2ntブログ
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- / Top↑
(前のエントリーからの続きです)

Elective Ventilation について、Wilkinsonの主張のキモは
「自己決定権の侵害には当たらない。むしろ自己決定権の尊重である」との論旨。

彼の論理の展開は4段階で、

① EVもSQVもいずれも一部の患者の自己決定を侵害するので、
自己決定論では解決にならない。

EVは、臓器提供をしたくない患者、
また臓器提供のための生命維持をされたくない患者の自己決定を侵害する。

SQVは、臓器提供を望んでいて
自分の臓器を無駄にされたくない患者の自己決定を侵害する。

② 英国を含め多くの国でマジョリティが臓器提供を望んでいるとすれば
SQVの方でより多くの患者の自己決定が侵害されることになるのだから
EVを選ぶことによって、この議論は「民主的に解決」できる。

③ また、上記の侵害による影響の大きさも違う。

EVで自己決定権を侵害される患者は、意に反した人工呼吸をされるが
十分な沈静と沈痛を行われるのだし、大した期間でもないのだから
それによって失うものはないが、

SQVで自己決定を侵害される患者は、
一人で最大7人もの命を救うという有徳の行為の機会を逃し
貴重な臓器を無駄にされるのだから失うものがはるかに大きい。

④ 大切なことは本人に選択の機会を与えること。

(たとえばレストランで友達より先に到着して、
友達が頼むメニューが分かっていれば先に頼んでおくこともできるけど、
やっぱり電話をかけるか、本人が来るまで待ったりするように
大事なのは本人に選択の機会を与えること)

臓器を提供するか、しないかの選択は
本人にさせるべき重大なものであり、
医師が勝手に決められるものではないのだから、

それほど大事な選択の機会を保障するためのEVは
医師の判断で選択的に行われるべきではない。
必ず行われるデフォルトにすべきである。


言いたいことが山ほどあるような気がするのですが、
とりあえず言いたいことの糸があまりに沢山あって絡まり合っているので、
すぐにパパッと言葉になる2点についてのみ、以下に。

① 「無益な治療は一方的な医療サイドの判断で中止・差し控えるべきもの」との
患者の自己決定権を顧みない“無益な治療”論がここでの議論の前提となっている。

それは一方的なDNR指定を巡る問題として英国でも
また「無益な治療」法のあり方を巡って米国でも
まだ生命倫理の議論が行われているところであり、
Wilkinsonの議論は現状をさらに進めてしまったところからスタートしているのでは?

Wilkinson自身は、Savulescuと一緒に
「臓器提供安楽死」「人為的脳死後臓器提供」を提唱した(2010)他にも
これまで以下のようなことを主張してきているので、

Savulescuらが、今度はICUにおける一方的な「無益な治療」停止の正当化(2011/2/9)
「“生きるに値する命”でも“与えるに値する命”なら死なせてもOK」とSavulescuの相方が(2011/3/2)

自分たちとしては既に“無益な治療”の一方的停止はデフォルトだと考えている、
または、そう考えているフリをして、今だ議論の余地が残る問題を勝手に解決してしまい、
知らん顔でEVを巡る議論の前提として織り込むという、
かなり厚顔なことをやっているのでは?

ちょうどアシュリー事件のDiekemaやFostが
「重症児だからやってもいい」かどうかが議論における最大の論点でありながら
いくつかの論文を書いて正当化するうちに、いつのまにか
「重症児にしかやらないのだから構わない」と論点そのものを勝手に解決し
知らん顔で正当化の前提に織り込むという不誠実な手段を使っていたように?


② 一番ムカつくのは
「EVで自己決定権を侵害される患者は、意に反した人工呼吸をされるが
十分な沈静と沈痛を行われるのだし、大した期間でもないのだから
それによって失うものはない」とシレっと書いている点。

これは、2007年当時の「無益な治療」議論で
「無益な治療が本人に苦痛を強いている」との治療中止正当化に対して
「十分な沈静と沈痛で本人の苦痛はないし、大した期間でもないのだからコストも大きくはない」として
出て来ていた反論の典型ではないか。

その反論を押しのけて正当化してきたはずの
「無益な治療の一方的な中止または差し控え」の上に乗っかって
「患者にとっては明らかに“無益な”介入を臓器目的でのみ義務付けろ」と主張しつつ、
その論拠に、その土台そのものを否定する指摘を持ち出してくる……?

もしもWilkinsonが「終末期の患者の人工呼吸は
十分な沈静と沈痛が行われれば本人への害にはならない」と主張するのなら
いま一度“無益な治療”の一方的な停止・差し控えを巡る議論に立ち返るべきでは?


この人がSavulescuと書いた「臓器提供安楽死」論文については、↓

「生きた状態で臓器摘出する安楽死を」とSavulescuがBioethics誌で(2010/5/8)
Savulescuの「臓器提供安楽死」を読んでみた(2010/7/5)
「腎臓ペア交換」と「臓器提供安楽死」について書きました(2010/10/19)
臓器提供は安楽死の次には”無益な治療”論と繋がる……?(2010/5/9)
脳死者減少が必至なら倫理の線引き変更も必至?「人為的脳死後臓器提供安楽死」も?(2012/2/14)
2012.02.22 / Top↑
先週、英国医師会が提言した「選択的人工呼吸 elective ventilation EV」については
どうも去年の暮れにNICEも新しいガイドラインで認めていたようですが、
相次ぐ動きに、英国メディアでも論争となっているようです。

EVへの批判の中心は当たり前ながら
「患者の自己決定権」に反する、というものらしく、

Savulescuと一緒に「臓器提供安楽死」や「人為的脳死後臓器提供」を説いたWilkinsonが
Oxford大学の実践倫理ブログで、2つのエントリーを書き、この問題を論じています。

