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(たぶん)オーストラリアの学者さんたちの言論・ニュース・サイトで
人権問題を専門にする社会学者2人がAshley療法の新展開に批判の論考を書いている。

これまでの経緯を説明した後、
今回明らかになった新たな症例は12例とまだ少ないものの関心は広がっていることを懸念。

アシュリー療法の問題点として以下を指摘している。

① 実験的であるのみならず、
障害児に特化している点で差別的である。

特に子宮摘出は違法であるにもかかわらず、
ガーディアンの記事によれば新たなケースでも
適正な司法の関与を求めずに実施されている。

アシュリー療法は国連障害者人権条約違反。
例えば、生殖の権利の侵害(23条)
また、自由な同意なく医療または科学実験の対象とされない権利(15条)

② アシュリー療法は女性のセクシュアリティをネガティブに捉えており、
結果的に、障害のある女性にはセクシュアリティは望ましくないものとの
ネガティブなステレオタイプを強化する。
それはさらには障害のある女性が生殖への支援を受けにくくし、
子どもから不当に引き離されたりすることに繋がる。

ここまでは当初の論争でも指摘されたこと。
次は余り言われてこなかったことだと著者らが書いている通りかもしれない。

③ 障害者への福祉の枠組みが縮減され、
支援やサービスが削減されている昨今では
家族は障害のある子どもの介護にサポートを受けにくくなっており、
社会施策の影響によって親がこうした決断を迫られている面がある。

障害のある若い女性への性的虐待からセーフガードも乏しく、
それはまた障害者への福祉資源と支援が最小限にとどまっていることとも繋がる。

障害者福祉の縮減により経済的な困難に直面し、
アシュリー療法のような過激な医療が親にとって合理的な選択肢となるとしたら、
我々が問うべきはそうした社会の経済施策であり、
それにより障害者に拾い影響が及ぶことを考えなければならない。

障害者の尊厳と敬意を損なう恥ずべき療法を一般化するような
理不尽な経済施策を許すのは止めよう。

Ashley’s treatment: the arrested development of a disabled child
Karen Soldatic, Jo Milner
The Conversation, April 13, 2012


最近、コメントが頭に浮かびません。

懸念していた通りに展開していることへの
無力感もあるのですが、

アシュリー事件について私自身が言いたいことは
「アシュリー事件 メディカルコントロールと新・優生思想の時代」にすべて書いた……

……という気分でもあるので。
2012.04.18 / Top↑
VT州の自殺幇助合法化法案、通過せず! イエイ! 
http://www.lifenews.com/2012/04/12/vermont-again-defeats-bill-to-legalize-assisted-suicide/

いつもお世話になっているyaguchiさんのブログに、自殺幇助を巡る、とても深く濃いエントリーが2つあって、引き込まれて一気に読んだ。上から「『幻のバイブルーあいつが生きていたら、きっと甲子園に行っていた』を読む」と「『幻のバイブル』読後感」
http://cscanary.at.webry.info/201204/article_11.html
http://cscanary.at.webry.info/201204/article_12.html

Rebecca Dresserが本人や家族が癌を経験したことのある生命倫理学者のエッセイを集めた本を出し、LancetでそれをCaplanが論じている。エッセイの中にはFostやKassによるものも。CaplanはKassが死や良い死に方について生命倫理の役割を考えていることに対して、生命倫理だけじゃない、ヒューマニティ、文学、classical studies, 神学、民俗学、芸術などにも目を向けることで、このような問題は深められるだろう、と。:このガン体験者の生命倫理学者グループについてはアシュリー事件の前半の頃にFost関連で拾ったことがあるのだけれど、すぐにはエントリーが見つからなかった。
http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736%2812%2960584-4/fulltext?elsca1=ETOC-LANCET&elsca2=email&elsca3=Other

