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「タイガー・マスク」を気取ってみたいのは
日本の人たちだけじゃなかったみたい。

08年にオプラ・ウィンフリーの番組 Big Give(寄付額を競う番組?)の優勝者となった
Stephen Paletta氏がその賞金で2010年に立ち上げた財団は、
その名もGive Back財団。

Give backとは、自分が稼いだお金を社会に還元すること。

で、この財団の活動目的は、
人々が気軽にgive backできるようお手伝いをすること。

その仕組みはネット上の、
GiveBack It's Your Foundation サイトにある。

このGive Backサイトに登録すると、
無料で自分の“財団”を作ることができ、
その“財団”の資金を自分の選んだチャリティに自由に寄付することができるだけでなく、

サイト内の賛同企業のショッピング・ページで買い物をすると、
代金の3%とか5%程度が購入者の“財団”にキャッシュバックされる。

もちろん、それら個々の“財団”は法律上のホンモノの財団ではない。
公式にはPaletta氏のGive Back財団の資金に組み込まれていて
実際には同財団に寄付され、個々の希望に応じて同財団が寄付行為を代行する仕組みらしい。

言ってみれば、Give Back財団が自分のところの大きな財布の中に
非公式に個々の寄付者ごとの“財団”という名前の小さい財布を作って
ちょっとしたビル・ゲイツ気分を演出してくれる、というもの。

年末にはそれぞれに税務署提出用の証明書も発行してくれる。


悪いことではないのかもしれないけど、
日本のあの「タイガー・マスク」運動に通じる、
なにか素直に受け止められない抵抗感を漠然と覚えて、
すっきりしないまま、ぐるぐるしている。

米国人中流階級や富裕層が、例えば医療制度改革に対して
「貧乏人の医療費をどうして我々が負担しなけりゃならんのだ?」
「そんなのは社会主義だっ」的な反発を露わにしたことを思うと、

Give Backでほたほたするより、いっそ機嫌良く税金を払えば?……と
しごく単純に考えちゃうのだけど、

同時に、でも
「自己決定」とか「個人の選択の自由」などの、もっともらしい立て看板の陰で、
案外にチンケなエゴで、それらの2つの現象は繋がっているんじゃないのかなぁ……という気もして、

どこがどうとはすぐに言葉で筋道立てて説明できないけど、
このGiveBackサイト、なんとなく、あのTea Party運動と、
どこかでビミョーに繋がっているものがある感じがするなぁ……と考えながら、

日本のタイガー・マスク運動について書かれたブログをぶらぶらしていたら、
面白い記事があった。

善意の特攻……タイガーマスク運動の本質
正しくも松枝日記 2011/1/27


Wikipediaのボランティアには違和感を感じないのに、
タイガー・マスク運動にはなぜ抵抗を覚えるのか、という辺りの考察に、
目からウロコ気分だった。

で、最後の数行のあたりを読みながら私の頭に浮かんだのは、

例えば、日本の介護保険で最近、
「公助」よりも「自助」「互助」「共助」がしきりに説かれたり
「地域で支える」と謳ってはサービス給付を削りながら
ボランティア育成・組織化が奨励されていたり、

英国のCameron党首が言っている「大きな社会」みたいなこととか、

総じて、国家という装置の崩壊とか、
それに必然的に伴う社会保障の機能不全、ということに頭が向かった。

すると、

そういうのをもたらしている大元はグローバルな強欲ネオリベ金融資本主義……
……ってところで頭に浮かんだのは、

今朝たまたま目にした、“慈善事業”の世界的権威、ゲイツ財団の
この4半期の収支報告書だかなんだかの情報。

http://www.gurufocus.com/news.php?id=122507
http://online.wsj.com/article/BT-CO-20110214-717391.html

ゴールドマン・サックスの50万株を売却した……とかなんとか……。

だから、慈善資本主義というのは、
結局は「ぐるりと回って繋がっている」ってことじゃないのかなぁ……みたいな……。

もちろん「ぐるりと回って繋がる」方の Give Back の背景にあるのは
決して「チンケなエゴ」なんてカワイゲのあるものじゃない……。
2011.02.16 / Top↑
9月17日の補遺で
Guardian紙に Global Development というコーナーが新設され、
そのコーナーがGates財団とのパートナーシップによるものだということについて
「小さな国家並みのお金を動かすことのできる一民間団体が
WHOと組み、Lancetと組み、いくつもの研究機関を私物化し、
またはその資金源となりパートナーとなり、またGuardianと組み……。
この状況に問題を感じる人がどうしてこんなに少ないんだろう?」と書いた。

