導くツールと化しているとして
英国でここ数年問題となり、ついには保健省が調査に乗り出した流れについては
以下のエントリーで追いかけてきましたが、
“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)
以下の報道によると、
エジンバラで開催された英国医師会(BMS)会議で
LCPの理念の意義は再確認されたものの、
適用方法には問題がある、と。
指摘された問題点としては、
・一旦LCPの対象となると、
再評価もないまま何週間もLCPが続行されている。
・患者がLCP適用となったことを
家族が知らされていない。
・患者がLCPになったことを
時には医師も知らされていない。
・チェックリスト文化が、機会的な思考につながっている。
・LCP対応になった患者のパーセントに応じて病院に報酬が支払われる
金銭的なインセンティブが設けられている。
・その結果、患者と家族の間に、
LCPを死への一方的なパスウェイ(細道)だという恐れが生じ、
終末期医療そのものへの不信を招いている。
英国医師会は
医療職に向けてLCPの適切な用い方の研修が必要であること、
NHSの数値目標とインセンティブの廃止を求めることを決議。
自殺幇助合法化に一貫して反対してきた議員で、
緩和ケア医、次期BMA会長でもあるIlora Finlay氏は、
LCP対応となった患者の中にも
3%程度、症状が改善するケースがあるのに、
パスウェイという単語を含むLCPという呼称の
一方通行というイメージに患者も家族も怯えてしまっているので、
この呼称はやめた方が良い、と。
Doctors warn Livepool Care Pathway seen as ‘one-way ticket to death’
The Telegraph, June 28,2013
‘Don’t call it the Liverpool Care Pthway’: Doctors admit it sounds like a one-way ticket to the grave
The Daily Mail, June 28, 2013
【Finlay議員関連エントリー】
英国医師会、自殺幇助に関する法改正支持動議を否決(2009/7/2)
BMJの副編が「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」(2009/9/6)
Campbellさん率いる障害者団体連合が自殺幇助ガイドラインを批判(2009/12/22)
Warnock, Finlay, Purdy他が自殺幇助で円卓討論(2010/1/31)
「PAS合法化なら年1000人が死ぬことに」と、英シンクタンクが報告書(2010/10/26)
英国上院に自殺幇助に関する検討委員会(2010/11/30)
Dignitasで英国人がまた自殺、今度は「老いて衰えるのが怖いから」(2011/4/3)
高齢者を機会的に消極的安楽死へと導くツールと化しているとして
英国でここ数年問題となり、ついには保健省が調査に乗り出した流れについては
以下のエントリーで追いかけてきましたが、
“終末期”プロトコルの機会的適用で「さっさと脱水・死ぬまで鎮静」(英)(2009/9/10)
「NHSは終末期パスの機会的適用で高齢患者を殺している」と英国の大物医師(2012/6/24)
英国の終末期パスLCPの機会的適用問題 続報(2012/7/12)
LCPの機械的適用でNHSが調査に(2012/10/28)
以下の報道によると、
エジンバラで開催された英国医師会(BMS)会議で
LCPの理念の意義は再確認されたものの、
適用方法には問題がある、と。
指摘された問題点としては、
・一旦LCPの対象となると、
再評価もないまま何週間もLCPが続行されている。
・患者がLCP適用となったことを
家族が知らされていない。
・患者がLCPになったことを
時には医師も知らされていない。
・チェックリスト文化が、機会的な思考につながっている。
・LCP対応になった患者のパーセントに応じて病院に報酬が支払われる
金銭的なインセンティブが設けられている。
・その結果、患者と家族の間に、
LCPを死への一方的なパスウェイ(細道)だという恐れが生じ、
終末期医療そのものへの不信を招いている。
英国医師会は
医療職に向けてLCPの適切な用い方の研修が必要であること、
NHSの数値目標とインセンティブの廃止を求めることを決議。
自殺幇助合法化に一貫して反対してきた議員で、
緩和ケア医、次期BMA会長でもあるIlora Finlay氏は、
LCP対応となった患者の中にも
3%程度、症状が改善するケースがあるのに、
パスウェイという単語を含むLCPという呼称の
