この10年ばかり米国の教育改革に資金を提供してきたBill Gates氏が
これまでの改革が効果を上げていないことから学校小規模化から方針を転換し、今度は
生徒の成績をPC管理して、その変動で教師を評価するシステムを提言していることを
前のエントリーで紹介しましたが、
Gates氏が教育改革に新たに資金提供している部門がもう一つあることは
4月28日の補遺でも拾った通り、
ビデオ・ゲームを活用した教材開発に2000万ドルを提供すると約束。
それについての詳しいニュースが2本ありました。
① Opening Education’s Gates – The Gates Foundation Invests In Innovative Education
InventorSpot.com
2000万ドル投資の目的は、
ビデオ・ゲームとSNSシステムを使った学習システムと、
アセスメントを組み込んだデジタル・カリキュラムの開発。
具体的には例えば
・SNS学習ネットワークの開発でDigital Youth Networkに260万ドル。
・ゲーム型の指導ツールの開発で Institute of Play に250万ドル。
・数学、国語、科学を教えるための3Dマルチ・ユーザーのビデオ・ゲーム開発で
Quest Atlantis に 260万ドル。
・応用テクノロジーを通じて大学教育に備え卒業まで導く学習補助手段開発で
Next Generation Learning Challenges に1000万ドル。
これらは、42州採用の国語と数学の新スタンダード
Common Core State Standards Initiativeに沿ったものになる予定とのこと。
② Foundations Join to Offer Online Courses for Schools
The NY Times, April 27, 2011
こうしたゲイツ財団の動きについてはNYTも先月27日に報じており、
そちらでは同財団が巨大教科書・教育テクノロジー企業Pearsonと提携し
ビデオ・ゲームやSNSを駆使して
数学では幼稚園から高校1年向けに
国語では幼稚園から高校3年向けに
合わせて24の講座を準備する、と。
この提携により、現在でも教科書・教材市場で優位にあるPearsonは
新スタンダードに合わせて改訂競争に晒される競合企業を突き離し、
さらなる独走態勢を固めるだろう、との予測が出ている。
ゲイツ財団の教育部門の責任者が
「これで生徒と教師のやり取りは根本的に変わりますよ」と自画自賛するのは良いとして
ブッシュ政権で教育省の官僚だった教育行政の専門家までが
「これで新たなスタンダードCommon Coreを統一テストに連動させていくことが可能になる」と。
------
オンラインの教材で学習し、そこでの生徒のパフォーマンスはリアルタイムで自動登録・管理され、
またはオンラインで統一テストを行い、そのパフォーマンスも自動登録・管理され、
担当する生徒たちのパフォーマンスのCommon Core達成率と向上率がはじき出されて、
それがそのまま各教師のパフォーマンスということにされていく……んでしょうね。
まるで、チェーン展開している外食産業で各店舗の営業状況がPCで一括中央管理され、
毎月どころか毎日、毎時の成績がはじき出されて数値化され可視化され、
逐次それに対して誰かが責任を問われ、尻を叩かれ、首を切られるように、
きっとPCが逐次はじき出す数値がそれぞれの教師の能力と同意となり、
その数値に対して責任を問われ、数値を上げよと尻を叩かれ、
数値を上げることができなかったり、数値に踊らされることを拒めば
ただシンプルに「無能」の烙印を押されて首を切られていくのでしょう。
そして、全米でそうした教育・教師管理システムを構築、維持管理運営するのはマイクロソフト――。
ゲイツ財団の興味関心を実現していく研究開発にまい進して株主さんになってもらえたり
同財団から資金をもらったりパートナーシップを組んでもらえる企業だけが、
それぞれのマーケットで独占的に肥大化していくのも
科学とテクノの分野や教育の分野だけではなくなっていくのかもしれない。
そして、どの分野からも多様性というものが失われて、
きっと世界はとても平板で機械的な価値観で均されていくんだろうな……という、イヤ~な予感がする。
科学とテクノの研究からは既に多様性が失われていることは
こちらのエントリーの記事が指摘している。
これまでの改革が効果を上げていないことから学校小規模化から方針を転換し、今度は
生徒の成績をPC管理して、その変動で教師を評価するシステムを提言していることを
前のエントリーで紹介しましたが、
Gates氏が教育改革に新たに資金提供している部門がもう一つあることは
4月28日の補遺でも拾った通り、
ビデオ・ゲームを活用した教材開発に2000万ドルを提供すると約束。
それについての詳しいニュースが2本ありました。
① Opening Education’s Gates – The Gates Foundation Invests In Innovative Education
InventorSpot.com
2000万ドル投資の目的は、
ビデオ・ゲームとSNSシステムを使った学習システムと、
アセスメントを組み込んだデジタル・カリキュラムの開発。
具体的には例えば
・SNS学習ネットワークの開発でDigital Youth Networkに260万ドル。
・ゲーム型の指導ツールの開発で Institute of Play に250万ドル。
・数学、国語、科学を教えるための3Dマルチ・ユーザーのビデオ・ゲーム開発で
Quest Atlantis に 260万ドル。
・応用テクノロジーを通じて大学教育に備え卒業まで導く学習補助手段開発で
Next Generation Learning Challenges に1000万ドル。
これらは、42州採用の国語と数学の新スタンダード
Common Core State Standards Initiativeに沿ったものになる予定とのこと。
② Foundations Join to Offer Online Courses for Schools
The NY Times, April 27, 2011
こうしたゲイツ財団の動きについてはNYTも先月27日に報じており、
そちらでは同財団が巨大教科書・教育テクノロジー企業Pearsonと提携し
ビデオ・ゲームやSNSを駆使して
数学では幼稚園から高校1年向けに
国語では幼稚園から高校3年向けに
合わせて24の講座を準備する、と。
この提携により、現在でも教科書・教材市場で優位にあるPearsonは
新スタンダードに合わせて改訂競争に晒される競合企業を突き離し、
さらなる独走態勢を固めるだろう、との予測が出ている。
ゲイツ財団の教育部門の責任者が
「これで生徒と教師のやり取りは根本的に変わりますよ」と自画自賛するのは良いとして
ブッシュ政権で教育省の官僚だった教育行政の専門家までが
「これで新たなスタンダードCommon Coreを統一テストに連動させていくことが可能になる」と。
------
オンラインの教材で学習し、そこでの生徒のパフォーマンスはリアルタイムで自動登録・管理され、