ちなみにRebecca DresserはWA大学所属。アシュリー事件でシアトルこども病院の成長抑制WGのメンバー。「改定最善の利益」つまり「重症障害者は我々とは別世界の住人」論者。A事件で最もラディカルな主張をしたこちらの論文で引用されている⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/56009864.html 

米国人の3割がナーシング・ホームで亡くなっていることを考えると、ナーシング・ホームでの終末期医療の評価が必要。
http://www.futurity.org/health-medicine/grade-nursing-home-end-of-life-care-study-says/

Dignitasのサイト。2年前くらいに行ってみた時にはドイツ語だけだったと思うのだけど(検索ミスだった?)、いつのまにか英語版ができていた。チューリッヒの住民投票でツーリズム規制が見送られて、イケイケになってる感じ?
http://www.dignitas.ch/index.php?lang=en

英国の自殺幇助委員会の報告提言を受け、”ロックトイン”とされているニックリンソンさんが「どうして提言はターミナル限定? 自分みたいにならないように死なせてもよいなら自分の状態だって認めてよいはず」と委員長に。
http://www.bbc.co.uk/news/uk-england-wiltshire-17732936。

ニックリンソンさん関連エントリーはこちらにとりまとめ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64861257.html。
ニックリンソンさんが面談した委員会とその委員長Falconor氏についてはこちら⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64566509.html。

高額ながん治療はそのコストに値するか?:終末期医療の次に医療費削減のターゲットになるのは、たぶんガン治療。オレゴン州のメディケアでは「抗がん剤はダメだけど自殺幇助ならOK」。また英国では高価な抗がん剤はNHS医療の対象から外されいっている。それぞれエントリーありますが、探すのが面倒なので省略。
http://www.reuters.com/article/2012/04/09/us-cancercare-idUSBRE8380SA20120409

WHOが認知症はグローバルな経済負担だから、早急に対応を、と。:「○○病の患者は世界経済の負担」という問題意識が流布されていくことと、「最先端医療による病気予防とその他欲望の充足が可能」と欲望を掻き立て、世界 経済を回すための市場が創出されていくことによって、病気が「無駄にカネのかかる負担」と「カネになるターゲット」とに仕分けされていく。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10013#comments

GDP比でみた場合、日本の医療費は高齢化によって増加しているわけでない、とのデータ。それから医療費の中で薬価、医療機器の価格の占める割合や価格の国際比較データ。
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1900.html
http://www.gaihoren.jp/gaihoren/public/medicalcost/html/index.html

ヨーロッパの生殖補助医療規制は、国民を海外での生殖ツーリズムに追いやる、との批判。:PAS合法化でも、「国内で認めないから、スイスへの自殺幇助ツーリズムへ向かう」とか「スイスでしかできないから金持ちだけになって不公平」などの合法 化正当化論が出ている。倫理問題の議論や法整備が現実の方を後追いしていく事態が続くと、どこかでこういう逆転論理が成立し始める?
http://www.washingtonpost.com/world/europe/fertility-treatment-bans-in-europe-drive-future-parents-abroad-draw-criticism/2012/04/13/gIQAVvcUET_story.html

09年にCA州で8つ後を生んで話題になった女性、14人の子どもを抱えて生活に困窮し、8つ後の出産は「間違いだった」。:この人のケースについては、いくつかエントリーあり、8つ子の母は障害者手当てを受給、子ども3人にも障害児手当て、生活保護も、8つ子出産の母これまでの妊娠もIVF:州が調査に。
http://www.bioedge.org/index.php/bioethics/bioethics_article/10014#comments 

プラスチックの環境ホルモンについて。プラスチックと接触していない食品を食べた人と、接触した食品を食べた人の尿を比較したところ、たった3日間でBPAなどの含有量が全く違っていた、と。
http://www.washingtonpost.com/national/health-science/trace-chemicals-in-everyday-food-packaging-cause-worry-over-cumulative-threat/2012/04/16/gIQAUILvMT_story.html?wpisrc=nl_cuzheads