Back from the grave: Should we allow Elective Ventilation?
PRACTICAL ETHICS, U. of Oxford, February 13, 2012

Obligatory Ventilation: why Elective Ventilation should not be elective
PRACTICAL ETHICS, February 16, 2012


読んでみると、英国医師会の提言のニュースを読んだ際の印象とは
EVの内容が多少違うので(私には結局は同じに思えるけど)、その点も含めて。

まず、あらかじめ指摘しておきたいこととして、
英語圏の医療用語としてのelective とは、
患者に医療上の必要が差し迫っていない医療行為をいうので、
ここでは「患者本人に利益のない」介入であることがelectiveと称されているわけですが、
それ自体がまず、えらくご都合主義の言い換えだなぁ、という気がします。

Wilkinsonは、その字面の「選択的」の意味を利用して
2つ目のエントリーのタイトルを「選択的なものにすべきではない」としており、
それは「つまり義務付けよ」と主張しているわけです。

EVとは、NICEの定義するところによれば、

Elective Ventilation (EV): The provision or continuation of life-sustaining treatment for a patient who would otherwise be allowed to die, until such time as their wishes about organ donation (if they expressed any) can be determined.

選択的人工呼吸(EV):患者の臓器提供の希望を(意思表示があったとすれば)確認できるまでの間、他の状況下では死ぬのを許される状態の患者に生命維持治療を提供するまたは続行すること。

Wilkinsonによれば、その反対はSQV(Status Quo Ventilation)で、

Status Quo Ventilation (SQV): The discontinuation or non-provision of life-sustaining treatment for a patient as soon as it is genuinely believed that it provides no medical benefit, regardless of whether their wishes about organ donation are known.

現状?人工呼吸: 患者の臓器提供の意思が分かっているかいないかに関わらず、延命治療には医学上の利益がないと誠実に判断された場合には、人工呼吸を中止する、または差し控えること。


うぉぉ……と思うのは、
前者の「死ぬのを許される」という表現しかり、
後者のSQVですら“無益な治療”の一方的な停止が織り込まれている点で、
現行の医療現場で問題となっている生命倫理の議論よりも
先を行っているように思えるのだけれど、

それでもWilkinsonは
SQVを「無駄の多い人工呼吸 wasteful ventilation」と呼びたいという。
「無駄の多い」とは、もちろん「臓器を無駄にすることが多い」の意でしょう。

ともあれ、これまでSQVが前提だった現場に
今回の提言でEVが持ち込まれた場合に、
実際にはどのような違いが出てくるのか。

それを説明すべく最初のエントリーの冒頭で持ち出されているのは
脳内出血で倒れて、病院に運ばれた時にはすでに手の施しようがない
62歳のMaryさんの仮想ケース。

これまでなら
臨床的脳死には至っていないものの
利益は見込めないので外科手術の適用にはならず、
回復の見込みもないためICUでの集中治療の適用ともならない。

しかし、今回の提言でEVが導入されると

Maryさんは、ICUに運ばれ、
いくつものチューブが入れられ、人工呼吸器や血圧計がつけられて、
そのまま臓器提供に関する家族の意思確認が待たれることになる。

家族となかなか連絡が取れなかったり、決断に時間がかかったりしていると、
Maryさんはその間に脳死状態に陥る可能性もある。
脳死となれば、controlled circumstancesで集中治療は中止される。

(Controlled cicumstances とは、この場合、DCDのプロトコル下で
手術室へ運び摘出の直前まで上記の臓器保存目的の介入が続けられる、との意では)

一方、もし家族が提供を拒否すれば、ICUで生命維持は停止される。


ここまでを読んで、私がすごく気になるのは
Maryさんが脳死にならないまま家族が臓器提供を決断した場合には
その集中治療はどうなるのか、という点をWilkinsonが全く説明していないこと。

「本人にとっては無益」とされたはずの介入が
臓器提供の意思確認の為だけに開始されたわけだけれど、
意思を確認し目的を果たしたからといって、
その段階で停止されるだろうか?

行われている「意思確認目的の介入」は
臓器提供になる場合にはそのまま「臓器保存」の機能も果たしてきたことになるわけで、
ここへきて、意思確認という目的を果たしたからといって
わざわざ臓器の鮮度を下げるのがわかっていながら中止するとは思えない。

それならば家族が同意した臓器の種類にもよるかもしれないけれど、
「提供意思を尊重するために」脳死の場合と同じく
Controlled circumstancesにおいて中止されることになるのでは?

そうであるならば、
「臓器提供意思のある人からその機会を奪わないために」
「家族の意思確認のためのEV」とは、実際は
「臓器摘出の直前まで臓器の鮮度を保つこと」を目的としたもの、
ということになるのでは?



この後に続くWilkinsonの義務付け論の内容については
(次のエントリー)で。
2012.02.22 / Top↑
世界中でモンサントに対する訴訟が広がっている。歌手のウィリー・ネルソンさんも協力。
http://action.fooddemocracynow.org/sign/i_support_farmers_vs_monsanto/?akid=472.356219.trR1JU&rd=1&t=2
http://planetsave.com/2012/02/17/willie-nelson-300000-activists-sue-monsanto/

【モンサント関連エントリー】
ゲイツ財団がインドで目論んでいるのはワクチン普及だけでなくGM農業改革も(2011/4/16)
「アグリビジネス」の後ろにはワクチン推進と同じ構図が見える(2011/10/5)
“大型ハイテクGM強欲ひとでなし農業“を巡る、ゲイツ財団、モンサント、米国政府、AGRAの繋がり(2011/10/27)
TPP進める経済界のトップ、やっぱりぐるっと廻って“ゲイツつながり”(2011/10/27)
ビル・ゲイツがダボス会議で「途上国の医療・農業支援はケチるな」(2012/1/26)