またはオンラインで統一テストを行い、そのパフォーマンスも自動登録・管理され、
担当する生徒たちのパフォーマンスのCommon Core達成率と向上率がはじき出されて、
それがそのまま各教師のパフォーマンスということにされていく……んでしょうね。
まるで、チェーン展開している外食産業で各店舗の営業状況がPCで一括中央管理され、
毎月どころか毎日、毎時の成績がはじき出されて数値化され可視化され、
逐次それに対して誰かが責任を問われ、尻を叩かれ、首を切られるように、
きっとPCが逐次はじき出す数値がそれぞれの教師の能力と同意となり、
その数値に対して責任を問われ、数値を上げよと尻を叩かれ、
数値を上げることができなかったり、数値に踊らされることを拒めば
ただシンプルに「無能」の烙印を押されて首を切られていくのでしょう。
そして、全米でそうした教育・教師管理システムを構築、維持管理運営するのはマイクロソフト――。
ゲイツ財団の興味関心を実現していく研究開発にまい進して株主さんになってもらえたり
同財団から資金をもらったりパートナーシップを組んでもらえる企業だけが、
それぞれのマーケットで独占的に肥大化していくのも
科学とテクノの分野や教育の分野だけではなくなっていくのかもしれない。
そして、どの分野からも多様性というものが失われて、
きっと世界はとても平板で機械的な価値観で均されていくんだろうな……という、イヤ~な予感がする。
科学とテクノの研究からは既に多様性が失われていることは
こちらのエントリーの記事が指摘している。
2011.05.02 / Top↑
長引く経済不況で、米国の公教育は予算不足が続き、
そこでEli Broad, Casey Wasserman, Bill & Melinda Gates 財団など
民間からの資金に頼ることになっているらしい。
LA Times の調査によると、
LA地域の教育行政上級職20人の給与が税金からではなく
これら民間の慈善家によって支払われることになるのだとか。
その中の一人、
LA統合スクール・ディストリクトの教育長に就任したJohn Deasy氏は
なんとゲイツ財団の元幹部職員だとのこと。
もちろんDeasy氏本人は
資金提供者の意向に関わりなく
自分が意思決定を行うと言ってはいるけれど、
果たしてそういう具合に行くものか、
教育改革を慈善家のゼニにゆだねることにリスクはないのか、と
LA Timesの社説が問題提起している。
実際、教育に資金を提供する慈善家たちは小規模校がお好みで、
Bill Gates氏はかつて10億ドルを提供して
学校の500人規模への小規模校化を説いたことがあった。
そのため米国の都市部を中心に小規模校がトレンドとなり、
スクール・ディストリクトはこぞって小さな学校を作り、
学校の運営費用はかさんでいった。
しかしゲイツ財団がその後独自に調査を行ってみると
小規模化は生徒の成績向上に結び付いていないという結果が出てしまう。
するとゲイツ氏はとたんに小規模化プロジェクトに興味を失い、
それよりも教師の評価制度を変えようと言い始める。
その評価システムとは、
教室で授業を観察・評価するだけではなく、
生徒の成績をコンピューター管理して、それによって
教師ごとに担当生徒の成績がどれだけアップしたかを割り出して
それぞれの教師の評価に反映させるというもの。
しかし、そこには教師の評価そのものよりも
むしろ評価システムの導入に対して資金を出そうとの狙いもあるのでは?
慈善家たちは自分の出したカネが自分の思う目的に使われることを望むが、
教育官僚の仕事は彼らの意向に応えることではなく、納税者に応えることである。
教育改革のコントロールを
教育行政が安易に慈善家に渡してしまっていいのか……? と。
LAUSD: Public education and private money may prove a mixed bag
The LA Times, Editorial, May 1, 2011
この社説の疑念は、
当ブログが「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫でかねて提起してきたものと
まったく同じ方向のものだけど、
ここでは教育のことだけが語られているために
問題の真の大きさが捉えられていないと思う。
ゲイツ財団のカネがコントロールを及ぼしているのは
米国の公教育だけではなく、
世界中の科学とテクノロジー研究、
グローバル・ヘルスの資金分配、農業政策、外交施策、そしてメディア……。
そういえば、米国の国際開発支援を担当するUSAIDのトップも元ゲイツ財団の職員。
(詳細は上記「農業政策」リンクのエントリーに)
カネを出すだけではなく、
その出したカネの使い道の意思決定を握る機関に財団の職員まで送りこむのは
財団の常とう手段なのかもしれない。
でも、それが多くの人が考えているほど単純な「慈善」ではないことは、
例えば
ワクチン大好きなゲイツ氏が実はビッグ・ファーマの株主さんだったり、
彼が最近しきりに途上国に導入させようとしている5価ワクチンの
製造販売元のメルク社のワクチン部門の責任者には
前CDCのセンター長が天下りしているという構図が、
まるでUSAIDのトップが元ゲイツ財団の職員だという事実の陰画のように思えるように
また例えば、
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪 などを考えてみれば、
なにがしかの疑問が頭に浮かんでこないだろうか。
例えば、
「慈善」と「慈善資本主義」とは、
もしかしたら似て非なるものではないのではないか……とか
もしかしたら、それは実は「慈善帝国主義」なのではないか……などの疑問が――。
【追記】
以下、同じテーマのNewsweekの記事。
非常に長い記事なので最初のページしか読んでいませんが、
Newsweekが、Center for Public Integrityと共に行った調査で
ここ数年の億万長者たちの教育への投資がさほどの効果を上げていないとの
結果を出している様子。
記事冒頭、この10年間の教育改革に資金を提供したCEOたちについて
「教育政策に特に何らバックグラウンドを持たないままやってきた富裕なCEOたち」と
書かれていることがだいたいの記事のトーンをうかがわせている。
Back to School for the Billionaires
Newsweek, May 1, 2011
Center for Public Integrity という機関があるんですね。
Public Integrity……公共の統合性。
科学とテクノの発達で世界経済と金融の構造が変わったことで
ごくわずかな人に富がドラスティックに集中し、それと同時に
各国は過酷な国際競争に投資を迫られて経済的に疲弊する中、
公共サービスを守るためには行政機関が富裕な個人や民間財団の資金に頼らざるを得ない状況が
あちらでもこちらでも――各国規模でもグローバルな規模でも――発現している。
それは国家という装置が機能不全を起こして公共としての統合性を失い、
世界のスーパーリッチの資金と思惑とに
否応なく依存・奉仕させられていく……ということでは?