【関連エントリー】
大統領がんパネルが「化学物質はやっぱりヤバい」(米)(2010/5/10)


メンタルヘルスのスクリーニングを学校保健の一環とすべきか?:米国では09年に専門家らから「12歳から18歳全員にうつ病スクリーニングを」との提言が出たことがあった。⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/52826869.html
http://www.medicalnewstoday.com/releases/244117.php

J&J社、アーカンソー州でRisperdalのリスクの過小表記と隠ぺいにより、11億ドルの罰金。Risperdalを巡っては他にも訴訟があり、影響必至。
http://economictimes.indiatimes.com/news/international-business/johnson-johnson-fined-1-1-bn-in-risperdal-case/articleshow/12631418.cms

いつもお世話になっている谷口輝世子さんのツイッター経由の情報。米国では犬に電気ショックを与えて、フェンスがなくても外へ出ていかないようにするシステムがある。それに近いようなことが自閉症の子どもたちを通う私立学校でも行われていた事件。
http://motherjones.com/mojo/2010/02/school-shock-under-federal-investigation

米国で「救急車のおっかけ」と揶揄されてきた弁護士らが、今やADA違反の追っかけも?NYT。
”Disabilities Act Used by Lawyers in Flood of Suits”:Some lawyers are finding business where there are violations of the Americans With Disabilities Act, then finding disabled plaintiffs to bring suits.

日本語「好きな夢見られるアプリ」、英心理学者らが開発:夢は、人間のふか~いところにある諸々の魑魅魍魎と繋がっていて、おそろしいものなんだよ。そういうものに、あんまり簡単に手を突っ込んではいけない。英語圏イデオロギーの専横は生命倫理学だけじゃなかった(2009/9/4)
http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPTYE83G01Z20120417

アイルランドでADHDの息子を持つ母親が、介護者手当の申請を却下されたことを不服として提訴。
http://www.irishtimes.com/newspaper/ireland/2012/0417/1224314823895.html

★拡散希望★私たちの税金で途上国の子どもたちを内部被ばくさせないで!(STOP!浜岡原発ブログ):途上国は先進国がやりたい放題の搾取グラウンドになりつつあるのか、と思う時がある。
http://stophamaokanuclearpp.com/blog/?p=10827

togetter「日本人は弱い立場の人(フリーライダーや自力で生活できない人)に冷たく、生活保護の捕捉率が低いのか」
http://togetter.com/li/287622

キリスト教のグループが、同性愛は治療で治るとのバス広告を掲載しようとしたのに対して、ロンドン市長が介入してストップ。
http://www.guardian.co.uk/world/2012/apr/12/anti-gay-adverts-boris-johnson?CMP=
2012.04.18 / Top↑
「支援1」についてはちょうど1年前に、
「支援」創刊号を読むというエントリーを書いていますが、

「支援2」を半分弱読んだところで、
矢も盾もたまらず、ダダ漏れツイートしたものが以下。

「支援2」の冒頭の「当事者をめぐる揺らぎ」を読んで、「え~、なんだぁぁ~」と脱力してしまった。だって、年末に上野千鶴「ケアの社会学」から考えるという2つのエントリーを書くの、私には恐怖だった。アップする時にはバクバクで手が震えたくらいの。

ニーズに優先順位がつけられていることが一番気に入らなかったんだけど、「障害学」の人たちはみんな「当事者主権」なんだと思い込んでいたから、こんなの書いていいんだろうか、誰かからまたぶっ叩かれるんじゃないだろうかって、夜も眠れぬ思いで・・・。な~んだぁぁ。

星加氏「どちらが優先といってみても始まらない。問題は、どうすれば両者を共に満たすことが可能になるのか」「支援提供の基盤を拡大し、支援のリソースを量的に充実させることによって、個々の支援者の「派生的ニーズ」と当事者の「一次的ニーズ」とが併存できる仕組みを」