9月24日の補遺では、
Bill Gatesと Warren Buffetが新興富裕層を事前に誘うべく中国に赴くというニュースに、
「世界中の超富裕層が手を結んでいくのは、
本当にみんなで拍手を送るようなことなんだろうか」と書いた。

そしたら、なんと、以下のブログ記事によると、

Bill Gates and Media Control
A New World Order Out or Chaos (News Page), October 17, 210


ゲイツ財団はGuardianだけではなくABCテレビとも、
グローバル・ヘルス関連プロジェクトでパートナーシップを組んだのだそうな。

つまり、これらプロジェクトを介してゲイツ財団から大手メディアにゼニが渡る、ということ。

ABCのプロジェクトは1年ものの企画で、
ABC側が450ドル、ゲイツ財団は150万ドルを出すとのこと。

Guardianは以前にも地球温暖化で独自にキャンペーンを張ったことがあって、
今回、国連のミレニアム開発目標(MDG)の達成に向けたキャンペーンとして、
似たような企画と見えなくもないけど、

これまでのキャンペーンでスポンサーがついたことはなかったし、
ニュースのセクションに位置づけられたこともなかった。
今回は堂々とニュース・セクションの中に置かれている。
これでは、ジャーナリズムとしてのキャンペーンなのか、
アドボカシーとしてのキャンペーンなのか区別がつかないだろう、と。

上記ブログは、どうやらコテコテの陰謀説のサイトのようだから
その点はちょっと要注意ではあるけれど、このポストに書かれていることは納得できる。

というか、この人がここで書いていることは、
当ブログがここ数年追いかけてきた情報にそのまま重なるし、
この人の懸念も当ブログが書いてきたことそのものだ。

もっとも、IHMEすなわちゲイツ財団がLancetと既に提携関係にあることには
この著者は、まだ気づいていない模様。

気付かないまま、Lancetの財団に関する発言のアヤシサを指摘している。
また、医療関係の情報筋として権威あるKaiser Family Foundationでも
既にゲイツ財団に関連した報道には偏向が見られることも指摘している。

Kaiser自体がもともと医療分野に大きな利権を持った財団だと私は思うので、
その辺りで偏向していないことを期待するのは最初から違うんじゃないかとは思う。

その証拠に5月に行われた母子保健に関するシンポは
LancetとIHMEが共催し、Kaiser Family Foundation にて開催。

その際、
批判を封じるために手の込んだ演出をしたIHMEのやり方があまりに汚かったので
このシンポには非難がゴウゴウだったとか。

The Economist誌からそのシンポに出席した記者は
同誌の記事で以下のように書いているとのこと。

As the old saying among bureaucrats goes, he who controls the numbers commands the power. With luck, that control is passing to people who are getting the numbers right.

官僚の間で昔から言われているように、数字を支配するものが権力を握る。願わくば、その支配が数字の捉え方を間違えることのない人間たちに渡らんことを。



このブログ記事の著者は、
当ブログと同じように、IHMEの資金源がゲイツ財団であることを指摘し、
その数字による支配・権力がなんのことはないゲイツ財団の手に渡っていく可能性を警告。

以下のように結論している。

Increasingly, the measurement and coverage of global health are funded by the Gates Foundation in a closing loop while, correspondingly, the capacity for objective assessment is shrinking.

グローバル・ヘルスに関する数値化にも報道にもゲイツ財団からの資金がどんどん膨らんでいる。

そうした連携の包囲網によって客観的なアセスメントが出来なくなりつつある。



GuardianがGates財団とのサイトの立ち上げについて出したプレス・リリースは以下。
The Guardian launches global development website with Gate Foundation


この中でニュース&メディア局の編集長は次のように語っている。

it is essential to have a place where some of the biggest questions facing humanity are analysed and debated, and through which we can monitor the effectiveness of the billions of pounds of aid that flows annually into the developing world.

人類が直面する最も大きな問題の一部を分析し議論するための場所が不可欠であり、そういう場所があることによって我々は毎年途上国へ流れ込んでいる巨額の援助の効率性をモニターすることができる。




つまり、今回のGuardianのグローバル・ヘルス・プロジェクトの目的は、
世界の病気や障害の「負担」を数値化し、
グローバル・ヘルス施策にコスト効率で見直し“黄金律”を作るというIHMEと
全く同じだということですね。

すなわち、

死亡率に障害も加えて医療データ見直す新基準DALYによって、
この障害のある生は障害のない生よりも○割引きで、というコスト効率で――。

「健康で5年しか生きられない」のと「重症障害者として15年生きる」では、どっちがいい?と
誰にも選べないことを、さも選べるかのように質問して、それを調査と称し
障害のある生は生きるに値しないと結論付けるためのエビデンスに
仕立て上げてしまおうと画策すること――?