そこでEli Broad, Casey Wasserman, Bill & Melinda Gates 財団など
民間からの資金に頼ることになっているらしい。
LA Times の調査によると、
LA地域の教育行政上級職20人の給与が税金からではなく
これら民間の慈善家によって支払われることになるのだとか。
その中の一人、
LA統合スクール・ディストリクトの教育長に就任したJohn Deasy氏は
なんとゲイツ財団の元幹部職員だとのこと。
もちろんDeasy氏本人は
資金提供者の意向に関わりなく
自分が意思決定を行うと言ってはいるけれど、
果たしてそういう具合に行くものか、
教育改革を慈善家のゼニにゆだねることにリスクはないのか、と
LA Timesの社説が問題提起している。
実際、教育に資金を提供する慈善家たちは小規模校がお好みで、
Bill Gates氏はかつて10億ドルを提供して
学校の500人規模への小規模校化を説いたことがあった。
そのため米国の都市部を中心に小規模校がトレンドとなり、
スクール・ディストリクトはこぞって小さな学校を作り、
学校の運営費用はかさんでいった。
しかしゲイツ財団がその後独自に調査を行ってみると
小規模化は生徒の成績向上に結び付いていないという結果が出てしまう。
するとゲイツ氏はとたんに小規模化プロジェクトに興味を失い、
それよりも教師の評価制度を変えようと言い始める。
その評価システムとは、
教室で授業を観察・評価するだけではなく、
生徒の成績をコンピューター管理して、それによって
教師ごとに担当生徒の成績がどれだけアップしたかを割り出して
それぞれの教師の評価に反映させるというもの。
しかし、そこには教師の評価そのものよりも
むしろ評価システムの導入に対して資金を出そうとの狙いもあるのでは?
慈善家たちは自分の出したカネが自分の思う目的に使われることを望むが、
教育官僚の仕事は彼らの意向に応えることではなく、納税者に応えることである。
教育改革のコントロールを
教育行政が安易に慈善家に渡してしまっていいのか……? と。
LAUSD: Public education and private money may prove a mixed bag
The LA Times, Editorial, May 1, 2011
この社説の疑念は、
当ブログが「ゲイツ財団とUW・IHME」の書庫でかねて提起してきたものと
まったく同じ方向のものだけど、
ここでは教育のことだけが語られているために
問題の真の大きさが捉えられていないと思う。
ゲイツ財団のカネがコントロールを及ぼしているのは
米国の公教育だけではなく、
世界中の科学とテクノロジー研究、
グローバル・ヘルスの資金分配、農業政策、外交施策、そしてメディア……。
そういえば、米国の国際開発支援を担当するUSAIDのトップも元ゲイツ財団の職員。
(詳細は上記「農業政策」リンクのエントリーに)
カネを出すだけではなく、
その出したカネの使い道の意思決定を握る機関に財団の職員まで送りこむのは
財団の常とう手段なのかもしれない。
でも、それが多くの人が考えているほど単純な「慈善」ではないことは、
例えば
ワクチン大好きなゲイツ氏が実はビッグ・ファーマの株主さんだったり、
彼が最近しきりに途上国に導入させようとしている5価ワクチンの
製造販売元のメルク社のワクチン部門の責任者には
前CDCのセンター長が天下りしているという構図が、
まるでUSAIDのトップが元ゲイツ財団の職員だという事実の陰画のように思えるように
また例えば、
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪 などを考えてみれば、
なにがしかの疑問が頭に浮かんでこないだろうか。
例えば、
「慈善」と「慈善資本主義」とは、
もしかしたら似て非なるものではないのではないか……とか
もしかしたら、それは実は「慈善帝国主義」なのではないか……などの疑問が――。
【追記】
以下、同じテーマのNewsweekの記事。
非常に長い記事なので最初のページしか読んでいませんが、
Newsweekが、Center for Public Integrityと共に行った調査で
ここ数年の億万長者たちの教育への投資がさほどの効果を上げていないとの
結果を出している様子。
記事冒頭、この10年間の教育改革に資金を提供したCEOたちについて
「教育政策に特に何らバックグラウンドを持たないままやってきた富裕なCEOたち」と
書かれていることがだいたいの記事のトーンをうかがわせている。
Back to School for the Billionaires
Newsweek, May 1, 2011
Center for Public Integrity という機関があるんですね。
Public Integrity……公共の統合性。
科学とテクノの発達で世界経済と金融の構造が変わったことで
ごくわずかな人に富がドラスティックに集中し、それと同時に
各国は過酷な国際競争に投資を迫られて経済的に疲弊する中、
公共サービスを守るためには行政機関が富裕な個人や民間財団の資金に頼らざるを得ない状況が
あちらでもこちらでも――各国規模でもグローバルな規模でも――発現している。
それは国家という装置が機能不全を起こして公共としての統合性を失い、
世界のスーパーリッチの資金と思惑とに
否応なく依存・奉仕させられていく……ということでは?