↑学問ではないし、生まれたばかりの市民運動だから、まだまだ深めていくべきところだらけだけれど、これは基本的には介護者支援が訴え目指していこうとしているところだと思う。

それと介護者の立場から言うと、「当事者への支援を成り立たせるための支援」以外に、日本ケアラー連盟の調査でも多くの介護者は心身の健康に問題を抱えたまま介護しているわけで、英国の調査だとかなりの効率でうつ病になっている。そうなると、1次と2次両方のニーズが

介護者には生じていることになる。介護者がうつ病になったら「うつ病の介護者」ではなく、その人は「うつ病患者」のはずなのに、先に役割規定されてしまって介護者のうつ病は軽視されたり、現実に介護のために外出できず必要な医療を受けられないままでいたりする。

この際、支援者とか介護者とかケアラーとかの定義みたいなのはおいといて。あ~、なんだぁ、別に書いたってよかったんだぁ、同じことを考える人だっていたんだぁ、と思ったら、また余計なことまで書いちゃったよ。


いま「特集」を読んだところ。やっぱり岡部さんと石丸さんのが沁みるのは、私自身の立ち位置なんだろうな。けど、どれを読んでも、自分の中でほぐれていく ものがあって、それは昨夜「ケアの社会学」関係でつぶやいたのと同じで、「なんだ、言ってもよかったんだぁ・・・」ということ。

一番思うのは、私ってものすごいステレオタイプで「障害学」とか「障害者運動」とか「自立生活運動」に対して身構えてたんだなぁ…、ということ。その意識 が自分の中にある「施設に入れている親」の罪悪感と重なり合って、何か言いたいことがある、とそのことを考え始めると、必ず同時に自分の頭の中で

「オマエは単に自分が施設に入れていることを正当化しようとしているだけなんじゃないか?」と問い返してくる声が出てきて、そこを分明に整理しようと試みざるを得なくなり、でもそれは苦しくてならなくて、その痛みを抱えたまま誰かの言葉に触れると、何を読んでも聞いても

その言葉から「責められている」としか感じることができなくなっていたり・・・したんじゃないのかなぁ。これまでも漠然とは意識していたことなのだけど、この特集を読むと、「なんだ、ありのままで許されているんだ」感が、ふわっと。

今、こう書いたら、本気で泣けてきた。

ツイッターを始めたことで、障害学とか運動の方々との距離がいきなり縮まって、それで自責を目の前にドンと据え附けてしまって、そこをどんどん掘っていくのを止められなくなってしまった・・・みたいな気分で、すごく苦しんでいました。それなら

そのことには触れずにツイートするとか、黙っているとかすればいいのに、いつでも「まっすぐ」しかないバカだから考えることを止められなくて、またそれをダダ漏れに言葉にして、次はそのことに怯えて自責を他人からの非難に勝手に置き変えて。

でも「支援2」の特集を読んでいると、誰も責めてなんかいないし、誰にも責められる謂われはないし、今のままの自分でいるところで、そういう自責や痛みと向かいあえばいいんだと「許されている」感が。


「私らしい」とか「海のいる」を読んでくださった方には推測していただけていると思うのだけど、私には娘が幼くて病気ばっかりして自分の人生でダントツに 一番苦しかった時期に、一番助けてほしい人たちからロクに助けてもらえないまま、逆に毎日責め立てられながら暮らした体験があります。

そのことが、私が誰かの言葉に勝手に先取りして読みがちな「責められている」感や、その逆に何かから受け取る「許されている」感に、とても大きく影響してい ると思うので、それがどこまで一般化できるのかは分からないけれど、母親仲間との付き合いからは母親にある程度共通した意識のようでもあり。

それなら、なぜ私たち母親はそんなふうに感じさせられてしまうのか、をやっぱりグルグル考えていったっていいのかな、と。それを通じて、たぶん私はその先にある自分自身の問題と向かい合おうとしているんだとも思うし。