一方通行というイメージに患者も家族も怯えてしまっているので、
この呼称はやめた方が良い、と。
Doctors warn Livepool Care Pathway seen as ‘one-way ticket to death’
The Telegraph, June 28,2013
‘Don’t call it the Liverpool Care Pthway’: Doctors admit it sounds like a one-way ticket to the grave
The Daily Mail, June 28, 2013
【Finlay議員関連エントリー】
英国医師会、自殺幇助に関する法改正支持動議を否決(2009/7/2)
BMJの副編が「生きたい障害者が死にたい病人のジャマするな」(2009/9/6)
Campbellさん率いる障害者団体連合が自殺幇助ガイドラインを批判(2009/12/22)
Warnock, Finlay, Purdy他が自殺幇助で円卓討論(2010/1/31)
「PAS合法化なら年1000人が死ぬことに」と、英シンクタンクが報告書(2010/10/26)
英国上院に自殺幇助に関する検討委員会(2010/11/30)
Dignitasで英国人がまた自殺、今度は「老いて衰えるのが怖いから」(2011/4/3)
2013.07.01 / Top↑
POLSTについては
去年、以下のNYTの記事で初めて知ってエントリーに書いた段階で、
こういうことになるんでは……という予感があった。
医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLST(2012/11/26)
現に、この時、私は以下のように書いている。
すぐに頭に浮かんだのは、
一方には「無益な治療」法の広がりがあるんだけれど、
これらの整合性って、どういうことになるんだろう??
患者がPOLSTで「やってほしい」と望んでいる終末期の治療があるとして、
病院側が「それはこの患者には無益」と判断した場合には……?
POLSTとは、この時のNYTの記事によると、
Physician Orders for Life Sustaining Treatmentのことで、
生命維持治療に関する医師の指示書。
医師が主導して患者の終末期医療について話し合いをして
終末期医療に関する患者の意思を確認し、
医師の指示書という形で1枚の様式に記録しておく、というもの。
つまり、少なくとも表向きは、あくまでも患者の意思の尊重のために、
医師が聞きとり、医師の指示という形で記録しておく、というもの。
そのPOLSTが続々と法制化されている。
と同時に、どうやら
事実上の「無益な治療」の一方的な拒否件の法制化のアリバイに使われ始めているのでは?
Thaddeus Popeのブログ記事2本から以下に。
4月のインディアナ州に続いて、ネバダ州がPOLSTを法制化し、
Thaddeus Popeによると、これで米国でPOLSTを法制化したのは20州に。
Nevada Enacts POLST Statute
Medical Futility Blog, June 15, 2013
そのうち、メリーランド州とバーモント州では
臨床医は、万一の場合に心肺蘇生術が「無益」「医学的に効果がない」と考える場合には
患者や代理決定者の同意なしにPOLSTにDNR指定を書きこむことが認められており、
POLST記入用紙にも「同意なし」にチェックできる個所が設けられている。
またカリフォルニア州の法律でも
医師はPOLSTの内容に従って医療を行うものとしつつも、
「医学的な効果がない」または「一般に受け入れられている医療スタンダードに沿わない」
医療についてはその限りではない、としているが、
上記2州のように「同意なし」のチェック項目までは様式に含めていない。
しかし、実際には
どういう場合がそれらに当たるのかについて曖昧さが残るため、
現場医師らは提訴の可能性なども考え、慎重を崩していない模様。
POLST Authorizes Unilateral DNAR Orders
Medical Futility Blog, June 15, 2013
それにつけても、バーモント州と言えば、
つい先ごろ、自殺幇助を合法化したばかりの州。
VT州の「終末の選択」法、成立・施行(2013/5/2)
つまりバーモント州では、医師による自殺幇助が
患者の「自己決定権」の尊重として合法化されて、
その一方では、
患者がPOLSTで「治療を受けたい」と「自己決定」していたとしても、
医師が「その治療は無益」と判断すれば患者の自己決定権は否定されることが法で謳われている。
つまり「もう死ぬ」は自己決定できるけど、
「まだ生きたい」という自己決定はできない、ということでは?