2011.05.02 / Top↑
ゲイツ財団が何をやっているのか、について
「慈善ってな、いろんな衣をまとってやってくるんだよ」というタイトルのチョー面白い記事がある。
07年のAshley事件からゲイツ財団の動きを追いかけてきて(詳細は「ゲイツ財団とWA・IHME」の書庫に)
私は、ここに書かれていることは真実だと思う。
Philanthropy can come in various garbs
By K.P. Prabhakaran Nair
Express, April 10, 2011
この記事を読むに当たっては、ちょっとばかり予備知識が必要になるかもしれないので、
当ブログが拾って来たところから以下に簡単にまとめてみる。
まず、ゲイツ夫妻は去年5月にインドを訪問した。そして
ビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書を交わしたり
なんとBiharでも特に貧しい村を“養子”にした。
そして今年も、ゲイツ夫妻は先月インドを訪問。
それについては3月23日の補遺、
25日の補遺、28日の補遺、29日の補遺で
あれこれの話題を拾っているけど、今回も重点訪問地はBihar州だった模様。
ゲイツ氏が行ったからには出てくるのは、もちろんワクチン推進の話で、
23日にBiharなど5州にPentvalent5価ワクチン導入に1億1000万ドルを約束。
もちろんPentvalentの製造販売元はゲイツ氏が株主であるMerk社。
で、上記リンクの記事によると、ワクチンのほかにも
Bihar州でゲイツ氏がブチ上げた大きな新企画がもう一つあったらしい。
それは the Borlaug Institute for South Asia なる組織の立ち上げ。
Borlangとは、1940年代から60年代にかけて行われた
農作物の品種改良運動(グリーン・レボリューション)を主導した農学者で
ノーベル平和賞を受賞したNorman Borlangのこと。
グリーン・レボリューションについては
こちらの日本語の解説が非常に的を突いていて、
Borlang博士は品種改良で貧困国の農業を改良しようとしたのだろうけれど、
そこに多国籍企業がわらわらと寄ってたかって暴利をむさぼったものだから、
結局は途上国の土壌を荒廃させ、貧富の格差を招いて失敗した。
グリーン・レボリューションによる化学物質の多用は
現地で癌患者の多発を招いたそうな。植物の多様性も失われたそうな。
上記記事の著者Nair氏によると(Wikipediaによっても)
メキシコで品種改良が成功した後それをフィリピンに持っていったのは
ロックフェラー財団だったそうな。
ロックフェラーが50年前にやったことを
今度はゲイツ財団がインドでやろうとしている、とNair氏は言う。
もちろん50年間に科学とテクノは進歩したのだから、
今度の品種改良は遺伝子組み換え技術(GM)で作ったタネを使う。
どうやらゲイツ財団は既にアフリカでGM農業改革をやってきているらしい。
アフリカのグリーン・レボリューション同盟(AGRA)に2億6400万ドルを出しているし、
ゲイツ財団がケニアに提供している資金の8割はバイオテク研究に使われており、
08年にはその中の2~3割がGMタネの推進と開発に注ぎ込まれている。
だから、それを今度はアジアに広げていこうという腹積もりなのだろう。
なるほど、もう推進体制はガッチリ固められているのだな、と思われることに
米国の国際開発支援を担当するUSAID(US Aid for International Development)のトップは
インド生まれのアメリカ人で、なんと、元ゲイツ財団の職員だそうな。
08年にインドの首相が渡米して友好協定に調印した際には
農業改革キャンペーン”Knowledge Initiative in Agriculture”が関与しており、
そのトップは、前大統領のBushジュニア。
またインドの農業研究カウンシルの前のトップが
今やフィリピンのマニラで国際コメ研究所の所長に雇われている。
そこの方針や予算は米国主導の国際農業研究顧問グループ(CGIAR)が握っている。
つまり、
ゲイツ財団と米政府とでアジアの農業を好きなようにできる
政治的な環境整備がちゃ~んと出来ちゃっている、ということですね。
もちろん両者とも、ただの善意のわけないでしょー。
Nair氏の記事は後半では
ワクチン問題を中心にゲイツ財団とWHOの関係についても
当ブログが書いてきたことにぴったりと重なる鋭い指摘をしている。
ゲイツ財団がカネを通じて
国際機関や医療系の研究所に影響力を行使していることによって、
科学者から多様な意見が出なくなり、国際機関の方針決定のプロセスにも影響して
意思決定プロセスが閉鎖的なものとなって透明性を失っている、と。
今年1月、
平等な医療を訴える草の根団体 the People’s Health MomentがWHOに提出した要望書で、
イノベーションや知的財産権、国連のミレニアム・ゴールと同時に、
WHOの、ゲイツ財団を中心とした私的な財源への依存体質が問題視されているそうだ。
そうした依存がひいてはWHOの
薬物、診断技術その他のテクノロジーによる簡単解決への傾斜を招き、
健康に対する社会要因への対応資金は大きく削られることとなった
そして、ワクチン推進への巨大な勢力とも結びついていると、Hair氏は指摘する。
(これは、WHOだけに限ったことではないですね。
世界中をものすごい勢いで席巻していく「科学とテクノで簡単解決文化」そのもの。
同財団のゼニは世界中の科学研究機関にまるで体内を巡る血液のように浸透しているのだから。
社会的要因の軽視は Ashley事件にも、IHME の推進する DALY にも如実に表れています)
なにしろ、100億ドルを出して
「ワクチンの10年」を仕掛けているのはゲイツ財団。
しかし、ここでもゲイツ財団とビッグ・ファーマには妙な動きがあって、
ゲイツ財団が作らせ支援しているthe Advance Market Commitment(AMC)なる組織が
買い上げ、慈善と称して様々な国に届けているワクチンは
グラクソとかファイザーなどビッグ・ファーマの製品で、しかも
欧米市場で売れまくって既にコストが回収できたワクチンなのだという。
慈善の名目で、インドなどの政府は自己負担分を体よく吐きださせられているだけだ、と。
本当にインドのために慈善でやるのなら、