これを改めて読んでみて、
去年「支援」創刊号を読んだ時に受けた印象(去年のエントリーの最後に)は
やっぱり間違っていなかった……という気がする。
2012.04.18 / Top↑
「災害ユートピア―なぜそのとき特別な共同体が立ち上るのか」(レベッカ・ソルニット 亜紀書房 2010)


9・11を扱った第4章とカトリーナの第5章の2つを読んだところ。

翻訳文体がちょっと辛くて他を読めるかどうか自信がないこともあって、
とりいそぎ、カトリーナ“安楽死”事件の舞台となったメモリアル病院への言及個所について
自分のためのメモとして。


 デニーズ・ムーアは、母親が働いている堅牢な数階建てのメモリアル・ホスピタルに避難した。彼女たち家族はいったんは部屋を割り当てられたものの、あとからやってきた白人看護師二人に与えるために、そこを追い出された。このことにひどく気分を害した彼女は、自宅に戻った。ただ、家は文字通り、彼女の目の前で崩れ落ち、コンベンションセンターに行くしかなくなった。
(p.337)

 戦闘服を着た州兵が装甲兵員輸送車から降りて、チャリティ・ホスピタル――この何十年間、貧しい市民の大部分が出産時と死亡時に世話になった、市の中心部にある巨大な医療施設群――のある医師に、患者たちを避難させるのは「危険すぎる」と言った。市内の至る所で同じことが起きていた。たとえば、メモリアル・メディカルセンターでは、一階部分が完全に浸水し、一刻の猶予もならない状況になっていた。木曜までには避難活動の多くが失敗に終わっていたので、病院に残っていた医師や看護師や職員たちはついに自分たちでボートを手配し、患者たちをニューオリンズから避難できる場所まで運び始めた。すると、監督に当たっていた、一二口径ポンプ連射式散弾銃を持った筋骨隆々の州警察官が、「ドクター、五時以降のこの辺りの安全が保証できませんので、我々は午後五時にこの積載用スロープを閉鎖します」と言った。医師はそんなに安全上の問題があるようには見えないと抗議した。
 これに対し、州警察官は「ドクター、何が安全上の問題で、何が問題でないかは我々が決めます」と言い返した。
「ここでもう一晩過ごすことはできない。また多くの患者が亡くなります」と医師は訴えた。その日の前夜にも、一〇人の患者が、暑さや、ストレスや、医療資源の欠如のために亡くなっていた。州警察官は、もし医師たちが自分たちに従わないなら、完全にそこから引き上げると脅した。結局、彼らが撤退した結果、避難は建物の反対側から、なんとか行うことができた。この報告書を書いたリチャード・E・ディーチマン医師は、安全の概念にとらわれて人命に無関心な役人たちと、救助に駆け付けたボランティアたちを対比させている。
(p.366-367)


Deichmann ……私は「ダイクマン」かと思っていた。

ProPublicaの記事でも、最後の日に救助に来た空軍が
治安悪化のために午後5時で救助活動を打ち切ると宣言したことが
“安楽死”の引き金の一つとして働いた可能性が示唆されている。

実際には
生きて病院を出る最後の患者がヘリに載せられたのは午後9時だったのだけれど。


その他、ソルニットの著書からメモしておきたいこととして、以下の2点。

9・11の際に、
ノースタワー69階で仕事をしていた下半身まひの会計士の男性は
10人の同僚によるリレーで、「想像を絶する長さの階段を下ろしてもらい、
無事、安全な場所に避難することができた」
(p.256)

PTSDほど知られていないが「心的外傷後成長」という心理学概念がある。
(p.305)


【17日追記】
いつもお世話になっているなんさんが、ツイッターに流してくださった「心的外傷後成長」情報。
http://www.n-seiryo.ac.jp/~usui/saigai/2011sanrikuoki_eq/posttraumaticgrowth.html


