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こちらのエントリーでお知らせしたEva Kittayの講演会に行った。

そして、講演後、ほんのわずかの間だったけど、
Kittayさんとお話しすることができた。

成長抑制WGのメンバーだったKittayさんは、
自分は同意なんかしていない、と言った。

サインもしていない、と言った。

Kittayさんは、WGでのDiekemaらのやり方に、
ものすごく怒っていた。

具体的な内容を詳しく教えてもらえる状況ではなかったし、
わわわっと早口で言われたことは、私の方が舞い上がってしまっていて理解できなかった。

でも、あの怒り方だけで、私には十分だった。

やっぱり、私が考えていた通り、
あのWGは最初から結論あきりのセット・アップだったに違いない。
メンバーの約半数、WA大学の職員以外の著名な学者さんたちは
正当化のアリバイ作りに利用されたのだと思う。

でも、Kittayさんの憤り方に、
この人が、あのWGにいてくれたことに、本当に、心の底から、深く感謝した。

その後、2日間、取材の仕事があって、
さっき3日ぶりに自分のパソコンを立ち上げたら、

私がKittayさんと会った10日に、なんと
お馴染みBill PeaceがHastings Center ReportのA事件特集について
早速にブログで書いてくれていた。

Ashley Treatment in the Hastings Center Report
Bad Cripple, November 10, 2010


彼は Hastings Centerと直接的なかかわりがあるために、
ちょっと妙に中立的に“いい子ちゃん”をやり過ぎているような気がして、
私は彼の文章には余りいい気持ちではないけど、

私がまだ読めないでいる、それぞれの論文の中から
一節ずつを抜き出してくれているのはありがたい。

中でも、Kittayさんの論文の一節は、

The Seattle Growth Attenuation and Ethics Working Group settled on the compromise that growth attenuation should be limited to severely cognitively disabled and nonambulatory children. I respectfully disagree. I do not believe that growth attenuation is ethically or medically appropriate, even when limited to children with profound developmental and intellectual impairments.

The compromise position rests on the assumption that the constraint will avoid many of its possible abuses. The problem is that the limitation is itself already an abuse. If growth attenuation should not be done on children without these impairments, then it should not be done on any children. To do otherwise amounts to discrimination.



ここでも、彼女は不同意だと明言している。

濫用を防止するために
条件を絞って妥当だと認めようというのがWGの妥協点だとするなら、
その条件そのものが濫用だと。

障害のない子どもに行われてはならないなら
障害のある子どもに行われることは差別である、と。


2日前に直接、言ったばかりだけど、改めて、

ありがとう、Kittayさん!!



(講演については、また改めて)
2010.11.13 / Top↑
昨日、以下の3つのエントリーを書いた後で、

成長抑制WGの論文がHastings Center Reportに
Eva Kittayの成長抑制論文
Norman FostもAlice Dregerも成長抑制に関する論文

この4年近くに、Diekemaらがやってきたことの様々に思いを巡らせていたら、
ふいに、天啓のように頭に浮かんだ考えがある。

彼らは、もしかしたら、待っている……?


WPASと子ども病院の合意事項の年限は5年間だった。

これまでの当ブログでの検証から推測すると、
合意事項の内容は、恐らくは実行されてなどいない。

しかし、一応は、あれだけ権威ある子ども病院が
公に記者会見まで開いて発表した合意事項ではある。

これまで、
WGを組織してみたかと思えば、自分たちが勝手に論文を書いてみたり、
その時々で言っていることが違っていたり、と、
Diekemaらの言動は辻褄が合わなかったり、
ほとんど支離滅裂に見えるほど行き当たりばったりと思えた。

でも、あれは、内容ではなく、
シンポが開かれた、論文が書かれた、という事実が大事だったのかもしれない。

ただ世間から忘れられない程度に何事かが起こっていれば、
そして、それが正当化のポーズとなるものでありさえすれば、
それでよかったということなのかも……?

07年の、あの激しい論争と、
それに続くWPASの調査での追及を
なんとか無事にかわしきって真実を隠し抜いた彼らにとって、

あとは、合意年限が切れる5年後に向けて、
中身はともかく、正当化の手順を踏んだというアリバイ作りを重ね、
解禁後に向けた準備を着々と進めるだけでよかった……?

中身などどうでもよくて、
論文をこれだけ書きました。
シンポもやりました。
WGの検討もやりました。
……そういう既成事実を作っておくことだけが重要だった?

5年後に「我々は十分に正当化しました」と言うために――?