どうしてインド国内でワクチンが製造できるようにさせないのか、と。
(この点は、ゲイツ氏もこの前の訪印で開発や研究者を支援するとは言っていたけど、
仮にインドで開発されようと、ゲイツ財団のひも付きであることには変わらないし、
インドで研究者が育ったら、息のかかった先進国の研究機関に引き抜いていくんだろうし。
それに「ワクチンの10年」て、次々にテンポよく新手を繰り出していくことにウマミがあるわけだから、
新興国の開発技術が先進国のビッグ・ファーマに及ぶわけもないのは分かり切っているし、
むしろ開発技術よりも、その途上の実験場と、開発後のマーケットがほしいのがホンネ。
だからNair氏がいうようにインド国内で製造させたとしても、
問題の本質はもっと根深いところにある、と私は思うな)
ほらね――。
だから、やっぱ、私が睨んだ通り ↓
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
「必要を作り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
シアトルこども病院・ワシントン大学とゲイツ財団の密接な関係:グローバルな功利主義・優生主義医療の動き(2011/2/9)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
ゲイツ財団はやっぱりビッグ・ファーマの株主さん(2011/3/28)
「慈善ってな、いろんな衣をまとってやってくるんだよ」というタイトルのチョー面白い記事がある。
07年のAshley事件からゲイツ財団の動きを追いかけてきて(詳細は「ゲイツ財団とWA・IHME」の書庫に)
私は、ここに書かれていることは真実だと思う。
Philanthropy can come in various garbs
By K.P. Prabhakaran Nair
Express, April 10, 2011
この記事を読むに当たっては、ちょっとばかり予備知識が必要になるかもしれないので、
当ブログが拾って来たところから以下に簡単にまとめてみる。
まず、ゲイツ夫妻は去年5月にインドを訪問した。そして
ビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書を交わしたり
なんとBiharでも特に貧しい村を“養子”にした。
そして今年も、ゲイツ夫妻は先月インドを訪問。
それについては3月23日の補遺、
25日の補遺、28日の補遺、29日の補遺で
あれこれの話題を拾っているけど、今回も重点訪問地はBihar州だった模様。
ゲイツ氏が行ったからには出てくるのは、もちろんワクチン推進の話で、
23日にBiharなど5州にPentvalent5価ワクチン導入に1億1000万ドルを約束。
もちろんPentvalentの製造販売元はゲイツ氏が株主であるMerk社。
で、上記リンクの記事によると、ワクチンのほかにも
Bihar州でゲイツ氏がブチ上げた大きな新企画がもう一つあったらしい。
それは the Borlaug Institute for South Asia なる組織の立ち上げ。
Borlangとは、1940年代から60年代にかけて行われた
農作物の品種改良運動(グリーン・レボリューション)を主導した農学者で
ノーベル平和賞を受賞したNorman Borlangのこと。
グリーン・レボリューションについては
こちらの日本語の解説が非常に的を突いていて、
Borlang博士は品種改良で貧困国の農業を改良しようとしたのだろうけれど、
そこに多国籍企業がわらわらと寄ってたかって暴利をむさぼったものだから、
結局は途上国の土壌を荒廃させ、貧富の格差を招いて失敗した。
グリーン・レボリューションによる化学物質の多用は
現地で癌患者の多発を招いたそうな。植物の多様性も失われたそうな。
上記記事の著者Nair氏によると(Wikipediaによっても)
メキシコで品種改良が成功した後それをフィリピンに持っていったのは
ロックフェラー財団だったそうな。
ロックフェラーが50年前にやったことを
今度はゲイツ財団がインドでやろうとしている、とNair氏は言う。
もちろん50年間に科学とテクノは進歩したのだから、
今度の品種改良は遺伝子組み換え技術(GM)で作ったタネを使う。
どうやらゲイツ財団は既にアフリカでGM農業改革をやってきているらしい。
アフリカのグリーン・レボリューション同盟(AGRA)に2億6400万ドルを出しているし、
ゲイツ財団がケニアに提供している資金の8割はバイオテク研究に使われており、
08年にはその中の2~3割がGMタネの推進と開発に注ぎ込まれている。
だから、それを今度はアジアに広げていこうという腹積もりなのだろう。
なるほど、もう推進体制はガッチリ固められているのだな、と思われることに
米国の国際開発支援を担当するUSAID(US Aid for International Development)のトップは
インド生まれのアメリカ人で、なんと、元ゲイツ財団の職員だそうな。
08年にインドの首相が渡米して友好協定に調印した際には
農業改革キャンペーン”Knowledge Initiative in Agriculture”が関与しており、
そのトップは、前大統領のBushジュニア。
またインドの農業研究カウンシルの前のトップが
今やフィリピンのマニラで国際コメ研究所の所長に雇われている。
そこの方針や予算は米国主導の国際農業研究顧問グループ(CGIAR)が握っている。
つまり、
ゲイツ財団と米政府とでアジアの農業を好きなようにできる
政治的な環境整備がちゃ~んと出来ちゃっている、ということですね。
もちろん両者とも、ただの善意のわけないでしょー。
Nair氏の記事は後半では
ワクチン問題を中心にゲイツ財団とWHOの関係についても
当ブログが書いてきたことにぴったりと重なる鋭い指摘をしている。
ゲイツ財団がカネを通じて
国際機関や医療系の研究所に影響力を行使していることによって、
科学者から多様な意見が出なくなり、国際機関の方針決定のプロセスにも影響して
意思決定プロセスが閉鎖的なものとなって透明性を失っている、と。
今年1月、
平等な医療を訴える草の根団体 the People’s Health MomentがWHOに提出した要望書で、
イノベーションや知的財産権、国連のミレニアム・ゴールと同時に、
WHOの、ゲイツ財団を中心とした私的な財源への依存体質が問題視されているそうだ。