【関連エントリー】
Lancet誌とIHMEのコラボとは?(2008/4/25)
Lancet誌に新プロジェクト IHMEとのコラボで(2008/7/1)
ゲイツ財団の私的研究機関が途上国への医療支援の財布を管理しようとしている?(2009/6/20)
ゲイツ財団の慈善ネオリベ医療グローバリズム賛歌(2009/6/20)
「障害者は健常者の8掛け、6掛け」と生存年数割引率を決めるQALY・DALY(2009/9/8)
2010.10.21 / Top↑
米国でこのところ続いている男児の性器の包皮切除の問題で、
またDiekema医師が喋っている。というか、今回は喋りまくっている。

コトの起こりは2006年には新生男児の56%が包皮切除をされていたのに
去年は3分の1を切ったという調査結果。

その結果自体に、保険で支払われなかった症例や
病院以外の宗教施設で行われた症例数が含まれていないとの指摘もあるのだが、

Diekemaは、いや、絶対に減っている、と大問題であるかのように言い、
ものすごい勢いで、その要因を挙げて、あちこちの責任を問いまくる。

曰く、
10年ほど前に小児科学会が包皮切除に曖昧なスタンスのガイドラインを出したものだから
医師が家族に話を持ちかける姿勢を変えてしまったのだろう、

あの妙に中立的なガイドラインのせいで
メディケイドの給付対象から外す州も出てきたし、
それを受けて保険会社が支払い対象から外す。
それで自腹を切ってまでは、と家族がとりやめているんだろう。

それに米国でヒスパニック系の人口が増加していることもある。
包皮切除の伝統がない人たちだから。


しかし、Diekemaが最も力を入れて批判しているのは
intactivistsと呼ばれる包皮切除反対活動家のこと。

inatctivistたちはパワフルな反対ロビーを続けていて、
その激しさは時にワクチン反対アドボケイトにも喩えられるほどだという。

で、Diekemaは、
なんといっても、こいつらのヤリクチが問題なのだ、と熱くなる。

「あの人たちの議論というのはほとんどが感情論ですよ。
包皮切除のことを“性器切断”だと言いつづけていることそのものが
医学的な利益があるとしても断固それを認めないという姿勢の表れです」

そして、今年2月には「利益もリスクも不透明」と言っていたはずの彼は、
ここへきて、利益は大きいと、主張するのです。

「性行為による感染症の感染リスクが、そこそこ、しっかり有意に下がっていますよ。
(なんとも奇怪な表現。fairly substantial, important reduction)

新生児では尿路感染も下がる可能性があります。
尿路感染は起こしたら新生児にとっては深刻な病気です。

アフリカでの少なくとも3つのしっかりしたランダム治験で
HIV感染がかなり減っています」

もちろん、最終的には家族が決めること。
ただ、医師は家族に利益とリスクをちゃんと知らせる役割がある。

それに「包皮切除のリスクは大きくなってからやるよりも
新生児期の方がずいぶん小さい」


――だから小児科学会の指針のように中立的なことを言わず
利益が大きいぞ、今やった方がリスクが小さいぞ、と誘導して、
家族に「やろう」という決断をさせろ、と彼は言っているわけですね。

Study: Circumcision Rates Falling Fast In U.S.
NPR, August 22, 2010


な~んか、“Ashley療法”を巡るDiekemaの喋り口調にそっくりだ。

障害者の権利アドボケイトは、これを身体切断だの人権侵害だのと主張し続けて、
それだけとってみても、成長抑制に医学的であれ社会的であれ利益があることなんか、
そんなの関係ないと彼らは思っているのは明らかで、お話しにならない、と。

それにしても、ワクチンに関しても
Diekemaはやらないという親は法的処罰の対象にしろとまで言っているし、
彼の牙城であるTruman Kats センターが生命倫理カンファを始めた時
その第一回目のテーマが、こともあろうにワクチン問題だった。

そして今度は包皮切除……。

必死で踊っていますね。
提灯ふりふり、ゲイツ音頭を。
白衣を着たポチが。



【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
2010.08.24 / Top↑
世界中の人たちが病気やけがや障害のインパクトをどのように受け止めているか調べようと
Washington大学のIHME(ゲイツ財団の私設WHOとも言われる)が
去年から世界のあちこちで調査を行っており、