Diekemaらがそういう作業をせっせとやっている一方で、
父親の方は、世間に忘れ去られないように、ネット上で
「この問題を議論しよう。家族のブログを読もう」と
怪現象を起こし続けてきたのは
なるほど、そういうことだったのか……。

じゃあ、あと1年――?

あと1年したら、シアトルこども病院は
おそらく重症障害児に対する成長抑制療法を解禁する――?
2010.11.08 / Top↑
成長抑制WGの論文と、Eva Kittayの論文と同時に、
Hastings Center Report の11-12月号に掲載されている関連論文としては、

①Norman FostのOffence to Third Parties?”

これはアブストラクトを読んでも、ワケが分からない……。
これまで通りに、詭弁を弄して牽強付会の正当化を狙ったものに決まってはいますが。

②それから、重症児の親の立場から、賛否それぞれ1本ずつ。

Against Fixing a Child – A Parent’s View
Sue Swenson

In Support of the Ashley Treatment - A Parent’s View
Sandy Walker


③論文ではなくコラムにも、非常に興味深い人が登場していて

Attenuated Thoughts
Alice Dreger

アブストラクトは

I was invited to join the Seattle Growth Attenuation and Ethics Working Group―collective author of the lead article in this issue of the Report―but I begged off, claiming I had too many other things on my plate. True, but the bigger reason for avoiding the project was my suspicion that I would be torn asunder by the complexity of growth attenuation for persons with disabilities. Reading the essays from the group reveals that instinct to have been dead-on.



WGに誘われたけれども、断った。
その理由は、他のことで手いっぱいだというのもあったけど、本当のところは
障害者への成長抑制という問題の複雑さに自分は引き裂かれてしまうだろうと思ったから。
WGのエッセイを読んでみると、思った通りだった、と。

Dreger氏は07年5月のワシントン大学の成長抑制シンポで
批判サイドで最も目覚ましい追及を見せた人。

その後、すっかり論争から姿を消して、
私は正直、逃げてしまったのだとばかり思っていたので、
ここにきて論争に戻ってきたのは、ちょっと意外。

何を書いているのか、大いに気になるけど、
とりあえず、これ以上は読めない。


【Alice Dregerの特にA事件関連発言に言及しているエントリー】(いずれも最後の部分で言及)
「選別的中絶」というより「選別的子育て」(2007/11/11)
英国の介護者支援に思うこと(2008/7/4)

              ――――

成長抑制ではなく自殺幇助議論の方では、
モンタナの最高裁のBaxter判決について、
John Robinsonという人が以下のエッセイを書いている。

Baxter and the Return of Physician-Assisted Suicide

他にも「良い死に方のアート」というエッセイも。
2010.11.07 / Top↑
ちょうど来日寸前(もしかすると既に来日中?)の
米国の哲学者で重症知的障害のある娘のいるEva Feder Kittay氏は
シアトルこども病院の成長抑制WGのメンバーの1人でした。

そのKittay氏の成長抑制に関する論文がHastings Center Reportに
WGの論文と同時掲載されています。

Discrimination against Children with Cognitive Impairments?
The Hastings Center Report 40, no.6 (2919): 32


アブストラクトは以下。

Those who have not raised a severely cognitively disabled and nonambulatory child into adulthood may feel diffident about expressing opposition to growth attenuation because they have not walked in the parent’s shoes. I have walked in them, or at least in very similar ones. My daughter Sesha is now a woman of forty. She, too, does not toilet herself, speak, turn herself in bed, or manage daily tasks of living, and she has no measurable IQ. Like Ashley, Sesha is so loving and easy to love that her impossible-to-articulate sweetness and emotional openness make it tempting to call her an “angel.” Still, we refrain. To love Sesha as she is, we must accept that, unlike an angel, she has a body that grows and ages.

重症の認知障害があり歩くことのできない子どもを成人するまで育てたことのない人は、親の立場に立ったことがないために、成長抑制に反対することについて違った感じ方をするのかもしれません。私は、その立場で育ててきました。少なくとも、非常に似た状況で子どもを育ててきました。娘のSeshaは現在40 歳の大人の女性です。彼女もまた、排泄が自立していなくて話すことができず、寝返りもできず、日常生活が全介助です。IQも計測不能な範囲です。 Ashleyと同様に、Seshaもたいそう愛らしく、いとおしくて、言葉で言い表せないほどのかわいらしさと、まっすぐに気持ちを表現するところなどは、つい「天使」と呼んでしまいたくなるほどです。しかし、私たちはそうしません。Seshaをありのままに愛するために、彼女が天使とは違って、 Seshaには成長し置いていく身体があることを受け入れなければならないのです。