そうした依存がひいてはWHOの
薬物、診断技術その他のテクノロジーによる簡単解決への傾斜を招き、
健康に対する社会要因への対応資金は大きく削られることとなった
そして、ワクチン推進への巨大な勢力とも結びついていると、Hair氏は指摘する。
(これは、WHOだけに限ったことではないですね。
世界中をものすごい勢いで席巻していく「科学とテクノで簡単解決文化」そのもの。
同財団のゼニは世界中の科学研究機関にまるで体内を巡る血液のように浸透しているのだから。
社会的要因の軽視は Ashley事件にも、IHME の推進する DALY にも如実に表れています)
なにしろ、100億ドルを出して
「ワクチンの10年」を仕掛けているのはゲイツ財団。
しかし、ここでもゲイツ財団とビッグ・ファーマには妙な動きがあって、
ゲイツ財団が作らせ支援しているthe Advance Market Commitment(AMC)なる組織が
買い上げ、慈善と称して様々な国に届けているワクチンは
グラクソとかファイザーなどビッグ・ファーマの製品で、しかも
欧米市場で売れまくって既にコストが回収できたワクチンなのだという。
慈善の名目で、インドなどの政府は自己負担分を体よく吐きださせられているだけだ、と。
本当にインドのために慈善でやるのなら、
どうしてインド国内でワクチンが製造できるようにさせないのか、と。
(この点は、ゲイツ氏もこの前の訪印で開発や研究者を支援するとは言っていたけど、
仮にインドで開発されようと、ゲイツ財団のひも付きであることには変わらないし、
インドで研究者が育ったら、息のかかった先進国の研究機関に引き抜いていくんだろうし。
それに「ワクチンの10年」て、次々にテンポよく新手を繰り出していくことにウマミがあるわけだから、
新興国の開発技術が先進国のビッグ・ファーマに及ぶわけもないのは分かり切っているし、
むしろ開発技術よりも、その途上の実験場と、開発後のマーケットがほしいのがホンネ。
だからNair氏がいうようにインド国内で製造させたとしても、
問題の本質はもっと根深いところにある、と私は思うな)
ほらね――。
だから、やっぱ、私が睨んだ通り ↓
巨大ファーマがかつてのゼネコンなのだとしたら・・・・・・(2009/9/29)
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「次世代ワクチン・カンファ」の露骨(2010/5/28)
「必要を作り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
シアトルこども病院・ワシントン大学とゲイツ財団の密接な関係:グローバルな功利主義・優生主義医療の動き(2011/2/9)
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの(2011/3/9)
ゲイツ財団はやっぱりビッグ・ファーマの株主さん(2011/3/28)
2011.04.16 / Top↑
2008年段階のものですが、
以下の記事にゲイツ財団の保有株一覧があります。
Bill and Melinda Gates Foundation Holdings Outperforming S&P 500 Handily
Seeking Alpha, February 26, 2008
ざっと見で私にもわかるビッグ・ファーマだけでも、
Baxter
Pfizer
Eli Lilly
Johnson&Johnson
そして、やっぱり、ありましたね、
強引な子宮頸がん(HIV)ワクチン売り込みで反発を買ってライバルに負けたけど、
その後、CDCの前センター長をワクチン部門の責任者に天下りさせて
このところゲイツ財団が力を入れている5価ワクチンPentvalentで盛り返そうとしている、
Merck。
他に、ちょっと目を引かれたところでは、
いわゆる「革新的な医療」を目指している分野として、
Seattle Genetics
Abbott Labs
それから、なんとなく象牙海岸の悲劇を連想してしまう、
廃棄物処理会社Waste Management。
さらに、
前に指摘したコークのほかに、
なにかとグローバル・ネオリベ経済の象徴的なWal-Mart。
それに、これは、あくまでもゲイツ財団の方の保有株の話。
ビル・ゲイツ氏個人はCascadeという投資会社を通じて
財団とは別途、投資をしておられるわけで、もちろん、
そこは奥様をはじめ、ご一族の皆々様も……。
【関連エントリー】
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
シアトルこども病院・ワシントン大学とゲイツ財団の密接な関係:グローバルな功利主義・優生主義医療の動き(2011/2/9)
以下の記事にゲイツ財団の保有株一覧があります。
Bill and Melinda Gates Foundation Holdings Outperforming S&P 500 Handily
Seeking Alpha, February 26, 2008
ざっと見で私にもわかるビッグ・ファーマだけでも、
Baxter
Pfizer
Eli Lilly
Johnson&Johnson
そして、やっぱり、ありましたね、
強引な子宮頸がん(HIV)ワクチン売り込みで反発を買ってライバルに負けたけど、
その後、CDCの前センター長をワクチン部門の責任者に天下りさせて
このところゲイツ財団が力を入れている5価ワクチンPentvalentで盛り返そうとしている、
Merck。
他に、ちょっと目を引かれたところでは、
いわゆる「革新的な医療」を目指している分野として、
Seattle Genetics
Abbott Labs
それから、なんとなく象牙海岸の悲劇を連想してしまう、
廃棄物処理会社Waste Management。
さらに、
前に指摘したコークのほかに、
なにかとグローバル・ネオリベ経済の象徴的なWal-Mart。
それに、これは、あくまでもゲイツ財団の方の保有株の話。
ビル・ゲイツ氏個人はCascadeという投資会社を通じて
財団とは別途、投資をしておられるわけで、もちろん、
そこは奥様をはじめ、ご一族の皆々様も……。
【関連エントリー】
リスクの“リ”の字もなく“黄金時代”に沸くワクチン開発記事(2009/11/19)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