IHMEとHarvard大、Johns Hopkins大、Queensland大、そしてWHOによる
Global Burden of Disease, Injuries and Risk Factors Study 2010の一環として、
現在インターネットでのアンケート調査を実施中。

責任者はIHMEの所長でDALYの考案者でもあるMurray医師と
Harvard 大の国際医療の助教授 Joshua Salomon医師の2人。

グローバル・ヘルスに莫大な資金が投入されている以上、
正確なデータが必要だ、として

例えば、以下のような質問に答えが求められている。

ここに2人の人がいます。一人は全く目が見えません。もう一人は絶え間のない強い腰痛に苦しんでいます。総じて言えばどちらの人が健康でしょう?

申し分のない健康状態で5年しか生きられないことと、重症障害を負って15年生きることのどちらかを選ぶとしたら、どちらがいいですか?



Institute for Health Metrics and Evaluation launches landmark survey to discover the impact of disease worldwide
W UNIVERSITY WEEK, August 19, 2010


今現在全く健康だからといって、この先5年間そのまま生きられると
誰かに保障してもらえる人間なんか、世界中どこにもいないし、

健康だろうが、持病があろうが、重症障害があろうが、
人がこの先何年生きるかなんて、見通すことのできる人もいない。

どっちがいいかという質問に答えることはできても、
その選択を実際に生きることのできる人はどこにもいない。

みんな、「今ここに生きている自分」を生きていくだけじゃないか。

じゃぁ――
大恋愛で結婚したら、思いがけない事故ですぐに死んでしまう人生と、
大恋愛で結婚したら、子ども3人のうちの1人がグレて一生苦労させられる人生と
大恋愛で結婚したら、何となくうまくいかなくなってズタズタに傷つけあって離婚する人生と、
大恋愛で結婚したら、自分が難病にかかって、相手の会社が倒産してしまう人生と、
大恋愛で結婚したら、きまぐれで始めたビジネスが大当たりして世界中を飛び回って暮らす人生と、
上記のうち、死ぬの以外がどこかで全部起きてしまう人生と、
どれがいいですか?

選ぶことができない性格のものを並べて
あたかもそれが選べる性格のものであるかのように選ばせ、
あまつさえ、その結果を何かの施策の参考データとして使おうというのは、
質問することそのものが、どこかいかがわしくはないだろうか。

それより――

あなたが脳卒中の後遺症で半身が不自由になったとします。
急性期はもちろん維持期まで個別計画にのっとったリハビリを受けられる国と、
急性期だけでさっさと打ち切りにされて、後は事実上見棄てられる国と、
どっちに住みたいですか――?


【関連エントリー】
慈善資本主義(2008/4/13)
世界の保健医療に「黄金律」作るとIHME(2008/4/22)
世界の病気・障害「負担」数値化へ(2008/4/25)
Lancet誌に新プロジェクト IHMEとのコラボで(2008/7/1)
ゲイツ氏、今度は世界の外交施策にも口を出すつもり?(2008/8/27)
世界中の研究機関に流れていくゲイツ財団のお金(2008/8/28)
ゲイツ財団の私的研究機関が途上国の医療支援の財布を管理しようとしている(2009/6/20)
ゲイツ財団の慈善ネオリベ医療グローバリズム賛歌(2009/6/20)
「これからはワクチンが儲かりまっせぇ」の陰には、やっぱりゲイツ財団が……(2009/11/20)
2010.08.21 / Top↑
山本有三の堕胎罪批判から考えたことのエントリーで
13日にもちょっと触れた以下の本。

「家族計画」への道 近代日本の生殖を巡る政治
荻野美穂 岩波書店 2008


研究者と呼ばれる方々がいかに地道にコツコツと研究を積み重ねれておられるものか
その情熱や緻密な仕事ぶりに圧倒されつつ、
知らないことだらけの内容を興味深く追いかけた。

日本でも避妊や中絶に対して多くの屈折があったことそのものが
無知な私には目からウロコで、

でも、そういえば子どもの頃の記憶として
母親が読んでいた女性雑誌には必ず綴じ込みページがあって、
そこには何やら秘密めいた匂いが閉じ込められているように
感じられたものだったし、

文字が読めるようになって斜めに覗いてみたら、
オギノ式とかペッサリーとかオーガズムとか体位という言葉などが目につくのを、
意味など分からないなりに「大人の秘め事」と受け止めたことなども、