【関連エントリー】
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 1/5: 概要(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 2/5: Day 1 とDay 2(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 3/5 : Day 3(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 4/5 : Day 4(2010/10/25)
ハリケーン・カトリーナ:メモリアル病院での“安楽死”事件 5/5 : その後・考察(2010/10/25)
2012.04.18 / Top↑
The American Journal of Bioethics の4月号で
Janet Malek (E.Carolina U.) と Judith F. Daar (Whittier Low School)の論文が

最終的には法律によって
IVFを利用する親にはあらゆる手段を講じて子孫の福祉を最大化する義務を課すべき、と。

その理由として挙げられているのは
子どもの福祉、子どもの自己決定の拡大、不平等の削減。

より体力があり、より健康で、より知能の高い子どもが生まれるという利点だけでなく、
公平性と自己決定を促進するから、道徳的な善である、との論理。

特に重大な遺伝病があり、そのことを知っている(べき)親が
着床前遺伝子診断を利用せず、その病気の子どもを産まない努力を怠った場合には
法的な責任を問うべきだ、と。

そうして最終的には
IVFによる出産では欠陥のある子どもは生まれなくなれば
病気の子どもに税金が使われることがなくなるので、

Shifting benefit outlays for significant post-birth health care to a far less costly preconception procedure strikes us as a worthy public policy trade-off.

福祉給付のバランスが、多額の出生後の医療費から、それよりもはるかに安価な着床前診断の費用へとシフトするわけだから、政策としては差し引き勘定は良好で意義がある。


BioEdgeのCookによれば、
この論文の著者らは、つい先日、物議をかもした「新生児殺し容認論文」の著者らと同じく、
Savulescu, Guy Kahane、John Harrisらの議論を論拠にしている、とのこと。

Parents can have a duty to use IVF, say bioethicists
BioEdge, April 13, 2012


【関連エントリー】
中絶してもいいなら“出生後中絶”と称して新生児殺してもOK(2012/2/27)
“出生後中絶”正当化論は「純粋に論理のエクササイズ」(2012/3/5)
シンガーが「出生後中絶」論文論争に登場(2012/3/9)
2012.04.18 / Top↑
NM州でガンの専門医らから自殺幇助に関する法の明確化を求めて提訴。
http://alibi.com/news/41295/Last-Request.html

VT州でもMA州同様の住民投票を目指す動き。:VT州は去年、合法化法案を否決して、公費による皆保険制度を創設するとかいってたはずなんだけど。⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/63230790.html
http://www.catholicvote.org/discuss/index.php?p=28922

ウエスト・ロンドン大学の映画科の学生2人が、自殺幇助のドキュメンタリー映画でなんの賞だかを受賞。:ここ数年、このテーマで作られるドキュメンタリーがごろごろ。
http://www.ealinggazette.co.uk/ealing-news/local-ealing-news/2012/04/12/students-win-award-for-assisted-suicide-film-64767-30744186/ 

NYTのディベイトのページが、「なぜオランダと違って米国では安楽死法ができにくいのか」。:ここ数日バラバラと引っかかってきていたのはここの記事だったらしい。「オランダでは可能なのに」って、日本でもあの人が言ってたっけな。
http://www.nytimes.com/roomfordebate/2012/04/10/why-do-americans-balk-at-euthanasia-laws 

ルイジアナ州では自殺幇助に関する規制を強化しようとの議論が州議会で。:ルイジアナ州といえばニューオーリンズ。カトリーナの際に安楽死事件があったところ。
http://www.therepublic.com/view/story/f337da20993c425eb70da5e38b76f26e/LA-XGR--Assisted-Suicide/ 

今年のWHOのワールド・ヘルス・デイのテーマは Healthy Aging だって。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/244019.php

NYTに、米政府が、人間に効かなくなるため家畜への抗生剤の使用を制限、というニュース。
U.S. Tightens Rules on Antibiotics Use for Livestock.
2012.04.18 / Top↑
爆弾ニュースが飛び出してきた。