そもそも「無益な治療」論は、Popeも書いているけれど、
一体なにが「無益」に当たるのかについては定義が全く一定していないまま、
病院の文化や医師個々の価値意識によって極めて恣意的に運用されているのが実態。
カナダのラスーリ訴訟が進行中の病院では
その後も同様の無益な治療事件が続発しているけれど、
そのたびにスタンダードが変質・変容してきていて、
いちばん最近の事件での病院側の言い分は
「回復の見込みは皆無。
延命しても、その命が生きるに値するかどうか分からない場合には
延命には明確な利益はない。延命は苦痛を長引かせるだけ」
Raouli訴訟のサニーブルック病院でまたも無益な治療事件(2013/5/27)
去年、以下のNYTの記事で初めて知ってエントリーに書いた段階で、
こういうことになるんでは……という予感があった。
医師が主導して考えさせ、医師の指示書として書かれる終末期医療の事前指示書POLST(2012/11/26)
現に、この時、私は以下のように書いている。
すぐに頭に浮かんだのは、
一方には「無益な治療」法の広がりがあるんだけれど、
これらの整合性って、どういうことになるんだろう??
患者がPOLSTで「やってほしい」と望んでいる終末期の治療があるとして、
病院側が「それはこの患者には無益」と判断した場合には……?
POLSTとは、この時のNYTの記事によると、
Physician Orders for Life Sustaining Treatmentのことで、
生命維持治療に関する医師の指示書。
医師が主導して患者の終末期医療について話し合いをして
終末期医療に関する患者の意思を確認し、
医師の指示書という形で1枚の様式に記録しておく、というもの。
つまり、少なくとも表向きは、あくまでも患者の意思の尊重のために、
医師が聞きとり、医師の指示という形で記録しておく、というもの。
そのPOLSTが続々と法制化されている。
と同時に、どうやら
事実上の「無益な治療」の一方的な拒否件の法制化のアリバイに使われ始めているのでは?
Thaddeus Popeのブログ記事2本から以下に。
4月のインディアナ州に続いて、ネバダ州がPOLSTを法制化し、
Thaddeus Popeによると、これで米国でPOLSTを法制化したのは20州に。
Nevada Enacts POLST Statute
Medical Futility Blog, June 15, 2013
そのうち、メリーランド州とバーモント州では
臨床医は、万一の場合に心肺蘇生術が「無益」「医学的に効果がない」と考える場合には
患者や代理決定者の同意なしにPOLSTにDNR指定を書きこむことが認められており、
POLST記入用紙にも「同意なし」にチェックできる個所が設けられている。
またカリフォルニア州の法律でも
医師はPOLSTの内容に従って医療を行うものとしつつも、
「医学的な効果がない」または「一般に受け入れられている医療スタンダードに沿わない」
医療についてはその限りではない、としているが、
上記2州のように「同意なし」のチェック項目までは様式に含めていない。
しかし、実際には
どういう場合がそれらに当たるのかについて曖昧さが残るため、
現場医師らは提訴の可能性なども考え、慎重を崩していない模様。
POLST Authorizes Unilateral DNAR Orders
Medical Futility Blog, June 15, 2013
それにつけても、バーモント州と言えば、
つい先ごろ、自殺幇助を合法化したばかりの州。
VT州の「終末の選択」法、成立・施行(2013/5/2)
つまりバーモント州では、医師による自殺幇助が
患者の「自己決定権」の尊重として合法化されて、
その一方では、
患者がPOLSTで「治療を受けたい」と「自己決定」していたとしても、
医師が「その治療は無益」と判断すれば患者の自己決定権は否定されることが法で謳われている。
つまり「もう死ぬ」は自己決定できるけど、
「まだ生きたい」という自己決定はできない、ということでは?
そもそも「無益な治療」論は、Popeも書いているけれど、
一体なにが「無益」に当たるのかについては定義が全く一定していないまま、
病院の文化や医師個々の価値意識によって極めて恣意的に運用されているのが実態。
カナダのラスーリ訴訟が進行中の病院では
その後も同様の無益な治療事件が続発しているけれど、
そのたびにスタンダードが変質・変容してきていて、
いちばん最近の事件での病院側の言い分は
「回復の見込みは皆無。
延命しても、その命が生きるに値するかどうか分からない場合には
延命には明確な利益はない。延命は苦痛を長引かせるだけ」
Raouli訴訟のサニーブルック病院でまたも無益な治療事件(2013/5/27)
2013.06.18 / Top↑