慢性的な痛みの記憶だけを消す化学物質。「永遠に晴れの日ばかりピル」で痛みとはおさらばできる日が来るか?
http://blogs.scientificamerican.com/observations/2012/02/17/eternal-sunshine-drug-points-the-way-toward-counteracting-the-agony-of-chronic-pain/

イスラエルでできた「ドナーカード保持者優先ルール」の完全施行は今年らしい。
http://ehln.org/?p=22181

日本語。鳥インフル:全文公開を・・・悪用防止徹底が前提 WHO勧告:先週どこかで「アメリカは世界中の人口の大半を死滅させられるだけの鳥インフルに感染した動物を持っている」との非難を目にしたばかり。
http://mainichi.jp/select/world/news/20120218k0000e040147000c.html

日本語。「中国の臓器移植」2011年には腎臓・肝臓合わせて約5500件。米国に次ぎ世界第二の移植大国。昨年には臓器売買を刑法で犯罪として初めて規定。
http://www.jiji.com/jc/c?g=tha_30&k=2012022000261

日本語。“チベット族の数百人が拘束”:中国の「死刑囚からの臓器摘出」と言われているものの中には、チベット族弾圧がらみのものが含まれている。⇒政治犯から生きたまま臓器を摘出する「新疆プロトコル」(2011/12/13)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120218/k10013112811000.html

英国で、日常的に親や家族の介護を担っている子どもは患者に関する重大な情報を持っているのに、子どもだというだけで病院スタッフが相手にしないので、ヤング・ケアラーにケアラー・カードを発行して、意識変革を、と。:一方で、子どもに介護役割が期待されてしまったり、医療決定に関与する責任まで負わされるのではないか、と危惧。
http://www.thisisnottingham.co.uk/New-ID-cards-recognise-role-young-carers/story-15255090-detail/story.html

日本語。同性婚合法化法案を拒否 米ニュージャージー州知事。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/120218/amr12021813420011-n1.htm

シノドス・ジャーナル「障害者制度改革の重大な岐路 竹端寛」。:これまでの日本の障害者運動と、コイズミ改革前後辺りからの大きな流れが非常に分かりやすくて、頭が整理できた。
http://synodos.livedoor.biz/archives/1898730.html
2012.02.22 / Top↑
昨年2011年に国外からスイスに赴き
Dignitasで幇助を受けて自殺した人は144人で、
前年2010年から35%も増加。

スイスに在住の人のみを対象にしているExitでは
300人を超える自殺者に幇助。
257人だった前年2010年から17%の増加。

Exitで幇助を受けて自殺した人の多くはガン患者で、
平均年齢は76歳。

Dignitasでの2011年の自殺者の約3分の2は女性。

自殺する人全体で言えば男性が多いが、
幇助を受けて自殺する人の多くは女性である。

Assisted suicide numbers up in 2011
Swissinfo.ch, February 19, 2012

Dignitas assisted death rose 2011 report
Times Colonist, February 19, 2012


最後の自殺者総体には男性の方が多いが、
自殺幇助で死ぬのは女性の方が圧倒的に多いという情報に考え込む。

これまでも、女性が要介護状態になった場合に
男性よりも自殺幇助を望む方向に追い詰められやすいことについては
以下の2点を、以下にリンクしたエントリーなどで指摘してきた。

① 「ケアする者」の役割を背負わされている女性が「ケアを必要とする者」となった場合の
「家族に負担を負わせることへの恐れ」は男性以上に大きいという問題。

② 夫の介護には、支配―被支配の関係が妻の介護以上に入りがちであるという問題。

Cameron党首、自殺幇助合法化に反対を表明(2010/4/9)
シンガポールで末期がん女性が自殺幇助を希望(2010/5/12)
元クリケット選手「ALSの妻が一人で自殺したのは未整備の法のせい」(英)(2010/9/24)
妻の自殺幇助で逮捕されたITコンサル男性が「英国にもDignitasを」(2009/11/27)
女のエクスタシーと自殺幇助の関係性(2011/3/11)


「女のエクスタシーと自殺幇助の関係性」のエントリーでは以下のように書いた。
(この時の会話で使われたのが「エクスタシー」だったので、そのまま書いていますが、
実際に意味されていたのは「オーガズム」だったと思います)

エクスタシーなんて夢物語だ、セックスは妻としての退屈で苦痛なだけの義務だと
信じ込まされている女が1人もいなくなるまでは、

どうか、お願いだから、

「家族に(夫に)介護負担をかけたくないから」死にたいという望みに
「分かったよ。じゃぁ君の望みのままに」と思いやり深く応じて妻を死なせる夫を
免罪するような社会を作らないでください。


【Dignitas関連データ・エントリー】
Dignitasに登録の英国人800人(2009/6/1)
これまでにDignitasで自殺した英国人114人の病名リスト(2009/6/22)
Dignitasの内部をGuardianが独占取材(2009/11/19)
国別・Dignitasの幇助自殺者、登録会員数一覧(2010/3/1)
2012.02.22 / Top↑

今日はグループ活動にて「バレンタインのチョコ作り」をしました。

チョコ・カステラを型どって、クリームやチョコペンで飾り付けたのですが、
とても楽しそうに型抜いた後は、カステラを握って大喜び!! 

で、「クッキング」というよりは、まるで「工作」の製作のようでした。

出来上がった「作品」をお父さんにプレゼントしたかったのですが、
土曜日までは持ちそうにないため、紅茶と一緒に頂きました。




カステラを握って、大喜びぃぃぃ?