このアブストラクトからすると、
成長抑制の一般化には反対のスタンスで書かれたものと思われますが、
タイトルに「認知障害児に対する差別?」と疑問符が付いているところが
ちょっと気になります。

10日の講演で成長抑制が話題になるとはあまり思えませんが
論文が発表されたばかりとあって、なにか言ってくれないかなぁ……。
2010.11.07 / Top↑
Ashley事件はまだまだ終わってなどいないと
当ブログではずっと言い続けてきましたが、やはり……。

Hastings Center Reportの11月―12月号に
シアトルこども病院が組織した成長抑制ワーキング・グループの論文が掲載されました。

Navigating Growth Attenuation in Children with Profound Disabilities: Children's Interests, Family Decision-Making, and Community Concerns 

アブストラクトは以下の通りで、
09年1月のシンポでの報告内容を取りまとめたものと思われます。

Our working group sought to engage the underlying ethical and policy considerations of growth attenuation―that is, administration of short-term, high-dose estrogen to close growth plates, thereby permanently limiting height. We hoped to move beyond staking out positions with divisive and polarizing rhetoric about growth attenuation in order to find common ground and better identify and understand the areas of deep disagreement. In this paper, we offer sympathetic accounts of differing views so that those who hold a particular view can better understand others’ concerns. We also reach for a middle ground―a moral compromise based on respect for sustained disagreement rather than on consensus. Most of our group agreed to the compromise that growth attenuation can be morally permissible under specific conditions and after thorough consideration.



とりあえず、このアブストラクトのみから、指摘しておきたい点は以下。

・09年のシンポでも同じだったように
「結論」とはせず「妥協」として、
「成長抑制療法は一定の条件下では道徳的に許容できる」と主張している。

・ただし、その「妥協」については、
「コンセンサスよりも、支持を集めた不同意も尊重したうえでの道徳的な妥協」を選んだと
まったく訳のわからない説明がされている。

・この妥協点に同意したのは Most of our group であって、全員ではない。

・著者は以下のようになっており、

Benjamin S. Wilfond, Paul Steven Miller, Carolyn Korfiatis, Douglas S. Diekema, Denise M. Dudzinski, Sara Goering, and the Seattle Growth Attenuation and Ethics Working Group

同意しなかったメンバーがいるにもかかわらず、
WGの名前が論文著者とされているのはどういうことなのか。

例えばメンバーの一人で障害学の学者 Adrienne Aschは、
AJOBのDiekema&Fost論文へのコメンタリーで
署名したのは議論のプロセスに同意したという意味で
決してその結論の内容に同意したわけではないと述べているが?

・なぜメンバーのうち6名だけが個人名なのか。その他WGに一括されている著者との線引きは?

・また、このWGの議論の進行中に、メンバーでもある
DiekemaとFost他1名が成長抑制は妥当だとする論文を投稿していた事実もあるが?

・要するに、最初から結論ありきで立ち上げられたWGで
思いがけない反論が相次いで支持を集めたために「結論」とすることは不可能となり、
やむなく「妥協」としたものの、実質的には当初の狙い通りに
反論もそれらに対する支持もねじ伏せておいて
「妥協」と銘打っただけで当初の予定通りの結論が
この論文によって提示されている……ということなのでは?



この論文が出てきたことで、ここまでやるかぁ……と、この問題に関する
シアトルこども病院の異様なほどの周到さと執念深さについて
つくづく考えてしまったのだけど、

本当のところ、重症児に対する成長抑制療法というのは、
権威ある子ども病院が何年にも渡って病院を上げてこれほどの大騒ぎをして、
なにがなんでも世の中に広めていかなければならないほど、
医学的に見て、たいそうな医療介入なんだろうか。

正直、シアトルこども病院ほどの権威ある病院がここまで入れ込んで、
姑息なウソをつき、マヤカシやトリックを仕組んでのゴリ押しをしてまで、
なにがなんでも一般化しなければならない必然性というのが、
本当のところ、私には見えてこない。

それを考えると、この周到さ、執念深さ、入れ込みよう、
ゲイツ財団と繋がりがあるらしいAshleyの父親が望んでいるから、という
単にそれだけの理由では説明がつかないような気もしてくる。

もしかして、背後には、もうちょっと根深いものが……?
2010.11.07 / Top↑