ちょっと妙な書き方をしてある記事なのだけれど、
(Mailには、どうもこの手の記事が多い気がするけど、私の偏見かな)

元・仏大統領(任期1981―1995)のミッテラン氏が在任中ずっと
ガンと闘病していたことを明かしたのは、
プライベートな主治医だったClaude Gubler医師。

タイトルそのまんまの“the Great Secret”という本で
ミッテランは15年間ガンと闘い続けており、
在任中ずっとそのことを隠していたが、最後の1年間は
ガンのために職務を遂行することができなくなっていたこと、

しかし、健康問題は政治家にとって命取りなので
Gubler医師は大統領の健康状態に関する発表内容を偽るよう強いられたこと
などを明かした。

Mail記事の次の2行、ちょっと詳細が良く分からないのだけど、

この本は発禁処分となり、Gubler医師は除名処分になったらしい。
執行猶予つきで懲役刑を受けているみたいだし、
後任のシラク大統領の命令で publicly dishonored されたとも。
(文法的には「シラクの命令で」が懲役刑にもかかってる可能性もないわけではないけど?)

ここまでの話には、
冒頭で見てきたかのように場面を描写した後、PASは全く登場しないのだけれど、
ミッテランは在任中、安楽死には強く反対する立場をとっていたことには
こちらの前半部分で言及されている。


で、なぜか、ここで話はいきなり最近出た別の本の話に飛ぶ。

ジャーナリスト2人が最近書いた本で、
ミッテランの命を終わらせた致死薬の注射は
ある謎の女性の同席のもとに行われて、その女性がその後、事実を医師に伝えた、と
書かれている……とMailは書いている。

ミッテランの息子は
「何があったかを知っているのはただ一人の人物で、
その女性は何も語ろうとしない。
我々には、父の死が穏やかなものだったと言っただけ」

また、その本には
サルコジ大統領が2度目の大統領選のさなかに
認可されていない薬を飲んだ、とも。

どういう薬かは書いていないが、
aplomb(心の落ち着き)を取り戻す効果のあるもの、としているらしい。

他にもシラクも在任中に脳卒中をやったけど隠した、とかの暴露本。

Former French President Mitterand’s death was assisted suicide claims incendiary new book
Daily Mail, April 11, 2012


サルコジ大統領の薬については
前にどこかでチラっと読んだことがあるような記憶がある。
2012.04.18 / Top↑
昨日の補遺で拾ったNeurology TodayのBernat論文
「脳神経科医は患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか?」。

Ask the Neuroethicist: Can a Neurologist Write a DNR Order on a Terminally Ill Patients Without Consent?
Bernat, James L. MD
Neurology Today, April 5, 2012


ざっと大まかな内容を以下に。

まず、DNR(蘇生無用)指定がたどってきた歴史の解説として、

50年前に心肺蘇生が出てきた時には
効果が過大に評価されて心停止が起きた時のスタンダードな医療となったが、
その後のデータから、慢性病の末期ではほとんど蘇生効果がないことが明らかになり、
無益であるにもかかわらず患者に苦痛を強いるとして、
患者が心肺停止に陥っても蘇生を無用とするDNR指定が考案された。

そこで、現在の状況はというと、
ちょっとびっくりなのだけれど、

Today, nearly all hospitals require physicians admitting patients to indicate whether the patient is a candidate to receive CPR or is DNR.

今日、ほとんどすべての病院において、医師は患者を入院させる時に、その患者を心肺蘇生の対象とするか、それともDNR指定とするかの判断を求められている。


医療は基本的に本人または代理決定権者の同意に基づいて行われるものであり、
多くの病院がDNR指定にも同意をとる方針を出しているが、
そもそもDNRは治療を行う同意ではなく、治療の明確な否定であり、
自己決定の原則がそのまま当てはまるかどうかは曖昧。

また明らかに無益な治療については
医師は申し出たり相談しなくてもよいとの倫理原則を当てはめると、
無益だとのエビデンスがあるCPRを申し出ることも相談することも無用、とする倫理学者の議論もある。

しかし著者は

I believe that purposely not to mention the possibility of CPR is to squander an opportunity for an important discussion with the patient or surrogate on the patient's goals of therapy.