ありありと目に浮かぶ、
その既視感は……

ご、ごめんなさいっ。

実はこの子が幼い頃に、
スプーンがまだ自分でうまく使えなかったものだから、

誕生ケーキと言えば、大きなトレイに一切れのっけて、
好きなように手でこねくりまわしつつ食べる……

などということを
親がやらせてしまいましたっ……(汗)

思い出したのか、24歳になって?
2012.02.22 / Top↑
Savulescuと一緒に「臓器提供安楽死」「人為的脳死後臓器提供」を説いたWilkinsonが、英国医師会が提案した「選択的(臓器保存目的のみでの)人工呼吸」を道徳上、義務化せよ、と。:臓器提供安楽死はゼッタイに無益な治療論と繋がるって、ほら、spitzibaraの”予言”は当たったよ。こんなにも早く、とは思わなかったんだけど。
http://blog.practicalethics.ox.ac.uk/2012/02/obligatory-ventilation-why-elective-ventilation-should-not-be-elective/

1995年(以下のリンクの記事では1996年)に世界で初めて安楽死を合法化し、1年後に連邦政府によって無効となったオーストラリアのノーザン・テリトリーで、76歳の友人男性の自殺を幇助するため、メキシコで毒物を手に入れ持ちこんだたとしてMerin Nielsen(50)に有罪判決。実刑。Nielsenには借金があり、自殺したとされる男性の法定代理人として遺言による財産受け取り人となっていた。:自殺幇助には、こういう動機や、偽装が紛れ込むリスクがあることをもっと真剣に考えるべき。
http://www.news24.com/World/News/Man-jailed-for-assisting-in-suicide-20120216
http://www.abc.net.au/news/2012-02-16/man-jailed-over-assisted-suicide/3834112

【関連エントリー】
「やめておけ、豪の安楽死法は失敗だったぞ」と緩和ケア医がケベックの医師らに(2010/10/8)


米国で四肢まひの女性Christina Symanskiさんが四肢まひの性は生きるに値しないとして、餓死。死の直前までブログで自伝を書いていたらしい。無益な治療ブログのPopeは「胸をゆすぶられる」と。
http://medicalfutility.blogspot.com/2012/02/christina-symanski-quadriplegic-starves.html?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+MedicalFutilityBlog+%28Medical+Futility+Blog%29

またも英国で家族に断りもなく医師がDNR指定。そのために目の前で死にかけている患者を医師も看護師も何もせずに見ていた、として調査に。検死官が担当医に「あなたは目の前にいる患者に注意を払うことも治療することも怠った」。それでもトラストは医師の行為に問題はなかった、との認識。
http://medicalfutility.blogspot.com/2012/02/coroner-inquest-into-unilateral-dnar.html

【英国でこのところ問題となっている一方的DNR指定関連エントリー】
肺炎の脳性まひ男性に、家族に知らせずDNR指定(英)(2011/8/3)
「本人にも家族にも知らせず“蘇生無用”」はやめて一律のガイドライン作れ、と英国で訴訟(2011/9/15)
高齢者の入院時にカルテに「蘇生無用」ルーティーンで(英)(2011/10/18)
高齢者には食事介助も水分補給もナースコールもなし、カルテには家族も知らない「蘇生無用」……英国の医療(2011/11/14)


米国小児科学会が、男児の包皮切除には一定の効果のエビデンスがあるとして、ポジション・ステートメントトガイドラインを出して容認にスタンスを変更する予定。:先導しているのは、もちろん学会の包皮切除検討委員会委員長を務めるDiekema医師。
http://intactnews.org/node/143/1329335101/circumcision-task-force-member-tips-hand-what-aap-plans-baby-boys

【関連エントリー】
Gatesの一声で、男児包皮切除にエビデンスが出てくるわ、小児科学会もCDCも方針を転換するわ(2010/8/16)
包皮切除件数減少を反対運動のせいだと騒ぐDiekemaのポチ踊り(2010/8/23)
包皮切除でのDiekema発言でNPRラジオに抗議殺到(2010/9/14)
2011年5月20日の補遺


14日、15日と続けて補遺で拾ったように、このところワクチン拒否に対する小児科医の診療拒否問題がまたぞろしきりに報道されているのだけれど、興味深いことに、その一方で、思想信条を理由に学校での強制接種を辞退することを認める州法を作る動きが広がっている。前者の記事に必ず登場しては「拒否するより丁寧な説明と説得を」と言うDiekemaが、こちらでは「ワクチン拒否に懸念を表明する小児科医が増えてきました。賛同者も増えています」と、ちょっとばかりトーンを違えている。:……もしかして、前者の報道がここへきて増えているのは、後者に対する牽制か??
http://www.usatoday.com/news/health/story/2012-02-15/Some-states-weigh-opt-out-laws-for-mandatory-immunizations/53110858/1

ビッグ・ファーマのノバルティスが2007年にインドでジェネリック薬を製造している会社をターゲットに起こした訴訟に、国境なき医師団(MSF)が批判キャンペーンを張っている。「MSFと一緒になって、利益よりも患者が大事だとノバルティスに訴えよう」「ノバルティスよ、世界中が見えているぞ」。:これ読んで真っ先に頭に浮かんだのは「訴訟によって商売の邪魔になる存在を強引に排除していくヤリクチは、モンサントにそっくり」。そういえばゲイツ財団はモンサントとパートナー。ノバルティスの役員も引き抜いたばかり。
http://www.msfaccess.org/STOPnovartis/
http://www.msfaccess.org/content/novartis-case-pictures

【関連エントリー】
ジェネリック薬を売らせないビッグ・ファーマの「あの手この手」が医療費に上乗せられていく(2011/11/15)
ゲイツ財団、ビッグ・ファーマ・ノバルティス役員の引き抜きへ(2011/9/12)
ちなみに、そのノバルティス役員の前任者タチ・ヤマダ氏は去年5月にゲイツ財団から日本の武田製薬に。その山田氏の周辺でどういうことが起こっているかは去年9月のLancetの日本特集から覗き見ることができる。