なるほど、ちょうど、そういう情報が
日本の女性に向けてさかんに流され始めていた頃だったのだな、と
この本を読みながら納得したりもした。

本書の非常に豊富で骨太な内容を乱暴に一言でくくってしまうと、
著者が「おわりに」にまとめている以下の言葉の通り。

……人間の生殖とその管理は、個人やその家族、共同体、国家、さらには国際社会など、さまざまなレヴェルの「当事者」の利害が錯綜し、競合しあう場なのであり、その中で人々、とりわけ妊娠・出産の最も直接的な当事者である女たちは、そのときどきの時代的文脈と制約のもとで、権力や法や男による管理に対してあるときは無視や不服従で対抗し、自分たちの利益にかなうと判断したものに対しては進んで迎え入れたり自分に都合よく流用することによって、利害の調整をはかろうとしてきた。歴史は、こうしたさまざまなレヴェルでたえずくり返される利害衝突や交渉の軌跡が、幾重にも集積することを通して作られていくのである。
(p.307)




日本で子どもを産むことを巡って女性の選択権を初めて主張した人たちが
だんだんと優生思想を説くことになっていく下りを含めて、
細かい点についてもいろいろ印象的だったことはあるのだけど、
当ブログでこれまで拾った情報との関連で
1つだけ「うおぉ」と、つい身を乗り出した部分のみを、
とり急ぎ以下に。

日本は1950年代後半から60年代にかけて
高品質のコンドームの開発・製造で国際的に名をはせた。

先進国が日本のコンドームを買っては途上国に提供する……という図式があったことから
日本も国家として家族計画の国際協力に乗り出そうと考える。

そこでIPPF(国際家族計画連盟)の顧問ウイリアム・ドレーパーと
佐藤栄作首相を始め日本の官・政・財の有力者が相談のうえ、
岸本首相を会長に、家族計画国際協力財団(JOICFP)が発足した。

この時、ドレーパーと会って財団設立に5万ドルの資金を提供し、
その後もスポンサーとなったのは、日本船舶振興会会長の笹川良一であった。
(p.248)




この話、実は当ブログで去年拾った、90年代のペルーの強制不妊キャンペーンと繋がっている。

ペルー、フジモリ政権下で30万人の先住民女性に強制不妊手術(2009/4/9)


米国も国連も関与していただけでなく、
日本財団もこのキャンペーンに約200万ドルを支出していた。

その後、失脚し亡命したフジモリ元大統領を
当時の日本財団理事長だった曽野綾子氏がかくまったことは周知の事実。

元大統領と日本財団との繋がりとは、なるほど、
そういう長年の協力関係に基づいたものだったわけですね。

      ――――

それから、もう1つは、
ここ数カ月、以下のエントリーで追いかけてきた現在の動きとの関連で、

知的障害・貧困を理由にした強制的不妊手術は過去の話ではない(2010/3/23):G8での避妊・家族計画論争
ゲイツ財団資金で超音波による男性の避妊法を開発、途上国向け?(2010/5/12)
ゲイツ財団がインドのビハール州政府と「革新的な家族保健」の協力覚書(2010/5/17)
2010年5月29日の補遺:G8での途上国の母子保健関連記事。ここでも「家族計画」に言及。
ゲイツ財団が途上国の「家族計画、母子保健、栄養プログラム」に更に150億ドルを約束(2010/6/8)
「途上国の女性に安価な薬で簡単中絶“革命”を」の陰には、やっぱりゲイツ財団(2010/8/3)


先進国が技術と資金の提供を通じて
途上国の「家族計画援助」という名目で生殖管理に乗り出していくという構図は、

50年代、60年代から行われ90年代のペルーのキャンペーンに繋がった一連の動きと、
現在、母子保健の名目で途上国への中絶と家族計画の推進に乗り出そうとしている
ゲイツ財団を中心としたG8などの動きとに通じてはいないのだろうか。

なお、Bill Gatesの父親はかつて米国Planned Parenthood Federationの会長だったし、
現在も同連盟にはゲイツ財団から資金が提供されているものと思われる。

そして、Bill Gatesのいう「革新的な家族保健」や
Gates財団の資金で進んでいる超音波による男性の避妊法などを考えた時に、
ペルーで起こったことが現在のテクノロジーで繰り返されようとしている……
などという恐れは、本当にないのか……?



ちなみに、IPPF(International Planned Parenthood Federation)については日本語でこちらに。
2010.08.17 / Top↑