「米国のワクチン不信と、そこから見えてくるもの」を書きました(2010/7/5)
ゲイツ財団のメディア・コントロール(2010/10/21)
シアトルこども病院・ワシントン大学とゲイツ財団の密接な関係:グローバルな功利主義・優生主義医療の動き(2011/2/9)
2011.03.28 / Top↑
2月から3月の頭にかけて、
ゲイツ財団とビル・ゲイツの年次報告書や今後の方針が相次いで発表され、
同時に財団やゲイツ氏のポートフォリオが公開されて
あちこちで話題になっていた。
私は経済に全く疎いので、
読んでもさっぱり分からないことの方が多いのだけれど、
そうした記事の中に、いくつか興味を引かれた個所があった。
まず、以下の記事で書かれていることとして、
「Bill Gatesといえば、マイクロソフト創設で富を得て資産を増やしてきた人というイメージだが、
実際には彼はCascadeという投資会社をもつ投資家であり、その投資を通じて資産を増やしてきたのだ」
A peek inside billionaire portfolios
The Globe and Mail, March 3, 2011
実はその数日前の夕食時に、以下の記事から、
私はこんなことを話題にしていた。
「ねー、ゲイツ財団が去年コカコーラとマクドナルドの株をごっそり買ったんだってさぁ。
なんで今さらコークとマックなんだろうね。コークなんか飲んでいる人、今そんなにいる?」
もちろん夫婦のいずれも経済オンチなので、話はそれだけで終わった。
Bill & Melinda Gates Foundation Buys FMS, KO, ECL, FDX, MCD, WM, XOM, WMT, TV; Sells GS, DVN, COG, RRC
Gurufocus.com, February 15, 2011
そうしたら、不思議なもので、
たまたま今ちょっとずつ読んでいる本の中から、
全くの偶然に、その疑問の答えが飛び出してきた。
生きていると、時々こんなふうに、
誰かが空の上で見ているのかしらん……と思いたくなるような、
「あたかも仕組まれたかのような偶然、まるで必然のような偶然」が
どこからか降って落ちてくるから不思議――。
で、その本とは、これ ↓
The Body Hunters: Testing New Drugs on the World’s Poorest Patients
Sonia Shah
The New Press, 2006
ごく大雑把な内容は、
欧米先進国で製薬会社に対する不信が高まり、
募っても治験に参加してくれる人がいなくなった。
それでも新薬への期待もマーケットも大きい。
そこでビッグ・ファーマがこぞって貧しい途上国に治験の場を移し、
医療アクセスの不備と貧困とで治療を受けられない病人の弱みに付け込んで、
世界で最も貧しい人たちをモルモット代わりに使っている。
先進国でならあり得ないような非人道的なやり方で。
そのための各種規制緩和がどのように行われたか、
推進サイドと批判サイドから、それぞれどのような声が出ているか、
ここ数年の医学論文のデータや議論を丁寧に引きながら、
その実態を克明に描いている。
いちいち驚愕の内容だけど、私はまだ最初の方しか読んでいない。
もちろんゲイツ財団やゲイツ氏について書かれたものではないし、今のところ言及すらもない。
そんな本の中で、
たまたま上記のようなポートフォリオ情報に触れた直後だった私を
いきなり金縛りにあわせた個所とは、以下のくだり。
先進国のビッグ・ファーマが治験の舞台を途上国に求めたことは
現地の医療制度を崩壊させているのだけれど、その一方で起こっていることは
1990年代に相次いだ規制緩和の国際貿易合意によって
新興マーケットと目されることになった途上国への
タバコ、ソフトドリンク、ファスト・フード多国籍企業の急速な進出。
コカコーラは貧困国の水の権利を買い占め、
コークを水よりも安く売ることで世界一の飲料に仕立てようと目論んでいる。
マクドナルドも世界中に店舗を日々続々と新規オープンしては
高脂肪・高カロリー食品を世界中にばらまいている。
今や日々オープンする新規店舗の5件に4件は米国外だという。
まさに「これぞグローバル強欲ひとでなし金融資本主義の真実!」というような話なんだけれども、
それだからこそ、
去年、コカコーラとマクドナルドに投資しようと考えた人が、
こうした企業のこうした戦略を知らないわけはない。
その戦略を知り「これは間違いなく儲かる」と踏むことから
その人の投資行動は生まれているはずだ。
先進国では子どもの肥満が社会問題となり、
その対策がしきりに取られている。
いかに肥満が各種病気を引き起こしているか、
研究データは毎日のように繰り出されてくる。
その反肥満キャンペーンの過激さは、
子どもの肥満に問題意識がない親が親権をはく奪される事件が起こるほどだ。
「科学とテクノで簡単解決文化」の背後の利権は、ここでもすばしこく、
ヤセ薬も次々に解禁されていく。
それほどの“不健康の代名詞”であるはずの肥満を途上国にばらまき、
貧しい人たちの健康をさらに害して利益を上げることに血道を上げる多国籍企業に、
その儲けを当て込んで投資する同じ人が、
一方では、
途上国の医療と栄養の不足という問題への対処を表看板に高く掲げて
貧しい人たちを救うために世界中の金持ちにゼニを出せ、とキャンペーンを張っている――。
彼はまた、自分がワクチンで救おうと呼びかけている途上国の人たちに
非人道的な新薬実験を行っているビッグ・ファーマの株主であったりもするらしい。
(HPVワクチンのメルク社の株主だという話をどこかで読みましたが、
この情報は、私自身はまだ直接に確認できてはいません)
――そんなふうに、ぐるりと金が回って繋がるカラクリのことを「慈善資本主義」と呼ぶ。
が、多くの場合、人はこのカラクリにまでは目が届かず、
そのため「資本主義」の部分が抜け、「慈善」だけで彼をたたえ、ほめそやす――。
そして、
そんなふうに高く見上げて手を叩いているうちに、
いつのまにか、ぐるぐる回って増えた彼のゼニは
世界中の研究機関に、メディアに、外交ルートに回り
人体を巡る血液のように世界の隅々にくまなく浸透していって
国家や国際機関に匹敵もしくはそれすら凌ぐほどの発言権、影響力を
一人の個人にもたらす結果を生み出している――。
それって、とても危険なことではないのでしょうか?