英国の障害者の就労年金省(?)から出た障害者支援プランに、障害者に無報酬で働き続けるか年金カットかの選択を迫るものだとして、障害者らが反発。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/feb/16/disabled-unpaid-work-benefit-cuts?CMP=EMCNEWEML1355

日本語。韓国で7歳の子供に「7つの臓器を同時移植」
http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2012021732528

東亜日報 日本語 【重慶亡命事件】臓器狩りの真相が明らかになるか
http://www.epochtimes.jp/jp/2012/02/html/d48463.html

【関連エントリー】
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(前)(2011/10/12)
A・Caplanが、死刑囚の臓器に依存する中国の移植医療ボイコットを呼びかけ(後)(2011/10/12)
「囚人を臓器ドナーに」は実施面からも倫理面からもダメ、とCaplan論文(2011/10/14)
政治犯から生きたまま臓器を摘出する「新疆プロトコル」(2011/12/13)

中立的な表情の人を見た時の脳画像など、ごくわずかな情報から不安神経症や気分障害のリスクの高い子どもを特定できるコンピューター・プログラムを開発中の科学者らが、精度が上がれば早期発見早期介入につなげられる、と。:これは国家にとって不幸になってもらったら困る人(例えば被災者とか失業者とか貧困層とか?)のマインドコントロールにも使える、とか?
http://old.news.yahoo.com/s/livescience/20120215/sc_livescience/computerprogramidsteensatriskofmentalillness

日本の介護保険 24時間訪問介護 4月実施は13か所
http://www.news24.jp/articles/2012/02/13/07199997.html
2012.02.22 / Top↑
いただきもの情報の、2月12日の中国新聞
「よろず相談室」コーナーがあまりに面白いので。

相談の内容は、55歳の男性から以下のもの。

近くで一人暮らしをしている78歳の母が病気で倒れ、食事や入浴などに介助が必要となりました。長男の私が最期まで面倒をみるべきだと思いますが仕事があります。母と不仲な専業主婦の妻は「自分でみるか、施設に入れて」と譲りません。


これに、74件の回答が寄せられたとのこと。
紙面で紹介されているのは6回答で、1つだけが男性からのもの。

簡単にそれぞれの要旨と年齢を並べると、

・その古くさい考えと思いやりの無さが、妻と母との不仲の原因では。(無職 73歳)
・家族だけで抱え込むより介護サービスを利用して。それは介護放棄ではないから。(介護士 38歳)
・仕事に逃げて妻に押しつけようとしている。私の夫も嫁しゅうと問題でそうだった。妻の気持ちを理解する姿勢で解決を。(会社員 41歳)
・嫌がる妻に無理に介護させても母が不快なだけ。母を思うなら施設利用を。(自営業男性 34歳)
・自分の世代では嫁の介護が当たり前で、ひどい仕打ちを受けつつ尽くしたが最後に感謝してもらって苦労が消えた。介護は妻と母親が仲直りするチャンス。(主婦 80歳)
・妻は介護士ではない。どうしても妻にやらせて自分は仕事に行くなら、母親の老後資金から妻に対価を支払うべき。(主婦 29歳)


ここまで読んで、パパッと頭に浮かんだ感想は、

・ただ一人「施設へ」と回答しているのは男性だということ。

・その男性の回答意図は
「嫌がる妻に無理にやらせるよりは、母のために施設へ」であり、
「専業主婦なのだから本来なら妻がやって当たり前」と
「妻が快くやってくれるなら、それでよいが」が前提され、
「嫌がる妻に無理にやらせることも選択肢ではあるが」も前提されている。

・質問者の妻が提示した選択肢は
「息子である夫自身が介護する」と「施設に入れる」のはずなのだけれど、

回答した男性の念頭にある選択肢は
「快くであれ渋々であれ妻にやらせる」と「施設を利用する」2つであって、
「息子である男性自身が介護する」という選択肢はなぜか消えてしまう。

というか、息子が自分で介護するという選択肢をなきものとするために
施設利用という解が持ち出されているのだけど、

「母親自身のための施設利用」と言い換え、
施設利用という決断の原因・理由を妻に、決断の利益を母親に転嫁することで、
夫であり息子である自分は2重に免罪されている。



・女性の回答は、それぞれに
自分の個人的な体験が生々しく反映しているなぁ、ということ。

・質問者の男性にとっては介護の方策の問題でしかないことが、
回答者の女性には、夫婦間の関係性や嫁・姑の関係性の中で受け止められていること。

・姑と不仲で介護は嫌だと言っている女性に、
「介護は姑と仲直りする絶好のチャンス」と押し付けるのも女性……。
こういう人が「私は姑のウンコを素手で受けてきた」と胸を張ったりするのかもなぁ。

・かといって、妻にカネを払えばいいという問題でもないと思うけど、
若い人たちはもうこのくらい割り切れているのだろうか。
母親の老後資金から払え、というのも、ちょっとついていけない。

・それにしても、質問者はもちろん、回答者の誰も
この母親本人は何を望んでいるのか、をまったく問題にしないのね……。

――と思ったら、さすがに心理カウンセラーのアドバイスには含まれていました。

介護の問題は、一人ひとりの生き方や人間関係を反映します。
相談者はまず、母と不仲な妻をこれまでどう支えてきたのか、夫としての自分を振り返るとよいでしょう。妻の「NO」は、単に義母や介護に対してではなく、かねてのつらさを受け止めてくれない夫に愛想を尽かして言っているのかもしれません。
今は介護保険は介護休業などの制度も利用できます。どうしても自宅で妻に介護を頼む必要があるなら、「やって当たり前」ではなく、妻を説得して味方につける努力や工夫が必要です。
社会的な支援をどこまで使い、どこまで家族で対応したいか。仕事を持つ自分には何ができるのか。自分の希望や覚悟を明確にし、誠意を持って妻に伝えましょう。母親の気持ちも忘れてはなりません。誰に介護してほしいか、本人に効くべきです。
妻や親とのこれまでの関係がよくなければ、簡単に結果は出ないでしょう。ですが、ここで真剣に向き合えば、夫婦関係や家族関係を変える好機にもなりますよ。