意図的にCPRの可能性に触れないでおくことは、患者の治療のゴールに関して本人や代理者との間で大切な話し合いをする機会を損なうと私は思う。

著者が推奨するのは、
この患者さんの場合は、と具体的かつ丁寧に説明し、
かくかくしかじかのように無益だから私はDNR指定にしますよ、と納得してもらうこと。

もちろん問題はそこで納得してもらえない場合であって、
そこからは個々の医師の決断なのだけれど、

ここで著者は、名前は出していないものの
Truogなどがここ数年主張している「無益でも家族に利益があるならやるべき」との意見を否定する。

実際にCPRってどういうものかを例えばビデオで見せるなど、
一般市民を啓発すれば、無茶な「ゼッタイやって」要求も減らせるはず、と説き、

一般向けにCPRやDNRについての啓発に力を入れよ、というのが結論。



なお、Truogの「無益でもやるべき」論についてはエントリー3つあり↓

「無益な心肺蘇生は常に間違いなのか?」とTroug医師
Truogの「無益な治療」講演 1(2011年11月10日)(ここから2つのエントリーで)


なおBernat論文の末尾にTruogとLantosの論文が引いてあるのだけど、
上記リンクの去年の講演でTruogはLantos説を解説している。

私はこの講演でTruogが
家族の社会的背景や、家族と専門職の関係性を考えようとしていることが
とても意外だったのだけれど、同時に面白いと思った。
2012.04.18 / Top↑
「患者本人の同意なしにDNR指定してもよいか?」:Bernatさんという有名な倫理学者らしいんだけど、例によってアシュリー事件・レーダーの中にはないので私は知らない。DNRの歴史的背景なんかも説明されていて、余裕があれば読みたいんだけれど。
https://www.aan.com/elibrary/neurologytoday/?event=home.showArticle&id=ovid.com:/bib/ovftdb/00132985-201204050-00014

ゆさぶり症候群で子どもを殺したとされた母親(黒人)に、CA州知事が減刑。ProPublicaがずっとやっている米国の検死官らの怠慢報道を受け、証拠が再検討されたらしい。:ProPublicaはいい仕事している。このキャンペーンはまだ継続中。ProPublicaのこのキャンペーンについては ⇒http://blogs.yahoo.co.jp/spitzibara/64942950.html
http://www.propublica.org/article/california-governor-commutes-sentence-in-shaken-baby-case 

アシュリー事件の担当医ディクマが、親のワクチン拒否との闘いに熱入れてきた。
http://www.idse.net/ViewArticle.aspx?d=Public%2BHealth&d_id=212&i=April+2012&i_id=828&a_id=20597 

今度はアレルギー性喘息のワクチン。
http://www.medicalnewstoday.com/releases/243810.php

児童期の肥満に関わる遺伝子変異2つ。
http://www.medicalnewstoday.com/articles/243889.php

日本。フリーズドライ精子、水で戻してラット出産
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120410-00000430-yom-sci

英国NHS、新生児の低血糖症を見つけられなかったとして起こされている訴訟60件の対応に、多額の予算を割くことに。
http://www.guardian.co.uk/society/2012/apr/09/nhs-blunders-babies-brain-damage?CMP=EMCNEWEML1355

英国に住むパキスタンやインドの子どもたちが、学校の長期休暇の間に家族から無理やり結婚させられて姿を消す、ということが頻発しているため、学校で結婚の強制や特有の名誉文化による暴力に対する子どもたちの人権意識を高めようとの取り組み。
http://www.guardian.co.uk/education/2012/apr/09/forced-marriage-british-pupils?CMP=EMCNEWEML1355
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