「愛と善意の人」という不動のイメージの陰に
一緒に潜んでいる人たちがいないわけもないと思うのだけれど。
ゲイツ財団とビル・ゲイツの年次報告書や今後の方針が相次いで発表され、
同時に財団やゲイツ氏のポートフォリオが公開されて
あちこちで話題になっていた。
私は経済に全く疎いので、
読んでもさっぱり分からないことの方が多いのだけれど、
そうした記事の中に、いくつか興味を引かれた個所があった。
まず、以下の記事で書かれていることとして、
「Bill Gatesといえば、マイクロソフト創設で富を得て資産を増やしてきた人というイメージだが、
実際には彼はCascadeという投資会社をもつ投資家であり、その投資を通じて資産を増やしてきたのだ」
A peek inside billionaire portfolios
The Globe and Mail, March 3, 2011
実はその数日前の夕食時に、以下の記事から、
私はこんなことを話題にしていた。
「ねー、ゲイツ財団が去年コカコーラとマクドナルドの株をごっそり買ったんだってさぁ。
なんで今さらコークとマックなんだろうね。コークなんか飲んでいる人、今そんなにいる?」
もちろん夫婦のいずれも経済オンチなので、話はそれだけで終わった。
Bill & Melinda Gates Foundation Buys FMS, KO, ECL, FDX, MCD, WM, XOM, WMT, TV; Sells GS, DVN, COG, RRC
Gurufocus.com, February 15, 2011
そうしたら、不思議なもので、
たまたま今ちょっとずつ読んでいる本の中から、
全くの偶然に、その疑問の答えが飛び出してきた。
生きていると、時々こんなふうに、
誰かが空の上で見ているのかしらん……と思いたくなるような、
「あたかも仕組まれたかのような偶然、まるで必然のような偶然」が
どこからか降って落ちてくるから不思議――。
で、その本とは、これ ↓
The Body Hunters: Testing New Drugs on the World’s Poorest Patients
Sonia Shah
The New Press, 2006
ごく大雑把な内容は、
欧米先進国で製薬会社に対する不信が高まり、
募っても治験に参加してくれる人がいなくなった。
それでも新薬への期待もマーケットも大きい。
そこでビッグ・ファーマがこぞって貧しい途上国に治験の場を移し、
医療アクセスの不備と貧困とで治療を受けられない病人の弱みに付け込んで、
世界で最も貧しい人たちをモルモット代わりに使っている。
先進国でならあり得ないような非人道的なやり方で。
そのための各種規制緩和がどのように行われたか、
推進サイドと批判サイドから、それぞれどのような声が出ているか、
ここ数年の医学論文のデータや議論を丁寧に引きながら、
その実態を克明に描いている。
いちいち驚愕の内容だけど、私はまだ最初の方しか読んでいない。
もちろんゲイツ財団やゲイツ氏について書かれたものではないし、今のところ言及すらもない。
そんな本の中で、
たまたま上記のようなポートフォリオ情報に触れた直後だった私を
いきなり金縛りにあわせた個所とは、以下のくだり。
Just as health care systems are being dismantled, multinational tobacco, soft drink, and fast-food companies have rushed into the emerging markets of the developing world, eased by international trade agreements forged throughout the 1990s……(略)………Coca-Cola aimed to become the number one beverage on the planet, buying up water licenses in poor countries where they could sell their nutritionally valueless drink for less than the price of a glass of clean water. McDonald’s spread its inexpensive, fatty, high-calorie foods across the globe, with four of its five new restaurants opened daily outside the United States.
(p.13)
先進国のビッグ・ファーマが治験の舞台を途上国に求めたことは
現地の医療制度を崩壊させているのだけれど、その一方で起こっていることは
1990年代に相次いだ規制緩和の国際貿易合意によって
新興マーケットと目されることになった途上国への
タバコ、ソフトドリンク、ファスト・フード多国籍企業の急速な進出。
コカコーラは貧困国の水の権利を買い占め、
コークを水よりも安く売ることで世界一の飲料に仕立てようと目論んでいる。
マクドナルドも世界中に店舗を日々続々と新規オープンしては
高脂肪・高カロリー食品を世界中にばらまいている。
今や日々オープンする新規店舗の5件に4件は米国外だという。
まさに「これぞグローバル強欲ひとでなし金融資本主義の真実!」というような話なんだけれども、
それだからこそ、
去年、コカコーラとマクドナルドに投資しようと考えた人が、
こうした企業のこうした戦略を知らないわけはない。
その戦略を知り「これは間違いなく儲かる」と踏むことから
その人の投資行動は生まれているはずだ。
先進国では子どもの肥満が社会問題となり、
その対策がしきりに取られている。
いかに肥満が各種病気を引き起こしているか、
研究データは毎日のように繰り出されてくる。
その反肥満キャンペーンの過激さは、
子どもの肥満に問題意識がない親が親権をはく奪される事件が起こるほどだ。
「科学とテクノで簡単解決文化」の背後の利権は、ここでもすばしこく、
ヤセ薬も次々に解禁されていく。
それほどの“不健康の代名詞”であるはずの肥満を途上国にばらまき、
貧しい人たちの健康をさらに害して利益を上げることに血道を上げる多国籍企業に、
その儲けを当て込んで投資する同じ人が、
一方では、
途上国の医療と栄養の不足という問題への対処を表看板に高く掲げて
貧しい人たちを救うために世界中の金持ちにゼニを出せ、とキャンペーンを張っている――。
彼はまた、自分がワクチンで救おうと呼びかけている途上国の人たちに
非人道的な新薬実験を行っているビッグ・ファーマの株主であったりもするらしい。
(HPVワクチンのメルク社の株主だという話をどこかで読みましたが、
この情報は、私自身はまだ直接に確認できてはいません)
――そんなふうに、ぐるりと金が回って繋がるカラクリのことを「慈善資本主義」と呼ぶ。
が、多くの場合、人はこのカラクリにまでは目が届かず、
そのため「資本主義」の部分が抜け、「慈善」だけで彼をたたえ、ほめそやす――。
そして、
そんなふうに高く見上げて手を叩いているうちに、
いつのまにか、ぐるぐる回って増えた彼のゼニは
世界中の研究機関に、メディアに、外交ルートに回り
人体を巡る血液のように世界の隅々にくまなく浸透していって
国家や国際機関に匹敵もしくはそれすら凌ぐほどの発言権、影響力を
一人の個人にもたらす結果を生み出している――。
それって、とても危険なことではないのでしょうか?
「愛と善意の人」という不動のイメージの陰に
一緒に潜んでいる人たちがいないわけもないと思うのだけれど。
2011.03.10 / Top↑