つまり、介護は家族の問題の一つであり、
家族の問題そのものから「男であることを盾にとって逃げるな」と言っておられるのですね。御意。

具体的な問題については
現実対応と、本人尊重というのは、どちらも的確なアドバイスと思う。

ただ、現実問題、こういう状況で本人の気持ちのありかって、往々にして
「介護も介助もいらない。私はまだ大丈夫」だったりするから
家族にとっては悩ましい、というものじゃないのかなぁ。

そうすると、こういう質問をする男性は
妻にも対応しなければならん、並行して母親にも対応しなければならん、わけで、
そういう手間なことを辛抱強くできるような男なら、
最初からこんな質問をしなければならん状況にはおかれない……とすれば、

結局は心理カウンセラーが指摘する原点に戻るのかも?



それにしても、
次回に向けて回答募集されている相談は40歳男性の

「妻が中年太りをしてきた。妻には綺麗でいてほしい。
本人を傷つけずに痩せてほしいと伝えるには?」

「よろず相談室」の担当者さんに少々問題があるのか、
それとも本当に世の中の男性ってな、この程度なんでしょーか?

私の周りの男性は、もうちょっと平均値が高いように思うんですけど。
2012.02.22 / Top↑
「新小児科医のつぶやき」ブログの2月13日のエントリー「ドクター・キリコへの需要」は、重症児・者の関係者必読です。「有床診療所がNICUあがりの重症児を入院させたら入院日に200点加算」と同時に、こちらは有床診療所にも重症児にも限らないけれど「入院から30日以内に看取った場合に」も加算。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20120213

日本弁護士連合会から「障害者自立支援法の確実な廃止を求める会長声明」
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2012/120215_2.html


Hilde Lindermannのインタビュー。No Ethics Without Feminism.:Lindermannといえば、シアトルこども病院が立ち上げた成長抑制WGのメンバーの一人。また、「育てるのが女性なのだから障害児の選別的中絶の決定権も女性にある」と主張してDreggerと論争していたのが忘れられない人。とても長い記事なのだけれど、Ouelletteも引用していたことだし、いつか読みたい。
http://www.3ammagazine.com/3am/no-ethics-without-feminism/

【Lindermann関連エントリー】
ケア負担になう母親に中絶の選択権?(2007/11/9)
「選別的中絶」というより「選別的子育て」(2007/11/11)


昨日に引き続き、WSJもワクチン拒否の親に対する診療拒否問題を取り上げている。:記事は読んでいないけど、どうせまたDiekemaが出て来ているんだろうと思う。ワクチン拒否の親というと非科学的な「自閉症のワクチン水銀犯人説」に踊らされている信奉者だと今だに解説されるけれど、今の親のワクチンへの不信はむしろビッグ・ファーマと医療界や行政との癒着の問題由来なんでは? それをいつまで経ってもWakefield論文のせいだということにしておきたい人たちがいるんじゃないのか、という気がしないでもない。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203315804577209230884246636.html

ベトナムで、後継ぎの男児を産めないために義母や夫らから離縁されそうに気配を感じた36歳の女性が、生殖補助医療で辰年の男児を。
http://www.geneticsandsociety.org/article.php?id=6071

インドの生殖補助医療が、60代の夫婦にも行ったり、貧しい女性に代理母をやらせたり、未認可の薬を処方したり、インドからも母親の国からも国籍を取れない子どもを産ませたりと、どうにも行き過ぎ状態なので、政府もようやく法規制に乗り出す?
http://www.geneticsandsociety.org/article.php?id=6072

日本語サイトの写真集。「劣悪な環境の中、イタリアの道端で働くナイジェリア人売春婦たち」。
http://dailynewsagency.com/2012/02/13/the_life_of_nigerian_sex_workers_in_italy/

【ナイジェリア関連エントリー】
ナイジェリアの子どもたちの悲惨(2007/12/14)
ファイザー製薬ナイジェリアの子どもに違法な治験、11人が死亡(2009/2/1)
ナイジェリアの“赤ちゃん工場”摘発(2011/6/2)
2012年1月17日の補遺:そんなナイジェリアでビル・ゲイツはワクチン接種へと、せっせと政府の尻を叩く。


Save the Childrenによると、毎年、栄養不良から260万人の子どもが死んでいる。そこで英国政府はロンドン・オリンピックに合わせて世界飢餓サミットの開催を、と。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2012/feb/15/life-free-from-hunger-save-the-children?CMP=EMCNEWEML1355

バングラデシュの子ども達が栄養不良で成長を阻害されていることに対して、英国政府が支援を約束。:こういう運動が、GM農業改革とか栄養強化したバナナみたいな慈善だかショーバイだかよく分からない話に繋がっていくことなく、真っすぐに子ども達への支援に繋がりますように。
http://www.guardian.co.uk/global-development/2012/feb/15/bangladesh-child-malnutrition-stunted-growth?intcmp=239

内田樹「日本辺境論」:日本人のメンタリティは「世界標準準拠主義」。だから「何かの理由で、挙国一致的な努力が要される時は、「世間の常識を知らない田舎者のままでいいのか」「世界標準からこんなに遅れているぞ」とという言い方が採用される。必ず採用される。」

で、これから「お手本の国のウソ」を読む。ちょっとでき過ぎの順番だけど、たまたま図書館で相次いで目についたものだから。
2012.02.22 / Top↑
の話、基本的には、

権威ある生命倫理学の学術雑誌the American Journal of Bioethicsの
創設者・編集長であり、いわばオーナーでもあるGlenn McGeeが
テキサスに本拠を置く幹細胞バンク企業 Celltexに職を得て、
AJOBの編集長の座を妻に譲り渡して、シレッとしているとして、
幹細胞研究を学問的に検討すべき立場にあるジャーナルのトップが
当の企業に身売りするとは何事か、との批判が噴出し、

また編集長の交代について
そうそうたるメンバー36人からなる編集委員会は事前に知らなかったとて、
ミネソタ大のLeigh Turnerを中心に、ツイッターで
編集委員の総辞任を求める声が渦巻いている、というもの。

これ自体が、米国の生命倫理学の信ぴょう性を揺るがす大スキャンダルなのだろうけど、
以下の記事を読むと、そこにはさらなるスキャンダルがいっぱいくっついていることに、改めて驚く。

しかも、情報をたどっていくと、
いきなり日本の科学とテクノの利権がらみの事情まで登場してくるとあって、
なんともコワい、諸々の“金魚のウンコ”的つながりっぷり――。


AJOBは、McGeeがペンシルバニア大に在職中の1999年に創刊。

ただし、McGeeは
AJOBとタイアップさせたウェブ・サイトを営利目的のサイドビジネスにしており、

05年に the Alden March Bioethics Instituteへ、
またその3年後にはカンザスの the Center for Practical Bioethicsへ移籍した際にも
AJOBと営利目的のウェブ・サイトを移籍先の機関へ持っていったものだから、
「生命倫理学を商業化している 」との批判を浴びた。

その時のいきさつは、以下のScientific American に詳しいとのこと ↓
http://www.scientificamerican.com/article.cfm?id=glenn-mcgee

(私はA事件の関連でSAこそ利権との関係がアヤシイと思っているけど)

ただ、これまでは、そうはいっても
一応は生命倫理の研究機関への移籍だったけれど、
今度は生命倫理学が検証の対象とすべき幹細胞企業への身売りとあって、
これまでとはまた話が違う、と非難ごうごうとなっている、というわけ。

さらに、身売り先のCelltexという企業がまたスキャンダルにまみれている。
テキサスで唯一の成人幹細胞バンクという謳い文句のこの会社、
韓国の企業RNLBioと組んで、FDAがまだ認可していない治療をやろうとしている。

それにはテキサスの新しい州法が隠れ蓑に使われるらしいのだけど、

それに先立つ去年の夏、これらの2社は
腰痛に悩むテキサス州知事に、この療法をやってあげたんだそうな。

喜んだRick Perry知事は、
自分の主治医がオーナーの一人であるCelltexをテキサス州で初めて認可し、
友人・知人はもちろん政治的恩義のある筋にもこの治療が受けられるように
新しい州法の法案をせっせと後押しした……という噂。

詳細はこちらのMSNBCの記事(2008)に ↓
http://www.msnbc.msn.com/id/44291973/ns/politics-decision_2012/t/rick-perry-pushed-bill-could-benefit-stem-cell-doctors-firm/#.TzsVGlGwByJ


……となれば容易に想像されるように、
上記のAJOBとタイアップしているMcGeeの有料サイトにも
The Texas Association for Stem Cell Ethics and Policyなるページがお目見えした。
もちろん、現在は削除されている。

そんな事情を経て、このたび、いよいよCelltexに天下っていくのに
立場上まずいからって、こっそりと編集長の座を妻に譲った。
妻に譲ればいいというものじゃないだろう、とツイッターで大騒ぎに。

現在のAJOBの編集委員リストはこちら ↓
http://www.tandf.co.uk/journals/journal.asp?issn=1526-5161&linktype=145

(あのスタンフォード大のDavid Magnusが、
Mcgee夫人ともう一人の現編集長なんですね)

Unethical Bioethichists?
Biopolitical Times, February 10, 2012


CellTexの相方のRNLBioという韓国の企業が、これまた胡散臭くて、
犬のクローンを作ったことで「恐らくは最も悪名高い」会社であり、
さらには患者が2人、ここの幹細胞治療で死んでいる……

という話があったので、
上記記事のリンクをたどってみたところ、
びっくりしたなぁ、もう。

なんと、なんと、死亡した患者の1人は
RNLBioの提携先の東京のクリニックで治療を受けた73歳の患者だと。

1年間の医療ツーリズムの契約をRNLBioと交わし、
その契約に基づいて東京にやってきて提携先のクリニックで治療を受けて
肺塞栓を起こして2010年9月30日に死亡。

もう一人は中国でやった患者とのこと。

この件に関する詳細(英語)は以下に ↓
http://sctmonitor.blogspot.com/2010/11/rnl-bio-outsourcing-malpractice.html
http://english.donga.com/srv/service.php3?bicode=040000&biid=2010102313878

そこで日本語で検索してみたら、

① JHM: 再生医療 臨床応用に新たな制度作り着手(2011/8/1)
http://www.e-jhm.jp/modules/jhm/index.php?page=article&storyid=729

しかし、なぜか、ここでは
一人は日本のクリニックで治療を受けた事実には言及されていません。

ちなみに、この記事で言及されている米国での脊損治療実験は
昨年11月に突然中止されています ↓

米国初のヒト胚幹細胞による脊損治療実験、突然の中止(2011/11/17)


② RNLBioの患者さんの死亡については、読売新聞が11月15日にこの事件を報道した模様で、
私も時々覗かせてもらっている「新小児科医のつぶやき」ブログが
詳細に調べてくださっていました。

同ブログの2011年11月19日のエントリー「なんとなく怪しげな…」によると、

このクリニックは京都のベテスダ・クリニック。開院は2010年5月。

ただし、この段階で、クリニックのHPは存在するものの、
2011年5月に税金滞納で不動産が差し押さえられており、事実上閉院している。

しかし、このクリニックを巡る新小児科医さんのリサーチは徹底していて
ここからさらに怪しげな話になっていくのです。

ホテルオークラでの開院式。
京セラの稲盛会長や前原誠二氏、京都の副市長ばかりか
国交省、官公庁のお役人までがご出席。

「富裕層観光」「今話題の最先端の医療技術」
「アトピー、リュウマチ、糖尿病、ガンなどの治療を……」
「韓国で行うと違法なので、日本にクリニックを作ったらしいです」
「目標は2010年に1万人、2011年には10万人」などなど。

詳細は、上記、新小児科医さんのブログで、ぜひ。


……この日本の話を、上のAJOBのスキャンダルと繋げて考えると、
やっぱり世界はspitzibaraが想像してきた通りではないか、と改めて確認する思い。

もともと私はAshley事件に関して
AJOBもJAMAもヘースティング・センターも、
あんな非論理的で論文として体をなしていないようなものを
よく掲載するよなぁ……と、不思議かつ眉ツバだった。

やっぱりアシュリー事件は改めて、縮図だ……。

そう考えると、
改めて背筋に冷たいものが走る。


【関連エントリー】
生命倫理が「治外法権的な聖域なき議論の土俵」に思えてきた
事業仕分けの科学研究予算問題から考えること
ゲイツ財団がコークとマックに投資することの怪、そこから見えてくるもの
日本の「ワクチン産業ビジョンの要点」の怪
「科学とテクノ」と「法」と「倫理」そして「問題の偽装」(2010/5/24)
「必要を作り出すプロセスがショーバイのキモ」時代と「次世代ワクチン・カンファ」(2010/5/29)
2012.02.22 / Top↑
これまでも何かと疑念が言われてきた、米国の権威ある生命倫理学雑誌AJOBの創設者 Glenn McGee氏がついに幹細胞バンク企業に転職し、非難ごうごう。ミネソタ大学の生命倫理学者 Leigh Turner氏が中心になってAJOBの理事の総辞職を求める動きも。:製薬会社・医療機器会社と研究者、医学雑誌の癒着に留まらず、そこに生命倫理学も。まぁ、もともと当ブログでそれらしい懸念は指摘してきたものの、なんという規模のスキャンダルか。
http://www.biopoliticaltimes.org/article.php?id=6070

オランダの死の自己決定権ロビーNVVEが3月1日から、自殺幇助宅配チームを6チーム稼働させる予定だとか。それぞれ医師一人、看護師1人で、年間1000人の安楽死希望に応じる。
http://www.onenewsnow.com/Culture/Default.aspx?id=1533784

そのNVVE、6日から12日まで「安楽死週間」を開催。安楽死の映画フェステイバルも。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9921#comments

Medical Futility Blogによると、どうやら去年あたりからNICUがコスト高だとの批判が出て、NICU側にコストを正当化しなければならないプレッシャーがかかっている模様。
http://medicalfutility.blogspot.com/2012/02/prediction-and-cost-of-futility-in-nicu.html

Diekema医師がNEJMに「児童期の予防接種率改善に向けて」。
http://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMp1113008?query=featured_home&#t=article

それを受けたNYTの記事。
http://parenting.blogs.nytimes.com/2012/02/10/how-doctors-could-improve-childhood-vaccination-rates/

医学書院サイトにも関連で、李 啓充氏の連載「続 アメリカ医療の光と影 第215回」、「予防接種拒否を巡る倫理論争」
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02965_04

【関連エントリー】
米国で「ワクチン打たないなら診てやらない」と医師ら(2011/7/6)
「ワクチン打たないなら診てやらない」の続報(米)(2011/9/27)


ゲイの男性から精子の提供を受けて子どもを産んだレズビアンのカップルに対して、ドナーの男性が子育てに参加する権利を求めて提訴。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9926#When:05:07:29Z

代理出産が禁止されているはずの中国で、富裕層の夫婦がいっぺんに8人の子の親に。妻が双子を生み、2人の代理母がそれぞれ3つ後を産んだため。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/9929#When:12:15:29Z
http://www.guardian.co.uk/world/2012/feb/08/china-surrogate-mothers-year-dragon?newsfeed=true

米国の科学者によるグァテマラの人体実験に関する記事がNatureに。
http://www.nature.com/news/human-experiments-first-do-harm-1.9980

【関連エントリー】
タスキギだけじゃなかった米の非人道的人体実験、グァテマラでも(2011/6/9)
米の科学者ら、非倫理的だと承知の上でグァテマラの性病実験を実施(2011/8/31)


米国の精神障害の診断基準の改定版DSM-5に、英国の医師らから「いたずらに精神障害の診断を拡大させるもの」との批判。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/feb/09/us-mental-health-manual?CMP=EMCNEWEML1355

英国の科学者ら、皮膚の細胞から脳細胞を作った、と。
http://www.canberratimes.com.au/news/world/world/general/brain-tissue-created-from-human-skin/2452497.aspx?src=enews

食べ過ぎが高齢者の記憶障害に関与?
http://www.medicalnewstoday.com/articles/241570.php


三原の知的障害者施設性的虐待:虐待確認、県が運営の法人に勧告/ 広島: 今日は高齢者施設での虐待のニュースもあった。
http://mainichi.jp/area/hiroshima/news/20120211ddlk34040496000c.html



自立支援法の重度訪問介護について詳しく知らなかったので

Yahoo!知恵袋の重度訪問介護と居宅介護に関する質問と回答 2009
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1431714744

川口有美子さんの「障害者自立支援法によるALSなどの長時間介護にかかる問題点」2007
http://homepage2.nifty.com/ajikun/memo/jiritsu2007.htm

2012.02.22 / Top↑